【インタビュー】BAND-MAID、武道館への感情とこれまでの歴史が詰まったお給仕

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5月10日に予定されていたBAND-MAIDの東京・豊洲PITでの公演が、緊急事態宣言発令に伴い、オンラインお給仕(配信ライブ)へと急遽変更になった。2月11日に実施されるはずだった日本武道館公演に続き、待望の有観客公演実現の機会がまたもや遠のいてしまう結果となったわけだが、それでも5人は歩みを止めてはいない。この5月26日には、その武道館公演の代替案として実施されたオンラインお給仕の模様が収録された映像作品『BAND-MAID ONLINE OKYU-JI (Feb. 11, 2021)』が登場することになるが、その収録内容から確認できるのも、やはりこのバンドがさらなる成長を遂げ、強度を増しているという絶対的事実なのだ。

◆撮りおろし画像(12枚)

そして5月半ばのある日、今回のリリースに伴う貴重な全員集合インタビューの機会が訪れた。そこでの彼女たちとのやりとりの一部始終をお届けするとしよう。取材当日は、この映像作品の商品見本が届き、彼女たちが初めてその現物を手にし、感触を確かめることになった日でもあった。インタビュー開始前のひととき、目の前の5人はそれを眺めたり触ったりしながら口々に「カッコいいねー」「なんか嬉しいね」などと言い合っている。その会話の様子をしばらく観察していたい気もするが、敢えてそこに加わらせてもらうことにしよう。

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■すごく気持ちの入ったお給仕になったなと思いますっぽ

──完成品をこうして手にしてみて……皆さんご満足のようですね!

小鳩ミク(G,Vo):そうですね。ご満足ですっぽ(一同笑)。

KANAMI(G):(完全生産限定盤に付属の)フォトブックがすごく分厚くて、こうやって扇げるくらいで(と言いつつ、実際に扇いでみせる)。あ、涼しい(笑)! ライヴ写真をこんなにたくさん一度に見られることってあんまりないし、自分たちとしても嬉しいですね。しかもなんか、当日のことを思い出せるのがいいですよね。

小鳩ミク:うん。それからこのボックス(=完全生産限定盤)のロゴは元々は白になるはずだったんですっぽ。デザインの監修はSAIKIがしているんですけど、黒地に黒にしたほうがカッコいいんじゃないかという提案があって、変更して。そういう部分についてはこうして完成してみないとわからないので、今こうして現物を見て「黒にして良かった!」って思ってますっぽ。

SAIKI(Vo):ね、いいよね?

MISA(B):うん。この箱、すごくいい。とにかく紙の質がいいし。

小鳩:そういう試行錯誤も含めて楽しいなって思いますっぽ。映像作品にしてもCDにしても、パッケージができあがっていく過程を見てると嬉しくなってきますっぽ。

──こうして自分たちでも欲しくなるようなものを世に出せるというのは素敵なことですよね。そして今、ふと思いました。もしも2月11日に予定通り日本武道館公演が行なわれていたならば、今頃はそれが映像作品化されていたのかもしれないな、と。

小鳩ミク:はい、そうですっぽね。

MISA:そうなんですよね。だからやっぱり映像を見ていると、武道館への気持ちがみんなの表情に出ているというか、すごくそれが綺麗に映像化されていて。武道館でやれなかったことについては悔しい気持ちもあるけど、みんな前を向いてカッコよく演奏しているな、と自分でも思えるんです。映像を観た感想として、みんなの感情が伝わってくるというか。

AKANE(Dr):それはあるよね。あの日は実際、過去最多の曲数だったので、そのセットリストでやること自体がひとつの挑戦でもあったし、そのセトリを組む段階から気合を入れて臨んでいたので。まず、何よりそれをやりきったという達成感のあるお給仕だったなと感じています。最初は「これだけの曲数をこなせるのかな?」とも思っていたんですけど、意外とみんなすんなりこなせていた気がするし。それもみんなの成長の結果だったのかな、と思って。

小鳩ミク:あの時はまず、武道館公演をやるかやらないかっていうのが直前まであって。もちろん、やる方向で考えていたし、そのつもりでみんなずっと練習はしていたので。だからこそ、武道館でやるはずだったことを、武道館ではできなくなったけれど、できるだけそのままの形でやりましょうというのがまずあって。そういった経緯で配信になったお給仕がこうして今回、映像作品になってるわけなんですっぽ。だから「武道館でやるぞ!」っていう気合のまま、公演の形が配信お給仕に切り替わっただけというか。気持ちとしての部分は変わらず、やり方だけが変わったみたいなことではあったので、すごく気持ちの入ったお給仕になったなと思いますっぽ。自分たちにとっては、公演中止とかそういうことが過去にもあまりなかったし、この事態だから仕方ないよねっていう部分もありつつ……。なかなか経験することがない、今までだったら考えられなかったことなので、そんな中で実際やれたっていうことも含めて、すごく感慨深いお給仕になったなと思いますっぽ。もちろん曲数のことも含めて。あと、実際にこのお給仕が終わった後にさらに撮ったもの(完全生産限定盤のDISC-2に収録の映像)もあって、それはこの作品限定で入れましょうとなったのも、結果的には予定外のプラス・アルファになりましたっぽね。


──なるほど。もしも武道館公演が無事に行なわれていて、その模様を収めた映像作品を作ることになっていたとしても、そういった付加価値をプラスするという発想にはならなかったかもしれない、ということですよね?

小鳩ミク:そうですっぽ。だからある意味、武道館公演がなかったからこその要素も入っていると思いますっぽ。それはそれで、今回しかできなかったことだなって思えるので。

──ピンチをチャンスに、ではないけども、それをプラス・アルファの要素として捉えることができるポジティヴさというのは素晴らしいと思いますよ。

小鳩ミク:ありがとうございますっぽ。なので、そういう部分も楽しんでもらえたらなって思いますっぽね。あの時に配信を見た方でも、配信にはなかった要素が加わっているわけなので。だからすでに一度観ている方々にも楽しんでもらえると思ってますっぽ。

──SAIKIさんはこの映像作品について、どんな感触を?

SAIKI:改めて映像を見てみて、2月11日に実際やった時以上に「カロリー高かったな」という感触があって。やっている時にはあんまりそんな感覚はなくて、むしろ「結構あっという間に終わっちゃったな。でも今までに味わったことのない疲労感だな」っていうぐらいの後味だったんですね。実際、楽しかったし。だけど改めて映像チェックしてみると、かなり盛り盛りのセットリストになっていたんだなと気付かされたし、「ホントにこれをやったんだぁ。頑張ったね!」っていう感想でした(笑)。

小鳩ミク:うん。頑張ったよね(笑)。

SAIKI:準備期間とか、始まる前とか、実は結構、不安も抱えてて……。ここまでハードル上げちゃったけど今まで通りにやりきれるんだろうか、みたいな。そういう不安の中で挑んでいたので。ただ、こうして実際に映像としてできあがって、俯瞰で見られるようになった今では、「ちゃんとやれてたんじゃないかな」って思えます(笑)。映像であらためて観てみても、最終的には楽しいお給仕になっていたから。


──当日は不安を抱えつつも楽しめていたことを改めて実感できたし、映像を確認したことで、配信を観ていた人たちがちゃんと楽しめるものになっていたことも確信できたわけですね?

SAIKI:はい。なので、良かったなあと思えました。

KANAMI:私は、BAND-MAIDって、お給仕ありきのバンドだと思っていて。だからこういう映像作品を発売できることって、私たちにとっても嬉しいことなんですけど、こうして実際にはお会いできない状態が続いているので、ご主人様、お嬢様がいちばん喜んでくださるんじゃないかなって思っていて。自分で見る時はプロジェクターに繋いでるんですけど、そうすると最前列で観ているような感覚になるので「きゃー! SAIちゃーん(SAIKI)!」っていう感じで(笑)。

SAIKI:ふふっ。

KANAMI:そういうのがすごく楽しくて。あと、お給仕でやっている時の音って、音源とは全然違うところがあるじゃないですか。たとえばギターだったら「あ、小鳩はこのパートを弾いてるんだね、KANAMIはこっちのパートなんだね」みたいなこともわかりやすいですし、音自体もリミックスされて綺麗に聴こえるようにしているので、すごくスッと入ってくる感じになっていて。なおかつお給仕ならではのライヴ感もある音源になっているし、それを映像と一緒に味わえるわけなので……観ていてすごく楽しかったです。

──当事者だかお客さんだかわからない発言になっていますが。

KANAMI:うふふ。

小鳩ミク:お客さん目線も入っているので。純粋にファンでもあるので。

KANAMI:カメラ目線の瞬間とかがあると「きゃーっ! こっち見たあ」みたいな(笑)。

AKANE:あはは! でも、確かに実際のお給仕ではそこまで細かく見られないくらいのところまで、表情とかもわかるからね。

小鳩ミク:双眼鏡で観ているみたいにね。

AKANE:うん。歌い出しのタイミングとかの表情も貴重だし、「あ、ここはこうやって弾いてるんだ!」みたいなこともわかるし。空気感も伝わってくるよね。

KANAMI:うん。しかもあの武道館用のセットリストならではの緊張感とか、そういうのもなんかすごく映像に出てる感じがして。あの時しかなかった貴重な時間がもう一回味わえるんだっていうのが、個人的にもすごく嬉しいです。


──実際、通常のライヴの場合も、その場では気付かずにいた場面をのちに映像で確認できたりすることがあると思うんですけど、この時の場合は、事態が急転してライヴのあり方自体が大きく変わっていたわけで、普段ステージに立つ時以上に気持ち的に余裕が持ちにくかっただろうと思うんですよ。

KANAMI:そうですね。しかもカメラしか目の前にないので、ちょっと変わっている感じはしました。でもなんか、楽しかったよね?

AKANE:うん。

KANAMI:配信だから、目の前にご主人様、お嬢様がいない状態ではあったんですけど、メンバー自身、やっぱりフラストレーション溜まっているというか。「お給仕したーい!」みたいなのが出てしまうのがあって、それが映像からも伝わってきました。

MISA:あと、あれ以前に何回か無観客のお給仕の機会を重ねていて、徐々に配信ライヴという形態に慣れてきていた頃でもあったから、それも良かったのかな、とは思います。

KANAMI:確かにね。

──もしもあの日が初の配信ライヴだったりしたら……ちょっと大変なことに?

小鳩ミク:それはきっと、まずかったと思いますっぽ(笑)。

AKANE:すでに何回かやっていて、お客さんがその場に居なくても、ちゃんと見てもらえてるんだってことがわかっていたから、そんなに寂しさもなくて。「シーンとしてるな」みたいな感覚も特になくて、むしろ普通にお給仕をしている感覚になれてましたね。

──配信でのお給仕を始めたばかりの頃は、やっぱり少なからず違和感が?

AKANE:あるにはありましたけど、想像していたほどではなかったですね。もちろん有観客のほうがいいんですけど、考えていたよりは見てもらえている感も、楽しさもあったから。

小鳩ミク:カメラをご主人様、お嬢様だと思うことはできないですけど、カメラを抱えてる方をご主人様、お嬢様だと思うしかないですっぽね(笑)。あと、足元のモニター画面にコメントを出してもらうようにお願いしていたのが、いい結果に繋がったころもあって。ちょっとだけ誤差はありますけど、ほぼリアルタイムでご主人様、お嬢様の書き込みが流れていくのを目にすることができたので、ただ自分たちだけが一方的にやっているわけじゃないんだというのを実感できていましたし、だからこその緊張感もありましたし。そうやって、観てもらえていることを視覚的に実感しながらやれていたっていうのはすごく大きかったと思いますっぽ。あれがなかったらもっと不安だったと思いますっぽね。


──ぶっちゃけ、あのスピードで大量のコメントが流れていくと、演奏しながらその内容までは追いきれないですよね?

小鳩ミク:追いきれないですっぽ(笑)。でも、たくさんコメントが届いていることだけは目で確認できるので。

KANAMI:私、さすがに演奏中は見れなかった。でも、MCの時に覗いてみるとコメントが流れているのがわかって「あ、ちゃんと観てる人いるー!」って安心できたりして。

AKANE:会話じゃないけども、 MCの言葉に対してもレスポンスが返ってくるので。

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