【ライブレポート】OBLIVION DUST、<Swarm>ツアーに新フェーズの予感「人生楽しんでください」
5月31日に配信リリースとなった新曲「Swarm」の名を冠し、5月11日より東名阪を含む5都市6公演にて開催されたOBLIVION DUSTのツアー<“Swarm” Tour 2024>が6月2日、東京・渋谷ストリームホールにてファイナルを迎えた。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆OBLIVION DUST 画像
ロックバンドかくあるべし! OBLIVION DUSTのライヴに触れるたび、最大級の感嘆符とともに快哉を叫ばずにはいられない。1997年にメジャーデビューを果たしてから四半世紀超、折々に立ちはだかる幾多の困難をも乗り越えてきた胆力と、今なお進化を求めて研鑽を止めず、常に最高を更新し続ける並外れた推進力、何より音楽に対する尽きることなき愛情とリスペクトをこれでもかとばかりに搭載して己が信じる道をひたすらに爆走するこのオンリーワンバンドの真骨頂はやはりステージの上にこそあるのだとこの日のライヴもまた見事に証明していた。
「Swarm」のジャケットアートを体現するかのように、渋谷はあいにくの雨模様となったが、会場内にたぎるオーディエンスの興奮はいささかも損なわれることなく、開演前にも関わらずすでに爆発寸前にまで膨らんでメンバーの登場を待ち侘びる。
ほぼオンタイムで暗転した場内。オープニングを告げるSEが鳴り渡り、カラフルなライトに照らされたステージにメンバーが姿を現すとたちまち凄まじい歓声が渦巻いた。最後に登場したKEN LLOYD(Vo)がマイクを握ると同時にほとばしったのは「AGAIN」の、ずっしりと重心は低く、けれど殺傷力は容赦なく高い、弩級のバンドアンサンブルだ。じわじわと客席フロアを侵食するように広がりゆく熱狂の熾火。続く「Glitch」で俄然、ステージのモードが動へと転じると、オーディエンスも怒涛の狂騒へとなだれ込んでゆく。のっけからアッパーに畳み掛けるのではなく、あえて焦らしたのちに一気に揺さぶりをかける、その熟達したアプローチには百戦練磨な彼らの本領を見る想いだ。
四つ打ちのキックが渋谷ストリームホールを昂揚のダンスフロアに変えた「Everyday Negative」、トラディショナルなロックンロールのグルーヴをOBLIVION DUSTというフィルターを通して洒脱なミクスチャーロックへと昇華させた「Elvis」。ライヴの代表的な鉄板チューン「Evidence」ではK.A.Z(G)の歪ませたギターリフがデジタルなトラックと絡んでアジテーティヴに炸裂、ベースを不敵に構えながら低い位置にセットしたマイクスタンドに向かうRIKIJI(B)のコーラスもKENのヴォーカルと絶妙に掛け合って客席の熱狂にいっそう拍車を掛け、「Satellite」でひときわ激しく煽り上げた果てにKENがファルセットを駆使して放つ“Satellite, Satellite”の美しくも挑発的な響きに、オーディエンスも負けじと人差し指を突き上げては歌声を重ねる。長年サポートを務めるYUJI(G)、ARIMATSU(Dr)との呼吸もぴったりと噛み合い、ステージ一丸となって繰り出される唯一無二の音にもはや圧巻の一語しか浮かばない。
「渋谷ストリームホール、いい感じですね。今のO-EASTになる前の、ON AIR EASTっていう会場が昔あって……なんだかそこでやってるような感覚になります。今、会場がどんどんなくなっていくなかで、こんなふうに昔を思い出すような会場が新たに出てくるというのもいいなって」──KEN LLOYD
前半戦を駆け抜け、一息つきながらKENがそう感慨深げに口にする。ちなみにOBLIVION DUSTがこの場所でライヴを行うのはこれが初だ。今日訪れた観客も多くは初来場のはず。終演後、会場についての感想をSNSなどで教えてほしいとKENは言葉を続け、「みんながいちばん喜んでくれる場所でやりたいので」と今後のブッキングに役立てたい旨を明かすと場内にワァッと拍手と歓声が起こる。さりげなくファン想いなOBLIVION DUSTなのだ。
ダンサブルかつ壮大な「Gateway」が文字通り“門口”となり、ついに披露されたのが「Swarm」だった。冒頭にも記した通り、今ツアーはこの新曲「Swarm」を主軸に据えたものだ。しかしながら6公演中5公演はリリース前のタイミングに行われており、リリース後の披露となるのはこのファイナル公演のみ。なぜ、そうした形を取ったのか理由は定かではないが、元を正せばバンドの大半にとってライヴこそが楽曲発表の場であり、ライヴのために曲を作って、手応えを得た楽曲を音源化するというのがそもそもの流れではなかっただろうか。曲を作ってツアーをしよう、まずはライヴでいち早くファンに新曲を聴いてもらい、その後、満を持して世に出そう──ある種、原点に立ち戻るかのような発想で今ツアーが開催されたのだとしたら、ここまでのOBLIVION DUSTのキャリアを鑑みればいっそう興味深い。そうではなかったとしても、発表前の新曲をまっさらな耳に届けるという試みは間違いなくバンドに大いなる刺激をもたらしたことだろう。そうして今日、雨の渋谷で演奏された「Swarm」のなんと圧倒的だったことか。
分厚いバンドサウンドが押し寄せるハードなイントロから心臓を穿つようなシリアスなAメロ、短いBメロはKENのヴォーカリゼーションも相まって行き場をなくした独白のごとくオーディエンスの鼓膜を震わし、サビで描き出される演奏と歌声が一体となったエモーショナルな音像がこの上なく切実に迫る。間奏はどこかインダストリアル的でもあり、ヘヴィネスを極めたアンサンブルがその後に続くKENの歌をよりドラマティックにして聴き終えたときの余韻はまるで一本の映画を鑑賞したあとのよう。様々に表情を変えるK.A.Zのギターにも目をみはる。彼らのルーツである80年代洋楽ロックサウンドを彷彿させる巧みなEDMとハードエッジながらもどこか軽妙さをも備えた2022年リリースの『Shadows』とはっきりと異なる肌触りは、バンドが新たなフェーズへ突入しようという先触れだろうか。何はともあれ、音源で聴く以上にダイナミックなOBLIVION DUSTサウンドの最新形にただ陶然と酔わされた。
「先ほど演奏しましたけど、5月31日にニューシングル「Swarm」を配信リリースしました。お聴きのようにK.A.Z君のギターがとっても輝いていて素敵なので、みなさん、たくさん聴いてください。ちなみにリリースして今日が初ライヴなんですけど、通常、OBLIVION DUSTのライヴは晴れなんです。わりと晴れ男バンドなので。なのに今はグズグズで(笑)。サビで“rain, rain, rain”って言ってるからなのかな」──KEN LLOYD
圧巻の余韻を吹き飛ばすKENの告白に大爆笑のオーディエンス。演奏時とMCのギャップも彼らのライヴの大きな魅力と言えるだろう。「たぶん帰りも雨だと思うんですけど、心配しないでください。ここから僕、思いっきり水をかけるので」と宣言すると、アグレッシヴにメーターを振り切った「Therapy」でライヴは一気に後半戦へと加速する。宣言通り、ペットボトルの水を撒きまくるKENのパフォーマンスが客席をいっそう盛り上げて場内はすっかり亜熱帯と化した。
それにしても驚くべきはラインナップされた楽曲たちの色褪せなさだ。たしかに「Swarm」は今ツアーのメイン楽曲ではあろうが、デビューアルバム『LOOKING FOR ELVIS』から先述した最新ミニアルバム『Shadows』まで幅広く、かつ、ほぼまんべんなくピックアップされ、しかもどれも遜色なく今のOBLIVION DUSTの音楽として鳴り響いているのだ。余談ながら今ツアーのセットリストのうち、曲目と曲順が固定されていたのはたったの4曲のみ。その日にしか演奏されなかった楽曲もあったりするなど、まさに1公演1公演、一期一会のステージを繰り広げてここまでたどり着いた彼らの凄みを改めて思う。
「今日のファイナルに足を運んでくれたみなさん、そして他の会場に来てくれたみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです」──KEN LLOYD
最後のMCではバンドを代表し、そう想いを表明したKEN。続けて告知したのは11月からスタートする次のツアー<OBLIVION DUST LIVE Tour 2024-2025>の開催だった。本人の口から届けられた嬉しいニュースにオーディエンスが驚喜しないわけがない。「しばらくみなさんに会えないのはちょっと寂しいですけど、その間は「Swarm」を聴き込んでもらって、美味しいものでも食べて人生楽しんでください」とKENらしい言い回しで再会を約束。そうしてラストの「Sink The God」まで全速力で走り抜け、<“Swarm” Tour 2024>は大団円で幕を閉じたのだった。
なお、<OBLIVION DUST LIVE Tour 2024-2025>は今回よりさらに本数を増やし、約2ヵ月にわたって開催される。ファイナルは2025年1月12日、東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)だ。彼らが切り拓く時代の先に注目したい。
取材・文◎本間夕子
撮影◎石川浩章
■<“Swarm” Tour 2024>6月2日@渋谷ストリームホール SETLIST
02. Glitch
03. Everyday Negative
04. Elvis
05. Remains
06. Evidence
07. Satellite
08. Gateway
09. Swarm
10. Traces
11. Disappear
12. Therapy
13. Syndrome
14. Sail Away
15. Never Ending
16. Nightcrawler
17. In Motion
18. Sink The God
■<OBLIVION DUST LIVE TOUR 2024-2025>
11月04日(月/祝) 東京・新宿LOFT
※新宿LOFT歌舞伎町移転記念公演
open17:30 / start18:00
11月09日(土) 埼玉・HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
open17:30 / start18:00
11月10日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
open17:30 / start18:00
11月17日(日) 千葉・柏PALOOZA
open17:30 / start18:00
11月23日(土) 山梨・甲府KAZOO HALL
open17:30 / start18:00
11月30日(土) 愛知・NAGOYA JAMMIN’
open17:30 / start18:00
12月01日(日) 大阪・Banana Hall
open16:00 / start16:30
12月07日(土) 東京・Spotify O-WEST
※“Club OVERDOSE”MEMBER’S ONLY
open17:30 / start18:00
▼2025年
01月12日(日) 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
open17:15 / start18:00
【チケット 】
¥7,800(整理番号有 / ドリンク代別途必要)
スタンディング
※1/12 Zepp Shinjuku公演は、席種が全自由になります。
※未就学児童入場不可
※公演の中止及び延期以外は、いかなる場合でも払い戻しの対応はいたしかねます。予めご了承の上、チケットをご購入ください。
一般発売:9月21日(土) AM10:00〜
■OFFICIAL FANCLUB “Club OVERDOSE”会員先行(抽選)■
受付期間:6月2日(日)20:00〜6月17日(月) 23:59
※エントリー期間中にご入会いただいても、エントリーは可能です。お時間に余裕を持ってご入会及びお申し込みをお願いいたします。
■プレリクエスト抽選先行(抽選)■
受付期間:6月25日(火)18:00〜7月8日(月)23:59
https://l-tike.com/obliviondust/
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