【インタビュー】ANCIENT MYTH、変貌を遂げた最新作『ArcheoNyx』

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ANCIENT MYTHが7月7日にアルバム『ArcheoNyx』をリリースした。

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ヨーロッパでも発売されたリレコーディング・ベスト盤『Aberration』(2016年)の際には、世界的に知られる<Metal Female Voices Fest>にも出演し、初の欧州ツアーも行われるなど、バンドの飛躍が文字通りに刻まれる活動を見せていたが、本作では以前とは別のバンドと言ってもいいほどの進化が遂げられている。

間違いなく史上最高傑作と称しても過言ではない仕上がりだ。初めて採り入れられたオペラ的歌唱法や、効果的に配されたオーケストレーションなどもポイントだが、何よりも楽曲の充実度が光る。持ち前のシンフォニックなメロディック・スピード/パワー・メタルは格段に説得力が増している。彼女たちは何を思い、未来を見据えていたのか。メンバー全員に話を訊いた。

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■ヨーロッパの強豪と戦を交えていくには
■ボトムアップしないと難しい

──今となってはオリジナル・メンバーは一人もいませんが、現在のANCIENT MYTHの魅力はどんなところにあるのか、それぞれ2018年と2020年に加入したShibukiさん(Dr)とKohei(G)さんに話を訊けば、その辺りも自ずから見えてくると思うんです。

Shibuki:そもそも最初はサポートドラマーとして参加させてもらったんですね。東名阪のツアーが決まっている中で、当時のドラムの方が急に出られないことになって、一月ちょっと前ぐらいに知人を通して誘ってもらったんです。そこから連絡をとって、曲を聴かせてもらったんですけど、その東名阪の3daysも楽しかったし、音楽性もすごく好きだったんですよ。その後、Halさん(Key)からまた連絡をいただいたんですね、「入っちゃいなよ」みたいな(笑)。

──それまでANCIENT MYTHの音楽は聴いたこともなかったんですね。

Shibuki:そうですね。正直、日本でガッツリとシンフォニック系メタルをやってるバンドを全然知らなかったんですよ。ただ、自分の中でバンドに参加するというのは、どちらかというとドラムを叩くというよりは作曲とかアレンジに参加することに大きな意味があると思ってて。それができるバンドだということもわかったので、加入させていただいたんですね。だから最初のミーティングのときには、早速、曲を書いていって聴いてもらって。

──音楽的にはどんなところに魅力を感じました? シンフォニック・メタルといっても、いろんなバンドがありますよね。

Shibuki:自分が好きな一番好きなバンドの一つがNIGHTWISHなんですね。あそこもメインの女性ヴォーカルがいて、壮大なオーケストラで盛っている音楽ですよね。メロスピ要素はあまりないかもしれないですけど、ANCIENT MYTHはそういうことができるバンドかなと思って。ドラミング的なところで言えば、自分はそこまでメロスピドラムって得意ではなかったんですよ(笑)。でも、そこはチャレンジだと思って。Michalさん(Vo)のヴォーカルもめちゃくちゃデカい一つの魅力だと思うんですね。Halさんがアレンジしていることなどは後々にわかっていったんですけど、しっかりとフルオーケストラのオーケストレーションができる人がいることからも、すごく力のあるバンドだなと感じました。

Kohei:僕はあるとき、Michalさんからギターを弾いてくれないかという話があったんですね。それ以前にライヴを観たこともあって、人柄も知っていて信頼できる先輩たちだったので、そういうのも含めていいなと思って加入したんです。エゴ的な部分で言えば(笑)、僕はもともとTHE GENIUS ORCHESTRATIONというメロディック・スピード・メタル・バンドをやっているんですけど、月に何本もライヴをやるような状況にはないんですよね。その意味では、ANCIENT MYTHに入ることで、自分を人に知ってもらうキッカケが増えますし。いろんな人と音を交えたい思いもめちゃくちゃ強いんですね。今まで女性ヴォーカルに合わせてギターを弾いたことはなかったですし、ギターとキーボードという組み合わせもなかったんですよ。それもやってみたいなと思う理由でしたね。ただ、そこからしばらくはライヴができなかったですけどね、コロナウイルスのせいで。とはいいつつ、アルバムの制作期間で顔を合わせる機会も多かったので、活動が止まっている印象もないんですよ。このメンバーでもっと魅力的な音楽を届けるために活動していきたいなと今は思ってます。

▲Shibuki(Dr)

──ANCIENT MYTHの音楽についてはどんな印象があったんですか?

Kohei:シンプルにこの世界観がカッコいいなと。もともと女性シンガーのバンドを聴いてこなかったので、声楽っぽい歌い方をするバンドもあまり知らなかったんですよね。ストリングスの音とか疾走感のあるリズムとか、クサいとか言われるメロディもすごく好きなんですよ。それに今までの作品を聴いたり、ライヴを観たうえで、自分だったらこうしたいなというポイントも多かったんですね。それは別にダメ出しとかそういうことではなくて(笑)、バンドの世界観をより表現するために、自分が溶け込める隙間がありそうだなと。

──やり甲斐を感じたわけですね。前作に当たるリレコーディング・ベスト・アルバム『Aberration』も、気付けば発売から約5年が経ちましたが、あの作品はヨーロッパでもリリースされて、欧州ツアーも行われるなど、それまでとは違った大きな展開が期待される状況にはありましたよね。ところが、同時並行的にメンバー脱退などもあり、傍からは、どちらかと言えば活動は停滞しているようにも映ったと思います。MichalさんとHalさんは、どのようにバンドを立て直そうと考えたんですか?

Michal:やっぱり、いろいろ考え直す大きなキッカケになったのは、『Aberration』をリリースした後の活動でしたね。2016年に<Metal Female Voices Fest>という大きなフェスに出て、2017年にはヨーロッパでも10箇所ぐらい廻って、さっきShibukiくんからサポート参加してくれたという話がありましたけど、イタリアのTEMPERANCEと国内をツアーしたんですよね。そういう中で、ヨーロッパの強豪と戦を交えていくには、もうちょっとボトムアップしないと難しいなと思うところがあったんです。

──ほう。

Michal:バンド活動って、しんどい部分もありますが、楽しいからこそ、一層、時が流れていくのが早くて、気がついたらベテランの域に入っているわけですよ。でも、それに相応しい経験値や実力を持っていないまま、ただ惰性でバンドを続ける状態にはなりたくなかったんですね。バンド内部のことで言えば、ソングライティングをする人も抜けてしまった。だからこそ、ここでせっついてバンドを動かすのではなく、個人のパワーアップに時間を費やしたい気持ちが大きくなってたんです。そこで私はヴァイオリンと声楽を同時に始めて。音楽的な理解力や実力を見つめ直す期間を設けたことが、傍からは停滞期間に見えていたんだと思うんですね。でも、これはいろんな芸事に携わる人が抱える悩みかもしれないですけど、立ち止まらないと養えない力もある。その意味では、必要なことだったなと思います。

Hal:僕は『Aberration』の制作に関わった後にANCIENT MYTHに入りましたけど、ホントはもう2〜3年早くアルバムを出すつもりでいたんですね。途中でギターが抜けたりとかもあったんですけど、それだけではなくて、たとえば歌い方を変えたりする最中だったので、どういう曲を、どのキーで歌うかというのもあまり見えないところもあったんですよ。だから、どんどんレコーディングを進めるのではなく、曲やそのアレンジを煮詰めるところに時間を費やしてて。歌に関して言えば、他のパートを全部録り終えてから、去年の夏ぐらいからやっと録り始めたぐらいなんですね。しかも結構期間を長くとっていて、最後の最後に歌入れを済ませるような。

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