【インタビュー】中島雄士、「ポップスって上手く裏切りますよね? でも裏切ってないように見せる。そこが僕がすごく好きなポップスの部分」
グソクムズほか、さまざまなバンド・プロジェクトに参加する“ポップス職人”であり、本誌連載『中島雄士の珈琲癖』でもお馴染みの中島雄士が、初のソロCD『JUNCTION POP』を2023年3月22日(水)にリリースする。“中島自身の考える 「POP」を一曲ごとに異なる形でじっくり追求”したという本作。新曲「Awesome Day」「ラブレター」の2曲に加え、既出のシングル5曲は新たにミックス&マスタリングを施した内容で、中島の“今”が詰まった渾身の一作と言えそうだ。
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■盤が手元にあるというのがうれしいし
■ようやくCDが出せたなと感慨深い
──SPOTIFY公式プレイリストカバーに登場しました。反響はいかがですか?
中島雄士(以下、中島)めちゃくちゃいろいろなところに載せていただいて……カバーに採用していただいたこともあってありがたいです。再生数は増えましたけど、まだ載って1〜2日なので、ファンが殺到とかはないですね(笑)。今まで僕のことに注目してくれていた人たちが喜んでいる感じはあります。
──今回CD初リリースということで率直な感想は?
中島 (盤が)手元にあるというのがうれしいし、ようやくCDが出せたなと、感慨深いです。今まで配信でリリースしていたときは、CDになるつもりで作ってなかったんです。作っているときは後々まとめて出すことは考えておらず、シングルだけだと思っていたので。それが紆余曲折あって形になって、ものとして出来上がるのが楽しみで、自分も欲しいです。盤が出来上がったらテスト盤みたいなものはもらえると思うんですけど、普通にお店で予約して買いたい(笑)。
──CDのようなメディア/記録媒体は、思い入れがありますか?
中島 前にスタジオで働いていたことがあって、お店で流す用のCDをめちゃくちゃ買ってて。なぜかサブスクリプションサービスじゃなくてCDで音楽を流すように言われていて。そのときにCDを探しまくってたこともあって、思い入れはありますね。サブスクってサービスが終了すると聴けなくなっちゃうじゃないですか? 僕がすごく好きだったアーティストさんで、全く無名なんですけど、知り合いの知り合いで、「めっちゃいいアーティストいるよ」ってサブスクで教えてもらって、すごく気に入ってたんですけど……プロを目指してるのではなく趣味で音楽をやっている方で、おそらく契約が切れて更新してないから聴けなくなっちゃって……。
──ではそのアーティストを聴く手段がもうない?
中島 ないんですよ。CDも出してないそうで、すごく好きなアーティストだけど二度と聴けないんです。そういうことがあるからCDを持っておくのは大事だし、それが形として残るのは僕自身うれしい。
──有名な動画配信サイトもいつかは無くなる可能性もありますからね。
中島 何もしてないのに、なぜか“垢BAN”されちゃうとか(笑)。
■客観的に見て“中島雄士っぽい”かどうか
■そこに説得力が生まれると思ってる
──中島さんの作品は毎回コンセプチュアルですが、新曲の「Awesome Day」「ラブレター」は、それぞれどういう曲ですか?
中島 今回、新曲2曲を収録しようというのは決まっていて、そのうち一曲が推し曲(リードトラック)になることが決まってたんです。リードトラックを作ろうと思ったときに、直近の3曲──「最低なドラマ」「Moootion!!!」「噂になっちゃった」──は割と自分の中で実験的というかコンセプチュアルに、こういうことをやったらどうなるんだろう、と思って作った作品。で、いろいろ試した結果、一番大事なのは“説得力”なんじゃないかと気づいたわけです。その説得力というのは、“中島雄士が作ってそうな音楽”かどうか、“中島雄士が言いそうな言葉”かどうか。
──客観的に?
中島 客観的に。僕自身が作りたいかどうか、僕自身が作ってるかどうかではなくて、客観的に見て、“中島雄士っぽい”かどうかが、結構大事で、そこに説得力が生まれると思ってるんです。それがないと偽物感というか、説得力がない……うまく言えないんですけど……前の3曲のときにリスナーの反応にそういう感じを受けたんです。
──自分がすごく作りたいものを作ったときに、“これって中島雄士っぽくないな”ということがありうる?
中島 ありえたんですよね。過去3曲は本当に自分がこういうことをやりたいと思って作った曲なのに、ファンの人からもこれはやりすぎじゃないかとか、これって中島雄士的にどうなの?とか、グソクムズのドラマーがこういうの作るの?とかあったりしつつ、一致してなかった部分があったみたいで。僕の中では全然そんなことなくて、そういう出力チャンネルもあるので、やりたいことをやってただけなんですけど。
──ヘビメタみたいなギターが入るとか極端な曲ではなく、いつも通りの自分の好きなポップスを作ってるつもりなのに、ある人が聴くと、“これ、中島雄士じゃないよね”と?
中島 どこか薄皮があるようなリアクションを感じてたんです。それってなんだろうと思ってたんですけど、友達のバンドのライブを見たり、友達の作った曲をいろいろと聴いたりすると、その人が普段の生活で好きな音楽とか、その人がやりたいかどうかというよりは、その人がやってそうかどうか。そこに説得力があって、この人がこういうのを作るからいいなって感じるんだなと。過去の3曲を通して、また周りのミュージシャンとの交流もあって、すごくそれを感じたんです。なので、今回はまず説得力を出すことが一番のテーマ。そこでバキバキのシンセポップというよりは、生演奏チックで、「ビートルズ、一人で演奏してみた」をやってたころの、そういう動画を知っている人、普段僕が聴いている音楽を知っている人、そういう人たちが“中島雄士っぽいな”と思うような音楽性に寄せようと思いました。あとはライブパフォーマンスでループをさせて、ひとりで全部楽器を演奏するというのをやりたかったんですね。なので、コード進行はループしてるのを使おうと。そうして出来上がったのが「Awesome Day」なんです。
──では実験的と言えば実験的な曲?
中島 トライ&エラーしていることは今までと変わってないですね。試してこうだったから、次はこういうのはどうだろうと、その延長でできている曲。
──「Awesome Day」は完璧に“中島雄士っぽい”曲になりましたか?
中島 と、思ってます。僕からすると全部、中島雄士ですけど(笑)。
──「Moootion!!!」みたいなキラキラした曲は、中島雄士っぽくないと捉える人もいるわけですね?
中島 仲の良い人とか、生配信を聴いている人にとっては、かなりマイペースな人間なので、ああいうふうにキラキラしすぎていると、あれ?ってなるかもしれないです。中島、カッコつけてる?みたいな(笑)。本人から聞いたわけではないので、分からないですけど。なんとなくそういうリアクションを感じてるんです。
──ファンの皆さんは“中島雄士像”が割と完璧に出来上がってる?
中島 そういうのがあるんだと思います。多面的な方向性も面白がってくれてるとは思うんですけど、一番ファンの反応がいいのは「ひとりで演奏してみた」。ひとりで全部演奏して「あっ、ミスった!」みたいな映像を観ているのが楽しいらしくて。今回もミュージックビデオでひとりで演奏してますが、それが好きすぎて、“今までズーッと推しててよかった”っていうファンの方もいて(笑)。そういうところをみんな観たいんだろうと思って狙ったところではありますが。
──「ラブレター」に関しては?
中島 もう一曲、新曲を入れられるってことで、今までズーッとシングルを出していたので、シングルではできないテイストの曲を作りたいと言うのがあって。EPで、リード曲にはならないカップリングの曲というか……。
──B面っぽい印象を受けました。
中島 そうですよね。そういうテイストの曲を作るチャンスが来た!と思って(笑)。普段のシングルではこういうものは作れないので、ここはやりたいことをやろうと。
◆インタビュー(2)
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