【コラム】ANCIENT MYTH、新章幕開けとなるワンマンツアーに明確なヴィジョンと“6”へのこだわり

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ここ数年、興味深い動きを見せているバンドの一つにANCIENT MYTHがある。結成から数えればキャリアは長く、世界的に知られる<Metal Female Voices Fest>への出演を始め、海外公演なども行ってはきたものの、度重なるメンバーチェンジもあり、追い風が期待できそうな出来事があっても、なかなか発展的な活動へと結びつけることができなかった。

◆ANCIENT MYTH 画像

その歴史が大きく変わることになったのが2021年のこと。フルアルバムとしては約9年ぶりに放たれた『ArcheoNyx』のリリースである。オペラの難曲の一つと言われるモーツァルトの「Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen (復讐の炎は地獄のように我が心に燃え)」のカヴァーを収録していることからもわかるように、Michal (Vo)の表現力が格段に多彩になり、Hal (Key)の巧みなアレンジ力が発揮されて楽曲そのもののクオリティが上昇。作家陣にShibuki (Dr)が加わることでヴァリーションも豊かになった。そしてプレイアビリティの高い若手として注目されていたKohei (G)の加入も機動力を高める要素となった。


▲Michal (Vo)

それまでとは比較にならない進化を具現化したANCIENT MYTHは、コロナ禍にもかかわらず、様々な制限が重ねる中でツアーも敢行。プロモーションにも注力しながら着実にファンベースを確立させ、気付けば年に1回できるかどうかだった単独公演も東京で三度も行えるほどになっていた。こういった飛躍は勢いのあるバンドにしかなし得ないことだ。

そんな中、今年2月初旬に、衝撃的なニュースが流れてきた。急遽、翌月3月に東京・新宿MARZでのワンマン公演を行うことがアナウンスされ、その日を最後にKoheiが脱退するというものであった。それと同時に、その日から新体制での活動もスタートし、新旧ラインナップそれぞれがパフォーマンスを行う二部構成でのライヴとなることも発表された。

傍からは順風満帆に見えていたANCIENT MYTHに再び起こった交代劇は、ともすれば不穏な空気を感じさせてしまう恐れのある場面ではあるが、バンドの意識はかつてとは確実に異なっていた。それまでの充実した約4年間を集約しながら、確信を持って次なる未来を見据えていたのである。それは後に<Apocalypse 3:31>と題された、その転換点となるライヴで証明されることになった。


▲Hal (Key)


▲Shibuki (Dr)

そして迎えた3月31日の新宿MARZ。まずはKoheiと同じくこの日をもってサポートを離れるTAKAAKI (B)を含む5人でのステージが始まった。オープニングから「Chaos to Infinity」「River of Oblivion」「Crimson Stigmata」と曲が進む中、特に違和感を覚えることはない。見慣れたANCIENT MYTHの日常がまだそこにはあった。

「私たちにとって節目となるワンマンです。涙もあるかもしれませんが、最後のほうは笑って帰っていただけるように、精一杯演じます」──Michal

最初のMCでMichalはそう口にした。終盤でHalの奏でる「見よ、勇者は帰る」(ヘンデル作曲)から始まった“卒業式”では涙が見られる場面もあったが、それは双方の友好な関係が変わらずに続いているゆえでもあるだろう。Koheiは感謝の言葉を述べつつ、リハーサルを目にした新体制について「カッコいいですよ。安心して託せる」と触れながら、その良好な仕上がり具合に「ちょっと嫉妬しました」と笑顔も浮かべていた。

しかし、新たなメンバーがいかなる人物なのかは、事前には一切明かされていなかった。つまり、ここから始まる第二部が文字通りの初舞台となったわけだが、バンド側には先入観なく観て欲しいという考えだけでなく、絶対的な自信があったことが窺える。そう言えるのは、この日の新生ANCIENT MYTHのステージが、これまでとはまた異なる魅力に満ちていたからだ。


▲<ANCIENT MYTH One-man SHOW「Apocalypse 3:31」>

25分ほどのインターバルの後、暗転すると紗幕の向こうに青いランタンが確認できる。ステージの光量が増してくる中、すでにメンバーは定位置にいる。幕が開いた際には新たなギタリストとベーシストは客席に背を向けたままだったが、「Ambrosian Blood」が始まると、瞬時にアクティヴなパフォーマンスへと突入。その時点でインパクトは十分だった。

第一部ではメンバーは胸に赤い薔薇をつけていたが、第二部では濃紺の布をあしらった衣装に。ヴィジュアル的にもわかりやすく変容を表していた。

「天狼大神」「Meteor Hunter」「Chaos to Infinity」「Astrolabe in Your Heart」と矢継ぎ早に繰り出されていく楽曲群。その勢いに満ちた姿が、そのままANCIENT MYTHの次章への期待を高める。さらに最後は未発表の新曲まで披露。早くも新体制が明確なヴィジョンの下に動き出していることも印象付けた。


▲kaya (G)


▲NINO (B)

Michalは「(メンバー脱退が)悲しいという声よりも、これから期待してますという声のほうが多かった」と振り返り、kaya (G)とNINO (B)を紹介。そして「新章開幕」と高らかに宣言し、節目となるライヴを締め括った。

その発言を具現化するかのごとく、この6月21日からは6ヵ所を廻るワンマンツアー<Apocalypse 666>が行われる。実はANCIENT MYTHが国内においてこの規模で転戦するのは初めてのこと。この事実からもバンドの気概が感じ取れることだろう。チケット代が666円からという設定にも、“6”という数字にこだわった、ANCIENT MYTHらしい徹底したコンセプトが見えてくる。



▲<ANCIENT MYTH One-man SHOW「Apocalypse 3:31」>

現時点で新体制でのレコーディングも進められており、何らかの作品もそう遠くない将来に発表されそうだが、各地で行われる今回の単独公演が次の展開を決める基盤になるのは間違いない。これからどのような変貌を遂げるのか、大いに期待しておきたい。

文◎土屋京輔

■<ANCIENT MYTH One-Man Show「Apocalypse 3:31」〜現体制ラスト&新体制スタート〜>2024年3月31日@東京・新宿MARZ セットリスト

▼第一部
01. Chaos to Infinity
02. River of Oblivion
03. Crimson Stigmata
04. Der Hölle Rache kocht in meinem Herzen
05. Hypno Temptation
06. 天狼大神
07. Meteor Hunter
08. Ambrosian Blood
09. Forbidden Blaze
10. Zenith
▼第二部
01. Ambrosian Blood
02. 天狼大神
03. Meteor Hunter
04. Chaos to Infinity
05. Astrolabe in Your Heart
06. 新曲(タイトル未定)

■<ANCIENT MYTH One-Man Tour「Apocalypse 666」>

6月21日(金) 東京・吉祥寺Crescendo
6月29日(土) 大阪・心斎橋Ruido
6月30日(日) 愛知・名古屋今池Grow
7月14日(日) 群馬・前橋Dyver
7月21日(日) 広島・広島Cave-Be
8月10日(土) 東京・新宿MARZ
▼チケット
VIP:6666円
一般:666円


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