【ライブレポート】WANDS、19年8ヶ月ぶりに復活「覚悟を決めてやろうと思います」
19年8ヶ月ぶりの再始動──第5期WANDS始動が公式アナウンスが発表されたのは、11月13日のことだった。1990年代に一世を風靡した伝説的バンドWANDSの復活は、メンバーに全盛期を彩った柴崎浩(G)と木村真也(key)、そして新加入となる上原大史(Vo)。第5期始動発表の段階で往年の大ヒット曲はもとより新曲「真っ赤なLip」のティーザー映像まで揃えて、完全復活を宣言した。
◆WANDS 画像
始動発表から4日後の11月17日、大阪で行われた無料ライブイベント<DFT presents 音都 ONTO vol.6>が、第5期第一弾ライブとなる。YouTubeライブにて生配信されるとあって、日本中からの注目が注がれた同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
会場である堂島リバーフォーラムに入場した途端、目に入ったのが巨大タペストリー(出演者全員の写真が飾られている)であり、その中央にWANDSのアーティスト写真がある。今回のイベントのメインアクトが彼らであることを強烈に示していた。
WANDSが登場したのは、<音都>二日目、11組目の大トリだ。2000名のキャパシティーを誇る会場は超満員、総立ちのオーディエンスが固唾を飲んで見守る中、スクリーンに映されていたWANDSのロゴとイメージビデオが消えて暗転。メンバーが登場した。
眼前には柴崎浩、木村真也、そして中央に上原大史といった第5期WANDSの姿が。サポートのリズム隊は、Sensationより麻井寛史(B)と車谷啓介(Dr)といった盤石の布陣だ。
約20年の歳月を経て鳴らされたオープニングナンバーは……なんとまだリリースされてない新曲「真っ赤なLip」だった。もちろん初披露。会場に集まったオーディエンスの誰一人その全貌を聴いたことのない新曲をオープニングに持ってくるあたり、彼らの大胆さがうかがい知れる。
新曲「真っ赤なLip」は、前半部でクールな装いを携えながらジャジーな雰囲気を漂わせるほか、テクニカルな要素も併せ持っていてWANDSらしからぬイメージを抱かせるかもしれない。しかしサビ部分でJ-POPのきらびやかなキャッチーさを表現、WANDSならではのサウンドが全開となる。この新鮮な衝撃。第5期が新生であり、決して過去を振り返るだけのバンドではないことを印象付けた。そして会場がざわめく中、MCの第一声は柴崎から。
「こんばんは、WANDSです。この新曲「真っ赤なLip」は第1期WANDSのメンバーである大島こうすけが書き下ろしてくれました。このメンバーでは(持ち曲が)1曲しかないので、この後は昔の曲を演奏したいと思います」──柴崎浩
そうして、柴崎がメンバーを紹介した後、その言葉を受けて上原がメンバーとしての決意表明を。
「子供のころから、兄の影響でWANDSが大好きでした。そのWANDSにまさか自分が入り、柴崎さん、木村さんと一緒にバンドをやれることになるとは思っていませんでした。めっちゃびっくりして不安ですが、やると決めたからには、腹をくくって、覚悟を決めてやろうと思います」──上原大史
「すごく緊張している」と言いながら、強く真っ直ぐな言葉を発した上原。聞き入っていた会場から静かに拍手が起こった。「それでは、聞いてください。「もっと強く抱きしめたなら」」と大ヒット曲へ。「もっと強く抱きしめたなら」は聞き覚えのある柴崎のギターソロが秀逸な代表曲であり1992年のミリオンヒットナンバーだ。昨年DAIGOがソロアルバムでカバー、そのプロデュースをかって出たプロデューサー長戸大幸がスタッフの強力な推薦もあって今回のWANDS再結成へと導いたという、意義深い楽曲でもある。
この明るくも美メロ満載な誰もが口づさめるナンバーを上原がどう歌うのか──しかしそんな杞憂も一瞬でかき消される。歌声、声量、そしてビジュアル・パフォーマンスに至るまで、全く違和感なく上原はオリジナルWANDSのイメージに溶け込んでいた。臆することない堂々とした姿勢は、まさに本物のロックボーカリストのオーラを放っていた。
ドラムカウントで始まった3曲目は「時の扉」。柴崎のギターリフによるイントロ、木村の豪快なシンセサウンド──1993年を知る者なら、この曲が、この名前を冠したアルバムが、1993年のNo.1セールスであったことを思い出すはずだ。力強く壮大なナンバーは、さらにシンプルにソリッドにブラッシュアップされ、サポートのリズム陣と共に力強いバンドサウンドを響かせた。懐かしくもビルドアップされて新しい、モダンで煌めくWANDSサウンドが現代に蘇ったのは、必然だったとすら思える。
ラストナンバーの前に、上原がもう一度、自分自身の決意を再確認するように言った。
「この先も新生WANDSとしてやっていきます。何が起ころうとも気にせずどこまでも突き進んで行こうと思っています。よろしくお願い致します。最後の曲です「世界が終るまでは…」──上原大史
同曲もWANDSの名曲中の名曲。1994年放送のTVアニメ『スラムダンク』主題歌として日本中を熱狂させたミリオンヒットナンバーだ。年月を経てもなお色褪せない楽曲は素晴らしく、それをライブで忠実に再現してみせたバンドの底力、新たな地平を切り開いた上原大史。第5期WANDSの始動には年月を超越したソウルが宿っていた。
日本の音楽シーンが“音楽”そのものの力で光り輝いていた1990年代、その栄光が再び戻ってきたかのような感触を感じさせる感動的なライブだった。
取材・文◎斉田才
■シングル「真っ赤なLip」
【通常盤(CD)】GZCD-7006 ¥1000+税
1. 真っ赤なLip
2. 時の扉 〜WANDS 第5期 ver.〜
【タイアップ盤(CD)】GZCD-7005 ¥1000+税
1. 真っ赤なLip
2. もっと強く抱きしめたなら 〜WANDS 第5期 ver.〜
3. 真っ赤なLip -TV size-
・「真っ赤なLip」作詞:上原大史 作曲/編曲:大島こうすけ
・「時の扉 〜WANDS 第5期 ver.〜」作詞:上杉昇 作曲:大島康祐 編曲:柴崎浩
・「もっと強く抱きしめたなら 〜WANDS 第5期 ver.〜」作詞:上杉昇・魚住勉 作曲:多々納好夫 編曲:柴崎浩
■第5期メンバーPROFILE
関西のインディーズバンドをはじめ、様々な音楽プロジェクトに参加。その歌声、パフォーマンスがWANDSのプロデューサー・長戸大幸の目に留まり、WANDS第5期のボーカルに抜擢。
▼柴崎浩──第1期、第2期のギタリストを務め、WANDS黄金期に数々の名曲を量産
相川七瀬、T.M.Revolutionのライブツアーへの参加、西川貴教らと結成したabingdon boys school等で活動し、現在は自身のライブ活動のほか、マルチクリエーター・みやかわくんのライブツアーサポート、楽曲提供も行う作曲家、編曲家、ギタリストとして活躍。
▼木村真也──第2期、第3期のキーボーディスト
曲提供にタッキー&翼「REAL DX」、跡部景吾(加藤和樹)「Higher!」をはじめ、バンド、アイドル、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける作曲家、編曲家、プロデューサーとして活躍。
[楽曲提供]
▼大島こうすけ──第1期のキーボーディストを務め、第2期以降も「時の扉」「恋せよ乙女」等のヒット曲を提供
MAN WITH A MISSIONやMay J.等のサウンドプロデュース、B’zや稲葉浩志、西川貴教等のライブツアーサポート、嵐やAKB48等への楽曲提供も行う、サウンド・プロデューサー/作曲家/編曲家/キーボーディストとして活躍。
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