【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.94「秋の終わり、自己肯定感について考える」
「季節を感じられるのは、周りに目を向けられる心の余裕があるからだろう」
色とりどりの木々が重なり合ってできた美しい秋のトンネルを思い切り駆け抜ける息子の姿を目で追いかけながら、ふとそんなことを思いました。それはきっと、最近目にした“時間に追われていると思うのは、自己肯定感が低く、現状にいつまでたっても満足できない人”であるという一文がどうも心に引っかかっているせいです。
ここ数年、余裕がない自分を“家事に追われる”“仕事に追われる”“育児に追われる”といった言葉を使って表現してきた筆者にとって、このフレーズはとてもセンセーショナルなものでした。それに加え、近年叫ばれているワードのひとつである「自己肯定感」というものが、どうもしっくりこない。古き良き、なのかどうかは定かではありませんが、出る杭は打たれる風潮もある日本において、自己肯定感を育めた人とそうでない人が存在するのはなぜなのだろうかというのが大きな疑問なのです。
自己肯定感=幸福度という図式もあるほどに、自分の良いところも悪いところも含めて自分のすべてを肯定できる人が幸せであり、それを良しとする風潮。こうしたものが問われること自体はいい時代になったのだろうと思う反面、“自分は自愛が下手なのかも”と思うようになったのもこの言葉が浸透し始めてからのような気がしています。
といいますのも、自己肯定感が高い人はどんなこともポジティブに考えられるそうですが、筆者は経験を積み、準備を周到にしても“まだ足りない”と常に考えてしまいがちな質でして、自己肯定感とやらは低いのだろうと自覚し始めたわけです。しかし、対面した多くの方からは自信家と思われがちだったりして、それはそれで良い面もあるので否定はしませんが実際は異なります。
自己肯定感は育った環境や幼少期の体験に寄るところが大きいそうですが、社会に出てからも自分を正当に評価してくれる上司に巡り会えた場合はラッキーですが、真逆の場合も多々ありますよね。フリーランスで働く場合は、クライアントの担当者が自分をどれだけ理解し、評価してくれるかにかかっていますし、良い会社、良い企業であっても、直属の上司が碌でもない場合は、能力開花はおろか、自尊心を傷つけられ、果ては命まで落とすことになりかねないという悲しい現実が日本にはあります。
だからこそ叫ばれている言葉なのでしょうが、駄目な他人から身と心を守るために自己防衛しなきゃいけないだなんて、なんだか悲しくなります。しかしながら、親となった今では、やっぱり我が子には身も心も守って欲しいと思い願うわけで、今のうちにしてやれることを探して育児本に目を通すなどをせずにはいられません。
筆者の場合は、幸運にも、フジロックフェスティバルを通じて、横浜にある『りんごの木』というこどもクラブを知り、保育界の風雲児的存在であるカリスマ保育士の柴田愛子先生をはじめ、そこで働く保育者の方々、ユニークな保護者の皆さんと出逢えたことで、子育てについての不要な不安はほぼ解消されました。そこでは親である筆者までもが自己肯定感を現在進行形で育ててもらっている状態で、本当に出逢えて良かったと思える大切なご縁となっています。まさか、フジロックが育児に繋がるだなんて思ってもみませんでしたが、それについては話が長くなるのでまた別の機会に。
それから、自己肯定感を語るとき、頭に浮かぶ一人の女性がいます。その人の名は、高橋真実子さん。彼女は、ギョーカイ内の友人の中でもずば抜けて自己肯定感が高く、そのことを惜しみなくSNS等で発信しているので、彼女の日々の前向きな姿勢が垣間見える投稿に刺激を受けています。
彼女の職業はアナウンサーで、FM愛媛の朝の顔として『FINE』等を担当されています。出逢った頃はFMとやまで音楽番組等を担当されていましたが、現在は故郷である愛媛に活躍の場を移されています。二児の母でもあるワーキングマザーは、近頃ではマザーズコーチングなども手掛けられていて、一体どうやって時間のやりくりをしているのだろうと不思議に思うほど、しなやかで強い美しさを持つ女性です。
彼女の発信するメッセージや、ポジティブなモノの見方や考え方を見習って自分と向き合うと、今は低い自己肯定感だけれども、そのうち高くなるだろうと思えてくるから不思議です。人であれ、音楽であれ、惹かれるものには理由があるということでしょう。これから寒さも増し、冬が訪れますが、自愛を忘れず、身も心も暖かくして、愛媛近隣の方、そうでない方は、ラジコで、まみっこ姉さんの元気になれる言葉をぜひもらってみてください。
写真・文=早乙女‘dorami’ゆうこ
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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