【ライブレポート】SARD UNDERGROUND、東阪ツアー<Cheers!>ファイナルで「『ZARD tribute III』制作中です」

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ZARDのトリビュートバンドとして活躍中のSARD UNDERGROUNDが10月16日、<SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2021[Cheers!]>のファイナルとして、1年振りの東京公演をZepp Tokyoで開催した。このツアーは、初のオリジナル曲中心のニューアルバム『オレンジ色に乾杯』の楽曲を初披露することと、3人体制となって初のツアーということもあり、ファンの期待度はすでにMAX状態。結成から2年が経ち、日々成長中の彼女たちの今の姿を確かめるべく、2階席までぎっしりと人で埋まった。

◆SARD UNDERGROUND 画像

オープニングは、アルバム『オレンジ色に乾杯』から「あの夏の恋は眩しくて」。神野友亜(Vo)を中心に、右に坂本ひろ美(Key)、左に杉岡泉美(B)が並び、ドラムとギターをサポートメンバーに迎え、予想以上に骨太なロックサウンドと、神野友亜の伸びやかな歌声がいきなり耳に飛び込んでくる。3人ともドレッシーな白のシャツ、神野と杉岡はシンプルな黒のパンツ、坂本はデニムという清楚なたたずまいとは裏腹に、出てくる歌と音はしっかりパワフル。2曲目に早くもZARDのカバー「揺れる想い」を披露して一気に盛り上がる、痛快なオープニングだ。


「みなさんこんばんは、SARD UNDERGROUNDです。東京のみなさんお久しぶりです、元気ですか? この状況下の中、開催できたことをすごくうれしく思います。今日は私たちの思いをみなさんにたくさん届けられるように、大切に、そして楽しみながら演奏するので、みなさんも最後まで一緒に楽しんでいってください」──神野友亜

歓びと緊張感が入り混じったような、神野友亜の第一声が初々しい。ここからオリジナル曲「ブラック・コーヒー」、ZARDカバー「息もできない」「心を開いて」「Oh my love」と、スローミドルテンポの曲を連ねて、さらに会場内の熱が上がってゆく。派手にパフォーマンス的な動きはほとんどないが、杉岡泉美の凛とした姿勢の良さとしなやかな指弾き、坂本ひろ美の笑顔と華麗な指使いに自然と目が行く。神野友亜の、歌詞に込めた思いをひとことずつ伝える丁寧な歌い方に、耳が惹きつけられる。


「私たちSARD UNDERGROUNDは、これまで坂井泉水さんの未公開詞による「少しづつ 少しづつ」「これからの君に乾杯」を歌わせていただきました。そして今回新たに、坂井泉水さんの未公開詞による楽曲が完成して、東京のみなさんには初披露になります。坂井泉水さんの歌詞の、相手を思って、強くありたいという女性の気持ち、優しさに、すごく胸が熱くなります」──神野友亜

「夏の恋はいつもドラマティック」は、新しい恋の訪れに心はずむロックチューン。「これからの君に乾杯」は、あきらめない強さを身に着けたいすべての人に贈るエールソング。そして「少しづつ 少しづつ」は、不安に揺れ動く愛の形をせつなく描くスローナンバー。坂井泉水の未公開詞による3曲は、曲調も歌詞のテーマも異なるのに、神野友亜の言う「相手を思って強くありたいという女性の気持ちと優しさ」という共通点がある。そして、その繊細な思いは、続いて披露されたオリジナル曲「Blue tears」にもしっかりとつながっているのが、並べて聴くとよくわかる。


「「Blue tears」は今回初披露で、すごいドキドキして緊張したんですけども、大好きな曲なので、今回披露できてうれしいです。このあとも、アルバムの曲はもちろん、初披露の曲もありますので、最後まで楽しんでいってください」──坂本ひろ美

「ここからどんどん、演奏も迫力を増していくので、みなさん演奏にぜひ注目して聴いてください」──神野友亜

ここでサポートメンバーの岩井勇一郎(G)と車谷啓介(Dr)を紹介したあと、アップテンポで元気のいいオリジナル曲を2曲続けて。「オレンジ色」は、ひたむきな恋愛ソングの形を借りて、日常の中でなかなか前向きになれない時の心を強く励まし、「君には敵わない」は、自分の心を大きく広げてくれる大切な人への思いをまっすぐに歌う。「ワクワクできるような、人生が楽しくなるような、そんな楽曲になっていればいいと思います」という神野の言葉がそのまま歌詞になり、メロディになり、歌になって溢れ出す。SARD UNDERGROUNDバージョンとして初披露のZARDカバー「運命のルーレット廻して」から、再びオリジナル曲「イチゴジャム」へと、アップテンポの明るい曲でぐんぐん飛ばす。「オレンジ色」はオレンジ、「イチゴジャム」は赤、曲に寄り添う照明がきらきら輝いてとても綺麗だ。


「楽しいですね。でも私、まだ緊張してるんですけど」──神野友亜

「深呼吸とかしときます? みなさん、つきあってもらっていいですか。大きく息を吸って、大きく吐いてください」──杉岡泉美

バンド内一の天然キャラ、杉岡泉美ワールドが炸裂するほのぼのMCでなごんだあとは、『ZARD tribute III』絶賛制作中といううれしいお知らせ。坂本ひろ美は「Today is another day」、杉岡泉美は「遠い日のNostalgia」、神野友亜は「この愛に泳ぎ疲れても」が、カバーしたい曲だそう。まだ選曲途中ということで、3人の思いは叶うのか、楽しみに待ちたい。


「私たち、すごく楽しんでいます。みなさん、楽しんでいただけてますでしょうか。この緊張感のドキドキをパワーに変えて、後半戦も頑張っていきたいと思います。みなさん一緒に行きましょう!」──神野友亜

力強い言葉のあと、ライブはいよいよ終盤のラストスパートへ。ZARDカバー「愛は暗闇の中で」と、オリジナル曲「黒い薔薇」は、どちらも激しく重いロックチューン。一気に5歳くらい年上になったような、神野友亜の大人びた迫力ある声がカッコいい。そしてラストは怒涛のZARDカバー三連発、明るく軽やかな「好きなように踊りたいの」、イントロの神野友亜のアカペラ・ボーカルの強さと正確さに圧倒される「マイ フレンド」、そしてZARDのエールソングの代名詞とも言える「負けないで」。様々な年齢層のファンが集う中で、サビのリズムに合わせてフロアのあちこちから力強い拳が掲げられる。ZARDから、SARD UNDERGROUNDへ。思いは確かに、受け継がれている。


そして、アンコール。坂本ひろ美の素晴らしいピアノソロから始まった「少女の頃に戻ったみたいに」は、上空に輝くミラーボールの輝きと共に、せつなくも美しく。ツアーTシャツに着替えた3人は、ライブ本編の緊張感から少し解き放たれたのか、それぞれグッズ紹介をしながら楽し気に笑い合う、その姿はごく普通の音楽好きの女の子だ。それがステージに立ち、楽器を持ち、歌を歌った瞬間に、ほかの誰でもない特別な存在になる。

「今日こうやって、大変な状況の中で、こんなにたくさんの方にお会いできて、たくさんの楽曲を共有できて、みなさんと同じ時間を過ごせて、本当に幸せでした。またこうやってライブができたらいいなと思っています。また、みなさんにお会いできる日を楽しみにしながら、願いながら、最後の曲、聴いてください」──神野友亜


この日の21曲目、本当のラストソングはZARDカバー「Don’t you see!」だった。しんみりとしたさよならではなく、また会うことを信じる明るいお別れ。神野友亜がちょっと照れながら繰り出す、“♪Don’t you see!”という可愛いポーズに、1階のファンも2階のファンも、お揃いのポーズで応える。ステージの上も下も、同じ時間と空間と、そしてZARDという同じ音楽を愛する人たちが作り出す、あたたかい空気に満ち溢れたハッピーな2時間。3年目を迎えたSARD UNDERGROUNDは、これからどんなふうに成長していくのだろう。期待と楽しみしかない、素敵なライブがそこにあった。

取材・文◎宮本英夫
撮影◎山口渚 (GIZA ARTIST)

<SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2021 [Cheers!]>2021年10月16日(土)@東京・Zepp Tokyo セットリスト

01. あの夏の恋は眩しくて (★)
02. 揺れる想い (☆)
03. ブラックコーヒー (★ ※3rdシングル)
04. 息もできない (☆)
05. 心を開いて (☆)
06. Oh my love (☆)
07. 夏の恋はいつもドラマティック (★ ※坂井泉水未公開詞)
08. これからの君に乾杯 (★ ※2ndシングル/坂井泉水未公開詞)
09. 少しづつ 少しづつ (★ ※1stシングル/坂井泉水未公開詞)
10. Blue tears (★)
11. オレンジ色 (★)
12. 君には敵わない (★)
13. 運命のルーレット廻して (☆ ※アルバム未収録)
14. イチゴジャム (★)
15. 愛は暗闇の中で (☆)
16. 黒い薔薇 (★)
17. 好きなように踊りたいの (☆)
18. マイ フレンド (☆)
19. 負けないで (☆)
encore
20. 少女の頃に戻ったみたいに (☆)
21. Don’t you see! (☆)
※(☆)=ZARDカバー曲
※(★)=1stオリジナルAL『オレンジ色に乾杯』収録曲

▼メンバー
神野友亜(Vo)、杉岡泉美(B&Cho)、坂本ひろ美(Key&Cho)
サポートメンバー:岩井勇一郎(G)、車谷啓介(Dr)

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