【対談】矢内景子 × 野島一成が語る、『ラファンドール国物語』初ALとプロジェクトの革新性

ポスト


ワーナーミュージック・ジャパンによる音楽プロジェクト『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』の初のCDアルバム『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語 ~ある少女の光と影の追憶~』が12月6日(水)にリリースされた。“音楽×RPG世界観 -音で紡ぐファンタジー作品-”をコンセプトに置く新しいかたちのエンターテイメント作品である同プロジェクトは、ストーリー原作・作詞・作曲を矢内景子が、シナリオ・脚本を『ファイナルファンタジー』シリーズや『キングダムハーツ』シリーズなども手掛ける野島一成が担っており、2016年の東京ゲームショウにてプロジェクトが発表されて以降、毎週オフィシャルサイト上でストーリーと音楽が連載されるという独自の表現方法をはじめ、ゲーム業界、音楽業界問わず注目を集めている。AbemaTV FRESH!で行われたデビューライブでは10万人視聴を超えて視聴者数ランキング1位を獲得し、また、2017年7月〜9月には『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語 〜FANTASY PICTURE STORY〜』としてTOKYO MX、SUN TVにてTV番組も放送された。

◆矢内景子氏×野島一成氏 対談画像

豪華声優陣が脇を固めており、主人公リエン役を花江夏樹、その妹トレスタ役を日岡なつみ、謎の少女シェルシュ役を福島亜美、アイソル役を梅原裕一郎、ブライ役を浪川大輔、狂気の男ネブラエス役を鈴木達央、ラウラ役を本多陽子が担当し、エマ役には人気の歌い手・ろんがゲスト参加。リエン、トレスタの母親ベネッタ役を夏木マリが務めている。

今回、矢内景子氏と野島一成氏による対談の機会を得ることができたBARKSではアルバムをはじめとした音楽的側面について色濃く紐解きながら、このプロジェクト全体の革新性、そして物語に宿る思想について、幅広く話を訊いた。


  ◆  ◆  ◆

■ 最初は「この人たちは何をやりたいのかな?」と思いましたね(笑)/野島

── まずはじめに、この『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』(以下、ラファンドール)という音楽プロジェクトの概要について教えていただけますか?

矢内景子:私がいちばんやりたい音楽というもので、大好きなファンタジーの世界観を届けられたら面白いんじゃないかな、というのがプロジェクトの始まりなんです。その中で、まず私が原作を書き、その道のプロフェッショナルであり大好きな野島さんにシナリオを書き上げていただく。それを受けて、私が音楽を作っていく。そうやって生まれた曲がまとまったのが今回のアルバムですね。

── オフィシャルサイトで物語は“記憶の断片”として毎週更新され、今回収録されたようなヴォーカル入りの曲は“記憶の暴走”として様々な時期に発表されてきました。ラファンドールにおいて、ヴォーカル入りの曲はどういった存在になりますか?

矢内:ストーリー全体を表現する挿入歌といった類のものではなくて、ある場面におけるキャラクターの感情部分を表現しています。だから楽曲によって「あのキャラクターはこういう気持ちだったのか!」っていうのがさらに理解できると思うし、そこを私も伝えたいんです。もちろん、ラファンドールを知らない人が聴いても自分自身に重ねられることも意識しました。

▲矢内景子

── ラファンドールはこれまでにはない取り組みだと思いますが、野島さんは最初にこのプロジェクトについて、どう感じられましたか?

野島一成:正直に言いますと、最初は「この人たちは何をやりたいのかな?」と思いましたね(笑)。

矢内:そうですよね(笑)。

野島:これまでやってきたゲームを作るプロセスとも違うし、そもそも音楽とどう結びつくのか、最終的にどうなるのかピンときてないところも最初はあって。

▲野島一成

矢内:実は、ラファンドールを正式に公開する前、クローズドで関係者向けにストーリーライヴをやっているんです。ラファンドールの曲って、台詞と曲が一体になっているじゃないですか。そのライヴを観ていただいて、腑に落ちていただいたのかなと。

野島:いわゆる通常のゲーム音楽との違いを僕がちゃんと理解してなかった部分が、そのライヴを観せていただいたことで「なるほどね」となりました。最初にいただいた書類に「こんな曲がここで入る」みたいなイメージが添えてあったけど、あの意味がこうなのかって。

── 矢内さんが書かれた原案はかなり作り込んであったんでしょうか?

野島:しっかりしてるところもあれば、何もないところもありましたね(笑)。

矢内:はい、そうでした(笑)。

野島:でも思い入れは凄く感じましたよ。

矢内:……最初、やはり他ならぬ野島さんに原案を渡すのは嫌でした(笑)。もちろん、一緒に仕事ができるかもというワクワクはありましたけど、そういった嬉しさ反面──。

野島:でも、そうやって思ってくれる人に自分が書いたシナリオを見せるのも凄くプレッシャーがあるものですよ。「たいしたことないな」って思われたらねぇ(笑)。

矢内:いやいや(笑)。音楽とシナリオがひとつになったり、ライヴをしたときに「凄いな」って毎回感じるんです。野島さんが書いてくださったキャラクターたちのやり取りからインスピレーションを受けて書いた曲もたくさんありますし。

── シナリオを書かれる際、それが音楽のニュアンスや抑揚に反映されるわけですよね。そのあたりは意識されましたか?

野島:最初は意識するんですけど、いざ書くときはどうしても自分のシナリオを優先しますね。それを見て、「良くなければ何か言ってくるだろう」と。実際にイメージと異なると思えば、わりと強い意見をいただきますから、大丈夫。矢内さんはやりたいことが明確じゃないですか。そこになるべく到達できればいいなって。

矢内:でも、メールは躊躇しながら書いてますよ(笑)。

野島:書くときの気持ちはともかく、ね(笑)。でも、「何を言ってるんだろう?」っていうのは1回もなかったです。

矢内:あ〜、良かったです!

── 受け取ったシナリオによって曲の内容を変える場合もあるんですか?

矢内:ありますね。シナリオをいただいて、「そうであれば、歌詞のこの言葉を変えてみよう」とか。

── 音楽とシナリオのキャッチボールによって、それぞれが影響していくという。

矢内:不思議ですよね。

野島:矢内さんの曲はわりと歌詞が強いじゃないですか。想いが歌詞にはっきりと入ってるので、シナリオはもうちょっとフワッとしてたほうがいいのかなとか考えることもありますね。

矢内:私、野島さんに歌詞を読まれるのも結構怖いんですよね……。

野島:そりゃ、読むでしょ(笑)。

矢内:野島さんも音楽が凄くお好きで詳しいから、ドキドキするところがあるんです(笑)。

野島:まぁでも、やり取りはホントによくさせてもらってますね。それは信頼し合ってないとかじゃなくて、すればするほど、良くなるのはわかってるから。

▲矢内景子

── このプロジェクトも最初から完成していたわけじゃなく、進行していくうちに成熟していったんでしょうね。

矢内:作っていくにあたって、何ならお客さんの声にも耳を傾けたいんです。どう感じたのかに凄く興味があるし、それを受け取らないで次を作るのは意味がないと考えてるし。ブレたくはないから、譲らないところは譲りませんけど。例え、野島さんであってもメールは送ります(笑)。

野島:僕は普通のおじさんだから嫌われたくないって思ってるけど(笑)。

矢内:ハハハハ(笑)。おこがましいんですけど、私と野島さん、似てるところがあると思うんです。あの……根暗ですよね?(笑)

野島:あと、自分にあんまり自信がないところもね(笑)。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報