【インタビュー】堀義人が語る、既成概念をぶち破る<LuckyFes>の革新と胸踊る可能性

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太平の眠りを覚ます黒船か、危機を救うホワイトナイトか? 2022年の初開催以来、音楽フェスの常識をぶち破るイノベーションを仕掛け続ける<LuckyFes>が、2024年7月で3年目を迎える。

グロービスを経営大学院とベンチャーキャピタルのトップ企業へ育て上げた起業家・堀義人が、総合プロデューサーとして驚異的な進撃を続けるのが、<LuckyFes>だ。本年7月13、14、15日に国営ひたち海浜公園で開催される<LuckyFes'24>のスローガンは「アジア最大のテーマパーク型フェス」だ。音楽のクロスオーバーとアジア戦略を中心に、壮大なスケールで描く音楽フェスの未来像とは? 堀氏の言葉に耳を傾けよう。


<LuckyFes>総合プロデューサー 堀義人

──まずは昨年の<LuckyFes 2023>を振り返って、どのように総括しますか?

堀義人:2年目の総括としては、1年目より売上高が倍増し赤字が半減しました。観客動員数も倍増できた一方で満足度も非常に高かったんです。満足度評価を取って5段階評価で4.3でした。僕らはグロービス経営大学院では、毎回5段階評価の満足度を測っているんですが、4.3というのはものすごく高い数字です。フレンズ(観客)の声をアンケートで拾って見ると、「音楽のクロスオーバーが良かった」「環境が良かった」「フードの場所が良かった」「導線が良かった」「フォトスポットが多かった」「アートワークが良かった」、そして「運営も非常にスムーズで、スタッフが優しくて親切で、フレンズに声をかけてくれた」「花火がすごかった」とかポジティブな声が多かったので、非常に満足度が高かったと総括できました。

──どうやって、満足度を高めたのですか?



堀義人:初年度は僕自身が、半年間しか準備期間がなかったし初体験ということもあったので、「何を大事にすべきか?」ということもわかっていなかったですし、組織的にも「誰が何をやっているのか?」「ステージは誰が作っているのか?」とか、「そもそもどういう職務範囲があるのか?」もわからない状態だったんですね。全くのど素人が始めた状況でした。なので、2年目については、まずフレンズのアンケートを基に、すべてのパートナー会社と協力会社…30社以上と面談をしてヒアリングをして、「何に困っているか?」とか「どうすれば良くなるのか?」という提案・要望を聞いて、誰が何をやっているか、どうすれば良くなるのかがある程度わかっている状態で進めることができました。僕自身も1年目は、リーダーとして「なめられていた」ところもあったと思うんですね。職人の方々たちはプロですから「どうせわかんないくせに」という気持ちもあったでしょうけど、2年目はそういうこともなく、リスペクトを持って接してくれましたし、僕自身も1年目の経験と、フレンズの声を聞くことでユーザーが求めているものが何なのかもわかり、みんなと面談して組織的な機能や課題、そしてリーダーの個性もわかってきたので、かなり強く「こうだと思う」ということを言えて、強いリーダーシップを発揮できる環境になったと思います。

──なるほど。



堀義人:それと、<LuckyFes>が他のフェスとはまったく違うのは、過去にやったことのないことばかりやっていることです。つまり、フェス自体の常識をぶち破っていることですね。業界の経験者は、どうしても常識や慣習にとらわれてしまうことが多いんですが、僕は業界の外から来たので、常識を平気で打ち破れる。そもそも常識や慣習も知らないのです。ゼロベースの発想で考えられるわけです。最初は協力会社/パートナー会社の方も戸惑っていたけど、今ではそのユニークさが良かったということを、強く認識してくれることが多くなり、相互リスペクトがあるとても良い形での組織運営ができるようになったと思います。

──それを踏まえての2024年は3年目ですが、新たにどんなテーマを考えていますか?

堀義人:一番大きな挑戦のひとつめが「大草原」にステージを広げたことです。僕らは高速道路の西側、湖があるほうをウエスト、東側をイーストと呼んでいます。去年の3日目は2万人を超えて、ウエストだけではこれ以上入り切れないという状況になりましたので、2024年はイーストの大草原エリアに思いっきり広げていくことにしました。一方、イーストとウエストを両方使うと広すぎるし、フレンズが分散して盛況感を作りにくいのです。それでイーストに中心を移してウエストではやらない…つまり昨年の「GREEN STAGE」と「WATER STAGE」ではやらないことを決めました。その代わり大草原に「RAINBOW STAGE」と「WING STAGE」を設けて、さらにイーストの南に「GARDEN STAGE」を作ることを決めました。ウェストでは、去年使った「HILLS STAGE」だけ残し、合計4ステージとしました。去年の3ステージのふたつは捨てて、大草原を中心に新たに3つ作るということが、ひとつめの大きなチャレンジです。「LuckySpace」は昨年と同じ場所で開催予定です。





──かなり大きな変化ですね。ふたつめは?

堀義人:ふたつめの大きなチャレンジが、アジアからブッキングをするということです。「アジア最大のテーマパーク型フェス」を目指してという明確なビジョンを掲げています。アジア最大ということは、アジアの主要国からブッキングしようということです。今回は、タイのT-POPのInk Waruntorn、台湾のクラウド・ルー(盧廣仲)、ベトナムからChilliesを呼んでMORISAKI WINと一緒にコラボして、モンゴルからWasabiesを呼びました。K-POPは、韓国の放送局MBCのK-POP専門番組「IDOL RADIO」と初のコラボレーションを実施し、Xdinary Heroes、n.SSign、KISS OF LIFE、JY(KARA)の4組のK-POPアイドルが出演します。さらに昨年出演したJ-JUN(元東方神起~JYJ)とNight Tempoも韓国からブッキングしました。総勢10組です。さらに、海外フレンズに対応するために、すべてのテキスト情報を英語化して、海外のプレイガイドであったり旅行代理店とタイアップしています。ダイニングも「アジアンダイニング」というカテゴリーも加えました。

──そして3つめは…。

堀義人:3つめのチャレンジは、アジア最大を目指す意味でフレンズの参加を「倍増する」という大きなチャレンジを掲げています。倍増ということは8万人を狙うことです。そこが集まるのかどうか今一生懸命やっている最中です。現時点では去年の倍のペースでチケットが売れているので、倍は行けるかな?と思っています。あとはスポンサー売り上げ規模も、去年の倍近く行っているので、観客動員もスポンサーの売り上げも、倍に行ったらいいなと思います。そしたら黒字化するかな?と思うので。

──観客層に関しては、2023年はファミリー層や40~50代の観客がすごく増えたと聞いています。今回はどの層をターゲットにしていますか?



堀義人:今回も同じですね。大きく分けて、ひとつめのカテゴリーが茨城県内の方々で、初年度は(全体の)7割、2年目が5割近く来て、今年はおそらく4割来ればいいなと思っています。1年目が2万人で、7割だから1万4千人。2年目が、5割とすると2万1千人。今年は8万人とすると、4割だと3万2千人だから増えるということですね。だから、まず茨城県の近隣の方々に来てほしいのです。ふたつめのカテゴリーが音楽のヘビー層…要は「このアーティストが出るから観に来る」という方々。茨城の方は、フェスそのものに惹かれて来る方が多いんですが、県外の方々は、やっぱりアーティストが目的なんですよ。今回だとNEWSを観るとか、新しい学校のリーダーズが来るからとか、MAN WITH A MISSIONとかですね。そして3つめのカテゴリーがファミリー層。つまり、テーマパークに行く感じですね。2023年のアンケートで面白かったのが、「子供がディズニーより楽しいと言っていた」とのコメントです。ディズニーと比較されているんですね。<LuckyFes>は、たとえば子供ふたりが小学生以下だった場合、4人家族のチケットはディズニーより安い。子供は小学生以下無料ですし、中高生でも半額です。そう考えると、「ディズニーより安くて楽しい」というテーマパークに行く感覚のファミリー層がいるんですね。その3つのカテゴリーで訴求しようと思っています。

──はい。なるほど。

堀義人:そして4つめが海外。海外向けのマーケティングを始めています。台湾やタイ、韓国とかも含めて、海外からどれだけ来るかな?ということを試しています。SNSに広告を出して、データを集めています。来年には本格的に海外から観客を呼ぼうと思っています。今年は、そのためのテストマーケティングだと思っています。

──2024年の大きなスローガンである「テーマパーク」という発想は、従来の音楽フェスにはあまりなかったように思います。



堀義人:テーマパークという言葉を使うと、アーティストの方々が「俺たちはテーマパークじゃない」という意識があって抵抗があったと聞いています。でもうちは素人だから、何でも「ごめんなさい、知らなかった」という感じで思いきりやったんですよ(笑)。観客をフレンズと呼び、お笑い芸人のオズワルドに総合司会をお願いして、アートと食に徹底的に注力してテーマパーク的に楽しい雰囲気をつくりました。また、初年度に個人協賛者(VVIP)の方々を募ったり、スポンサーを集めたりしました。我々がやってる「レバレジーズpresentsレインボーステージ」とかは今までのフェスにはなかったですよね。思いきりスポンサーや個人協賛者を募り、そのぶん参加費(チケット代)を下げて、12,800円のまま抑えて、小学生以下を無料にして中高生を半額にしていくのが<LuckyFes>の考え方です。計算したらスポンサーの収入の分だけ3000円以上は安くなっています。まずは多くの方に来てもらって顧客満足度を上げていくという発想ですね。

──その発想が、他のフェスとは大きく違うところだと思います。

堀義人:あと違うのが、音楽をクロスオーバーしているということ。ある方に言われたんですが、「なんでこんなに混ぜこぜなの?」「こんなアーティストのラインナップのフェス、見たことない」と。ロックフェスならロックばかりだし、アイドルはアイドル、ヒップホップはヒップホップでラインナップはある程度想像できて、だいたいどこのフェスに行ってもほとんど変わらないのです。「そういうふうに混ぜこぜにすると、観客動員が下がる」と指摘されました。確かにそういう面はあるかもしれないですが、うちの場合はむしろ、それを積極的に売り出しちゃおうということに決めました。「音楽のクロスオーバー」と言って家族全員が楽しめるフェスにしました。「こんなアーティストラインナップ見たことがない。面白そう」というのが、むしろ反応として大きいのです。要は、50代超が楽しめるアーティストと、子供が楽しむアーティスト、30代が楽しむアーティストは違うんですね。その全部にアピールできるのが、すごく大きいと思います。うちも家族7人で、毎年全日程に全員参加しているんですが、当日は全員がバラバラなんですよ。「どれ行くの?」「これ行く」って、それぞれ友達同士で遊んでいて、終わった後に「どれが楽しかった?」と聞くのが楽しい。観ている風景が全然違う。音楽がクロスオーバーしていて、子供が楽しめるキッズエリアもあります。初日の7月13日は、石井竜也with杏里、森高千里、ウルフルズ、加藤ミリヤ、氣志團、FLOW、ハルカミライ、yama、水曜日のカンパネラ、すりぃ、私立恵比寿中学。さらに台湾、モンゴル、韓国のJ-JUNや一青窈などです。こんなフェスはなかったと思うんですね。

──そうですね。



堀義人:面白いことに、データを取ると、初参加者は半分なんです。初年度が5割か6割ぐらい、2年目は4割ぐらいでした。ただ昨年初参加のリピーターがいるので、おそらく半分がフェスの初参加なんですよ。それと、久しぶり族がいるんです。昔は行っていたけど、子供ができてから行っていなかったとか、それらを合わせたら6割ぐらいが初参加か久しぶりの参加です。普段からフェスに来ている客層とは全然違っています。<LuckyFes>で初めてアーティストを知ってファンになったというフレンズがすごく多いから、アーティストからすると新しいファン層を獲得するチャンスの場所だと思います。しかも、来ている人たちの表情が違うんですよ。「初めて来たけど、フェスってこんなに楽しいんだ」という新鮮な感動を生み出しています。初フェス層がたくさんいて、<LuckyFes>はそこにアピールすることを一生懸命やってきた。そのために、今までのフェスがやってきたプロモーションとはまったく違うチャンネルを使ってきたんですね。

──というと?



堀義人:フェスって、ほとんどプロモーションしないんです。僕の知っている限り、フェスでプロモーションを思いきりやっているのは、僕らが始めるまではほとんどなかったと思います。具体的には、徹底的なデジタルマーケティングや動画配信広告とかインフルエンサーマーケティング、電車の中刷り、駅の広告、バスの広告、道路脇の看板、ラジオ広告、新聞広告、さらにはアンバサダーを募って、ポスターを貼っていただきチラシを配って頂く。さらには、茨城県全土の家庭にチラシを投函することまでしています。それに加えて、会社や団体へのチケット営業です。今年はさらに海外が加わります。このマーケティングに力を入れています。

──音楽メディアに情報は流れますけれど。

堀義人:僕はけっこう色々とフェスを見て回りましたけど、お金を使ったプロモーションというものはほとんどやっていないと思います。それはみんな実績があるから、名前が知れているところが多いからです。でも<LuckyFes>は新参者ですので、誰にも知られていないのです。積極的なプロモーションを思いきりやる、考え得ることをすべてやると決めています。その結果、初フェス層が集まってきているのです。今までのフェスというのは、アーティストのアナウンスと、自分たちのSNSを通して集まってきた人たちが多かったのですが、まったく違うチャンネルを使っているから、初フェス層や久しぶり層が来てくれているというのが、大きな違いだと思うんですね。

──なるほど。

堀義人:もうひとつ違うのが、動画撮影とSNS配信を原則OKにしている点です。アーティストさんによってはNGの場合がありますが、世界のフェスと同様に昨年より積極的にOKにしていこうとしました。その結果、 <LuckyFes>の動画がSNSに溢れる状態が生まれて、飛躍的に知名度が上がりました。



──堀さんは、初年度に「3年以内に3大フェスに並ぶことを目指す」とおっしゃっていました。2024年は、その3年目になりますね。

堀義人:10万人を超えることが3大フェスに匹敵する規模ですね。<フジロック><サマソニ><ロッキン>と並ぶためには、10万人を超えられるかどうか。今はギリギリというところですかね。初年度が3万人と言って2万人来たから、2年目が6万人と言って、4万2千人来たから、3年目が12万人と言って、8万人来るんじゃないか?と(笑)。これだけ思いきりやって3分の2かと思いながら(笑)。だから、これからですよね。

──2024年から、出演アーティストのオーディションを始めましたね。TuneCore Japanとコラボして、「LuckyFes'24の出演権をかけたオーディション「Battle to LuckyFes」と、LuckyFM茨城放送と連動した「Idol to LuckyFes」です。堀さんは人材育成のプロとして、どんな意図があったのかな?と。

堀義人:まず、フェアネスの観点で考えたのは、僕らがブッキングしている人だけがいいかどうかわからないというところです。他に若くていい人がいるかもしれない。僕はラジオ(Lucky FM茨城放送)を持っているから、メディアと連動して多くの方々にチャンスを与えようというのが「Battle to LuckyFes」「Idol to LuckyFes」です。そして人材育成という観点では、アーティストを発掘することを、これからやっていきたいなと思っています。<LuckyFes>というものが身近にあって、アーティストに触れる機会があれば、アーティストを目指す人が多く生まれてくるだろうと思っています。それが<LuckyFes>をやっている一番大きな目的です。だからこそ初年度のテーマが、「茨城のフェス文化の灯を消すな!」でした。小学生、中学校、高校生も来るフェスなので、「ああいうふうになりたい」と思う人はけっこう多いと思うんですね。そこで学びの機会というか、そういう音楽に触れる機会ができ、将来的には数多くのアーティストが輩出できたらといいなと思っています。

──素晴らしい動機ですね。


オーディション「Battle to LuckyFes」最終選考に勝ち残った8組のファイナリストとフレンズ。


「Battle to LuckyFes」を勝ち抜き、<LuckyFes'24>出演が決定した、左からジョナゴールド、Ashley、ちたへんりー。

堀義人:ちなみに私の四男が芸大に行っていて音楽を一生懸命作っているんですよ。毎回<LuckyFes>に来ていて触発されている面もあると思います。そうやって音楽とかに携わる人や、あるいは総合芸術的な舞台であったりステージを作ったり、全体の演出をやったりする人のすそ野が広がっていったらいいなと思っています。そのためにローカルパートナーの方々に入ってもらって、ローカルパートナー連合というものを作っています。お金を出すならばなるべくローカルに出そうということですね。その結果、ノウハウが溜まり、フェス文化が継承されていくと思っています。

──そこはすごく大事なポイントだと思います。

堀義人:フェスというのはものすごい巨大ビジネスで、1回の予算が1年間やっている茨城ロボッツ(Bリーグ)や、LuckyFMを超えちゃってるのです。1年間30人から50人が一生懸命に売り上げているものを、たった3日間で超えてしまうという巨大なビジネスです。せっかく巨大ビジネスをやっているならば、エンタメ的な要素を大きくして、多くの人が触発される機会になるといいなと思っています。



──お話をうかがっていると、堀さんの故郷・茨城への強い思いが<LuckyFes>の理念の根底にしっかりと根付いていることを感じます。あらためて<LuckyFes>を3年続ける中で学んだことや、新たにできた目標や、当時には考えつかなかった新たな思いみたいなものはありますか。

堀義人:最初は「やるっきゃねーべよ」「茨城のフェス文化の灯を消すな」で始めたものが、「茨城のフェス文化の灯をつなげ!」となり、「アジア最大のテーマパーク型フェス」へと発展しています。音楽業界に初めて触れてみてわかったことは、K-POPが世界に発信して席捲している一方、ジャパンが負けている面があるという点です。そこで、ジャパンの音楽が世界に向けて発信できるプラットフォームになりたい、という気持ちがすごく大きくなりましたね。アメリカのナンバーワン・フェスである<コーチェラ>、ヨーロッパのナンバーワンのフェスである<グラストンベリー>にも行ってきたんですが、行って思ったことは「これは世界次元のプラットフォームだ。日本にアジア最大のフェスがあれば世界次元のフェスとなって、多くのアーティストが来てフレンズも世界から集まり、注目される。その結果として発信力が生まれて、<LuckyFes>に出演したアーティストが世界的に知られていくようになる」と思ったんですね。<コーチェラ>に出たら世界的に知られるのと同じように、発信力が高いアジアのプラットフォームになった<LuckyFes>に出ると世界的に知られるようになるのです。そのためには規模が必要なんですね。世界的次元を決めるのは規模なんです。大きさで決まる。それが一番わかりやすい指標で、<コーチェラ>は何十万人、<グラストンベリー>も何十万人、そして<LuckyFes>も何万人、何十万人と、規模を追いたい気持ちがすごく強いです。規模を大きくすることによって発信力が高まり、日本のアーティストが世界的に活躍する機会が増えていけるからです。

──確かに。そうですね。



堀義人:プラットフォームで一番重要なことは「上に誰が乗っかるか」なんですね。そこに日本のテレビ局が来てくれる、ABEMAが来てくれる、台湾のテレビ局も来てくれる、韓国のラジオ局が来てくれるとか、そういうふうに乗っかってくれると発信力がどんどん高まっていく。それを、先ずはアジアを中心としてやっていこうと思っています。他のフェスはアメリカやイギリスが多いですが、うちはアジアを狙っています。今年は韓国、モンゴル、台湾、タイ、ベトナムの5か国ですが、来年以降は、フィリピン、東南アジア全部とか、オーストラリアも呼びたいなと思っています。それができるとアジア全体から観客(フレンズ)が来るじゃないですか。そうすると将来的に、ひたちなかの那珂湊にクルーズ船が泊まってそこからフレンズが降りてくるようになる。茨城空港にプライベートジェットが降り立って、そこから来るようになる。それが僕のやりたいことです。「茨城のフェス文化の灯を消すな」から始まった小さな灯が、「アジア最大のフェス」までいい意味で炎上していけたら最高ですよね。その結果、日本のアーティストが世界に飛び立っていくプラットフォーム、踏み台みたいなものになれたらいいなと言うのが、一番大きなやりがいかなと思います。

──素晴らしい目標ですね。

堀義人:そうするとね、<コーチェラ>も<グラストンベリー>も街の名前でですから、<LuckyFes>の「イバラッキー」というのが世界的な名前になるんですよ(笑)。「LuckyFes、イバラッキー」と言えば、それが世界的に音楽のメッカになっていく可能性が高い。それをやりたいなと思っているんですよね。

──堀さんは個人的にはどんな音楽を聴かれるんですか?

堀義人:僕は実はEDMが好きなんです。(20代が)バブル時代だったから、あの頃の、ビートが効いた音楽がすごく好きです。だからこそ、LuckyFMでは「ラキモエクラブミュージック」という番組をつくってもらいました。

──EDMのステージは今の<LuckyFes>にはないですよね。



堀義人:まだないので、いつかは作りたいと思っています(笑)。でもさっきの話の「何を学んだか」ということを言うと、音楽の楽しさを学んだも大きいですよね。起業家はどういう人種かと言うと、もうひたすら仕事するんです。仕事ばっかりしている。で、仕事が終わった何してるかというと、時間があればひたすら学び、インプットしている。インプットした後は何してるかというと、身体を鍛えるためにジムに行ったり、泳いだりしています。さらに時間があったら、ひたすら発散しているんです。飲みに行ったりとか、ワーッと発散して、寝て、また仕事する。そのサイクルを延々と続けているのです。だから趣味の時間がなかなか無いのです。起業家の仲間を呼んで「どういう音楽を聴きたい?」と聞いても全然アーティストの名前が出てこないんですよ。音楽を聞いている時間がないから。自分が戦っている領域・ビジネスで勝ちたいから趣味をやっている暇がないんです。仕事のことを24時間考えている、それが僕だったし、子育てはやっていましたけど、それ以外の時間、趣味の時間はほぼゼロなんですね。水泳をやっているのも身体を鍛えるためだし、唯一の趣味でもあるのがスノーボードだけど、それも体力を鍛えるためにやっているようなもので、音楽もほとんど聞き流し程度にして聴いてこなかったんです。

──ええ。

堀義人:でも今回<LuckyFes>をやってみて、「やっぱり音楽って素晴らしいな」と思いました。アーティストをブッキングする前に全部聴くんですが、いろんなジャンルがあってそれをディープ・ラーニングと同じように聴き続ければ、音楽に慣れてくるんですね。自分なりの好き嫌いや良し悪しなどの判断基準が生まれて、「これは好き。嫌い。ちょっとイマイチかな」とか判断できるようになってくるんですね。今はひたすら音楽を聴いていて、それが楽しいなというのはあります。あと楽しいのはレスポンスですね。新しいフレンズに出会えて、彼らが喜んでくれるシーンに触れるとすごく楽しいですし、みんなが「好きなアーティストをブッキングしてくれてありがとう」と言ってくれて、<LuckyFes>の会場を歩き回っていると「堀さん、<LuckyFes>を作ってくれてありがとう」とみんなから言われるんです。それは、やりがいを感じますよね。

──間違いないですね。



堀義人:同時に、アーティストのプロ意識は素晴らしいなと思いました。盛り上げ方がみんなうまいなと思って、ずっと感動し続けていますよ。アーティストのプロ意識と、フェスを運営している方々のプロ意識。裏方も含めてすごいな、みんなプロだなと。全然知らない業界から入ったから余計に感じますよね。100組以上のアーティストが集まって、時間通りにぴったり全部行われて、みんな満足するというのは大変なことですよ。初年度に嵐が来て、雷が鳴った時も運営スタッフは本当にすごかった。スタッフは、始めた時にはほぼ全員知らない人です。今関わってる人で、過去に知っている人はDJ DRAGON(企画プロデューサー)ひとりだけ。アーティストの方もほとんど<LuckyFes>で初めて知りました。新たな人たちとの出会いは本当に楽しいですよね。音楽業界の人からすると、全然僕のことは知られていないし、僕も音楽業界のことは何も知らなかったです。だから新鮮で面白いのです。そういう新たな出会いを本当にありがたく思っています。

──堀さんの登場は、黒船襲来というわけでもないですよね。もっと平和的なものと言いますか。



堀義人:わからないですよ(笑)。でも僕は性格的に敵をなるべく作らない人なんです。ロッキンさんも、サマソニさんも、他のフェスの主催者さんも、ご挨拶に行って「よろしくお願いします、教えてください」と頭を下げましたし。その代わり、思いっきりイノベーティヴなことはしますけどね。でも結果的にそれは、業界にとってプラスになっていると思うんです。新しい人たちを触発して、新しいマーケットを作っているし、新しい規模の経済効果を音楽業界にもたらしているし、それがアジア最大になるのはいいことだし、今までできなかったタブーを破っているから、ファス業界全体もこれからどんどんいろんなイノベーティヴなことをできるでしょうし。フェス業界全体にとっていいことだと思います。

──貴重なお話をありがとうございました。次は<LuckyFes>の会場でお会いしたいと思います。

堀義人:読者の皆様には、ぜひとも<LuckyFes>に足を運んで欲しいと思います。東京駅から常磐線で特急に乗って1時間20分程度。勝田駅からシャトルバスに乗って15分程度で会場に着きます。つくばエクスプレスのつくば駅からも会場行きの直行バスが出ています。首都圏であれば2時間以内に着くと思います。関西は神戸空港、九州は福岡空港から茨城空港まで直行便があり、会場行きのバスが手配されています。車で来られる場合には、駐車場もあり、テントも予約できます。

──いいですね。

堀義人:熱中症対策も万全です。全てのステージは芝生です。また海に近くて浜風が吹いていて、木陰も豊富で快適です。水分を十分に摂れる売店・水道があり、冷房付きの看護ステーションも各所に配置しています。次は、7月13~15日に<LuckyFes>で会いましょう。3日間全部とは言いませんが、1日でもお越し頂けたら幸いです。



取材・文◎宮本英夫
編集◎BARKS編集部



<LuckyFes'24>

会場:国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市馬渡字大沼605-4)
日程:2024年7月13日(土)・14日(日)・15日(月・祝)
「音楽のクロスオーバー」をコンセプトに掲げ、LuckyFMの番組に連動させたPOPSやROCK、HIPHOP、JAZZ、アニソン、アイドル、ボカロやダンスグループ、そして世代を超えて人気があるアーティストなど多種多様なジャンルの音楽をお届けしています。今年は国内はもちろん、韓国のK-POPや台湾・中国・モンゴルや東南アジアのアーティストとの出演交渉を進めており、音楽のクロスオーバーをさらにアジアやグローバルに進めてまいります。
※RAINBOW STAGE、WING STAGE、GARDEN STAGE、HILLS STAGEの4ステージに拡大、LuckySpaceも展開予定。

出演アーティスト一覧/日割り

◼︎DAY1:7月13日
AMEFURASSHI with RAM RIDER/ALI/石井竜也with杏里/ウルフルズ/加藤ミリヤ/氣志團/クラウド・ルー(盧廣仲)/THE PRIMALS/The Wasabies/J-JUN/私立恵比寿中学/水曜日のカンパネラ/SUPER★DRAGON/SCANDAL/すりぃ/7ORDER/Chillies special guest MORISAKI WIN/冨岡愛/Night Tempo with FANCYLABO/ばってん少女隊/ハルカミライ/一青窈<New>/FLOW/森高千里/yama/燐舞曲/(O.A)Ashley 等

◼︎DAY2:7月14日
相川七瀬/Aile The Shota/打首獄門同好会/Xdinary Heroes<New>/XY/岡崎体育/KREVA/ゴールデンボンバー/SILENT SIREN/THE BACK HORN/The BONEZ/Jams Collection/知英<New>/SKRYU/竹原ピストル<New>/超ときめき(ハート)宣伝部/t-Ace/西川貴教/Novelbright/ハラミちゃん/FUNKY MONKEY BΛBY'S<New>/HEY-SMITH/MAN WITH A MISSION/MUCC/Mega Shinnosuke/Roselia/(O.A)ちたへんりー 等

◼︎DAY3:7月15日
新しい学校のリーダーズ/石崎ひゅーい/Ink Waruntorn/edhiii boi/n.SSign<New>/KISS OF LIFE<New>/CANDY TUNE/KOTORI/Conton Candy/Chevon/シャイトープ<New>/Juice=Juice/四星球/杉山清貴&オメガトライブ/Da-iCE/TETORA/Def Tech/トンボコープ/NEWS<New>/Novel Core/FRUITS ZIPPER/bokula./ヤングスキニー/RAISE A SUILEN/ROTTENGRAFFTY/(O.A)ジョナゴールド 等

【ドコモCSpresents Lucky Space】
◼︎DAY1:7月13日
佐咲紗花/根本凪/ひとりスキップカウズ(イマヤス)/マシコタツロウ special guest 加藤里保菜 等
◼︎DAY2:7月14日
磯山純/イバラッパー a.k.a イバラキング/京太朗と晴彦/DJ SEIRA/DJ YU-KI 等
◼︎DAY3:7月15日
Idol to LuckyFes(Palette Parade・さよならステイチューン・アイオケ・メイビーME)/安達勇人/宇宙まお/クリトリック・リス/KEN EBISAWA 等

チケット概要

◾️チケット種別
(1日券) 大人:12,800円、中高生6,400円
(2日通し券) 大人:24,000円、中高生12,000円
(3日通し券) 大人:35,000円、中高生17,500円
※すべて税込価格
※小学生以下は入場無料(チケット保有の保護者1名につき2名まで)。高校生以下の方は未成年者であることから保護者扱いからは除外とさせていただきます。

◾️第四次先行(抽選)
プレイガイド:LuckyFMチケット販売システム「いばチケ」/ローソンチケット/チケットぴあ/イープラス/楽天チケット
受付期間: 5/8(水)12:00~5/29(水)23:59
当落発表日:6/3(月)15:00
LuckyFesチケットページ: https://luckyfes.com/ticket/
LuckyFMチケット販売システム「いばチケ」: https://r.funity.jp/ibatick
ローソンチケットLuckyFes特設ページ: https://l-tike.com/concert/luckyfes/
チケットぴあ: https://t.pia.jp/
イープラスLuckyFes特設ページ: https://eplus.jp/luckyfes/
楽天チケットLuckyFes特設ページ: https://r-t.jp/luckyfes2024

■海外在住者向け(抽選)※国際クレジットカード対応
ローソンチケット: https://l-tike.com/st1/wis1tmxfy3r9e8d91y7d/Tt/Ttg010agreement/index

◾️ふるさと納税 LuckyFes'24チケット
【7/13 1日券・1枚】LuckyFes’24 チケット
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487313
【7/14 1日券・1枚】LuckyFes’24 チケット
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487319
【7/15 1日券・1枚】LuckyFes’24 チケット
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487328
【7/13‐15 3日通し券・1枚】LuckyFes’24 チケット
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487333
【個人協賛(7/13入場分)】LuckyFes’24
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487379
【個人協賛(7/14入場分)】LuckyFes’24
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487386
【個人協賛(7/15入場分)】LuckyFes’24
https://www.satofull.jp/products/detail.php?product_id=1487393

LuckyFesオフィシャルキャラクター「クオッカ」のLINEスタンプ


リンク : https://line.me/S/sticker/30995
配布期間 : 2024年4月30日(火) - 7月22日(月)
スタンプの使用期間 : ダウンロードより90日間

◆堀義人インタビュー(2022年2月/Musicman)
◆堀義人インタビュー(2023年3月/Musicman)
◆<LuckyFes>チケット販売サイト
◆個人協賛者席(VVIP)チケット販売サイト
◆<LuckyFes2024>オフィシャルサイト
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