大貫妙子&坂本龍一が作り上げる、なんとも贅沢な空間

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11月18日、ハーモニーホールふくい(福井)でスタートした大貫妙子と坂本龍一のふたりによる全国ツアーの東京公演が、11月22日(月)に昭和女子大学人見記念講堂で行なわれた。

◆大貫妙子&坂本龍一画像

真っ暗な会場の中、ステージ上に2人の姿が浮かび上がる。ピアノと歌のみ。究極のミニマル空間のパフォーマンスが静かに始まった。大貫と坂本は1970年代半ばから音楽の共同作業を始め、本人たちいわく「同じ釜の飯を食ってきた盟友」。11月10日には、『LUCY/大貫妙子』以来13年振りとなる共同制作アルバム『UTAU』を発表し、前半は同アルバムに収録された楽曲を中心に演奏された。

5曲目の「夏色の服」で自分のパートを終えた大貫が静かに舞台を離れると、教授のソロ・コーナーへと移る。このコーナーは2009年の<Playing the Piano>ツアーと同様、公演毎に演奏曲が変わっているようだ。後半は、再び大貫が舞台に戻り、映画主題歌として知られる教授の「鉄道員」等、5曲を披露する。曲間では長年のパートナーシップならではの、リラックスした掛け合いのMCで客席に笑いもひろがった。

ステージは、時折バック・スクリーンに映像が映し出されるが、照明もこれ以上ないという程シンプルに徹しており、会場内にはお香も焚かれていた。香道では“聞香”、聞くと言うが、この夜は、情感のこもった大貫の声によるUTA(うた)、柔らかでふくよかな坂本のピアノによるUTA(うた)、お香のUTA(うた)が三位一体となって聞ける、なんとも贅沢な空間が作り上げられていた。

新アルバムからの曲を中心に、アンコールでは坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」、大貫妙子の「色彩都市」などの両者の代表曲の披露も挟んだ約2時間。静かで、しかし同時になごやかなエネルギーに満ちた時間は、集まった2000人の観衆を酔わせた。

会場を出ると、外は雨。しとしとと振る雨垂れの音すら、この夜の演出の続きのように思わせた素晴らしい一夜となった。大貫妙子/坂本龍一のツアーは、12月22日の札幌市民ホールまで全国15ヶ所17公演行なわれる。東京国際フォーラム公演のチケットは完売してしまったが、12月11日の公演はWOWOWにて生中継の放送が予定されている。

<A PROJECT OF TAEKO ONUKI & RYUICHI SAKAMOTO
2010年11月22日(月)
@東京・昭和女子大人見記念講堂
1.TANGO
2.美貌の青空
3.3びきのくま
4.赤とんぼ
5.夏色の服
6.improvisation
7.mizu no naka no bagatelle
8.tamago 2004
9.aoneko no torso
10.aqua
11.鉄道員
12.Flower
13.Antinomoy
14.a life
15.四季
encore-1
16.Merry Christmas Mr. Lawrence
17.色彩都市
encore-2
18.風の道

◆UTAUツアー2010 USTREAMサイト
◆大貫妙子/坂本龍一 UTAU TOUR 2010公演オフィシャルサイト
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