MELL、デジタルビートの混沌のなかに世界の行方を暗示する5thシングル「RIDEBACK」リリース特集
[BARKS FEATURE] MELL TVアニメ『RIDEBACK』オープニングテーマ 5thシングル「RIDEBACK」リリース特集
悲しいまでに疾走感あふれるビートとMELLの比類なき表現力を持ったヴォーカルが原作の世界観を見事に音楽として昇華
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精神と肉体が加速度を増しデジタルビートの混沌のなかに世界の行方を暗示する
MELL:はい。前回はオープニングだったので、「今回はきっと真ん中さ~」と豪語していたんですが(笑)。やっぱり、トリは緊張しましたよ。前がショートサーキットでしょ?あのノリをぶち壊していいものかと(笑)。オープニングが川田まみちゃんだったから、「最初と最後、頑張ろうね!」って励まし合って、本番に臨んだんです。1回目の武道館公演との違いは、私たちもお客さんも、少しだけ冷静にライブに臨んでいたことかな。歌い手のみんなはすでにソロツアーの経験もあって成長しているし、お客さんたちも歌姫の活動を見守ってきて、パフォーマンスを受け止める余裕があるように感じました。前回は言葉にならないような熱気、もうクレイジーな興奮状態に燃えて、それはそれで最高でしたが、今回はもっとお互いに「楽しもう!」というムードができ上がっていた気がしたんです。私はそれを、「今までI'veを受け入れてきた俺らの前なんだぜ! 何でもドンと来いだぜ!」という、お客さんからのメッセージだと自然に受け取っていました。だから、思いっきりパフォーマンスすることができました。それに対する私からの返答は、最後に歌った「美しく生きたい」の原曲バージョンです。一緒に歩いてきた仲間たち、ファンのみなさん、関係者のみなさんが、お正月の武道館で一堂に会した瞬間を喜ぶための曲でした。この集結は、“感動”と“感謝”というほかに、言葉はないですね。
MELL:アニメで描かれる原作の3巻まではいただいたのですが、読んですぐに、自分でもヤバいくらいハマったというか、大ファンになりました。「これはアニメを見た人は絶対に漫画も読むに違いない」と確信して、私も原作を全部買いに走ったんですよ。全巻を読み込まないと、歌詞は書けないと思いましたね。
MELL:このお話は、現在世界中で問題になっているテロや、そのテロに対する特措法をめぐる問題が最悪の方向に向かい、国連が解体され、大地震まで起きてしまって、東京がまるで60年代安保闘争のような状況になってしまった世界を描いているんですね。昔ゲバ棒持って暴れていた人たちもみんなおじさんになって黄昏ちゃって、誰もあの時代のことを話したがらない今の時代に私も生まれた。ただ、このままこの世界観を歌詞にしたら反戦歌になってしまうなぁって。でも、それはなんか違うなぁと。だからこの物語の主人公・尾形琳のための歌詞を書こうと思ったんです。彼女は清廉で、純白で、本当にピュアな女の子。なのに、彼女を取り巻く人々の思惑に乗せられて、革命のカリスマに祭り上げられてしまう。自分の置かれている状況に苦悩して、たくさん辛い思いをするのに、プライドをもって頑張っている。皮肉なことに彼女はライドバックの背中に乗るときだけが本来の自分の輝きを取り戻せているからなんですね。
MELL:そうですね。英語詞は琳を取り巻く混沌とした世界を描くことに焦点を当てていて、日本語詞は琳とライドバックの関係性を軸に物語を描こうと思ったんです。自然とそうなりましたね。
MELL:正直、難しかったですね。作品との距離をどう取るか、という部分が。というのも、この尾形琳という女の子は元々バレエをやっていたのですが、実は私も、幼稚園の頃からずーっとバレエを習わされてきたんですよ。ずーっとレッスンと発表会の繰り返し。私は、それが本当に嫌だったの(笑)。一番嫌だったのが母親のダメ出し。これが本当に厳しくて、そのせいで私、ステージに上がるのがトラウマだったんですよ。それが原因で、のちにロックに逃げちゃった(笑)。でも、この曲の制作が、ちょうど私のツアーと被っていた時期で、ステージ恐怖症のトラウマが蘇って辛かったんですが、琳がバレエをやっていたということが物凄い励みになったんです。私、今まで手指の形だけは綺麗にやらなくちゃ!と気を使って来たんですが、かつて何度も何度も先生に手を叩かれて注意されたお陰だったな、とふと無駄な力みが抜けた。そんな勇気をくれた琳への感情移入がより深くなり、気がつくと作品に救われていました。
MELL:甘えることを知らないんですよ。母親を恋しがったり、誰かを恋しがったりするんですけど、そういうほのかな甘さ一つ、琳には許されないストーリーなんです。でも、それを求めてしまう琳の切なさと得られない辛さ。そこを受け止めてくれるのは、ライドバックしかいない。その関係性って、ある種の愛だなと。だから日本語詞では、私が琳をおぶって戦っているような気持ちですよ。私、尾形琳と友達になりたいなぁって激しく思いましたもの(笑)。アニメでも、過酷な状況の中で琳が笑っていたり、ライドバックでふわ~っと飛ぶとどうしても泣けてきちゃうんですね。激しくまわるほど泣ける。後の世に生まれてきたら、今度こそ彼女にトー・シューズを履いて平和な世の中で、プリマドンナとして思い切り踊らせてあげたいなー。コミックスの4巻で、琳が母親の言葉で光り輝くシーンがあるんですよ。歌詞にある「Found the light was real I am united」はこの場面について歌っているのですが、このシーンはぜひ、アニメを見たみなさんにも読んでもらいたいですね。この作品を通じて琳の人間としての成長や、本当の強さを共感して欲しい。I'veとしての活動11年目に、運命的な出会いを果たしたと思える作品と出会えて、本当に幸せです。
MELL:そうですね。今回はじめて森岡さんにお願いしました。「自由に弄って遊んでください!」という感じでお願いしたのですが、森岡さんらしさもありながら、原曲に忠実なリミックスにしてくださっていて。嬉しいかったです。
MELL:そうなんですよ! 今まではPVの撮影で笑っていたら「もっとカメラを睨みつけて!」って、指示が飛びカットされてましたけど、今回は「哀しげ」と「笑顔」は許されました(笑)。
MELL:言われるがままに着ています(笑)。私なりの解釈ですけど、ドレスの私は、夢の世界というか遠い過去の存在。その後に出てくる黒い私は現代人で、過去の果たせない革命の嘆きを黒いMELLが受け止めて、ひとつの答えをはじき出そうとしてるのかな、と思いながら撮影していました。生まれ変わりという見方も面白いなと。
MELL:そうですねー。I'veの歌姫それぞれと同じ名前の登場人物が織り成す映画『Departed to the future』は、特に未来というものにあえて断言的な定義はせず、幾通りもの解釈の中で5人の個性がうまく溶け合った映画だなと感じました。優しい未来への願いもちゃんと込めれています。各物語を意識した新曲も今までの世界観と違い、仕上がりには満足しています。映画本編に私たちもちらっと出ているので(笑)、そこも楽しんでもらえたらうれしいですね。。
取材・文●冨田明宏