【千歌繚乱インタビュー】Soanプロジェクトwith 手鞠、“心をえぐる”をテーマに表現
ex.Moranのメインコンポーザー・リーダーでありドラマーのSoanが行っている「Soanプロジェクト」。先週の「Soanプロジェクトwith 芥」についてのインタビューに引き続き、今回は“静”をテーマにした「Soanプロジェクトwith 手鞠」へインタビューを行った。
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2人のボーカリストを迎えて表現されている「Soanプロジェクト」の世界。9月にリリースされる3rdミニアルバムの話を中心に、彼らが今思っていることを聞いた。
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■音楽が好きなんだ。ヴィジュアル系が好きなんだ
■こんなにも自分の中で音楽をやることが自然なんだ
──Soanプロジェクトを立ち上げたいきさつは、Soanプロジェクトwith 芥のインタビューで伺いましたが、“静”のコンセプトに手鞠さんを選ばれたのはどういったところからですか?
Soan:“静”と“動”というコンセプトができあがって、“静”では自分のピアノと、あとバイオリン、アコースティックギター、ボーカルという編成でいこうと思ったんですね。なかなかない編成なのでヴィジュアルシーンの中ではかなり王道ではない攻め方にはなるなと。そこで一番最初に出てきた人が手鞠君なんですよ。もう手鞠君しかいないなと思ったのでいの一番に声をかけました。手鞠君の存在なくしてこのコンセプトは出来ないと思ったので。
手鞠:すごくうれしかったですね。僕は、ヴィジュアル系黎明期からのいわゆるブレイクアウト世代で、メジャーシーン最盛期がやや落ち着いてインディーズでヴィジュアルの新しい試みが出てきた時代のバンドが直の先輩世代になるわけですが、その中でもSoanさんが在籍していたFatimaはトップ3に入るくらい自分にとって影響が強いバンドだったんですよ。だから僕が在籍していたamber grisも、その後にSoanさんが在籍していたMoranの活動とヴィジュアル系への定義や美学においてシンパシーを感じる部分があったんですけど。amber grisの活動が終わって、自分のこれまで積み重ねてきた音楽活動に一定の満足感というか達成感みたいなものを感じて、人前に立つことから離れ時なのかなって考えた時期にSoanさんからお誘いがあったんです。
手鞠:そこで普通の“バンド”へのお誘いという形だったら“今はもうバンド活動をしていけるモチベーションが無い”とお断りしたと思うんですけど、Soanプロジェクトに対するSoanさんの描くものの在り方がすごく挑戦的であると同時に、普通のバンドの概念とは違うヴィジョンを描いてて楽しそうだなと思ったんです。ここでだったらもしかしたら柔軟に音楽を楽しみながら成長していけるんじゃないかと思ってお受けしたんですよ。
──タイミングもちょうど良かったわけですね。実際、一緒に音楽制作を始めてどうでしたか?
Soan:何も問題ないです。特に話し合うこともなく、“こういうイメージで曲を作りました。あとはもう好きなようにやっちゃってください”っていう。with芥のほうは、芥自身がChantyという母体で活動してるから、Soanプロジェクトで新しい芥を作りたかったんですよ。手鞠君はその真逆で、“今の手鞠君のまんま、自然体で一緒に音遊びをやらない?”っていう言い方で誘ったんですよね。
手鞠:Soanプロジェクトを始めて改めて思いました、“ああ、音楽が好きなんだ。ヴィジュアル系が好きなんだ。こんなにも自分の中で音楽をやることが自然なんだ”って。そしたら意固地になってカッコつけて引退するよりは、成長しながら良い作品が作れるんだったら、音楽を続けたって誰も止めないでしょうと。止める権利があるのは親くらいしかないでしょって(笑)。
──一緒に制作する中で、改めてお互いにどんなアーティストだと感じていますか?
手鞠:Soanさんはすごく細やかで、考え方が行き届いてると同時に、ビジネスとしてプロモーションも含めてバンドを動かせる方ですよね。それができる人って器用だと思うし、今だからこそできる音楽に挑戦したいっていう気持ちも忘れなかったり。メンバーに対する気遣いも忘れず、リスペクトの念がちゃんとある。信頼はもちろん、距離感であったり、Soanプロジェクトは特殊な関係だと思うんですね。後輩がこういう言い方をしたら失礼ですけど、そういう環境がSoanさんの音楽を成長させながら可能性を広げているんじゃないかなと思いますね。
──Soanさんから見て手鞠さんはどんなアーティストですか?
Soan:さっき手鞠君、俺が他のメンバーをリスペクトしてるって言ってくれましたけど、“手鞠君、あんたもそうだよ?”っていう(笑)。持ち上げてくれてるのわかるよ?って。でもそれが全然イヤミを感じないし、こっちも素直に受け止められる。もともとストーリーテラーとして表現をするイメージが強かったし、歌詞を書く人っていうよりかは作家さんに近いイメージだったんですけど。with 手鞠のライブって台本があって、手鞠君の語りに続いて曲に入ることがわりと多くて。ワンマンだろうがイベントだろうが毎回、一切の妥協なく手鞠君が台本を書いてくれるんですね。いい意味で陶酔し切ってる手鞠君が観られて、それで俺も一心不乱にピアノを弾くことができるし。一緒にやっていくについていい関係性が作れてますね。
Soan:まず1stミニアルバムはSoanプロジェクトの核となるもので、“芥”という地球、“手鞠”という地球の誕生ですよね。コアな球体が生まれる瞬間を描いたんですけど。2ndミニアルバムはそれぞれがより深く、輪郭を広げる作業をしたんですね。今回の3rdミニアルバムは、その大きくなった球体を立方体の箱で永久保存するっていう。それが3部作の完結の意味合いになります。
──Soanプロジェクトの本来のコンセプト“血(地)を巡り心臓(ココロ)に還る”において、“動脈と静脈”をテーマにしているとのことですね?
手鞠:毎回タイトルには“静”と“動”っていう言葉を軸に、with 芥とwith 手鞠のそれぞれを現した言葉を選んできたんですけど。さっきSoanさんが言った通り、球体の中で循環するものをイメージした時に、血が体の中を巡り、やがて静脈、動脈を通って心臓に戻るっていう意味を込めた作品にまとめられないかなと思って。Soanプロジェクトが静と動それぞれ自分たちの思う理想の形を描き、最終的に1つに収束すると。と同時に、生命の根本も表現できるし。相反する静と動が1つである答えを導き出せるんじゃないかなって思ったんですね。
──なるほど。Soanさんから上がったきた曲にインスピレーションを受けてテーマや歌詞に反映された部分もありますか?
手鞠:まさにインスピレーションの投げ合いみたいな感じですね。
Soan:ああ、それはすごくある。連鎖反応みたいなね。
手鞠:Soanさんがこうやってきたから、僕はこれで返そうと。その返したものに対してSoanさんが“手鞠君がこうしてきたから次はこう活かしてみよう”みたいな投げ合いですね。
──言葉ではなく、お互いに音だったり歌詞だったりで提示するという。
手鞠:そうですね。感性のキャッチボールじゃないけど、お互いの高め合いを楽しみながらやってるところがあって。その中で自然に生まれてくるものが作品になってると思います。
Soan:そこでの自由度は作品ごとに広がっていってますね。遊び心が増えたというか。
手鞠:ミュージックビデオにもなった「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」は、さっき話したwith手鞠とwith芥という2つのものが個性を発揮しつつ、循環の先に最終的に1つの元に還っていき、その核の部分が“Soanさんなんだ”っていうことを提示するうえで大事なポジションの曲なんですけど。with手鞠とwith芥の調和し、重なり合う部分がこういうふうに描かれていくんだ!楽しいな!”と思いましたね。あと「吐情、舌上、熱帯夜」は予定調和じゃない感じというか、3作品目でもエグく攻めようっていう姿勢の現れですね。
──こういうスパニッシュな曲もやるんだなと思いました。手鞠さんの歌い方も他の曲とは違いますね。
Soan:ソウルフルだったり、わざとガナったり、今までの手鞠節にはない感じですよね。
手鞠:リズムに合ったメロのノリ方をしてるので、それに対しての言葉選びも今までと違うアプローチをしたんですよ。今作が3部作の完結にはなってるけども、まだまだ今後期待させるような広がりを見せている楽曲になってると思います。
Soan:これ本当すごいですよ。天才だなと思います。いないです、このシーンで書ける人間は。俺は曲を書くにあたって、毎回感情だったり情景みたいなものをイメージして提示するんですけど。それに対する手鞠君のレスポンスが“これいつも通りだね”って思うものに出会ったことがない。手鞠節みたいなのはもちろんあるんですけど。歌詞に関しては毎回真新しいものがくるなっていう印象しかないですね。俺が手鞠君の一番好きなところって、たとえば“死について書いてください”って言った時に、逆側からアプローチしたりするんですよ。生の喜びを書くことで死を裏で伝えたり。毎回どういう視点で表現してくるのか読めないところが面白いんですよね。
──さきほどライヴでは台本があるとのお話もありましたが、with 手鞠のライヴのこだわりは何ですか?
Soan:Soanプロジェクトを始めた時から、with芥のほうは“心をつかむ”、with 手鞠のほうは“心をえぐる”をテーマにして表現しているんですよ。できれば息をする暇を与えたくないくらいの空間……言うなれば深海ですよね、そういう世界を表現したくて。悲しい気持ちで来てるんだったら、より悲しい気持ちで帰ってもらおうかなと。
手鞠:このwith芥、with手鞠って、自分たちの思う理想のヴィジュアル系の魅力のその極端な例を観せることによって、“ヴィジュアル系って何が楽しいんだっけ?何が魅力的なんだっけ?”っていうことを再認識してもらいたいなと思ってて。他のロックシーンに劣らないし、むしろ勝ってるんだと。それには今できる極端なことをやらないとわかってもらえないし、今の我々ならできるっていう自信もありますね。
──リスナーだけではなく、シーン自体に一石を投じる気持ちでやってると。
手鞠:そうですね。誰よりも自分らはヴィジュアル系が好きだぞ、誰より自分たちがヴィジュアル系を楽しんでるぞっていう活動、作品もライヴもできてるんじゃないかなって思いますね。
取材・文◎牧野りえ
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Soanプロジェクトwith芥が出演する<千歌繚乱vol.18>、チケットは現在イープラスにて発売中。
<千歌繚乱vol.18>
出演:EVERSSIC/Soanプロジェクトwith芥/ヘルタースケルター/The Benjamin/More
会場:渋谷REX
料金:【先行チケット】3,500円 【一般チケット】3,800円 【当日券】4,000円 ※ドリンク代別途
・チケット受付
【先行抽選受付】
7月13日(金)12:00~8月19日(日)16:00
チケット購入ページURL:[チケットデリ] http://ticket.deli-a.jp/
【一般先着受付】
8月20日(月)12:00~9月25日(火)
[イープラス]
チケット購入ページURL:http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002265279P0030001
Soanプロジェクトwith手鞠 3rd Mini Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。』
全6曲収録/¥2,600(tax out)/S.D.R-338
【Recording Musician】
Produce・Music・Drums・Piano:Soan
Lyric・Vocal:手鞠
Acoustic Guitar:タイゾ(from Kra)
二胡・Chorus:祐弥
Violin・Viola:Sachi(from 黒色すみれ)
【収録曲】
All Music:Soan All Lyric:手鞠
1.『落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。』
2.『春色の音色、記憶回廊』
3.『黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)』
4.『醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る』
5.『吐情、舌上、熱帯夜』
6.『紫陽花がまた咲く頃に』
Soanプロジェクトwith芥 3rd Mini Album『動猛成る狂想、動脈に射つ。』
全7曲収録/¥2,600(tax out) /S.D.R-337
【Recording Musician】
Produce・Music・Drums:Soan
Lyric・Vocal:芥(from Chanty)
Guitar・Voice:K
Guitar・Voice:Shun
Bass:Ivy
【収録曲】
All Music:Soan All Lyric:芥
1.『heart』
2.『濁った瞳』
3.『meteo trive』
4.『朽ち木の行方』
5.『月欺けば傀儡が笑う』
6.『frowery count』
7.『紫陽花がまた咲く頃に』
<Soanプロジェクト 3rd Mini Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。動猛成る狂想、動脈に射つ。』Release Oneman live>
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500/day¥5,000
Soanプロジェクトwith手鞠/Soanプロジェクトwith芥
<Soanプロジェクトwith手鞠 3rd Mini Album『静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。』Release Oneman Tour>
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500 / day¥5,000
2018年12月9日(日)名古屋ell.SIZE(愛知県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000
2018年12月15日(土)博多DRUM Legend(福岡県)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500 / day¥5,000
2018年12月16日(日)博多DRUM Legend(福岡県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000
<Soanプロジェクトwith芥 3rd Mini Album『動猛成る狂想、動脈に射つ。』Release Oneman Tour>
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500/day¥5,000
2018年11月10日(日)札幌Crazy Monkey(北海道)
open 16:30/start 17:00
adv¥4,500/day¥5,000
2018年11月24日(土)大阪北堀江club vijon(大阪府)
open 18:00/start 18:30
adv¥4,500/day¥5,000
2018年11月25日(日)名古屋今池3Star(愛知県)
open 17:00/start 17:30
adv¥4,500 day¥5,000
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