【インタビュー】MICOソロプロジェクト・SHE IS SUMMER完結「また“出会ってしまえたら”」
■また“出会ってしまえたら”
──お部屋の中から見ていたその夕陽もそうですが、「moon&kitchen」や「今夜、わたしの家が」など、今回はお部屋からの視点が生かされているものも多いですね。
MICO:きっと聴いてくれる皆さんもここ1年くらいはお家で過ごす時間がグッと増えたと思うんだけど、それは私も変わらないことで。もともとワンルーム・ミュージック的な、ベッドサイド・ミュージック的なものはすごく好みでもあったからやりやすいというか、その好みを今こそ発揮しようって、ある意味そういうことでもあったんですけど(笑)。
──そのワンルーム的なミニマム感と、実際にMICOさんが旅した海外の感覚や、SHE IS SUMMERとして広がったアジア圏のコミュニティーみたいな広がりが上手く融合していることが、近年の曲の魅力でもあったかなと思います。
MICO:そうですね。小さな部屋からいろいろ発信することによって、いろんな場所に行ける。そしてまた戻って来る。やっぱり、部屋は特別な思い入れがありますね。
──そのための「DOOR」でもあるということですね。今作でもそのドアを通っていろんなアーティストの方が参加されていますが、制作はいかがでしたか。
MICO:制作の真っ最中に引越しとかしていたから大変でしたけど、無事に出来てよかったです(笑)。でもいろんな人が参加するっていう、その感じはやっぱりSHE IS SUMMERらしさですよね。今回で最後だからSHE IS SUMMERらしさを全開にしようとか、これまでやってきたものの踏襲をしようみたいな気持ちはあまりなく、『DOOR』というタイトル通り、次に飛び立っていくためのメッセージというか、サウンドもこの先に連れていくような、そういったものにしたいと思っていたんですが、全曲に割と実験的な、そして挑戦的な意志があるサウンドになったかなと思っています。
──確かにそうですね。
MICO:特に予測不能な場所に行き着いたのは、さっきちょっとお話しした「HOLY HOUSE」だったなと思っていて。私なりに、この曲をどういう立ち位置にするのかっていうプロデュースは考えていたんですが、(Mop of Headの)Georgeさんが曲を作ってくれたことによって、より広がったんです。最初はどの曲をリード曲にするかも決めていなかったんですが、この曲ができた時の驚きと言ったら(笑)。それくらいのインパクトがありましたし、逆に私はどんな歌詞を乗せればいいんだろうって、すごく迷った曲でもありましたね。
──でもGeorgeさんとのやりとりは、安心感みたいなものが生まれているような印象ですがいかがですか?
MICO:そうですね。Georgeさんとは前作の『WAVE MOTION』のツアーからのお付き合い、多分1年ちょっとのお付き合いなのにすごくスムーズに、そして共通言語がたくさんある感じがしてますね。私は感覚的な、感情とかそういったものと映像をリンクさせて伝えることが多いんですが、それをきちんと汲み取ってくれるなという感覚はあります。
▲1stミニアルバム『hair salon』(2018年8月)アーティスト写真
──既発の「綺麗にきみをあいしてたい」と「ドーナツ」、そして新曲「sloppy girl」には、ふぇのたすで一緒に活動していたヤマモトショウさんが今回も参加されています。
MICO:これまで作詞の共作はあったんですが、私が歌詞を書いて、ヤマモトさんが作曲をするのは「sloppy girl」が初めてなんですよね。SHE IS SUMMERの最後のアルバムでメロディーを書いてもらう、アレンジをしてもらうっていう、面白いチャレンジができました。
──ちなみに最後に作ったのはどの曲なんですか?
MICO:多分「JELLY FISH 」だったと思います。ちょっと話は戻るんですが、前作の『WAVE MOTION』というアルバムは、すごく揺らぎのアルバムだったと思うんです。タイトルの通り、私自身も危うくて揺らいでいた時期だったと思うんですが、今回はそこから一歩踏み出して広い場所に向かっていくような、サウンド面でもそういうブラッシュアップをしたいという気持ちがあったんですね。ここ数年は自分がテクノっぽいサウンドやEDMっぽいサウンドを聴くようになっていたこともあり、じゃあ自分の声でそれを表現するとどうだろうって。「JELLY FISH」は、そういうチャレンジしてみたいなっていう気持ちが形になった曲ですね。
▲3rd E.P.『MIRACLE FOOD』(2019年5月)アーティスト写真
──アルバムがリリースされると、次はいよいよ最後となる<SHE IS SUMMER One Man Live “Where is my DOOR?”>です。
MICO:最後のライブは、これから表現していきたいと思っていることにより近づいていくためのステップだと思っています。もちろんこれまで応援してくれた方、SHE IS SUMMERのライブがもう見られないのは悲しいって言ってくれる方たちに、最後にきちんと印象に残るような、心に残り続けるようなパフォーマンスを届けたいなって気持ちもありますし、これまでの振り返りとは別に、会場となるO-EASTは今までやってきた中でも一番大きなライブハウスなので、今自分にできる精一杯の表現みたいなものに挑戦したい気持ちでもあるんですよね。
──その上で次へ向かう、と。
MICO:最終的には、自分が幼い頃から感じてきた社会への小さな疑問みたいなものを発信していくという活動になっていくのかなって、ぼんやり思っていて。歌うことも、自分の身体を以て感情を表現するのもすごく好きなので、それがもっと強く、色濃くなっていく瞬間がまたどこかであるのかなとは思いますけどね。そのためにも、いろんな勉強をしていきたいなって今は思っています。
──何も今答えを出せと言われているわけでも、出そうとしているわけでもないわけですからね。これからゆっくり、やってみてっていう。
MICO:そうです、そうです。“答えを出すための一歩”と言いますか。そういう感じがします。
──だから最後のライブも、そのためのステップとして楽しむと。
MICO:はい。でもSHE IS SUMMERの最後の作品は、そのライブというより、(4月にリリースする)ビジュアルアーカイブブックというものを以て完結だと思っています。映画のパンフレットみたいな存在かなとも思っているんですよね。上映後に買って帰る、お土産とか思い出みたいな。
──まさにSHE IS SUMMERの由来でもある「(500)日のサマー」のヒロイン、“サマーちゃん”からのお土産みたいな。
MICO:そうです、そうです。本当に、映画の最後のパンフみたいな気持ちで作りました。このインタビューと合わせて読んでもらうとより伝わるものがあるかなと思うので、ぜひ手に取ってもらいたいなと思っています。
▲2ndアルバム『WAVE MOTION』(2019年11月)アーティスト写真
──わかりました。では最後になりますが、今の気持ちを少し聞かせてもらえますか。
MICO:繰り返しになりますが、小学生の頃から疑問に思っていた問題などに対して向き合いたいという気持ちがすごくあって。アーティストという活動を通してそれについてより考える機会を頂けて、SHE IS SUMMERの活動を通しても、そういうアイデンティティーはちょっとずつにじみ出てきたのかなと思うんですが、さらに何か私は私として発信できるようになりたいなと、今はそんな風に思っています。だからまたどこかで、そういうメッセージを通して出会い直せたら、すごく嬉しいなと思っているんですけど。
──会うべき人には、必ず会えるんですよね。不思議なもので。
MICO:そうなんですよね。約束とかしなくても、会ってしまいますよね(笑)。だから私は私が信じるものをしっかりとやっていくし、その先でまた“出会ってしまえたら”最高だなって思っています。
取材・文◎山田邦子
3rd Album『DOOR』
SCL-008 ¥2,860
[収録曲]
1.Where is my DOOR?
2.HOLY HOUSE
3.綺麗にきみをあいしてたい
4.summer end feat. claquepot
5.JELLY FISH
6.sloppy girl
7.今夜、私の家が
8.moon&kitchen
9.ドーナツ
10.夕暮れのキャンプファイヤー
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