【インタビュー】ジョン・バティステ「制作過程を記録したドキュメンタリー映画のようなもの」
Photo by Louis Browne
ジョン・バティステのアルバム『ウィー・アー』がリリースされたのは2021年3月、それから約半年を経て、そのスペシャル・エディション盤が届けられた。追加されたのは6曲で、新たなゲストが3組。これで全19曲収録のボリュームとなり、曲順も大幅に変わった。今回は、PVも評判で全米のラジオで1位となったヒット曲『アイ・ニード・ユー』からアルバムは始まる。
この時期にスペシャル・エディション盤をリリースする理由は、どこにあるのだろうか。しかもよくありがちな未発表曲をアルバムの最後に追加したような作品ではない。あらたな編成が大きな魅力だ。そこにもきっと彼らしい理由があるはずだ。レギュラーのTV番組を持つ多忙のなか、日本のインタビューに応じてくれた。
──少し時間が経ちましたが、アカデミー賞受賞おめでとうございます。授賞式で感動のスピーチもしましたが、あの時のことは覚えていますか?
ジョン・バティステ:現実なんだけれど、夢みたいな不思議な感覚があった。受賞するとは予想していなかったので、自分の中で沸き起こっている感情を理解するのが難しかった。今でもあの時のことを思い出すけれど、スーパーボールで優勝したような気持ちなのかなと思ったりしている。
──さて、なぜスペシャル・エディション盤をリリースすることになったのか、教えてもらえますか。
ジョン・バティステ:実は、オリジナルには収録しきれないほど多くの曲をレコーディングしていたので、その全てをみなさんに聴いていただいて、『ウィー・アー』の章を閉じるのに最適な時期が今だと感じたので、リリースすることにした。この2作を喩えるならば、オリジナルがディレクターズカットの映画だとすると、スペシャル盤は、制作過程を記録したドキュメンタリー映画のようなものだと思っている。
──前回のインタビューで曲順にこだわりがあると言っていましたよね。それを変更したのはどうしてですか?
ジョン・バティステ:単にアルバムの最後に曲を追加するような編成だけは避けたかった。6曲を追加したことで、リスナーにはまた新たな音楽の旅を感じてほしかったので、曲順もスペシャル盤に合わせて変える必要があると思った。今回もまたストーリーを感じてもらえるはずだよ。
Photo by Louis Browne
──その新曲で迎えたゲストについて教えてください。まずは「アダルトフット」のBJ・ザ・シカゴ・キットから。
ジョン・バティステ:彼とのコラボレーションは、とても楽しかった。本当に素晴らしいアーティストで、ニューオリンズやR&B、ゴスペルに根差しつつ、そこにカリブ海の音楽の要素も入っているようなソウルフルな曲を一緒に作った。この曲での彼の歌い方を僕は、とっても気に入っているんだ。
──フランス人のアビ・ベルナドスとはどうでしたか? 彼と共演した「ウィー・アー」にはモンマルトル・リミックスと付けられているけれど…。
ジョン・バティステ:この曲のフランス語ヴァージョンを作りたいと思い、映画『ソウルフル・ワールド』のフランス盤に参加していたアビをレーベルに紹介してもらったんだ。彼の声が好きなのと、彼とは魂レベルでつながっているような縁を感じたので参加してもらった。
──彼とのレコーディング風景の映像が公開されているけれど、実際にひとつのマイクで彼と歌ったのでしょうか?
ジョン・バティステ:パリでレコーディングしたんだけれど、スケジュールの都合で時間がなかった。その短時間のなかで彼と親密な関係を築きたかったのと、モータウン時代のような昔ながらの方法でレコーディングしたかったので、ひとつのマイクを2人で共有することにした。さらに言えば、ひとつのマイクで歌うことで歌い方も変わってくるんだよね。
──トリー・ケリーとのデュエットでは歌の途中で彼女の笑い声が聴こえてくるけれど、彼女は何に対して笑っているのかしら?
ジョン・バティステ:「シング」という曲には歌というのは心を癒してくれる行為、そういう役割を担っているというメッセージがある。だから、歌から喜び、楽しさを伝えたかった。そのことを説明しなくても、トリーは理解してくれていたので、本当にいい雰囲気のなかでレコーディングすることができた。そのなかで自然と彼女の笑い声があがったので、それを消去することなく、生かすことにしたんだ。
──とても忙しいとは思うけれど、すでに来年のカーネギーホールでのコンサートが発表されていますよね。それはどんな公演になる予定ですか?
ジョン・バティステ:実はカーネギーでのコンサートは、3回予定されているんだ。規模の大きなものから紹介すると、5月7日に自分で書いた交響曲「アメリカン・シンフォニー」をオーケストラ、マーチングバンド、コーラス、ゲストシンガー、さらにダンサーを交えて演奏することになっている。時間を遡ることになるけれど、4月には初めて披露する交響曲を演奏家全員が黒人というオーケストラで演奏することになっている。それはライヴ録音もするので、いつかリリースすることになると思う。そして、2月にはカーネギーの小ホールで、自分のウィー・アー・バンドと共にアルバムの曲を演奏する予定なんだよね。
Photo by Louis Browne
──来年の予定に来日公演は入っている?
ジョン・バティステ:すぐにでも日本に行きたいよ。出来れば、交響曲を引っ提げて、日本人で編成されたオーケストラで演奏したいと思っている。
──コロナが終息して、来日されることを心からお待ちしています。バンドとのパフォーマンスもぜひお願いします。
ジョン・バティステ『ウィー・アー デラックス・エディション』
UCCV-1190 \3,080税込(SHM-CD)
https://JonBatiste.lnk.to/WEARE_DXEPR
1.アイ・ニード・ユー
2.フリーダム
3.クライ
4.ボーイ・フッド
5.シングfeat.トリー・ケリー
6.ウィー・アー
7.アダルトフッド feat.BJ・ザ・シカゴ・キッド
8.ワッチュトーキンバウト
9.メイヴィス
10.フリーダム - バウンス・リミックスfeat.ビッグ・フリーディア
11.テル・ザ・トゥルース
12.アンティル
13.テル・ザ・トゥルース ‐アップタウン・リミックス feat.ビッグ・シェフ・ロメオ・オブ・ザ・ナインス・ウォード・ハンターズ、マイケル・バティステ、マーディ・グラス・インディ
ン・ショウ
14.ムーヴメント11'
15.ワーク・イット・アウト
16.アダルトフッド
17.ショウ・ミー・ザ・ウェイ
18.シング
19.ウィー・アー feat.アビ・ベルナドス
Photo by Louis Browne
Photo by Justin French
◆ジョン・バティステ・レーベルサイト
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