【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.106「MONO、覚悟のステートメントを発表〜MONOを日本から追っかける!(14)」

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MONOが、9月7日に公式ステートメントをオフィシャルサイトにて発表した。タイトルは「Blue Blood Moon European Tour 2018 ステートメント」なので、次ツアーについての告知とスケジュール開示と思いきやそれだけではなかった。

要約すると、MONO結成20周年となる来年にアルバムをリリース、前作から引き続き、スティーブ・アルビニをエンジニア・プロデューサーに迎え、今夏、新ドラマーを加えた4人でレコーディングしていたこと、そのアルバム収録楽曲の中から「After You Comes The Flood」を9月にシングル・リリースし、ヨーロッパ・ツアーを行うというのが表題に該当する部分だ。その他には新ドラマー・Dahmとの出会い、新生MONOについての詳細が語られており、昨年はメンバー脱退だけに止まらず、所属していた日本のマネジメント会社とトラブルが生じていたことも言及している。

先月BARKSで公開されたTakaakira 'Taka' Goto氏のインタビュー中、「トラブル続きの2017年だった」と語っていたのだが、世界の音楽シーンを渡り歩くキャリア20年のバンドに一体何が起きたというのだろうか。その内容も気になるところだが、公式ステートメントとして真っ向からアナウンスしてしまうあたり、なんとも実直というか、不器用というか、MONOらしいというか。海外では極々普通な言動であっても日本の音楽ギョーカイ的には完全NGとも言われ兼ねない行為だろう。

しかしMONOは、自らが信じる音、自らが生み出した芸術をここ日本においても世界基準で表現するために変えなければならない日本の音楽業界の持つシステムや矛盾に抗うことを決め、envy、downyらと共にミュージシャン主導の音楽フェス<After Hours>を誕生させたバンドだ。今回、自らが抱えたトラブルを表面化させた行為からもまた、非常に強い覚悟が透けて見える。

一方で、日本にはレーベルやマネジメント会社とのアーティスト契約を雇用契約と捉え、その庇護に依存しているミュージシャンも多く存在するように思う。かつて筆者も自他共に認めるミュージシャンと仕事をした際に、彼等の実質が会社に言われたことをして給料をもらうだけのサラリーマンに成り下がってしまっているのにガッカリした経験がある。もちろん、そうではないミュージシャンもいるけれど、ミュージシャンも同じ人間だから十人十色だ。

ミュージシャンとマネジメントまたはレーベルのパワーバランスが50%50%であることが世界水準だとするならば、筆者が実際に目にしたケースでは前述通り、対等の関係性ではなかった。それはもちろんミュージシャン側だけの問題ではなく、そのシステムにも問題があったことは明白だったので、日本の音楽業界の実態が本物の音楽が生まれるための正しい環境が整っているかは疑問だ。

そもそも自分が取り込まれているシステムに何の疑問も感じていないミュージシャンも多いような気もするが、こうしたアンバランスさが香る土壌では純粋な本物の音楽は生まれて来づらいように思えてしまう。いずれにしても、様々な形態で活動するミュージシャンが共存する日本の音楽シーンにおいて、良質な音楽を生み出す過程で何らかの弊害があるのであればそれは取り除く必要がある。だからこそ、今回、MONOがあげた声の行方にも注目していきたい。


文=早乙女‘dorami’ゆうこ

◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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