| おそらく現在、Mary J. BligeほどリスペクトされているR&Bシンガーはいないだろう。'92年のアルバム『What's The 411?』以来リリースされた5枚のスタジオ・アルバム全てが、プラチナに認定されているだけでなく、批評家からも賞賛を受けている。さらに'95年には、Method Manとのコラボレーション「I'll Be There For You/You're All I Need To Get By」でグラミーも受賞した。ヒップホップ・ソウルの女王がこの10年間、王冠を手にしてこれたのは、彼女が本物というだけでなく自身の音楽と深く結びついているために違いない。結果から言えば、Maryはヒップホップ世代のArethaなのだ。 実生活はトラブルだらけという噂が流れていた数年の間に、NY、ヨンカーズ育ちのMaryは、アルバム『No More Drama』('01年)をリリースしている。このアルバムで彼女は、何故、彼女のヴォーカルがここまでドラマチックなのかその理由を明らかにした。彼女の曲に表現される痛みは、作りごとばかりではなく、実生活に関係したものだった。Maryはアルバムの中で、人間関係や幼児虐待、ドラッグといった様々な問題との葛藤、そしてそれらをどのように克服したのか包み隠さず打ち明けている。さらに素晴らしいのは、全てを告白した後でさえ、彼女は少しもソウルを失っていないのだ。それは、ニュー・アルバム『Love & Life』やアルバムからの1stシングル、ファンキーな「Love @ 1st Sight」で証明されている。 LAUNCHの編集者Billy Johnson Jr.が、過去の体験や変化、これからの音楽の行方について、Maryから話を聞いた。 ――「Family Affair」が初めてNo.1になったことをどう思いました? Mary:ハッピーよ。自分が前進してるって事実を誇りに思ってるわ。これをきっかけに多くのすばらしい出来事があったわ。有頂天にはなってないけど……、だってそれまでNo.1を獲ったレコードはなかったし、No.1アーティストみたいに振舞ってこなかったから。わかるかな? 世の中に合わせて自分を変えなくてもいいってこと。それは大きいわ。昔は、社会に合わせて生きてきた。今は自分のために生きている。『Family Affair』が1位になったことに、ほんとに誇りに思う。社会は社会、彼らが私に対して、どんな考えを持っていようがそれを変えることはできないし、No. 1だろうと何だろうと、私に対してどんなイメージを持ったって構わない。でも、全て神のおかげよ。No.1レコードは、ほんと誇りに思ってる。唯一のNo.1。そして、これが最後じゃないわ。 ――No.1アーティストらしく振舞っていなかったというのは、どういう意味ですか? Mary:自分に対して、No.1らしく振舞ってなかったってこと。自分のことを第一に考えることさえなかった。自分を愛してなかったし、どうでもいいって思ってた。でも、自分は自分だし、周りの環境も含めて自分自身なんだと思えるようになった。おかげで、全てを音楽に注ぎ込めるようになったの。前は痛みやネガティヴな感情がたくさんあったわ。その結果があれよ。今の私の音楽にはたくさんの楽しみや、努力、抱負、未来への期待がある。たくさんの愛や希望、そういうものを手に入れつつあるの。自分のやること全てが上手くいくってわかってきたのよ。 ――Dr. Dreとの仕事はどうでした? 彼は完璧主義だって聞いていますが。 Mary:『Family Affair』では、彼と直接会って、仕事したわけじゃないの。電話で作業を進めたのよ。彼と電話で話してて、電話でさえ彼は彼の好きなことをやりたがり、私は私のやりたいことをしたかった。ま、それは大げさだけど、結局、彼のしたいことに挑戦することにしたわ。彼のアイディアが、いい考えだと思ったから。そんな感じ。 ――人々に「No More Drama」という曲のストーリーをわかってもらうのは、どれくらい重要なことだったのでしょうか? Mary:そう、みんなに「No More Drama」の意味やストーリーを理解してもらうのはとても重要なことだった。あれは心のこもった、鳥肌が立つような曲だったから。スピリチュアルなものだし、救いの曲なの。私が、アルコールやドラッグ、良くない人々や自分自身から解放されていくって感じ。自分が自分をダウンさせてたの。だからとても大事なことだった。だって、世の中にはアルコールやドラッグ、自己嫌悪から解放されなきゃいけない人がたくさんいるでしょ。自分に何か障害がある時って、なんで隣の奴は上手くいってるんだろうって思うわ。それは、自分のことをちゃんと大切にしてないからよ。だから「No More Drama」に込められたメッセージを理解してもらうのは、すごく大事なことなの。ファッションや乱痴気騒ぎなんてどうでもいいのよ、そんなものは日常茶飯事でしょ。人がね、何かの見返りを気にせず他人のために何かをしてあげたいって思うことは、あんまりないのよ。 ――Jimmy JamとTerry Lewisのところへ行った時、すでにこの曲ができてたんですよね。あなたの反応はどのようなものだったのでしょうか? Mary:Jimmy JamとTerry Lewisがこれを私のためにプレイしてくれた時、2回位しか一緒に仕事したことのない人たちが、私の人生をこんなに理解してるなんて……、当時私がいた状況を把握してるなんて信じられなかったわ。あの時点で、彼らは私の人生を理解していた。私があの状況から抜け出す準備ができているってわかっていた。歌詞を通じて、全てが曲の中にあったのよ。 ――驚きましたか? Mary:ちょっと、驚きだったわね。当時は彼らのことをよく知らなかったから。ただ、彼らはいい人たちだってことしか知らなかった。私を家族の一員のように扱ってくれたわ。すごく驚いたけど、口に出しては言わなかった。ただ素直に「ワオ、これが今の私よ」って言ったの。彼らにはわかっていただろうけど。 ――TVドラマ『Young & The Restless』のテーマが全体に流れているのは? Mary:『Young & The Restless』のテーマは、まさにうってつけだったのよ。ドラマだもの。ネガティヴなドラマ。あのストーリーはどれも、誰かが殺されるとか不倫するとかドラッグやってるとかっていう、ネガティヴなものばかりでしょ。みんな、『Young & The Restless』には共感できるのよ。誰でもできるわ。お爺ちゃん、お婆ちゃん、もしくはお母さんたちが『Young & The Restless』を見ていた環境で育ってきた人たちはね。 ――あのアルバムで最も癒し系な曲が、Eveとの「Where I've Been」だと思うのですが、あの曲を書くのは大変でしたか? Mary:「Where I've Been」を書くのは、全然、大変じゃなかったわ。私が経験したことだったし、あの曲には、私たちの生き方やどうして私が高校を卒業しなかったのか、どうしてドラッグに手を出す羽目になったか……、なんで、なんで、なんでってことがたくさんある。大変じゃなかったわ。私みたいな人が世の中にはたくさんいるって知ってたから。何をしちゃいけないのか知る必要のある少女がたくさんいるのよ。だから歌詞やビジュアルを通じて、私がそのお手本になるのは構わない。生きた実例としてね。 ――その少女がそれら全てを克服して成功を手にし、そして6枚目のアルバムを出すことをどう思いますか? Mary:そうね、私が経験したことを知る……『Behind The Music』からこのアルバムまでオープンに話してきたことを今でも体験してるのは……、私はいつも包み隠さず話しているから、それが何なのかみんな知ってるでしょ。克服できたからこそ、全てにいい感情を持ってるわ。私は後戻りするつもりないもの。道を外れるつもりもないわ。どんどん、どんどん良くなっていくのよ。信仰にしても、持っていることはわかっていたけど、本物だと確信できなかった。その何かを手に入れつつある。それが私に起きた最高のことよ。たくさんのドアが開いてるってことを知ったもの。克服できたっていうのはすごくいい気分よ。嫌な感情は全くないわ。 >>Part.2に進む (C)LAUNCH.com | |