【ライブレポート】人間椅子、春の“実演販売の旅”終幕
4月27日、人間椅子の<おどろ曼荼羅~人間椅子2018年春のワンマンツアー>が東京・渋谷のTSUTAYA O-EASTにて最終夜を迎えた。
◆ライブ画像(全20枚)
4月1日の高松Olive Hall公演から約1カ月にわたって全国各地を染め上げてきたこのツアーは、4月4日にリリースされた彼ら初のミュージックビデオ集『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』に伴うもの。人間椅子の全ヒストリーから名曲・レア曲の数々が披露される趣向とあって、場内は開演前から賑やかなムードである。(なお、本公演の模様はLINE LIVEにて生配信され、アーカイブも配信中。)
午後7時に客電が落ち、スリルに満ちたSEが鳴ると、待ちかねていた観客が大きな歓声と拍手で和嶋慎治(Vo&G)、鈴木研一(Vo&B)、ナカジマノブ(Vo&Dr)の3人の名手を迎える。1曲目の「超自然現象」の妖しい音が放たれた瞬間から、フロアに強力な磁場が生まれる。続く「地獄の球宴」が景気よく炸裂すると、もうO-EASTの興奮は止められない。和嶋が叫び、鈴木が吠え、ナカジマが撃つ。ハードロックの機微を心得た人間椅子のライブは、何度観ても気持ちが良い。その演奏の重厚さと歌心の妙に触れるたびに、新鮮な気持ちに浸ることができる。
「今日はお仕事の後、こんなにもたくさんの方々に駆けつけていただき、どうもありがとうございます。北は北海道から南は沖縄まで、DVD『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』を携えての“実演販売”の旅です!」と鈴木が語ると、オーディエンスは大爆笑。このなんとも言えない和んだMCタイムは、本日も絶好調だ。
「幽霊列車」「悲しき図書館員」といった物悲しさと詩情が一体となった楽曲が続く序盤の展開はお見事。ミステリアスな「怪人二十面相」の情緒にも面白みがあった。極めつけは、とことん幻想的な「夜叉ヶ池」だ。和嶋がツアー先の高松で衝動買いしたというギブソンのダブルネック・ギターの音色も至福である。『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』にも収録された趣きのある映像を思い起こすとともに、人間椅子というバンドの表現力に唸った場面だった。
濃密な彼らのロック・ショウは、瞬く間に中盤戦に突入。BSジャパンで放送されたドラマ『三島由紀夫『命売ります』』の主題歌としても話題となった「命売ります」では、サビの「バラババンバ バラババンバ」の大合唱が発生。おどろおどろしさのなかに宿るこのキャッチーさもまた、人間椅子の肝のひとつだと確信した。不気味な曲調とユニークなフックが癖になる「東洋の魔女」、へヴィかつ悠然としたリフで迫力を見せつける「恐怖の大王」と「洗礼」も強烈な印象を残した。
本編後半のハイライトは、レアな大曲「水没都市」。この不思議な浮遊感のある楽曲が披露されると、オーディエンスは全神経を傾けるようにして演奏に集中していた。特に、終盤の和嶋と鈴木のハーモニーは絶品だった。彼岸と此岸のあわいを行き来するような、この夜の名シーンであった。
ナカジマがドラムを叩きながらメイン・ヴォーカルをとる恒例の時間がやって来た。今宵は「悪夢の添乗員」でパワフルに観衆を扇動。この曲を皮切りに、場内の温度はさらに上昇する。「地獄のヘビーライダー」「迷信」といった疾走曲で畳みかけ、最後はお馴染み「針の山」で爆発的に本編の幕を閉じた。
まだまだこの場を去りがたい観客の声に応えて、人間椅子の3人が再度ステージに姿を現す。アンコールの1発目は「浪漫派宣言」だ。彼らの歴史の重みを凝縮したこの曲は、へヴィな曲調に、飄々としたスパイスをまぶした名曲である。「ロマンティックに行こうぜ」の和嶋の歌い回しがなんとも良き余韻を生んでいる。続いて「ダイナマイト」で鈴木が周囲のすべてを爆破するかのようなド迫力の歌声を聴かせると、オーディエンスは底なしの快楽に浸るのであった。
ダブルアンコールに応えて、この夜の最後の最後に披露されたのは「どっとはらい」。物語性・猟奇性・普遍性のどこをとっても人間椅子そのものと言えるこの名曲が着地点に至ると、フロアからの歓声と拍手はいつまでも鳴りやむことがなかった。
終わってみれば、『おどろ曼荼羅~ミュージックビデオ集~』からセレクトされた楽曲を中心に、人間椅子の歴史を網羅するセットリスト。至高の轟音に酔い痴れながら、3人の絶妙の呼吸を味わうことのできる、極めて満足度の高いライブだった。これだけの名曲群を聴いても、まだまだリクエストしたい曲が無数にあるのが彼らの素晴らしさ。人間椅子にしか作りえない楽曲の数々を浴び、オーディエンスは皆、元気になって帰路に就いたことだろう。舞台上で演奏しているメンバーたちが、観客に負けないぐらい楽しんでいるのがよくわかるのが人間椅子のライブだ。
そんな彼らは、4月29日に、宮城・みちのく公園北地区 エコキャンプみちのくにて開催の<ARABAKI ROCK FEST.18>に出演。5月14日には、東京・TSUTAYA O-WESTにて、NoGoDを迎えての2マンイベント<人間椅子提供 地獄の感謝祭~第三弾>を開催する。また、夏の終わりごろには、ワンマンツアーを予定していることがこの夜、発表されている。稀有な地獄のロックバンドが、来年のデビュー30周年に向けて、我々をどう楽しませてくれるのか注目し続けたい。
TEXT BY 志村つくね
PHOTO BY 堀田芳香
◆ライブ画像(1)へ
セットリスト
<おどろ曼荼羅~人間椅子2018年春のワンマンツアー>
1. 超自然現象
2. 地獄の球宴
3. 幽霊列車
4. 悲しき図書館員
5. 怪人二十面相
6. 夜叉ヶ池
7. 命売ります
8. 東洋の魔女
9. 恐怖の大王
10. 洗礼
11. 水没都市
12. 悪夢の添乗員
13. 地獄のヘビーライダー
14. 迷信
15. 針の山
EN.1-1. 浪漫派宣言
EN.1-2. ダイナマイト
EN.2-1. どっとはらい
アーカイブ配信情報
人間椅子 ツアーファイナル公演
https://live.line.me/channels/2778679/broadcast/8167972
この記事の関連情報
【ライブレポート】人間椅子、ツアー<バンド生活三十五年 怪奇と幻想>完遂「もう二度とやらない曲も」
人間椅子、2本立てライブ映像作品『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』を11月リリース
都市型ロック(HR/MR)フェス<CRASH CRISIS>第二弾出演者を発表
【ライブレポート】人間椅子、バンド生活三十五年<猟奇第三楽章>完遂「いつの日か武道館でやりたい」
SEX MACHINEGUNS、25周年企画ライブシリーズで人間椅子と対バン
【ライブレポート】人間椅子、ツアー<色即是空>ファイナルに圧倒的な人間力「全国還暦ツアーをやろうかと」
人間椅子、アルバム『色即是空』収録曲「さらば世界」MVは全編グリーンバック撮影のCG映像
人間椅子、2年ぶりアルバム『色即是空』9月リリース+ジャケットイラストはみうらじゅん
【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.79「KISS」