【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.29(本人歌唱指導付き)三山ひろし、木村徹二、花咲ゆき美、成世昌平、野村美菜

世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。
演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」の第29回目。
今回は三山ひろし「鳴門海流」、木村徹二「風神雷神」【特別盤】、花咲ゆき美「夢見傘」、成世昌平「母ちゃんの海」、野村美菜「夜半の雨」を紹介する。
(協力:日本クラウン)
■三山ひろし「鳴門海流」


おそらく今いちばんノっている演歌歌手なのではないだろうか。声の張り、体のキレ、しなやかな振る舞い、心を掴んで離さないトーク、どこからみても魅力に溢れている。そんな時期は人生の中でもそうそうあるものじゃない。ここしばらくの三山ひろしの安定感とそれを超えていく冒険心は、その好調ぶりを自分でも実感できているからではないだろうか。
2026年2作目の新曲。1月に出た「花とサムライ」では近年頑張っているドラムなどの楽器演奏を取り入れた、遊び心を感じるものだった。今回の「鳴門海流」は、王道の力強い男の演歌。喉を鳴らして歌い飛ばすその技術もすごいが、渦巻く海流が見えてくるかのような、スケールの大きな歌世界を描き切っているのがすごい。歌ってて気持ちいいんだろうなぁというのが伝わってくる。絶品だ。 今回もカップリング曲を変えて、2タイプ同時発売となる。【タイプA】は着物を着た写真のジャケット。カップリング曲の「からたち母情」は、泣きのギターで綴る母への想いを歌った歌。「慕情」ではなく「母情」になっているところが泣ける。【タイプB】はスーツを着た写真のジャケット。タイトルの「チョウゲンボウ」はハヤブサに似た鳥の名前だが、曲の方も軽やかに気流に乗ってみたり、トリッキーに飛んでみたり、はたまたしっぽりと止まってみたりと、曲調が二転三転する難しい歌。カラオケ好きの人はチャレンジしがいがある曲だろう。
「鳴門海流」
2026年6月24日リリース
CRCN-8840 定価:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)
【タイプA】CRCN-8851定価:¥1,550(税込)
1.鳴門海流
作詩:万城たかし / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
2.からたち母情
作詩:水木れいじ / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
3.鳴門海流 [オリジナル・カラオケ]
4.からたち母情 [オリジナル・カラオケ]
【タイプB】CRCN-8852 定価:¥1,550(税込)
1.鳴門海流
作詩:万城たかし / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷達也
2.チョウゲンボウ
作詩:前田たかひろ / 作曲:中村心一 / 編曲:石倉重信
3.鳴門海流 [オリジナル・カラオケ]
4.チョウゲンボウ [オリジナル・カラオケ]
■木村徹二「風神雷神」【特別盤】

今年の2月に出た「風神雷神」は、楽曲の力強さに加え、そこにど真ん中から切り込んでいくような木村の歌に打ち震えるようなすごい出来だった。それとともに、木村自らが風神と雷神になったかのようなジャケットは、個人的に2026年上半期の演歌のジャケットでいちばんの出来だったと思う。
その「風神雷神」のカップリング曲を変更した【特別盤】がリリースされる……のだが、ジャケットを見て、思わずふふっと笑みがこぼれた。縁日の風景をバックに佇むサラリーマン。そんな風情の木村の姿は、先に書いた「風神雷神」になりきった姿はどこへやら。これは今回のカップリング曲「祭りの宵」に合わせたものなのだろう。今回も実兄の木村竜蔵の作詞・作曲。祭りの太鼓のような力強いリズムと賑やかな風景の中で、かつて一緒に祭りに行った女性にふと想いを馳せる。そんな自分に戸惑うかのような切ない夏の歌だ。
もう1曲の「中仙道」は、お馴染みとなった“親父の歌”、つまり鳥羽一郎の持ち歌をカバーするシリーズだ。鳥羽といえば海の男。そういう歌が多い印象だが、90年代には“街道シリーズ”というべき楽曲がいくつかあり、この曲はそのいちばん最初のもので、原曲は91年にリリース。木村の歌は鳥羽とはまた違うモダンな感じで、伝統を受け継ぎつつも新しく、実に頼もしい。
「風神雷神」
2026年7月8日 発売
CRCN-8854 定価:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)
1.風神雷神
作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
2.祭りの宵
作詩:さくらちさと / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
3.中仙道
作詩:里村龍一 / 作曲:叶 弦大 / 編曲:丸山雅仁一
4.風神雷神 [オリジナル・カラオケ]
5.祭りの宵 [オリジナル・カラオケ]
■花咲ゆき美「夢見傘」

2007年のデビューから途切れることなく新曲を毎年リリースしてきた花咲ゆき美。来年が20周年となる。繊細な声質で力強く喉を鳴らすそのギャップと幅広い表現を武器にキャリアを積み重ねてきた。
近作の2曲はシンガーソングライターのHANZOから提供を受けてきたが、新曲の「夢見傘」は、新進の作曲家、カラフルパレットの大村友希が作曲したもの。おそらく初顔合わせになると思われる。ほどよくポップで演歌のコブシも回せる、軽やかだが演歌らしいツボを押さえた好曲だ。花咲の声の調子との相性も抜群で、このコンビでもう何曲か聴いてみたいと思わせるものがある。この曲は日本音楽著作家連合が主催した〈第40回新作歌謡作品コンクール〉の最優秀作品とのことだ。
カップリングの「虹を編む」は歌謡曲調のバラード曲。こういった曲での声を微妙に震わせるような花咲の繊細な表現はまさに絶品。アコースティック・ギターの弾き語りも似合いそうな曲だ。「虹を編む」というタイトルは三浦しをん原作の「舟を編む」にインスパイアされたのだろうか。おそらく明日への架け橋を二人で作るという意味で「編む」という言葉を使っているのだろう。こういった洒落た言葉遣いに新しい風を感じる。良い曲だ。
「夢見傘」
2026年6月24日リリース
CRCN-8853 定価:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)
1.夢見傘
作詩:早川幸夫 / 作曲:大村友希 / 編曲:竹内弘一
2.虹を編む
作詩:いのうえ佳世 / 作曲:岸田妙子 / 編曲:竹内弘一
3.夢見傘 [オリジナル・カラオケ]
4.虹を編む [オリジナル・カラオケ]
5.夢見傘 [一般用カラオケ]
6.虹を編む [一般用カラオケ]
■成世昌平「母ちゃんの海」

高校卒業後に就職し、1974年に仕事をしながら独学で民謡を始めたという変わり種の歌手だが、その後、歌謡曲や演歌も歌い始め、そこから今年で40周年。民謡出身ならではのよく伸びる声は、のどかな田舎の風景に実によく似合う。そうやって心に残る歌を歌い続けてきた人だ。
2年半ぶりとなる新曲は、なんと2010年の「春よとまれ」以来16年ぶりとなる、大御所、浜圭介の作曲と、氷川きよしの曲を多く手掛けてきた原文彦の作詞というコンビによるものだ。成世の楽曲は作詞家のもず唱平がプロデューサー的に世界観を作ってきた。今回はもず氏は関わっていないようだが、〝日本の原風景の具象〟というコンセプトをそのまま引き継いだ作りになっている。いつもは心の琴線を振るわせるようなメロディを書く浜が、ここでは明るく大きな海を思わせる曲を書いているのが印象的だ。
カップリングの「デカンショ初盆」も同じく原と浜による楽曲。どこか童謡を思わせるような懐かしいメロディと、父が亡くなっての初盆を母と二人で迎えるのどかだが切ない風景を、兵庫県丹波篠山市の代表的な民謡である「デカンショ節」の「ヨーイ ヨーイ デッカンショ」という一節を引用して歌い上げる。派手さはないがなんと心に沁みる曲だろう。若い弾き語りの歌手などにも歌ってほしい。
「流氷海峡」
2026年7月8日リリース
CRCN-8856 定価:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)
1.母ちゃんの海
作詩:浜 圭介・原 文彦 / 作曲:浜 圭介 / 編曲:佐藤和豊
2.デカンショ初盆
作詩:原 文彦 / 作曲:浜 圭介 / 編曲:佐藤和豊
3.母ちゃんの海 [オリジナル・カラオケ]
4.デカンショ初盆 [オリジナル・カラオケ]
5.母ちゃんの海 [一般用カラオケ(1音下げ)]
6.デカンショ初盆 [一般用カラオケ(1音下げ)]
■野村美菜「夜半の雨」

艶やかな声に哀愁を滲ませたドラマティックな歌に持ち味を発揮する歌謡曲歌手。デビュー20周年となった前作「哀愁埠頭」から約2年ぶりの新曲だ。
「夜半(よわ)の雨」は、これまで通り師匠の水森英夫の曲とさくらちさとの歌詞という、前作と同じコンビによるもの。だが曲調はGS歌謡っぽいテイストだった前作とは打って変わって、ドラマティックに展開する少し演歌調の歌謡曲。野村が得意とするタイプの曲なのだろう、サビのところの感情の乗せ方が抜群にうまい。
カップリングの「冬薔薇」では、なんと作曲に初挑戦。やはりマイナー調の歌謡曲と演歌が交錯するあたりのバラードで、これが初めて世に出る曲にしてはなかなかの完成度。このクオリティを保てるなら、自作曲中心でもやっていけるのではないだろうか。タイトルは「冬薔薇」とかいて〝ふゆそうび〟と読む。日野浦かなでが書いた歌詞は、演歌っぽい世界観もありがなら、言葉選びで程よく現代的な感覚に引き戻しているところが絶妙だ。
「夜半の雨」
2026年7月8日リリース
CRCN-8855 定価:¥1,550(税抜価格 ¥1,409)
1.夜半の雨
作詩:さくらちさと / 作曲:水森英夫 / 編曲:佐藤和豊
2.冬薔薇
作詩:日野浦かなで / 作曲:野村美菜 / 編曲:佐藤和豊
3.夜半の雨 [オリジナル・カラオケ]
4.冬薔薇 [オリジナル・カラオケ]
5.夜半の雨 [一般用カラオケ(半音下げ)]
6.冬薔薇 [一般用カラオケ(半音下げ)]
文◎池上尚志
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