増田勇一のライヴ日記【7】2007年6月28日(木)FAKE?@恵比寿リキッドルーム
KEN LLOYD率いるFAKE?を久しぶりに観た。前回、彼らが東京でライヴを行なったのは2月4日、同じ恵比寿リキッドルームでのこと。それまで彼らの東京公演には無遅刻/無欠席だったはずの僕だが、その夜ばかりは駄目だった。ちょうど米国出張が重なってしまい、当日の開演時刻に僕はまだ帰国便の機内にいたのだ。彼らのライヴはほぼ定刻にスタートするのが常で(アクセル・ローズに見習わせたい!)、演奏時間が1時間半を超えることは滅多にない。新東京国際空港がその名の通り都内にあれば何曲かだけでも観ようと駆けつけたはずだが、成田では仕方がない。その夜は素直に諦めるしかなかった。
それから5ヵ月弱。例によって僕は、早めに会場入りした。最前列を目指そうというわけじゃない。BGMが聴きたかったのだ。彼らのライヴでは、基本的にKENの選曲による、時代やジャンルを問わない“今、好きな曲”たちがBGMとして流されている。それを聴くのがいつも楽しみなのだ。この夜、どんな曲が流れていたかは書かずにおくが、毎回、彼の音楽ファンとしてのアンテナの感度とレーダーの精度には感心させられる。
そして午後7時、この夜も場内は定刻に暗転。1曲目の「AUTOMATIC」から、まるでペース配分を無視したようなテンションと疾走感をもってステージは始まった。充分すぎる音量/音圧に、まったく不足のない切れ味。轟音の迫力にも繊細な表現にもちゃんと説得力が伴っていて、しかもライヴならではのスリリングさがある。大胆さとデリカシーの双方を、絶妙のバランスで併せ持っているのがFAKE?の最大の魅力であり、強味ということになるだろう。そんなライヴだからこそ、毎回観たくなるわけである。が、そんな思いを打ち砕くかのような言葉が、途中、KENの口から発せられた。
「今年最後のFAKE?のライヴになるので、大いに暴れて帰ってください」
まだ年の前半が終了しようとしているに過ぎないのに、FAKE?にとっての2007年はこれで終わりだ、というのである。また、彼はやはりステージ上で、こんなふうにも語った。
「活動休止じゃないよ。今年、やんないだけだから」
ぶっちゃけ、FAKE?のライヴがしばらくないということについてはあらかじめ知っていた。が、それでも実際にこうした言葉が耳に飛び込んでくると、ある種の動揺を隠せない自分がいた。何かが終わってしまうわけではないにせよ、フェイヴァリット・バンド(そう、敢えてプロジェクトとかではなく“バンド”と呼びたい)の活動が停滞することが本人によって宣言されてしまったのだから、当然といえば当然だろう。
しかし、そんな動揺はほんの数秒で終わった。何故なら、俗に言うところのエモどころじゃない次元でエモーショナルな音と歌が、余計なことを考える余裕を与えてくれないからだ。次から次へと繰り出されるさまざまなフレーヴァーの楽曲たちが、時計の針の動きをどんどん速めてしまうからだ。
と、いうわけで、この夜も彼らのライヴはスピード感を途切れさせることのないまま、あっという間に終わった。が、時計に目をやると、開演からちょうど1時間半が経過していた。FAKE?のライヴとしては、決して短いものではなかったのだ。なのにこんなにも体感速度が速かったのは、ステージ上の彼ら自身が、ずっと精神的に前傾姿勢で走り続けていたからだろう。
そして終演後、会場出口では気になるフライヤーが配られていた。なんとKENがかつて在籍していたバンド、OBLIVION DUSTが、9月8日と9日、SHIBUYA AXでライヴを行なうというのである。公演タイトルは“Resurrected”。それがどういったカタチをした“復活”であるのかは、まだ明かされていない。とりあえずは新しい情報の到着を待つしかないだろう。が、しばらく僕は、今しか味わえない動揺を楽しみつつ妄想を膨らませていようと思う。ちなみに僕自身のなかに、ネガティヴな思いは微塵もない。少なくとも今のところは。なにしろFAKE?という“場”が失われるわけではないし、さらにもうひとつのフェイヴァリット・バンドが還ってくることになるのだから。
なお、OBLIVION DUSTの公演に関する詳細は、http://www.obliviondust.net/をご参照のこと。
文●増田勇一
それから5ヵ月弱。例によって僕は、早めに会場入りした。最前列を目指そうというわけじゃない。BGMが聴きたかったのだ。彼らのライヴでは、基本的にKENの選曲による、時代やジャンルを問わない“今、好きな曲”たちがBGMとして流されている。それを聴くのがいつも楽しみなのだ。この夜、どんな曲が流れていたかは書かずにおくが、毎回、彼の音楽ファンとしてのアンテナの感度とレーダーの精度には感心させられる。
そして午後7時、この夜も場内は定刻に暗転。1曲目の「AUTOMATIC」から、まるでペース配分を無視したようなテンションと疾走感をもってステージは始まった。充分すぎる音量/音圧に、まったく不足のない切れ味。轟音の迫力にも繊細な表現にもちゃんと説得力が伴っていて、しかもライヴならではのスリリングさがある。大胆さとデリカシーの双方を、絶妙のバランスで併せ持っているのがFAKE?の最大の魅力であり、強味ということになるだろう。そんなライヴだからこそ、毎回観たくなるわけである。が、そんな思いを打ち砕くかのような言葉が、途中、KENの口から発せられた。
「今年最後のFAKE?のライヴになるので、大いに暴れて帰ってください」
まだ年の前半が終了しようとしているに過ぎないのに、FAKE?にとっての2007年はこれで終わりだ、というのである。また、彼はやはりステージ上で、こんなふうにも語った。
「活動休止じゃないよ。今年、やんないだけだから」
ぶっちゃけ、FAKE?のライヴがしばらくないということについてはあらかじめ知っていた。が、それでも実際にこうした言葉が耳に飛び込んでくると、ある種の動揺を隠せない自分がいた。何かが終わってしまうわけではないにせよ、フェイヴァリット・バンド(そう、敢えてプロジェクトとかではなく“バンド”と呼びたい)の活動が停滞することが本人によって宣言されてしまったのだから、当然といえば当然だろう。
しかし、そんな動揺はほんの数秒で終わった。何故なら、俗に言うところのエモどころじゃない次元でエモーショナルな音と歌が、余計なことを考える余裕を与えてくれないからだ。次から次へと繰り出されるさまざまなフレーヴァーの楽曲たちが、時計の針の動きをどんどん速めてしまうからだ。
と、いうわけで、この夜も彼らのライヴはスピード感を途切れさせることのないまま、あっという間に終わった。が、時計に目をやると、開演からちょうど1時間半が経過していた。FAKE?のライヴとしては、決して短いものではなかったのだ。なのにこんなにも体感速度が速かったのは、ステージ上の彼ら自身が、ずっと精神的に前傾姿勢で走り続けていたからだろう。
そして終演後、会場出口では気になるフライヤーが配られていた。なんとKENがかつて在籍していたバンド、OBLIVION DUSTが、9月8日と9日、SHIBUYA AXでライヴを行なうというのである。公演タイトルは“Resurrected”。それがどういったカタチをした“復活”であるのかは、まだ明かされていない。とりあえずは新しい情報の到着を待つしかないだろう。が、しばらく僕は、今しか味わえない動揺を楽しみつつ妄想を膨らませていようと思う。ちなみに僕自身のなかに、ネガティヴな思いは微塵もない。少なくとも今のところは。なにしろFAKE?という“場”が失われるわけではないし、さらにもうひとつのフェイヴァリット・バンドが還ってくることになるのだから。
なお、OBLIVION DUSTの公演に関する詳細は、http://www.obliviondust.net/をご参照のこと。
文●増田勇一
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