【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.116「フジロックだけじゃない!ドラムサークルの魅力」
いまや日本の夏の風物詩となった<フジロックフェスティバル>は、日本はもとより世界各国から集う200組を超えるアーティストたちのライブを大小様々なステージで体感できる音楽の祭典であることはご周知の通り。しかしながら、<フジロック>はただライブを観るだけではなく、祭りを彩る要素がそこかしこに散りばめられ、来場者自身が参加して音楽を楽しめるような作りが施されているのが“ただの音楽フェスではない”と語られる由縁だろう。
その中でも絶大な人気を博するのが、参加型のアクティビティ「ドラムサークル」だ。<フジロック>会場の奥深くにあるストーンド・サークルには大きくて美しいテントがあり、中にはジャンベ、コンガ、カホンといった打楽器がズラリと並べられ、シェイカーやタンバリンといった手持ちの楽器も多数用意されている。参加者たちは、見るのも触れるのも初めてといった世界の楽器の中から自分が好きなものをひとつ選ぶ。ここから「ドラムサークル」は静かに始まる。
皆が楽器を手にしたところでファシリテーター(案内役)が登場し、楽器の扱いやドラムサークルについて説明をしながら実演してくれるのだが、待ちきれない参加者は自由気ままにタイコを叩き始める。皆が叩き出すとファシリテーターが合図を出し始め、それに皆が合わせていく。段階的に難しいお題を出されるのだが、それに応えてリズムにのって、場の一体感を肌で感じながらひたすら叩く。そうしてファシリテーターは参加者全員を見事にまとめて盛り立てて、徐々にトランス状態へと突入し、最後は興奮の絶頂へと誘ってくれるのだ!
この、なんとも言えない楽しさ・爽快感・達成感を同時に味わえる「ドラムサークル」が近くの公会堂内で開催されるという情報は、息子が通う園から突如として舞い込んできた。そこには<フジロック>のドラムサークルでも核を担うファシリエーターたちがやってくるということも記されていた。「ドラムサークル」を<フジロック>以外の場所で体験できると知らなかったことに加え、園の保育者が主催して開催するというこのダブルの情報に大変驚いたものの、今夏、ストーンド・サークルへ辿り着けずに機会を逃した悔しさはまだ心に残っていたので、この好機を逃すまいと親子で参加した。
この日も<フジロック>さながらに、子どもと大人が共に輪になって音を出し、そこで生まれるグルーヴや一体感を肌で感じることができた。約1年ぶりに参加した4歳の息子は始めこそ大人しく叩いていたものの、中盤以降はサークルの中心に自ら立ち、雄叫びをあげながらシェイカーを手にして一心不乱に踊っていた。シンプルなことだが、楽しいと感じる何かを親子で一緒に経験することは何にも代えがたく、最良のコミュニケーションだと思うし、親子で体験するのにはうってつけのアクティビティだと改めて感じた。
ファシリエーターの野田憲一さん(GROOVE CONNECT代表)と若林竜丞さん(一般社団法人メディカルリズム協会代表理事)にお話を伺ったところ、今回のように園や団体、企業、高齢者施設等から要請を受けて開催することも多く、年間200本を越えることもあるという。若林さんは山口を拠点にして「育てる、広める」ための活動もされていて、2004年から活動している野田さんは「ファシリテーターをセミナーで育成し、これからやりたいという人をサポートしています。僕は日本でドラムサークルを広げて行きたいのでこうした活動を中心に行っていますが、若さん(若林さん)は世界の人にドラムサークルを広める活動もされています」と語ってくれた。
人の心と体が解放される、それが「ドラムサークル」の魅力。今回の我が家のように実は近所で楽しめる機会もあるので、子どもから大人まで、この解放感をぜひ体感してほしい!
文・写真◎早乙女‘dorami’ゆうこ
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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