【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.68「ふはっ」
よく「黴の生えた」という言い回しをしますが、自分の使っているPCが正にそれです。いざという時に役に立ってくれません。例えば取材場所を地図で確認しようとして「Googleマップ」に繋がらなかったり、「サウンドハウス」で弦を注文しようとしてもページを開けなかったり、といった具合です。自分はガラケーなのでなすすべがありません。壊れている訳でもないのに使えなくなるのは納得できませんが、PCとはそういうものなのですね。まるで年をとった自分がどんどん世の中から取り残されていく様に似ていて身につまされます。
PCも人に似て徐々に老いの兆候が現れ始めます。自分の場合、まず最初はYouTubeの画面が小さいままで拡大できなくなりました。やがてYahooのページが開けなくなり、Safariが機能しなくなります。その頃になるとホームページの半分はもはや見ることができません。「NAVITIME」の代わりに「ジョルダン」を使い、「Googleマップ」の代わりに「いつもNAVI」を使うなどして何とかしのいでいたのですが、ついに致命的な事態に陥ります。何と「Wikipedia」に拒否されてしまったのです。そんなことになるとは思ってもいませんでした。バークスの原稿を書くにあたって、アルバムのディスコグラフィーとか、メンバーの名前のスペルとか、なんだったらまだ生きているのかなど、間違った情報をなるべく流さないためにとても頼りにしていたのですが、それができなくなるのは大変な痛手です。水木しげる先生の漫画に出てくるメガネの冴えない男が、失意の余りに「ふはっ」と声を漏らしてしまうような心境です。
バンドも長いこと活動していると「ふはっ」と思わず声をあげそうになるアルバムを発表することがあります。QUEENの「Hot Space」とか、TWISTED SISTERの「Love Is For Suckers」とか、BLUE OYSTER CULTの「Club Ninja」とかです。これは全くの主観で、これらが好きな方には大変申し訳ありませんと平謝りしておきます。どうもすみません。でも自分の期待が大きかっただけに、肩透かしをくらった感が大きかったのです。自分の魂のバンド、KISSもその例外ではなく、1980年発表の「Unmasked」は「ふはっ」と声を出てしまいそうなアルバムでした。「都会的なセンスあふれる一枚」とか言われていましたが、ようするにハードロックらしくない内容でした。「都会的」とは苦し紛れですが、なかなか言い得て妙なのでした(他にも「問題作」とか「実験的な」とか「コンセプトアルバム」などと銘打った作品にはろくなものがありません)。それでも熱狂的なKISSのファンだった自分は、大好きなメンバーが作ったアルバムなのだからこれでいいのだと思って繰り返し聴きましたが、何と、ジャケットにも描かれているドラムのPeter Crissはとっくに辞めていて、やけにテクニカルで都会的なドラムは別人が叩いていたのでした(Wikipediaによる)。「ふはっっっ・・・」でも、なかなか良い曲もあるよ。「You're All That I Want」のリフはよくベースで弾くし・・・。
「Wikipediaによる」と書きましたが、実はこの原稿、新しいPCで書いています。中古で買ったら設定が全く分からず、業者の人に全部やってもらいました。どうですか、今までより新しい感じになっていますか?これで滞っていたバークスの原稿もどんどん筆が進むことでしょう。引退したPCは台所で料理のBGM専用として第二の人生を歩んでいます。
今回のマイベストテープ~あけましておめでとう
A2.「け」Cadence And Cascade / KING CRIMSON
A3.「ま」Man On The Silver Mountain / RAINBOW
A4.「し」Sinner / JUDAS PRIEST
A5.「て」Take Me With You / WHITESNAKE
B1.「お」On The Road Again / CANNED HEAT
B2.「め」Makin' Love / KISS
B3.「で」Dead Man Tell No Tales / MOTORHEAD
B4.「と」Toys In The Attic / AEROSMITH
B5.「う」We Rock / DIO
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