【インタビュー】文藝天国、オルタナ的藝術徒党が刺激する五感「紅茶に入浴するという新曲コンセプト」
研ぎ澄まされたギターサウンドがほとばしるオルタナティヴロックと、ファンタジックなアートワークの融合。さらには、楽曲と連動した香水を販売するブランド『PARFUM de bungei』の立ち上げや、紅茶専門の喫茶店<喫茶文藝>開催など、“オルタナ的藝術徒党”と称して、独創的な活動を繰り広げているユニットが文藝天国だ。
◆文藝天国 画像 / 動画
3月1日に配信リリースされた7thシングル「ゴールデン・ドロップ」では、“紅茶のお風呂に浸かる”をテーマとしたバスパウダー&バスミルクを独自開発し、その香りのイメージから楽曲を作り上げた。癒しのバスタイムを思わせるチルなムードから、溶け出すミルクのような甘いメロディを経て、情熱的なギターソロが本能を解放する。型にハマらない斬新な構成は香りから生まれたからこそだろう。
その首謀者は、色彩作家・すみあいかと音楽作家・ko shinonomeのふたり。コンセプチュアルな世界観は、高校生で活動を開始したふたりが一つひとつ手探りで作り上げてきたものだ。なぜ文藝天国は、五感を刺激し、日々の生活や価値観そのものに訴えかける表現を目指すのか? 音楽のルーツから活動の信念まで、じっくり語ってもらった。
▲7thシングル「ゴールデン・ドロップ」
▲Tea Bag Bath Powder & Bath Milk『ゴールデン・ドロップ』
◆ ◆ ◆
■やりたいことを初期衝動のまま実行して
■心の奥底で求めていたものに辿り着く
──そもそも、文藝天国はどのように始まったんですか?
すみあいか:高校生のときに「友達の友達に作曲をしている子がいる」と聞いて、“同い年でそんな子がいるなんてすごい”と思って紹介してもらったのがkoくんだったんです。初めて会ったのは高校2年生の時だったんですけど、koくんが「高校生のうちに自分のアルバムを1枚作りたい」という話をしていて。私は高校で写真部だったんですけど、その頃は自分が撮りたいイメージがあったというよりも、カメラを活かして夢に向かっているアーティストさんたちにお力添えできるようになれたらいいなと思い始めていた時期だったので、「私にできることがあったら手伝うよ」と言って、koくんの曲のミュージックビデオを撮ることになったのが始まりです。
ko shinonome:だから、文藝天国をやろう、こういうユニット活動を始めようと思ってスタートしたんじゃなくて、「なにか一つ作品を作ろう」っていうところからでした。半年くらいかけて1stミニアルバム『プールサイドに花束を。』(2019年6月発表)の曲と映像が出来上がって、「リリースするんだったらユニット名があったほうがいいな」ということでつけた名前が文藝天国でした。でも、それが高校3年の6月だったので、受験があるから一旦活動は終わりっていう。
──大学受験ですか?
すみあいか:はい。最初、進路としては「普通に大学行って就職するつもりだから、これからは趣味で音楽をやっていくかな」みたいに言ってたんだよね。
ko shinonome:とりあえず高校が終わるまでに作品を作りたいという気持ちだったので、特に続けるつもりはなかったんですよ。ただ、1stミニアルバムを作っているうちに楽しくなってきて、作品を公開する頃には受験終わったらまたやろう、みたいな気持ちにはなってました。
──高校の卒業制作的な始まりだったんですね。当時から音楽担当と映像担当として、お互いに意見し合ったりしながら作っていたんですか?
すみあいか:最初は、結構私から歌詞の意味を問いただしたりしてましたね。koくんの曲や歌詞は、はっきりとしたストーリーがあるというよりも、心象の変化を抄出して描かれている感じだったので。映像を作るにあたって、たとえば「こういう心情になるんだったら、主人公の恋人の死は予めわかっていたものというよりも、急なものだったんじゃない?」みたいに、私がストーリーを肉付けしていって。確認しながら、映像に繋げて作っていった記憶があります。
ko shinonome:そうですね。今の作り方とは結構違うんですけど、あいかも映像制作の経験がなくて初めてだったので、お互い試行錯誤しながらの制作でした。
──コンセプチュアルなユニットなので、コンセプトありきで始まったのかと思いきや、最初は結構手探りだったんですね。
すみあいか:そうですね。ユニット自体も作品ひとつひとつも、コンセプトをベースに進めるというよりも、やりたいことを初期衝動のまま実行して、それらの中で一貫していることを言語化したら“心の奥底で求めていたもの”に辿り着く、ということが多いです。
──koさんは、もともと音楽活動をされていたんですか?
ko shinonome:オリジナル曲は、中学生の時からボーカロイドを使って作ってました。ボカロの時は特にこだわりもなく、とりあえず曲を作ってみたくらいだったんですけど、高校で軽音部に入ってギターをやるようになって。軽音部では主に洋楽のカバーをしていたので、文藝天国の音楽ではその両方が活きてるかなと思います。
──確かに、ボカロ的な構築美もあれば、生バンドのグルーヴ感もありますよね。好きなボカロPやバンドというと?
ko shinonome:ボカロは広く浅く聴いてましたね。バンドのほうは、NUMBER GIRLとかのロックバンドをずっと聴いてました。マスロックも好きで、高橋國光さんの曲を聴いたり。あと、高校の軽音部でコピーしていたのがハードロックだったんですよ。クイーンとかボン・ジョヴィとかのギターをいろいろコピーしていたので、今もギターにはわりとそういう 要素が入ってると思います。
──音源からもしっかりその血を感じます。で、大学受験が終わって、本格的に活動していこうと?
すみあいか:そうですね。受験が終わって5日後ぐらいに、「デモができた」って送られてきました。
──5日後ですか(笑)。
ko shinonome:受験が終わって、解放されて、そこからもう寝ないでずっと作ってました(笑)。で、また映像作品も作って、夏に次の作品を出すことを目標に活動していたんですけど、コロナ禍に入ってしまったので…。
──そうですよね。
ko shinonome:足止めされてしまった感じでした。オンラインでやりとりしながら作ったりしてたんですけど、初代ボーカルがそのタイミングで脱退することになって。でも、新しいボーカルを探して、今のハルが入ってくれたんです。
──その頃から音楽だけではなく、映像やアートも含めた活動をしていこうというビジョンがあったんですか?
すみあいか:そうですね。バンドとしての文藝天国をボーカルとふたりでやっていくというより、映像と音楽とボーカルの3人で、みたいなビジョンが活動再開当初にはありました。ただ、新しいボーカルのハルは、メンバーとして作品に関わるというより、「自分は本当に歌を歌うだけの立場でいたい」という意向だったので、メンバーはkoくんと私のふたりで、ハルはあくまで文藝天国のボーカリストという編成になったんです。
ko shinonome:その頃から、「音楽と映像以外のほかのこともやってみよう」という話が出てきて。
──香水のブランドを作ったり、カフェイベントを開催したり、幅広いですよね。
すみあいか:最初は、「バンドの雑貨を作ろう」という話から始まったんですよ。なにを作ろうかアイデア出しをしている時、タオルとか缶バッジとかよくあるグッズは嫌だなと思って。どうせ作るんだったら一捻りある面白いものをと考えていたら、サシェを思いついて。当時、アロマキャンドルに興味を持ち始めた頃で、唯一リリースしていた「プールサイドに花束を。」にちなんで、「そのプールサイドにある手向けられた花束の香りを実際に感じられたら、すごくいいんじゃない?」と思って提案したんです。ただ、自分たちで調香からやりたかったのですが、どうやったら作れるかまったくわからず、アロマや香水を作っている工場を片っ端から検索して、メールで相談していきました。
ko shinonome:お願いする工場を見つけるのに結構時間がかかって、その間に2ndアルバム『夢の香りがする朝に。』(2021年1月発表)ができていたんですね。じゃあ、その香りを作ろうということで、花にこだわる必要もなくなったので、サシェではなく香水になって。最初の香りの『夢の香りのする朝に。」ができたんです。
◆インタビュー【2】へ
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