【BARKS編集部レビュー】ドラムの楽しさを実感できるV-Drums Lite HD-3、ファミリー向けでも中身は本格派
セットもデカければ音もデカい、ちょっと前までは敷居が高い楽器の代表のような存在だったドラムを、一気に身近な楽器にしたのが電子ドラムだ。セットはコンパクトで大きな音もしないから自宅練習用に最適だし、音色を切り替えれば色々なドラムセットの音で演奏を楽しめる。ドラマー、そしてドラマーを目指す人にはこれ以上ない便利なものだ。現在では数多くのメーカーから色々な電子ドラムが登場しているが、その中で断トツの人気を誇るのがローランドのV-Drumsシリーズ。打音が静かでリアルな打感のメッシュ・ヘッドを張ったパッドが大きな特徴。機能はもちろん豊富だし、さらにルックスもカッコいいから、ステージやレコーディングにも十分に対応する。
そんなV-Drumsシリーズの中で、ファミリー向けにV-Drumsの機能を凝縮したのがV-Drums Lite。コンパクトなセット、そして必要なものだけに絞り込まれた機能を持つシンプルな電子ドラムだ。そして今回、V-Drums Liteの新モデル「HD-3」が登場した。メッシュ・ヘッドのスネア、ビーターレスのキックを採用し、低振動、低騒音を実現したコンパクトなモデルで、内蔵するドラム・キット(音色)は20で、多彩な音色で演奏が楽しめる。さらに、HD-3と連携できるPC用のドラム練習ソフト「DT-1」も同時に登場。このソフトを使うことで、伴奏とともに演奏したり、ドラムの基礎やリズムパターンをゲーム感覚で学ぶことができる。まさに初心者にぴったりの組み合わせなのだ。
■組み立ては簡単
▲高さの調整は実に簡単。 ドラムセットにはタム類やシンバルなど数多くのパーツが含まれているため、まずはセットを組み立てなければならない。ドラム初心者なら、どこに何をどのように取り付ければよいかわからないかもしれない。しかし、このHD-3は初めからスタンドにタムやスネアが取り付けられた状態になっているから、迷いようがないほど簡単だ。ちなみにHD-3のセット内容は、キック・ペダルとスネアにタムが3つ、シンバル2枚とハイハットといういわゆる4点セット。シンプルだがどんなジャンルでも対応できる万能セットと言える。
まず、ペダルがついたフット・パイプをスタンド下部の左右に取り付けて、スタンドを立てる。次にタムが取り付けられたアームを左右に開いて、シンバル・パッドを取り付ければ、もうドラムセットの形がほぼ出来上がり、これだけでもなんだかワクワクしてくる。あとはケーブルを接続してパッドの位置を調整すればOK。位置の調整はかなりシンプル。アームを上下させて高さを決め、アームを開く角度によって位置関係を調整するだけだ。実際にセッティングしてみると、かなり叩きやすい位置に収まってくれた。身長188cmの筆者でもまったく窮屈な感じはしなかったし、もちろん高さや開きはコンパクトにセッティングすることもできるから、小さな子供でも問題なく使えるだろう。
▲2.1チャンネル・スピーカー・システム採用のパーソナル・ドラム・モニター「PM-03」との組み合わせ。 なお今回は、HD-3のサウンドを出力するモニターとして、PM-03を使用した。2.1チャンネル・スピーカー・システム採用のパーソナル・ドラム・モニターで、広がりあるサウンドで気分よくドラムを叩くことができる。本体は縦型でコンパクト、HD-3のスタンドの足元にちょうど収まるサイズで使いやすい。
■操作の中心、コンパクトな音源部
HD-3の音色や機能の切り替えを行なうのが、コンパクトな音源部だ。現在選択されている音色や機能が表示される液晶パネルと、オレンジに発光する自照式のボタンが並んでいる。POPやROCK、JAZZ、HEAVY、LATIN、DANCEといった音色名の書かれたキット・ボタンは10個。これを押すとドラム・キット(音色)を変更することができ、VARIATIONボタンを押すと、そのキットの別の音色に切り替えることができる。ちなみに、キット・ボタンを長押しすると、選択されているキットを使った演奏例のパターンが再生される。どんなサウンドのキットなのかを確認するのにも便利だし、演奏のヒントとしても使えるだろう。キット・ボタンの下にはメトロノームボタンがあり、テンポのガイドとなるメトロノームを鳴らすことができる。メトロノームのテンポは、その左右のボタンで変更するという仕組みだ。
演奏時に使う機能はこれだけで、いたってシンプル。電源を入れ、音量や音色を決めたらすぐに叩ける。シンプルなだけに、電子楽器をさわったことがない人でも、すぐに使いこなすことができるだろう。
ちなみにこの音源部、セットに座った時にちょうど目の前に来るように配置されている。だから手が届きやすいし、叩きながらでも液晶の表示を確認しやすい。また、ボタンは大き目で柔らかい素材でできているため、スティックの先でも楽に押せる。
■リアルで迫力ある20のドラム・キット音色
実際に叩いてみると、どのキットの音色もリアルで迫力があり、“これは面白い!”と、すぐに夢中になってしまった。最初に選んだのはPOPのキット。液晶パネルには“Standard-V”と表示されるこのキット、まさにスタンダードな音色。張りがあって抜けもよく、明るくてよく響くサウンドだ。キックは“トントン”という感じで、単体で聴くとさほどパワフルではないように感じたが、全体で演奏するととてもバランスがよく、引き締まって聞こえる。VARIATIONボタンを押すと、表示は“Lite Pop”に変わる。先ほどのStandard-Vと似たようなキャラクターだが、チューニングを少し上げたような雰囲気になり、よりタイトで締まったサウンドになる。
その他のキットもすべてとてもリアルで、非常に気分よくドラムを叩くことができる。ROCKのキットでは、金属的な倍音も聞こえるちょっと粗っぽい、いわば“ワイルド”な音になるし、そのバリエーション・キットの“Stage”は、名前の通り大きなステージで演奏しているような響きが付け足されて、スケールの大きなサウンドになる。またJAZZキットは古い木製のドラムのような渋いサウンドで、小さなクラブで目の前で聴いているような音だ。また、WORLDやLATINキットでは、HD-3がドラムセットから、パーカッションのセットへと早変わりする。たとえばLATINではタムがボンゴ、タム2がコンガ、タム3がティンバレスになるし、WORLDではキックとスネアがカホンになり、タムがタブラやジャンベになるといった具合。これ一台で様々なジャンルに対応できるのも強みだ。
ドラムとしてだけ叩いていても十分に面白いのだが、HD-3には外部入力端子が備えられている。つまり、CDやiPodなどをつないで、好きな楽曲と一緒に演奏することができるのだ。ドラムは微妙なタイミングやニュアンスがとても大事な楽器。憧れのプレイヤーと一緒に演奏して練習すれば、そのタイミングも身についてくる……かもしれない。
■リアルなタッチのパッド、叩く強さで音色も変化
叩いていて楽しいのは、各パッドの感触もいいからだろう。とくにスネア・パッドは、実際にメッシュのヘッドが張られているだけに、バウンドの感じもリアルだし、スティックの跳ね返りが硬すぎることもなく快適だ。“ゴースト・ノート”のようなそっと触るような細かいストロークにもちゃんと反応するからロールだって練習できる。また、スネアにはゴムでカバーされたリムもついていて、いわゆるリムショットもできる。もちろんメッシュだから打音はとても静か。それでいて、本当のスネアと同じように演奏できるのだからたまらない。
タムには布製のヘッドが張られており、打音はかなり抑えられている。バウンドもそれほど違和感はない。シンバル・パッドは、ボウとエッジとで別の音が鳴るので、たとえばエッジで“ジャーン”とクラッシュもできるし、ボウで“カンカン”とリズムを刻むこともできる。またエッジにはミュート用のセンサーがある。ここを握るとミュート、つまりシンバルの音を“ビシッ”と止めることができる。シンバルミュートをタイミングよく決められると、すごく気持ちがいいものだから、ついついブレイクのある曲ばかりを演奏してしまった。
叩く強さによって、音色が変化するところも面白い。実際に打楽器を叩いた場合、叩く強さが変わると、音量だけでなく倍音や響きが違ってくるのだが、HD-3ではそんなところもリアルに再現されているのだ。それだけではなく、強さによって、別の音色に切り替わるキットもある。たとえばLATINキットのコンガやボンゴでは、弱く叩くとタップしたような小さな音だが、強く叩くとスラップした際の鋭い音色に切り替わるし、ティンバレスは強さに応じて音程が変わり、もっとも強く叩くとリムショットになる。さらにTIGHTの“Funky Jam”キットではタム2がスラップベースの音になるのだが、これも強さによってベースの音程が変化する。どれくらいの強さで叩けばどんな音になるのかをきちんと把握しなければならないけれど、それさえわかれば、シンプルなこのセットでもかなり面白いことができそうだ。
■ツーバスにも対応する低騒音のビーターレス・キック
HD-3で大きな特徴となっているのがビーターレス・キック。なんとベース・ドラム用のパッドはなく、ペダルだけでキックを演奏することができるのだ。センサーがペダルに内蔵されていて、ペダルを踏み込むと音がするという仕組みだ。従来の電子ドラムでは、実際のドラム同様に、キック・ペダルでキック・パッドを打ちつけて演奏するものがほとんどだったが、キック・ペダルはとてもパワーがあり、その振動は直接床に伝わってしまう。だからキックが最大の騒音源になっていた。しかしこのHD-3にはビーターがない。だから振動も騒音も抑えられているのだ。
また、ツーバスにも対応したキットが含まれているのも面白い。HD-3の左右にあるキック・ペダルとハイハット・ペダルは、実は同じ構造になっているため、HEAVYのキットを選択すると、ハイハットが左のキックとして使えるようになるのだ。疾走感のあるへヴィメタルでドコドコとツーバスを踏んでいると爽快なのだが、置き方によってはセット全体の揺れもかなり大きくなる。フット・パイプをしっかり取り付けて固定し、スタンドを安定した状態で設置するよう注意しておきたい。
また、セット全体の左右を入れ替えて、左利き用のセッティングにすることもできる。これも、キックとハイハットのペダルが共通だからこそできることだ。
■より楽しく、効果的に上達できるドラム練習ソフト「DT-1」
低騒音のHD-3は自宅練習用にもってこいなのだが、HD-3を使ってさらに効率的にドラムを上達させる方法がある。それはV-Drums Tutor DT-1というソフトを使うことだ。これはV-DrumsシリーズをPCと連携させて使えるドラム練習ソフトで、曲に合わせて演奏しながら基本的なパターンを学んだり、ドラムの基礎を譜面などで確認しながら習得できるというものだ。HD-3にはMIDI出力があり、これをPCに接続することで、どのパッドをどのタイミングで叩いたかがソフトの画面でみることができ、上達度を確認することができるわけだ。今回はローランドのUSB MIDIインターフェース UM-ONEでPCとHD-3を接続して使ってみた。
DT-1を起動すると、ドラム譜画面が表示される。右下には曲のリストがあって、Songには基本パターンを中心にフィルインも含めた練習曲が60曲、Exerciseにはスティックのストロークの基礎練習が57パターンある。ここで曲を選択すると、そのドラム譜が上部に大きく表示される。ここでの基本的な練習方法は、まずお手本を聴き、どのパッドをどう叩くかを見て確認する。そして実際に演奏し、どの程度できていたかをソフト上で確認する、という流れになる。
まずはお手本を聴いてみよう。リストから曲を選択し、再生ボタンをクリックすれば演奏が始まる。このとき、譜面上を赤いボールが拍子に合わせて移動するので、今聴いているところが譜面ではどう表されているかを見ることができる。また、左右どちらの手で叩くかの手順もLとRで表示される。左下のパッド画面では、そのタイミングで叩くべきパッドにマークが点灯するから、実際にセットでどのように叩くかを見ることができる。お手本を確認したら、実際に演奏してみよう。
▲演奏中はドラム譜上に、正しいタイミングで叩けた音符に青いマル、間違ったところに赤いバツがリアルタイムに表示される。そこそこできていると青いマルがいっぱい並ぶ。 演奏中は、ドラム譜上で、正しいタイミングで叩けた音符に青いマルがつき、間違ったところには赤いバツが示される。叩けなかったところはそのまま無印で、音符がないのに叩いてしまったところにバツがつく。バンドではギタリストの筆者だが、以前からドラムには興味があった。練習の休み時間によく叩かせてもらったし、ドラマーには基礎中の基礎をちょっと教えてもらったこともある。だからシンプルなパターンであれば、そこそこできるのだ。しかし、ちょっと複雑なフィルインがあったり、ジャズ系の楽曲になったり、“ルーディメンツ”と呼ばれるストロークの基礎パターンをやってみたりすると、とたんに赤いバツだらけになってしまう。そんな画面を見ていると、これは基礎練習が必要だなと思い知らされるのだ。
▲ちょっと難しいパターンになると譜面は赤いバツだらけ。これは練習が必要だ。 譜面が苦手という人でも大丈夫。DT-1にはもう一つ、ゲーム画面というのがある。こちらも使う曲やパターンはドラム譜画面と同じだ。ただし表示は譜面ではなく、ゲームセンターにあるドラムゲームと同じく、パッドを叩くタイミングを示すバーが画面の上から下りてくるというもの。色分けされた各パッドのバーが、画面下端に来たときに叩くとジャストタイミング、というわけだ。感覚はゲームそのものだ。最初はドラムのパターンとして理解していなくても、バーの表示にしたがって叩けてしまうし、やっているうちに曲も覚え、パターンも身体が覚えるようになってくる。こうなればシメたもの。今度はドラム譜画面に切り替えてやってみれば、譜面も読めるようになってくるはずだ。スコアも表示されるから、ゲームとまったく同じ感覚で楽しんで練習することができる。
▲ゲーム画面では、降りてくるバーを見ながらタイミングよくパッドを叩く。まさにゲーム感覚でドラムパターンが身につく。 ■自宅で楽しく練習できるHD-3
どんな楽器でもそうだが、上達するには練習あるのみ、である。ドラムの場合、少しでも多くスティックを握ることが上達への最短経路なのだ。そのために練習パッドを使う方法もあるが、やはりドラムセットに向かう練習がもっとも効率がいい。HD-3は打感も音もリアルなので、叩いていて楽しいから練習のモチベーションも維持できるし、PCソフトのDT-1を使えばさらに効率的に楽しく練習ができる。低騒音、低振動、そしてコンパクトにまとまったHD-3は、自宅練習に最適だ。
▲防振性に優れた専用のセッティングマットのTDM-1 もお勧めしたい。 もちろん一人で練習するだけではもったいない。バンドをやっているなら、曲を作るためのデモ段階のドラムをHD-3で録れば、リアルなドラムをデモに入れることができるし、MIDI出力があるので、シーケンスソフトなどにHD-3を叩いてドラムパターンをMIDI入力することも可能だ。また、スタジオに入る前に、ギタリストやベーシストを自宅に呼んで、ミニセッションをして合わせておくことだってできる。ドラム初心者からすでにバンドでドラムを叩いている人まで、すべてのドラマーにとってHD-3はとても便利に活用できそうだ。
<HD-3 主な仕様>
キット構成:スネア、タム×3、クラッシュ、ライド、ハイハット、ハイハット・ペダル、キック・ペダル
ドラム・キット数:20
パターン(演奏例):20
メトロノーム:テンポ=40~250、音色=3種類、レベル=10段階
接続端子:OUTPUT(ステレオ・ミニ)、Headphone(ステレオ・ミニ)、MIDI OUT、トリガー・ケーブル端子(D-sub25ピン)
外形寸法:950(幅)×560(奥行)×1170(高さ)mm
質量:14.5kg(ACアダプター除く)
text by BARKS編集部 森本
◆V-Drums Lite HD-3
価格:オープン(予想実売価格 80,000円前後)
発売日:2012年1月27日
◆V-Drums Tutor DT-1(電子ドラム用トレーニング・ソフト)
価格:オープン(予想実売価格5,000円前後)
発売日:2012年1月27日
◆PM-03(パーソナル・ドラム・モニター)
価格:オープン(予想実売価格21,000円前後)
発売中
◆TDM-1(専用セッティングマット)
価格:\10,000(税込価格\10,500)
発売中
◆DAP-1(アクセサリー・パッケージ)
イス/スティック/ケーブル/イヤホンのセット
価格:\11,000(税込価格\11,550)
発売中
◆HD-3 製品詳細ページ
◆DT-1 製品詳細ページ
◆ローランドVドラム・カテゴリーサイト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
そんなV-Drumsシリーズの中で、ファミリー向けにV-Drumsの機能を凝縮したのがV-Drums Lite。コンパクトなセット、そして必要なものだけに絞り込まれた機能を持つシンプルな電子ドラムだ。そして今回、V-Drums Liteの新モデル「HD-3」が登場した。メッシュ・ヘッドのスネア、ビーターレスのキックを採用し、低振動、低騒音を実現したコンパクトなモデルで、内蔵するドラム・キット(音色)は20で、多彩な音色で演奏が楽しめる。さらに、HD-3と連携できるPC用のドラム練習ソフト「DT-1」も同時に登場。このソフトを使うことで、伴奏とともに演奏したり、ドラムの基礎やリズムパターンをゲーム感覚で学ぶことができる。まさに初心者にぴったりの組み合わせなのだ。
■組み立ては簡単
▲高さの調整は実に簡単。
まず、ペダルがついたフット・パイプをスタンド下部の左右に取り付けて、スタンドを立てる。次にタムが取り付けられたアームを左右に開いて、シンバル・パッドを取り付ければ、もうドラムセットの形がほぼ出来上がり、これだけでもなんだかワクワクしてくる。あとはケーブルを接続してパッドの位置を調整すればOK。位置の調整はかなりシンプル。アームを上下させて高さを決め、アームを開く角度によって位置関係を調整するだけだ。実際にセッティングしてみると、かなり叩きやすい位置に収まってくれた。身長188cmの筆者でもまったく窮屈な感じはしなかったし、もちろん高さや開きはコンパクトにセッティングすることもできるから、小さな子供でも問題なく使えるだろう。
▲2.1チャンネル・スピーカー・システム採用のパーソナル・ドラム・モニター「PM-03」との組み合わせ。
■操作の中心、コンパクトな音源部
HD-3の音色や機能の切り替えを行なうのが、コンパクトな音源部だ。現在選択されている音色や機能が表示される液晶パネルと、オレンジに発光する自照式のボタンが並んでいる。POPやROCK、JAZZ、HEAVY、LATIN、DANCEといった音色名の書かれたキット・ボタンは10個。これを押すとドラム・キット(音色)を変更することができ、VARIATIONボタンを押すと、そのキットの別の音色に切り替えることができる。ちなみに、キット・ボタンを長押しすると、選択されているキットを使った演奏例のパターンが再生される。どんなサウンドのキットなのかを確認するのにも便利だし、演奏のヒントとしても使えるだろう。キット・ボタンの下にはメトロノームボタンがあり、テンポのガイドとなるメトロノームを鳴らすことができる。メトロノームのテンポは、その左右のボタンで変更するという仕組みだ。
演奏時に使う機能はこれだけで、いたってシンプル。電源を入れ、音量や音色を決めたらすぐに叩ける。シンプルなだけに、電子楽器をさわったことがない人でも、すぐに使いこなすことができるだろう。
ちなみにこの音源部、セットに座った時にちょうど目の前に来るように配置されている。だから手が届きやすいし、叩きながらでも液晶の表示を確認しやすい。また、ボタンは大き目で柔らかい素材でできているため、スティックの先でも楽に押せる。
■リアルで迫力ある20のドラム・キット音色
実際に叩いてみると、どのキットの音色もリアルで迫力があり、“これは面白い!”と、すぐに夢中になってしまった。最初に選んだのはPOPのキット。液晶パネルには“Standard-V”と表示されるこのキット、まさにスタンダードな音色。張りがあって抜けもよく、明るくてよく響くサウンドだ。キックは“トントン”という感じで、単体で聴くとさほどパワフルではないように感じたが、全体で演奏するととてもバランスがよく、引き締まって聞こえる。VARIATIONボタンを押すと、表示は“Lite Pop”に変わる。先ほどのStandard-Vと似たようなキャラクターだが、チューニングを少し上げたような雰囲気になり、よりタイトで締まったサウンドになる。
その他のキットもすべてとてもリアルで、非常に気分よくドラムを叩くことができる。ROCKのキットでは、金属的な倍音も聞こえるちょっと粗っぽい、いわば“ワイルド”な音になるし、そのバリエーション・キットの“Stage”は、名前の通り大きなステージで演奏しているような響きが付け足されて、スケールの大きなサウンドになる。またJAZZキットは古い木製のドラムのような渋いサウンドで、小さなクラブで目の前で聴いているような音だ。また、WORLDやLATINキットでは、HD-3がドラムセットから、パーカッションのセットへと早変わりする。たとえばLATINではタムがボンゴ、タム2がコンガ、タム3がティンバレスになるし、WORLDではキックとスネアがカホンになり、タムがタブラやジャンベになるといった具合。これ一台で様々なジャンルに対応できるのも強みだ。
ドラムとしてだけ叩いていても十分に面白いのだが、HD-3には外部入力端子が備えられている。つまり、CDやiPodなどをつないで、好きな楽曲と一緒に演奏することができるのだ。ドラムは微妙なタイミングやニュアンスがとても大事な楽器。憧れのプレイヤーと一緒に演奏して練習すれば、そのタイミングも身についてくる……かもしれない。
■リアルなタッチのパッド、叩く強さで音色も変化
叩いていて楽しいのは、各パッドの感触もいいからだろう。とくにスネア・パッドは、実際にメッシュのヘッドが張られているだけに、バウンドの感じもリアルだし、スティックの跳ね返りが硬すぎることもなく快適だ。“ゴースト・ノート”のようなそっと触るような細かいストロークにもちゃんと反応するからロールだって練習できる。また、スネアにはゴムでカバーされたリムもついていて、いわゆるリムショットもできる。もちろんメッシュだから打音はとても静か。それでいて、本当のスネアと同じように演奏できるのだからたまらない。
タムには布製のヘッドが張られており、打音はかなり抑えられている。バウンドもそれほど違和感はない。シンバル・パッドは、ボウとエッジとで別の音が鳴るので、たとえばエッジで“ジャーン”とクラッシュもできるし、ボウで“カンカン”とリズムを刻むこともできる。またエッジにはミュート用のセンサーがある。ここを握るとミュート、つまりシンバルの音を“ビシッ”と止めることができる。シンバルミュートをタイミングよく決められると、すごく気持ちがいいものだから、ついついブレイクのある曲ばかりを演奏してしまった。
叩く強さによって、音色が変化するところも面白い。実際に打楽器を叩いた場合、叩く強さが変わると、音量だけでなく倍音や響きが違ってくるのだが、HD-3ではそんなところもリアルに再現されているのだ。それだけではなく、強さによって、別の音色に切り替わるキットもある。たとえばLATINキットのコンガやボンゴでは、弱く叩くとタップしたような小さな音だが、強く叩くとスラップした際の鋭い音色に切り替わるし、ティンバレスは強さに応じて音程が変わり、もっとも強く叩くとリムショットになる。さらにTIGHTの“Funky Jam”キットではタム2がスラップベースの音になるのだが、これも強さによってベースの音程が変化する。どれくらいの強さで叩けばどんな音になるのかをきちんと把握しなければならないけれど、それさえわかれば、シンプルなこのセットでもかなり面白いことができそうだ。
■ツーバスにも対応する低騒音のビーターレス・キック
HD-3で大きな特徴となっているのがビーターレス・キック。なんとベース・ドラム用のパッドはなく、ペダルだけでキックを演奏することができるのだ。センサーがペダルに内蔵されていて、ペダルを踏み込むと音がするという仕組みだ。従来の電子ドラムでは、実際のドラム同様に、キック・ペダルでキック・パッドを打ちつけて演奏するものがほとんどだったが、キック・ペダルはとてもパワーがあり、その振動は直接床に伝わってしまう。だからキックが最大の騒音源になっていた。しかしこのHD-3にはビーターがない。だから振動も騒音も抑えられているのだ。
また、ツーバスにも対応したキットが含まれているのも面白い。HD-3の左右にあるキック・ペダルとハイハット・ペダルは、実は同じ構造になっているため、HEAVYのキットを選択すると、ハイハットが左のキックとして使えるようになるのだ。疾走感のあるへヴィメタルでドコドコとツーバスを踏んでいると爽快なのだが、置き方によってはセット全体の揺れもかなり大きくなる。フット・パイプをしっかり取り付けて固定し、スタンドを安定した状態で設置するよう注意しておきたい。
また、セット全体の左右を入れ替えて、左利き用のセッティングにすることもできる。これも、キックとハイハットのペダルが共通だからこそできることだ。
■より楽しく、効果的に上達できるドラム練習ソフト「DT-1」
低騒音のHD-3は自宅練習用にもってこいなのだが、HD-3を使ってさらに効率的にドラムを上達させる方法がある。それはV-Drums Tutor DT-1というソフトを使うことだ。これはV-DrumsシリーズをPCと連携させて使えるドラム練習ソフトで、曲に合わせて演奏しながら基本的なパターンを学んだり、ドラムの基礎を譜面などで確認しながら習得できるというものだ。HD-3にはMIDI出力があり、これをPCに接続することで、どのパッドをどのタイミングで叩いたかがソフトの画面でみることができ、上達度を確認することができるわけだ。今回はローランドのUSB MIDIインターフェース UM-ONEでPCとHD-3を接続して使ってみた。
DT-1を起動すると、ドラム譜画面が表示される。右下には曲のリストがあって、Songには基本パターンを中心にフィルインも含めた練習曲が60曲、Exerciseにはスティックのストロークの基礎練習が57パターンある。ここで曲を選択すると、そのドラム譜が上部に大きく表示される。ここでの基本的な練習方法は、まずお手本を聴き、どのパッドをどう叩くかを見て確認する。そして実際に演奏し、どの程度できていたかをソフト上で確認する、という流れになる。
まずはお手本を聴いてみよう。リストから曲を選択し、再生ボタンをクリックすれば演奏が始まる。このとき、譜面上を赤いボールが拍子に合わせて移動するので、今聴いているところが譜面ではどう表されているかを見ることができる。また、左右どちらの手で叩くかの手順もLとRで表示される。左下のパッド画面では、そのタイミングで叩くべきパッドにマークが点灯するから、実際にセットでどのように叩くかを見ることができる。お手本を確認したら、実際に演奏してみよう。
▲演奏中はドラム譜上に、正しいタイミングで叩けた音符に青いマル、間違ったところに赤いバツがリアルタイムに表示される。そこそこできていると青いマルがいっぱい並ぶ。
▲ちょっと難しいパターンになると譜面は赤いバツだらけ。これは練習が必要だ。
▲ゲーム画面では、降りてくるバーを見ながらタイミングよくパッドを叩く。まさにゲーム感覚でドラムパターンが身につく。
どんな楽器でもそうだが、上達するには練習あるのみ、である。ドラムの場合、少しでも多くスティックを握ることが上達への最短経路なのだ。そのために練習パッドを使う方法もあるが、やはりドラムセットに向かう練習がもっとも効率がいい。HD-3は打感も音もリアルなので、叩いていて楽しいから練習のモチベーションも維持できるし、PCソフトのDT-1を使えばさらに効率的に楽しく練習ができる。低騒音、低振動、そしてコンパクトにまとまったHD-3は、自宅練習に最適だ。
▲防振性に優れた専用のセッティングマットのTDM-1 もお勧めしたい。
<HD-3 主な仕様>
キット構成:スネア、タム×3、クラッシュ、ライド、ハイハット、ハイハット・ペダル、キック・ペダル
ドラム・キット数:20
パターン(演奏例):20
メトロノーム:テンポ=40~250、音色=3種類、レベル=10段階
接続端子:OUTPUT(ステレオ・ミニ)、Headphone(ステレオ・ミニ)、MIDI OUT、トリガー・ケーブル端子(D-sub25ピン)
外形寸法:950(幅)×560(奥行)×1170(高さ)mm
質量:14.5kg(ACアダプター除く)
text by BARKS編集部 森本
◆V-Drums Lite HD-3
価格:オープン(予想実売価格 80,000円前後)
発売日:2012年1月27日
◆V-Drums Tutor DT-1(電子ドラム用トレーニング・ソフト)
価格:オープン(予想実売価格5,000円前後)
発売日:2012年1月27日
◆PM-03(パーソナル・ドラム・モニター)
価格:オープン(予想実売価格21,000円前後)
発売中
◆TDM-1(専用セッティングマット)
価格:\10,000(税込価格\10,500)
発売中
◆DAP-1(アクセサリー・パッケージ)
イス/スティック/ケーブル/イヤホンのセット
価格:\11,000(税込価格\11,550)
発売中
◆HD-3 製品詳細ページ
◆DT-1 製品詳細ページ
◆ローランドVドラム・カテゴリーサイト
◆ローランド
◆ローランド チャンネル
◆BARKS 楽器チャンネル
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