【レポート】<908 FESTIVAL>KREVA、日本武道館2DAYSで飾った10周年。「俺の音楽人生、まだまだ中盤戦」

ポスト

今年ソロデビュー10周年を迎えたKREVAが、ベスト盤『KX』を携えて8都市10公演を回った<KREVAライブハウスツアー「K10」>を経て、各地のフェスで大暴れしているさなか、10周年のアニバーサリーイヤーのクライマックスともいえる恒例の<908 FESTIVAL>を大阪フェスティバルホールに続き、日本武道館で2日間開催した。

◆<908 FESTIVAL 2014> 画像

今年はアニバーサリーイヤーということで、その1日目となる9月7日はなんとKREVAがたった一人で全機材を使いながらライブをするというあの伝説のライブ「KREVA~完全1人武道館~」を再び開催。続く9月8日はもちろん「クレバの日」。この日は“半生バンド”を従え、いつものスタイルのKREVAのパフォーマンスはもちろんのこと、鈴木雅之、久保田利伸、三浦大知、AKLO、KICK THE CAN CREW、RHYMESTERという豪華出演者のライブや、さらに彼らとこの日ならではのスペシャルコラボステージも楽しめるという、まさに908フェスならではゴージャスな音楽の祭典を開催した。

この2日間、なにもかもがまさに神懸かり的。こんなに頭脳キレキレで、こんなにスゴいことやってるアーティスト、いままで見たことない。いったいKREVAはどれだけの時間をこのステージ作りに費やしてきたんだろう。観客を誰一人置き去りにしないでエンジョイさせていく隅々まで気を配ったおもてなしの精神に満ち溢れたステージは、もはや尋常じゃないレベルまで到達。ヒップホップのマニアから一般層まで、ライブを見終わった人たちみんなが、来たときよりもさらに熱いKREVAファン、もっというと音楽ファンになって会場を出て行く確率200%。この2日間、それぞれでまったくスタイルの違うアクトを見せながら、KREVAはそんなパッションをKREVAならではの知的かつエレガントな方法でオーディエンスの胸に焼き付けていったのだ。2日間とも、本当に素晴らしく、そして本当に刺激的なとんでもないアクトだった。

まずは1日目の「KREVA~完全1人武道館~」。場内では、開演前からKREVAが“DJ908”として舞台下手にセットされたDJブースに立ち、観客を素敵なDJプレイでお出迎え。この日は坂本美雨の「in aquascape」やら童謡「夏の思い出」、TUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」やMr.Childrenの「君がいた夏」、槇原敬之の「遠く遠く」などをつなぎながら、歌のなかに“くれば”というフレーズが出てくるたびにホーンを響かせ、そこをループさせていくというクラブに慣れてない人でも親しみやすいワードプレイで開演前から観客をおもてなし。ときにはテーブルから離れて熱唱ポーズをきめるDJ908が1時間ほどプレイした頃、客席がオーディエンスで埋め尽くされる。

開演時間になると場内が暗転。KREVAの10年の歩みを綴ったオープニングの映像が流れたあと、スモークに包まれたステージにKREVAが登場。舞台中央には2台のターンテーブル、コントローラー、DJミキサー、パットなどを並べた機材ブース。レーザーが飛び交う中、ブースで機材を操りながらヘッドセットで1曲目の「基準」で、いきなりマシンガンラップを披露。“俺のSWAGは神懸かり的”と言い放ったあとは、そこから「ストロングスタイル」へと、冒頭からいきなり強烈なラップチューンを連打。目をぎらつかせ、さっきまでノリノリでDJやってた人とは思えない変わりよう。

「(DJタイムを入れると)ライブも1時間経とうとしてるよ。これから、いきなりクライマックス、みたいなことやろうと思います」と宣言したあとKREVAがまず披露したのは、ラップしながら次の曲を準備するというDJスタイルで9曲をつないでいく“25分間メドレー”。「成功」、「OH YEAH」などオーディエンスとの盛り上がり不可欠な曲からじょじょにテンポダウンさせ、「かも」、「スタート」とセンチメンタルなムードをつないだあと、再び始まりの「成功」へとかっちり着地するところはKREVAマナー。ホットにアクトするKREVAとクールに次のトラックを準備していくKREVAが一人の中に同居する姿はシビれるぐらいスリリング。こうしてこの日のKREVAはエンターテイナーと音職人というとんでもない振り幅の自分を何度も何度も行き来することになる。

見事なトラックプレイの次に待ち構えていたのは、ライミングの勉強。学校の始業時間を知らせるチャイムが鳴ると、黒縁メガネをかけたKREVAが予備校の先生に早変わり。観客が着席したところでいつもはDVDなど通信教育でやっている「ライミング予備校」の公開授業がスタートした。ここではKREVA先生のドS(?)な教えっぷりが観客の笑いを誘う。そして「チェリー缶、ぽんかん、武道館って、語尾の1~2文字の韻を踏んだぐらいで“韻”とかいわない」といって、黒板に書いた「You Are The No.1」を題材に、ライミングの構造をレクチャー。それを分かった上で和楽器の音色をフィーチャーした新曲「47都道府県ラップ」を聴いていくと、どんどん韻の踏んだ部分が耳に飛び込んでくる! 韻が分かるだけで、この曲のライムにどれだけ高度な技術が使われているのかが見えてくる。

そんなライムの面白さを味わった後は、トラックメイクの基本となる“ビートメイク”実践コーナー。「ドラムの音を指で正確に打たなくても、こうすれば簡単にビートは作れるんだよ」といって機材を使って、なにもないところからビート作りを実演。そこで作ったビートで「トランキライザー」をプレイ。こんなにも専門的なことをやりながらも、その解説はとても分かりやすくてTVの通販番組なんかより全然エンタテインメントしていていちいち面白い! つまり、そこまで手が込んでいるということなのだ。

続いては“マッシュアップ”のやり方を伝授。ここからは実演もどんどんハイレベルに。まずは「BESHI」のトラックをループさせる。そこに「くればいいのに」のサビをのっけてみると「違う曲なのにバチッとハマるでしょ?」とKREVA。「でも、曲調が違う。次は曲調も合わせて」といって、今度はビートをハーフに落としたり、元に戻したりという小ワザを使いながらスペーシーつながりの「全速力」と「Space Dancer」を見事にマッシュアップ、まったく違う表情の曲に仕上げてオーディエンスを驚かせた。

次は、舞台上手に場所を移動。絨毯が敷かれたここの部屋のテーマは「セミアコースティック」とKREVA。ここでは「渋谷で2100円で買ってきた」ウインドチャイムや「娘が使わなくなった」というトイピアノ、カホン、タンバリン、缶を使ったシェイカー、シャンパンのビンとコップなど、みんなの身近にあって誰もが簡単に音が出せて楽器として使えそうなものをピックアップ。そして、次は身体のなかで音が出せるものとしてボイパ、フィンガーピッキングなどをマイクを使ってREC。ループマシンにひとつずつ取り込み、ビートを作りあげていくのだけれども、ここでは“生音”だけにカホン(※編集部注:9/16訂正)の音がなかなか上手くはまらず、ライブのなかで何度も自分にNGを出して録り直した。「これ、まさかの職人が皿を何枚も焼き続けてるのを見せてる感じ?(笑)でもさ、世の中のビートって、こういう細かいこだわりを持って作られてるんだよ。そういうのが分かってもらえたらいいな」とKREVA。そして、やっとできたビートに生楽器の音をその場で加えながら歌った「瞬間speechless」は、ハンドメイド感満載のセミアコならではの温もりが感じられて、この部屋だからこその仕上がりに。こういうトラックを作るときも、ウインドチャイムを鳴らしながら「マスター、今日やってる?」など、いちいち小芝居を挟んでオーディエンスを笑わせながらステージに興味を向けていく辺りは、本当に気配り上手。

そして、再び場所を舞台中央に戻して、次は「社長に手紙を書いて貰った」というシンセサイザー・OASYSの機能を使えば、ピアノが弾けないKREVAでも「もしもピアノが弾けたなら」もこうすれば指1本で弾けるんだよということを分かりやすく実演したあと 、“弾き(押し)語り”というKREVA独自のパフォーマンスで「EGAO」を気持ちを込めて披露。パットを押すKREVAの指が、なんともセクシーだった。

「いいね、今日。でも、やってる間はいつものライブと違って自信がないというか。やっぱり、みんなの笑顔を見たいんだよね。俺、今日は主に画面ばっか見てたからさ(笑)。これからみんなの力を貰いに、そろそろ“外出”」といって、ここからは仮面ライダーベルトのようなコントローラーをウエストにつけ、「イッサイガッサイ」からフロントへ本当に“外出”(笑)。オーディエンスの歌声がデカくなると「お! いい顔してんな!」とKREVAがとたんに笑顔になる。続いての「Hava a nice day!」は、お客さんが手を左右に振るタイミングを見事に揃え、舞台下手のDJブースにいたKREVAが祝福のスクラッチを贈る。「今日、一番みんなの近くにいるから、みんなの声を聞かせてくれよ」といって始まったのは「C’mon,Let’s go」。みんなでどこまでも上がってっいったところで「俺、武道館でこれがやりたかったんだよ」といってKREVAが舞台頭上にあるカメラを見て指差し、始まったイントロは「Na Na Na」。この威力、何回聴いても半端ない! キラキラのカラーテープも飛び出し、場内はKREVAの“さあ登るぜ!”を合図にさらなる高みをみんなで目指し、この日最高の眩いばかりの絶景を武道館に生み出す。そして、この後に「音色」でみんなの声と一つに解け合ったあと、ライブは終演。

DJタイムを入れたら、じつにトータル4時間。一人で歌ってトラックメイクもやり、歌詞を書いてラップをしてきたKREVAにしかできない「KREVA~完全1人武道館~」。こんなにもストイックでマニアックでエポックメイキングなことをやりながらも、その届け方はエンタテインメント。これが、KREVAが10年間ブレることなく貫き通してきた彼の生き様。本当に圧巻だった。


2日目の「クレバの日」は、出演者もスペシャルコラボも、とんでもなくゴージャス。

KREVAのオープニングステージから始まったこの日は、さっそく「全速力 feat.三浦大知」で三浦大知を呼び込み、二人が左右二手に同時に全速力で駆け出し、場内を沸かせる。そんなアクティブなパフォーマンスの後に、どこまでも光を帯びた温かみのある歌声で「Anchor」をアカペラで届けて観客の度肝を抜いた三浦。AKLOがクールでスタイリッシュなラップを響かせた後は、“ラブソングの帝王”マーチンこと鈴木雅之が、KREVAの希望を叶えて「くればいいのに feat.鈴木雅之」を大人のムード満載のソウルヴォイスでKREVAとコラボ。

ULが「La La Like a Love Song」で登場した後は白い衣装を着た3人が揃って観客の大声援&大合唱を受けながら「イツナロウバ」でKICK THE CAN CREWに。RHMESTERを迎え、火柱がド派手に打ち上がった「神輿ロッカーズ」ではステージの6MC+お客さんで祭りは絶頂に! そこからのRHYMSTER、KICKへとマイクバトンをしていった「マルシェ」。豪華過ぎる演目に観客の悲鳴が止まらない。

豪華な競演はまだまだ続く。この後登場した久保田利伸がKREVAと「もう帰りの飛行機の時間に間にあわない」「いやいや、この曲用意したから」と押し問答を繰り広げている間に三浦が颯爽と飛び出し、歌い始めた「La・La・La Love Song」。最後は久保田のグルーヴィーボイスと三浦のエンドレスで鮮やかに伸びていくボイスのとんでもないフェイク合戦も見られ、場内からは大拍手が巻き起こった。その盛り上がりを受けて最後は再びKREVAがステージに登場。「大切な日にしかやらない」という「希望の炎」などを歌い、最後は出演者全員で手をつないで挨拶をしてライブは美しいまでの大団円で幕を閉じた。

ライブ終了後には、“まだまだ10周年は続く”という予告の後、早くも2015年にニューシングル、ニューアルバムを発売し、47都道府県+αツアーに出ることを発表したKREVA。年内はこの後まだまだ、a-nation初の海外公演となる台湾公演<a-nation taiwan>や、Superflyの対バンツアーへの参戦などの活動を重ね、10周年のアニバーサリーイヤー。そのファイナルに向けて、もっともっと高いクライマックスを目指す。

「俺の目指してるクライマックスはもっともっと高いところ。俺の音楽人生、まだまだ中盤戦」(2日目のMCより)

取材・文●東條祥恵

SET LIST
10th Anniversary Year
<908 FESTIVAL 2014>
2014年9月07日(日)日本武道館 ~完全1人武道館~
01.基準
02.ストロングスタイル
03.成功/25分メドレー
04.俺はDo It Like This/25分メドレー
05.OH YEAH/25分メドレー
06.I REP/25分メドレー
07.調理場/25分メドレー
08.世界の中心/25分メドレー
09.かも/25分メドレー
10.スタート/25分メドレー
11.成功(アウトロ)/25分メドレー
12.47都道府県ラップ
13.トランキライザー
14.全速力×Space Dancer
15.瞬間speechless
16.EGAO
17.イッサイガッサイ
18.Have a nice day!
19.C'mon, Let's go
20.Na Na Na
21.音色

2014年9月08日(月)日本武道館
01.908 FES 新超INTRO
02.トランキライザー
03.全速力 feat. 三浦大知
■三浦大知
04.Right Now
05.Blow You Away!
06.Anchor
■AKLO
07.CHASER~RED PILL~NEWS DAYS MOVE
08.Catch Me If You Can feat. KREVA
■鈴木雅之
09.くればいいのに feat. 鈴木雅之
10.夢で逢えたら
11.僕らの奇跡 ~Open Sesame~ feat. KREVA
■UL ~ KICK THE CAN CREW
12.La La Like a Love Song(※編集部注:9/16訂正)
13.イツナロウバ
14.神輿ロッカーズ
15.マルシェ with RHYMESTER
■RHYMESTER
16.ONCE AGAIN
17.The Choice Is Yours
■久保田利伸
18.M☆A☆G☆I☆C 久保田利伸 meets KREVA
19.La・La・La Love Song
■KREVA
20.超INTRO
21.イッサイガッサイ
22.蜃気楼 feat. 三浦大知
23.中盤戦 feat. Mummy-D
24.Na Na Na
25.希望の炎
26.音色
EN1.パーティはIZUKO?

◆BARKS ライブレポート
◆908 FESTIVAL 2014特設サイト
◆KREVAオフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報