【対談】ANCIENT MYTH × ILLUSION FORCE、初カップリングツアー開幕「<Wacken>に出たいと思ってる同士じゃないと」
東京を拠点に活動するANCIENT MYTHとILLUSION FORCEが本日9月10日より、国内5ヵ所を転戦する初のカップリングツアー<ANCIENT ILLUSION>を開催する。2021年にはそれぞれが『ArcheoNyx』と『ILLUSION PARADISE』という、自身の代表作たるマスターピースをリリースしているだけに、この2組が各地のステージで競演することは意義深い。いまだ続くコロナ禍によって活動を制限されてきた事実も、両バンドのモチベーションを上げる理由になっているようだ。
◆ANCIENT MYTH × ILLUSION FORCE 画像 / 動画
両者の音楽性はメロディックメタルの範疇にある。とはいえ、シンフォニックな要素やスピーディな曲展開など、やはり表現の仕方は異なる。互いの持ち味を実演を通してどうアピールしていくか、全日程を通して繰り広げられる切磋琢磨したパフォーマンスは要注目だ。BARKSではツアー開幕直前に、ANCIENT MYTHからMichal(Vo)、Hal(Key)、Shibuki(Dr)、ILLUSION FORCEからYuya(G)、George(G)、Jinn(Vo)を迎えて座談会を行った。ツアー<ANCIENT ILLUSION>に向けた意気込みはもちろん、日本のみならず世界へも目を向けた活動を続ける彼・彼女らの良好な関係性も見えてくるはずだ。
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■メタルからゲーム、ゲームからメタル
■そういう流れになってきてるのかな
──この2バンドはそもそもどういう出会いだったんですか?
Hal:僕とYuyaが最初に会ってるんですよ。僕はETHEREAL SINでも活動していますけど、あるとき、サポートギタリストを探していたんですね。そこでリーダーから「四郎丸 (YuyaとGeorge兄弟の姓)っていうやつに会いに行くぞ」と言われて、ついていったんですよ。4年ぐらい前かな?
Yuya:当時のILLUSION FORCEのドラマーがETHEREAL SINでも叩いてたので、彼が紹介したんでしょうね。ただ、俺がANCIENT MYTHを観たのはもっと前で……当時、都内大学のメタルサークルが集まって、毎年、渋谷のクラブエイジアでメタルフェスをやってたんですよ。20バンドぐらい出てたのかな。そこで2013年にゲストアクトとしてANCIENT MYTHが出演してたんですよ。
──その頃も今もANCIENT MYTHに在籍しているメンバーはMichalさんだけですね。
Michal:そうですね。何かいっぱい出てましたね、あのとき。
Yuya:たぶん俺はDRAGONFORCEのコピーバンドをやってたのかな。そのときに俺は一方的に観てただけなので、直接の面識はなかったんですけどね。
▲ANCIENT MYTH
──HalさんとYuyaさんが初めて会ったときのお互いの印象は?
Hal:“四郎丸って、下の名前じゃねぇんだ!? 名字なんだ”と(笑)。
Yuya:もう、必ずそれを言われますからね(笑)。
Hal:そこでさらに四郎丸には弟がいるって知って、俺は「五郎丸?」って訊いたんだよね。
Yuya:それも人生で何億回も言われてる(笑)。大学のとき、3年間、同じサークルで毎日のように顔を合わせていた女の先輩がいるんですけど、卒業するときぐらいまで、俺の下の名前が四郎丸だと思ってましたから(笑)。
George:それはあるあるだよね。
Yuya:でも、Halさんと初めて顔を合わせたとき、同じ席にいたのに、リーダーはまったく紹介してくれなかったんですよ。これから一緒にバンドやるかもしれない人なのに(笑)。実際にETHEREAL SINでの活動が始まってからの話になるんだけど、Halさんも僕と同じように曲のアレンジに力を入れる人なんだなと思ったんですよ。ぶっちゃけ、コードとメロディを作ったら作曲じゃないですか。でも、大事なのはその先の編曲なんですよね。そこでHalさんのそれまでの経歴を聞いてみると、「えっ、あそこでもオケを作ってたんですか!?」みたいな話が結構あって。
──HalさんはVOLCANOやVersaillesの曲作りにも参加していましたからね。
Yuya:そう、KAMIJOさんとかね。びっくりしますよ。当時の僕はまったくコネクションのない人間だったので、“こんなキャリアを持つ人とようやく会えて、一緒に仕事ができる関係になったんだ”みたいな感慨は正直ありました。
Hal:ありがとうございます(笑)。
Michal:ただのロン毛かと思ったら、と(笑)?
Yuya:そう(笑)。だから、ETHEREAL SINでもHalさんと話すことが多かったですね。もう一つ、ANCIENT MYTHの絡みで言うと、さらに遡って、一時期サポートをやってたMatsさんとの関係ですね。
Michal:そうそう。
Yuya:俺は2012年に東京に出てきたんだけど、当時、mixiとかで、“ギター弾きます、サポートの仕事します”みたいなことをやってたんだけど、あるヴィジュアル系バンドのサポートを1年ぐらい担当した頃に、サポートでもう一人入ってきたのがMatsさんだったんですよ(笑)。だから、俺とMatsさんのツインギターでライヴをやったことがあるんですよね。
Hal:そうなんだ? 今回のツアーのうち4ヵ所のサポートベーシストはアルバムでも弾いてくれてるMatsさんなんだよ。
Yuya:えっ、マジで!?
Michal:そう。その話をMatsさんから聞いてたので、今回は絶対に彼じゃなきゃダメだねと思って(笑)。いつからMatsさんがベーシストになったのかはちょっとわかんないんだけど。
Hal:今回、岡山ではMatsさんがいたSCHAU ESSENとも一緒にやるんだよね。
Michal:そう。今回のツアーのことをいろいろ考えてて、ILLUSION FORCEとのツーマンということで、まずMatsさんを誘ったんですよ。彼は岡山で活動しているSCHAU ESSENっていうメロディック系のバンドに一時期いたので、これは岡山も行くしかないなって。そんなふうに、それぞれの人とちょっとずつ関わりのあるところを押さえていった感じなんですよね、今回のツアーで行くところは。
Yuya:楽しみですね。
Hal:楽しみが増えたね。
──Yuyaさんは、その後にANCIENT MYTHを観たのはいつだったんですか?
Hal:KNIGHTS OF ROUNDとかと一緒にやったときじゃない? キミらが(演出用に)テレビを2台持ち込んでて、ヤバいバンドがいるなぁと思ったんだよね。
Yuya:2019年7月ですね。KNIGHTS OF ROUNDの企画で、他にANCIENT MYTHと俺たちとCROSS VEINで……だから、初めて観てから6年越しですね。でも、そこから対バンとなると、『ILLUSION PARADISE』のレコ発になるのかな。お互いにアルバムの発売日が近かったので、2021年8月1日に一緒にやったんですよね。
George:僕はANCIENT MYTHの音源(『ArcheoNyx』)を聴いたときに思ったんだけど、今、国内のいわゆるシンフォニック/メロスピ系のバンドで、ここまで緻密にアレンジしてくるバンドって、なかなかいないですよね。
Yuya:それは俺も思う。
George:さっきも話してたけど、メタルに限らず、楽曲はアレンジ次第でかなり変わってくる。僕らもYuyaが特に頑張ってアレンジとかもやりますけど、Halさんはアレンジの幅も広いし、すごく高いレベルのことをやってるなって印象が強かったですね。
Hal:「River Of Oblivion」はShibukiくんが作ったものだけどね。
Shibuki:ありがとうございます(笑)。
Michal:GeorgeくんとShibukiくんも何か繋がりがあったり?
George:いや、もともとはないです。ただ、メタル界隈でアニメとかゲームとかが好きな人たちがいて、僕はちょっと足を突っ込んだだけなんですけど……。
Shibuki:そう。その辺にいわゆるアニメオタクとかの人たちがいて、この前、アニソンだけのセッションっていうのをやったんですけど、そこにGeorgeさんもいらっしゃって。だから、音楽の話じゃなくて、アニメの話しかしたことない(笑)。
George:でも、僕も作る曲は全部、基本アニソンなんで(笑)。ILLUSION FORCEの作曲クレジットで僕の名前になってるものは、ほとんどアニメっぽい曲しかないです。コード進行とかメロディとかは、全部その辺から持ってきてますね。でも、逆だと思ってるんですよ。たとえば、ANCIENT MYTHやILLUSION FORCEの曲に対して、ゲーム音楽っぽいとか、よく言われるじゃないですか。でも、むしろ、そっちがメタルっぽいんだからってことなんですよね。
Michal:私も多少曲を書くんですけど、影響を受けてるのが、やっぱりカプコンの曲だったり、『ファイナルファンタジー』シリーズの植松伸夫さんだったりするんですね。たとえば、『ストリートファイター II』のテーマって、“EUROPEの曲をヒントに着想を得た”って公式で堂々と言ってるし、互いにどんどん影響を受け合ってるものだと思うんですよ。植松さんもプログレとかが大好きだった人ですしね。だから、メタルからゲーム、ゲームからメタルみたいな、何かそういう流れになってきてるのかなって。ただ、やっぱ10年前でも、「このメタルバンドから影響を受けている」という言い方はしてても、ゲームミュージックが自分の基礎にあると話すアーティストはレアだったと思うんですよ。その意味では、いい時代になったなと。
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