リトル・ウィリーズ、「愛と思いやりと共に聴いてほしい」
リトル・ウィリーズの2ndアルバム『フォー・ザ・グッド・タイムス』には、カントリー通をも唸らせる趣味性の高い曲と、「ジョリーン」のように誰もが知っている有名な曲が、ほどよいバランスで収録されている。ピープル誌はこのバンドのデビュー作を「丹精こめたカヴァー・アルバム」と評したが、その言葉は今回のアルバムにこそぴったり当てはまりそうだ。今回は選曲のポイントについてや聴きどころについて、メンバーに訊いてみた。
◆リトル・ウィリーズ画像
文●内本順一
リトル・ウィリーズが6年ぶりに発表した2ndアルバム『フォー・ザ・グッド・タイムス』。選曲の幅は前作よりも広がっているようだ。
「バンドとして集まってから、みんなでいろんな曲を聴き合ったんだ。でも前作より個人の好みがより強く反映されてるかな」とリチャード・ジュリアンは言う。
「いくつかの曲は既にライブで何年もやってたものよね。「ジョリーン」や「リメンバー・ミー」、「フォー・ザ・グッド・タイムス」なんかがそう。でもどういうわけか前作『リトル・ウィリーズ』には収録されなかったのよ」と言うのはノラ・ジョーンズだ。
リード曲となる「ジョリーン」は恐らくこのアルバムのなかでもっとも広く知られている曲だろう。もともとはドリー・パートンの曲だが、オリビア・ニュートンジョンが1976年にカヴァーして、日本で大ヒットとなった。ノラは2011年のグラミー賞授賞式でもキース・アーバン、ジョン・メイヤーと共にこの曲を歌っていて、CD化を望む人も多かった。
「“「ジョリーン」は誰からも愛されている曲だし、私もこれを歌うのが大好き。演奏するとたくさんの人に喜んでもらえるの。“こういう有名な曲を歌うのは勇気がいらないか?”って訊かれるんだけど、全然そんなことない。カヴァー・アルバムなんだし、誰もが知っている曲がいくつかあるのはいいことだわ」とノラ。実際のところ、ドリー・パートンともオリビア・ニュートンジョンとも異なるノラのしっとりした歌い方は、この曲に新しい魅力を与えている。ノラらしいピアノとジムらしい歪んだギターの合わさりも独特で、どこか「ツイン・ピークスのテーマ」を思わせるような“ダークな郷愁”といった趣がある。
アレンジがずいぶん変わっている曲といえば、1949年にハンク・ウィリアムスがとりあげて大ヒットした「ラヴシック・ブルース」もそうだ(もともとは黒塗り顔のメイクで知られる芸人歌手エメット・ミラーが1925年に歌って広まった曲)。ノラとリチャードがふたりで歌っているこの曲はグッとスローになっていて、酒場で酔いどれながら歌っているようなダルな雰囲気がいい感じである。
「この曲はかつての酒場曲だからね。こういうアレンジにすることで酒場っぽい雰囲気が増すんじゃないかと思ったのさ」とリチャード。彼はこうも続ける。
「選曲のポイントのひとつとして、曲がこのバンドのケミストリーを引き出してくれるかどうかってところもあった。簡単ではなかった曲もあるけど、ちゃんと自分たちの成長を反映させることができたと思うよ」
またギタリストのジム・カンピロンゴはこう話している。
「カントリー・ミュージックを演奏するからには、そこに畏敬の念がなくてはならない。でもだからといって独自の解釈を加えないというわけではない。僕らは懐古趣味のバンドをやりたいわけじゃないし、僕らだからこそできる音楽をやりたいんだからね」。
ジムの言う通り、このアルバムには懐古趣味的な部分がまったく見られない。アレンジに工夫があるし、ノラとリチャードのヴォーカルにも現代的な情感があるからだ。だから、カントリーに馴染んでいようがいまいが、今の音楽として楽しんで聴くことができる。
このアルバムをどう聴いてほしいかと尋ねると、リチャードはこう答えた。
「美味しいカクテルとともに、ただ楽しんでほしいね」
ジムの答えはこうだ。
「愛と思いやりと共に聴いてほしい」
そのように聴くこととしよう。
◆リトル・ウィリーズ・オフィシャルサイト
◆リトル・ウィリーズ画像
文●内本順一
リトル・ウィリーズが6年ぶりに発表した2ndアルバム『フォー・ザ・グッド・タイムス』。選曲の幅は前作よりも広がっているようだ。
「バンドとして集まってから、みんなでいろんな曲を聴き合ったんだ。でも前作より個人の好みがより強く反映されてるかな」とリチャード・ジュリアンは言う。
「いくつかの曲は既にライブで何年もやってたものよね。「ジョリーン」や「リメンバー・ミー」、「フォー・ザ・グッド・タイムス」なんかがそう。でもどういうわけか前作『リトル・ウィリーズ』には収録されなかったのよ」と言うのはノラ・ジョーンズだ。
リード曲となる「ジョリーン」は恐らくこのアルバムのなかでもっとも広く知られている曲だろう。もともとはドリー・パートンの曲だが、オリビア・ニュートンジョンが1976年にカヴァーして、日本で大ヒットとなった。ノラは2011年のグラミー賞授賞式でもキース・アーバン、ジョン・メイヤーと共にこの曲を歌っていて、CD化を望む人も多かった。
「“「ジョリーン」は誰からも愛されている曲だし、私もこれを歌うのが大好き。演奏するとたくさんの人に喜んでもらえるの。“こういう有名な曲を歌うのは勇気がいらないか?”って訊かれるんだけど、全然そんなことない。カヴァー・アルバムなんだし、誰もが知っている曲がいくつかあるのはいいことだわ」とノラ。実際のところ、ドリー・パートンともオリビア・ニュートンジョンとも異なるノラのしっとりした歌い方は、この曲に新しい魅力を与えている。ノラらしいピアノとジムらしい歪んだギターの合わさりも独特で、どこか「ツイン・ピークスのテーマ」を思わせるような“ダークな郷愁”といった趣がある。
アレンジがずいぶん変わっている曲といえば、1949年にハンク・ウィリアムスがとりあげて大ヒットした「ラヴシック・ブルース」もそうだ(もともとは黒塗り顔のメイクで知られる芸人歌手エメット・ミラーが1925年に歌って広まった曲)。ノラとリチャードがふたりで歌っているこの曲はグッとスローになっていて、酒場で酔いどれながら歌っているようなダルな雰囲気がいい感じである。
「この曲はかつての酒場曲だからね。こういうアレンジにすることで酒場っぽい雰囲気が増すんじゃないかと思ったのさ」とリチャード。彼はこうも続ける。
「選曲のポイントのひとつとして、曲がこのバンドのケミストリーを引き出してくれるかどうかってところもあった。簡単ではなかった曲もあるけど、ちゃんと自分たちの成長を反映させることができたと思うよ」
またギタリストのジム・カンピロンゴはこう話している。
「カントリー・ミュージックを演奏するからには、そこに畏敬の念がなくてはならない。でもだからといって独自の解釈を加えないというわけではない。僕らは懐古趣味のバンドをやりたいわけじゃないし、僕らだからこそできる音楽をやりたいんだからね」。
ジムの言う通り、このアルバムには懐古趣味的な部分がまったく見られない。アレンジに工夫があるし、ノラとリチャードのヴォーカルにも現代的な情感があるからだ。だから、カントリーに馴染んでいようがいまいが、今の音楽として楽しんで聴くことができる。
このアルバムをどう聴いてほしいかと尋ねると、リチャードはこう答えた。
「美味しいカクテルとともに、ただ楽しんでほしいね」
ジムの答えはこうだ。
「愛と思いやりと共に聴いてほしい」
そのように聴くこととしよう。
◆リトル・ウィリーズ・オフィシャルサイト