【インタビュー】AXESSORYのリアルとファンタジー
10月10日よりスタートしたBARKS主催イベントツアー<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>に、Sadie 亜季(B)のソロプロジェクト「AXESSORY」が出演する。
“あくまでSadieのアクセサリー”という感覚を持ちながらも、亜季はこのプロジェクトでボーカル&ベースに挑戦した。まもなくAXESSORY始動より2年が経つが、その中で亜季にはどのような変化があったのだろうか。今回のインタビューではそんな心境の変化、現在制作中だというニューE.P、ヴィジュアル系シーンについて思っていることなどを語ってもらった。(亜季のソロプロジェクト時の表記はAKI。以下AKI)
◆ ◆ ◆
──AXESSORYも2年目を迎えますね。
AKI(Vo&B): 11月2日に2周年アニバーサリーライブ<ANTISIGMA VOL.2>を行うことにしました。実は2年前の11月3日にはまだCDも出していなくてライブもやっていなかったんですが、デジタル配信を始めた時期なので、スタートといえばこの日なのかなと思い。かと言って1周年は何もしていないんですけどね(笑)。
──何か意図はあったんですか?
AKI:たかだか1年、2年じゃないですか。でもソロを始めた時、ソロアーティストの先輩に「2年間とりあえずやってみたら自分のライブというものが見えてくるよ」ってアドバイスをもらっていて。何か見えてきたのかなぁと思って、それを確かめる意味でも2周年ライブはやってみようかなと。
──実際、何か見えてきたものはありましたか?
AKI:劇的に何かが変わったという実感はないですが、ライブを見に行った時に自然とボーカルに目がいく時間が増えました。あとは緊張しなくなってきたとか?
──始動ライブの時から緊張しているようには見えませんでしたが(笑)。
AKI:いやいや、最初は緊張しましたよ。でもボーカリストとして自信がついてきた……というと少し違う気がするけど、「真ん中に立つよ」って言い出したのは僕で。その責任を感じられるようになったというか。まだ全然手探りですけど、センターに立つというのはこういうことなんだな、と考えるようになりました。
──“こういうこと”とは?
AKI:伝えるということ。思っていることを伝えるというのは楽曲でほぼできているんですが、それをライブで表現するとこと。そしてそこにいる人たちと心でやり取りをして、オーディエンスのみんなが何を思っているか感じることですね。もちろんベーシストとしてもそうなんだろうけど、声を出す以上、ボーカリストにはベーシスト以上の責任があるなと思っています。
──ライブを重ねることで、そう思うようになっていったのでしょうか。
AKI:それもありますが、ある時ベースボーカルじゃダメだなって思った瞬間があって。ベースが先にきちゃダメで、“ボーカルがベースを弾いてる”じゃないとダメだなと。何の楽器も持たず真ん中に裸で立って戦っているボーカリストの先輩に対して、失礼だと気づいたんです。
──そうやってボーカルとしての在り方に気づくと、Sadieへの向き合い方も変わったのでは?
AKI:そこは変わらないですね。もともとSadieの時、基本的にボーカルがやろうとしていることを制限したくないと思っていたんです。デモ音源がロックだったとしてもボーカルがバラードに変えたいと言ったら変えてきたし、セットリストを入れ替えたいと言ったらそれに従ったし。“何か意図があるんだろうな”と思って信頼して任せてたんです。
──じゃあソロとしてボーカルを経験したけれど、Sadieが復活した時も何も変わらない、と。
AKI:ただ、「じゃあ何をしようと思っているのか」「こうしようと思っているのかな」と踏み込んで考えていなかったな、ということには気付きました。今なら踏み込んでボーカルの意図を考えれば、10個のうち1個くらい当たる気がする。そんな感覚はありますね。だから今Sadieをみんなでやろうとなっても、特に僕自身は変わらないけど、よりメンバーのことを理解できるんじゃないかなと思います。
──ソロプロジェクトでは何から何までひとりでやらなければいけないので、ボーカル以外のメンバーが考えていたことについても、より理解が深まる気がします。
AKI:そうですね。これまでいろんな人に支えられて活動してたけど、その全てを自分でやらなくちゃいけないから、メンバーの有り難さは痛感しています。実際、曲のアレンジをしている時なんかに「あぁ、誰かに投げたい…めんどくせえな……」と思うこともあるんですよ。ソロプロジェクトを始めて何が辛かったって、そうやって「めんどくせえな」って思ってしまう自分自身がいたことかな。情けないというか。
──ストイックですね。
AKI:そんなことないですよ。ただ、音楽に関しては真面目だと思います。僕、色々とうるさいんですよ。これはダメだとかあればダメだとか。だから何をするにも時間がかかってしまう。そこも反省点ですね。
──でも、納得する物を作らなければ意味がないですもんね。で、今まさに11月2日のアニバーサリーライブでリリースされるニューEPを制作中とのことですが。
AKI:そうなんです。納得のいくものを、と突き詰めてしまうと、一生音源は完成しない気もして。ファンの方からライブではずっとやってるけど音源化してない楽曲を早く家で聴きたいという声もありましたし。
──前作『CALL MY NAME』から約2年ぶりの音源がついに。タイトルは決まっていますか?
AKI:「ODD NUMBERS」です。奇数という意味です。
──奇数? なんだか唐突な……。
AKI:実は、最初の構想ではフルアルバムを制作したいなと思っていたんです。僕は基本的に実体験を曲にするんですが、“リアルとファンタジーの境界線”について思うことがあって。
──というと?
AKI:例えば小説を読んでいた時に、僕は「この中にいたら何ができるのかな」って考えちゃうんです。すごく強いヒーローが出てくる物語があったとしたら僕はエキストラだろうし、バンドの物語だったら文章に登場はしていないけれどこの日対バンしたメンバーにいたかもしれないな、とか。これって、小説を読んだことは事実だけど、想像したことはファンタジーですよね。そうやって何かの作品について想像したことを、リアルとファンタジーに分けてアルバムで表現できないかな、と思ったんです。
──あぁ、なるほど。面白い視点ですね。
AKI:1曲目、3曲目、5曲目…と奇数の方をリアル、2曲目、4曲目、6曲目…と偶数の方をファンタジーとして構成しようと考えたんです。本当はそうしてフルアルバムとしてリリースするのがいいなと思ったんですが、ちょっと1作ずつに集中したくなって、まずは「ODD NUMBERS」を出すことにしました。その次に出すEPが、偶数という意味の「EVEN NUMBERS」になります。作品の意味としては、奇数の章と偶数の章、同時並行な2枚になります。もしかしたら最終的にはアルバムにまとめるかもしれませんが。
──「ODD NUMBERS」だけを聴く、「EVEN NUMBERS」と合わせて聴く、アルバムで通して聴く……いろんな楽しみ方ができそうですね。「ODD NUMBERS」収録曲について詳しく教えてください。
AKI:1曲目の「NO WAY OUT」はメロディはなくてインストゥルメンタルの短いSEのような曲です。ライブハウスをイメージしたロックな感じになります。次の曲は激しくて早めの楽曲です。今まで経験してきたお別れについて歌っています。その次がミドルテンポの曲で、バンドのことや生活のこと……変化する世の中においての、広義での人生観を描いています。
──2曲目、3曲目と、ちょっとエモめな曲が続きますね。
AKI:まあ基本的に僕、明るい人間ではないので(笑)。でも4曲目の「QUESTION」は喜怒哀楽でいうと、怒りになるんじゃないかな。そんなに早くないエイトビートで、わかりやすい楽曲です。シャウトも多めで、『CALL MY NAME』の流れを一番汲んでいると思います。そして表題曲というか、ミュージックビデオを撮るならこれかな、というのがラストの「DYING LIGHT」です。
──「DYING LIGHT」、意味深なタイトルですね。
AKI:「消えそうな光」という意味で。“消えそうな光がもう一度輝きたいと思った”という感じの曲。曲調としては明るいんですが。
──『CALL MY NAME』の時も感じたんですが、AKIさんは自分の存在意義を確かめようとしている気がするんですが。
AKI:そうですね。そもそもバンドを始めたのが、僕という人間が誰にも知られることなくただただ生まれて死ぬのが嫌だな、と思ったからなんです。爪痕を残すというか、自分の存在を世の中に残すために僕はバンドを選んだんです。そしてソロをするとなった時に原点回帰した。だから、自分の存在意義を問うような思いが曲にも溢れているのかもしれません。
──その思いが、リアルとファンタジーを描く次の作品にどう反映されるのかも気になります。
AKI:今回はリアルなのかファンタジーなのかわからない、というものに挑戦するので、ちょっとこれまでとは違った見せ方ができたらいいなと思っています。でも根本は一緒で、ベクトルが自分の内に行くのか、外に行くのか、向きが違うだけかなとも思います。
──そもそもそういうインスピレーションは、どこから湧いてくるのでしょうか。
AKI:色々ですね。小説も好きだし映画もアニメも時間があれば見るし。あとは人の話を聞くのも好きです。誰かと会って最近あった出来事を聞いたら、それって僕自身は体験していないけれど、半分くらいは経験したことにもなるのかなって。そうやって色々なものに触れていれば、僕一人だけでは経験できない量の経験が積めて、いろんなインスピレーションの源になるんですよね。
──確かに。
AKI:「EVEN NUMBERS」は最近いいなと感じた作品をベースに5曲書こうと思っているんですが、ここでは秘密にしておきますね。
──歌詞を見て「何の作品かな」と想像するのも楽しそうですね。
AKI:何の作品かわかるように歌詞を書きたいなとは思っています。でもそのまんまだとダメだし、かと行って捻り過ぎるとわからなくなっちゃうし、落としどころをどこにするかが悩ましくてなかなか歌詞が書けません(笑)。
──10月からのBARKS主催ライブツアー<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>では、これらの新曲も聴けそうですか?
AKI:「QUESTION」と「DYING LIGHT」はもうライブでも披露しているので、絶対。本当はこのツアーの3公演それぞれでまだやっていない曲を初披露していきたいなと思っていたんですが……間に合わないかも(汗)。前回3月に<千歌繚乱>に出させていただいた時も「新曲をやりたい」と言いながらも結局できませんでしたからねぇ……(苦笑)。
──そして<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>の後に、冒頭でも触れた2周年アニバーサリーライブ<ANTISIGMA VOL.2>があり、その後に何か考えていることはありますか?
AKI:年末にかけてはサポートのお仕事や、別でやっているロックバンド・BLUEVINEのツアーがあったり。本当は来年の3月25日の誕生日に、ワンマンライブもやりたいんですけど。
──お、ついにワンマンライブ!
AKI:挑戦してみたいなと思っていたんです。そこで「EVEN NUMBERS」ができていたら、短めのワンマンでもできるかな、と考えていたり。まだ未定ですが。あとはサポートをしているバンドで歌詞を書いてみたいなとか、AXESSORYの新ビジュアルも撮影したいな、とか考えています。先日、サポートのお仕事でアメリカでライブをしたんですが、AXESSORYでも海外に行ってみたいなんて野望もあります。
──AKIさんは海外も行ったり、他ジャンルでもライブをしたりと、いろいろな活動をしていますが、そもそものご自身のルーツでもあるヴィジュアル系を、今どう見ていますか?
AKI:ヴィジュアル系シーンについては、ネガティブな意見をたくさん聞くけれど、僕たちがやってきたことの結果が今なんだろうなと。ヴィジュアル系というジャンルで新しいものをどんどんと生み出せなかった演者側が、今のシーンに影響を与えていると思っています。例えば、X JAPANがフェスをするとなるとやっぱり集まるわけで。なのに今シーンが衰退していると言われてしまうのは、僕たちが突き抜けることができなかったからなのかな、と考えることがあります。自分たちで自分たちの首を絞めていった、というか。
──バンドだけの責任ではないですし、そもそも誰か責任の問題でもないんでしょうけど、シーンが衰退していると言われていてもヴィジュアル系って素敵な文化ですよね。
AKI:僕もそう思います。やっぱり普通のバンドがあまりテーマとして扱わない暗い部分にスポットを当ててくれますし。光も闇もある世の中だけど、ヴィジュアル系が提示するような“闇”の部分にも、真実がある気がするんです。闇ばっかり見ててもダメだけど、闇から目を背けていては、その真実にはたどり着けない。そういった意味でも、やっぱりヴィジュアル系という文化は、魅力的だと思いますよ。
──<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>でも、ヴィジュアル系ならではの良さを皆さんに体感してもらえたら嬉しいです。
AKI:バンドマンもファンの人も、もっとヴィジュアル系が好きだということをアウトプットしていって欲しいですね。ヴィジュアル系ブームの頃と比べたら僕らもファンもファッションからして普通になってきたし、もっとヴィジュアル系の格好をして街を練り歩くっていうのもシーンの活性化にはいいのかもしれないですね(笑)。好きなものを好きって言って何が悪い、ですよ。
取材・文◎服部容子(BARKS)
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AXESSORYが出演するBARKS主催イベントツアー<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>、東京公演のチケットは、下記にて発売中。
■チケット一般発売
東京公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011430001-P0030001
<千歌繚乱 1st LIVE TOUR 〜錦秋の候〜>
日時:2019年10月10日(木)開場 16:30 開演 17:00
出演:AXESSORY / 極東ロマンス / K / JILUKA / Develop One's Faculties / breakin’ holiday
※終了
■大阪公演
日時:2019年10月11日(金)開場 16:30 開演 17:00
出演:AXESSORY / 極東ロマンス / K / JILUKA / Develop One's Faculties / breakin’ holiday
※終了
■東京公演
日時:2019年10月22日(火・祝)開場 15:30 開演 16:00
出演:AXESSORY / K / JILUKA / Develop One's Faculties/ defspiral / breakin’ holiday / THE MICRO HEAD 4N'S
会場:高田馬場AREA
料金:【先行チケット】4,200円(整理番号A) 【一般チケット】4,500円(整理番号B)【当日券】4,800円※ドリンク代別途
チケット一般発売
8月10日(土)12:00〜各公演前日まで
東京公演:https://eplus.jp/sf/detail/3011430001-P0030001
主催:BARKS(ジャパンミュージックネットワーク株式会社)
制作:rivabook
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