【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.18(本人歌唱指導付き)三山ひろし、中西りえ、立樹みか、青山ひかる

世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。
演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」の第18回目。
今回は三山ひろし「祇園闇桜」、中西りえ「からくり歌舞伎 万華鏡」、立樹みか「漁火」、青山ひかる「光る君に」の4作を紹介する。
(協力:日本クラウン)
■三山ひろし「祇園闇桜」

今年の1月にリリースした「酒灯り」に続く、今年2枚目となるシングル。短い間隔で新曲が出るのは勢いがある印だろう。前作での庶民的な町の小さな酒場の物語から一転、格調高い和の様式美を押し出したこれまでの三山にはあまりなかったタイプの楽曲に挑戦している。
タイトル通り、京都・祇園を舞台に、古都のロマンを背景に女の悲恋を歌う。風景と感情が織り混ざるような言葉を短いセンテンスの中に封じ込めた石原信一の歌詞が実に美しい。作曲はここ3年ほど連続して三山の楽曲を書いている大御所・弦哲也。弦の代表作といえば石川さゆりの「天城越え」だが、そのドラマティックな要素をほどよく援用しつつ、三山の滑らかな歌い口を意識してか、落差よりも風景が徐々に移り変わっていくように楽曲を展開させるという、実に見事な作りとなっている。琴の音に導かれ曲が始まった瞬間にこれは名曲だとわかる。三山の代表曲のひとつになると思う。
カップリングの「青春」は、馬飼野俊一の作曲による青春歌謡。「祇園闇桜」と全く違ったタイプの曲だが、こちらは三山が得意とするタイプの曲だろう。
「祇園闇桜」
2025年6月4日リリース
CRCN-8753 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 祇園闇桜
作詩:石原 信一 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:南郷 達也
2. 青春
作詩:前田 たかひろ / 作曲:馬飼野 俊一 / 馬飼野 俊一
3. 祇園闇桜 [オリジナル・カラオケ]
4. 青春[オリジナル・カラオケ]
5. 祇園闇桜 [一般用カラオケ]
6. 青春 [一般用カラオケ]
■中西りえ「からくり歌舞伎 万華鏡」

“伊勢の歌姫”こと中西りえの1年ぶりの新曲。前作「津軽挽歌」では津軽の風景を切々と歌ったが、今回はそのタイトルからもわかるように、トリッキーでキャッチーな楽曲となった。
水木れいじが書いた歌詞は、江戸時代と令和を行ったり来たりしながら、主人公がいろんな役として出現する、まるでタイムトラベルをするかのような目眩く世界観で実にトリッキーだ。スマホという言葉が出て来たり、千本桜は吉野のことを指しているのだろうが、初音ミクのボカロ楽曲「千本桜」(小林幸子が『紅白』で歌ったことでも知られる)とひっかけているのは明らか。作曲は前作に引き続きとなる演歌・歌謡界随一のヒットメーカー、浜圭介。なんか「夜桜お七」っぽいなと思ったら、編曲は「夜桜お七」を担当した若草恵だった。つまり、この曲は、次の『紅白歌合戦』を狙いにいくぞとの表明だと解釈した。いいじゃないか。
カップリング曲の「この町 この駅で」では、中西が初めて作詞に挑戦。70年代のニューミュージックのような世界観の切ない楽曲。中西は演歌からポップスまで安定して歌える実力派なだけに、この振り幅の広さも余裕だ。
「からくり歌舞伎 万華鏡」
2025年5月14日リリース
CRCN-8745 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. からくり歌舞伎 万華鏡
作詩:水木 れいじ / 作曲:浜 圭介 / 編曲:若草 恵
2. この町 この駅で
作詩:中西 りえ / 作曲:滝川くにへい / 編曲:水谷高志
3. からくり歌舞伎 万華鏡 [オリジナル・カラオケ]
4. この町 この駅で[オリジナル・カラオケ]
5. 祇園闇桜 [一般用カラオケ 半音下げ]
6. 青春 [一般用カラオケ 半音下げ]
■立樹みか「漁火」

活動再開となった23年の「宿なしかもめ」から1年半ぶりとなるニューシングルは、97年にリリースした企画モノポップス歌謡の「勝手だね」のカップリングに収録されていた「漁火」のニューヴァージョン。立樹本人の思い入れの強い楽曲ということで、今回録り直すことになったようだ。
この曲は歌詞の設定がいい。少し年上の酒場の女将が、救いを求めるようにやってくる素直になれない強がりな男を受け止める。純情と母性の狭間の心の動きを見事にドラマの中に落とし込んでいる。演歌ではないが、中村中の「裸電球」に近い世界観がある。少し苦い人生を知った女性には、こういった心情がよくわかるのだろう。こういうのを隠れ名曲という。
カップリングの「今度生まれ変われたら」は、立樹自身の作詞・作曲によるムード歌謡風の楽曲。立樹の心持ちが歌われているかのようで興味深い。
「漁火」
2025年5月21日リリース
CRCN-8752 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 漁火
作詩:仁井谷俊也 / 作曲:村上ヒロ子 / 編曲:蔦 将包
2. 今度生まれ変われたら
作詩:立樹みか / 作曲:立樹みか / 編曲:遠山 敦
3. 漁火 [オリジナル・カラオケ]
4. 今度生まれ変われたら [オリジナル・カラオケ]
■青山ひかる「光る君に」

中性的なルックスから放たれるアルトボイスで歌謡曲からシャンソン、時に演歌までを歌い、ショウビズ的なステージングを繰り広げるシンガー。近年は活動の方向性が迷走していた感があったが、クラウンからは6年ぶりとなる新曲で、ようやく本来の舞台に戻って来た感がある。
今回は青山本人たっての希望で、両面ともにシンガーソングライターのHANZOに楽曲を依頼。「光る君に」は、まるでオペラの楽曲かのように、ドラマティックかつ壮大に運命を歌い上げるバラードに仕上がった。主語が一切なく、希望と退廃が同居したような謎めく歌詞。「今が貴方の折り返しの旅よ」という一節にはここが再スタートだという意味が込められているのだろうか。とにかく歌の情感がすごく、こんな曲がエヴァのエンディングテーマだったら、どれだけハマっただろうと思う。
カップリングの「花乱舞」もHANZOの作品。ムード歌謡的な楽曲だが、青山の艶やかな声で歌われると、途端に妖しい仮面舞踏会のようになる。多少芝居がかった感があるが、そのキッチュな感じがいい。青山ひかるはこのドラマティック路線を貫き通すべきだろう。
「光る君に」
2025年5月14日リリース
CRCN-8744 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 光る君に
作詩:HANZO / 作曲:HANZO / 編曲:矢田部正
2. 花乱舞
作詩:HANZO / 作曲:HANZO / 編曲:矢田部正
3. 光る君に [オリジナル・カラオケ]
4. 花乱舞 [オリジナル・カラオケ]
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