スーパースターの片鱗を示したR&Bの歌姫

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スーパースターの片鱗を示したR&Bの歌姫

ロスアンゼルスで駐車スペースを探すのは熱烈な共和党支持者を見つけるよりも難しいが、それでもR&Bファンは何とかして6月9日にユニヴァーサルアンフィシアターまで辿り着いた。Jagged Edge、Carl ThomasそしてヘッドライナーのMary J. Bligeを見るためである。

しっとりとした歌声を聞かせるJagged Edgeは、女性が大半を占める聴衆をうまく盛り上げる役目を果たしたが、女性ファンが本当に登場を待ち望んでいたのはもちろんThomasであった。しかしながら、ちょっとしたトラブルがあって、Thomasは最後まで姿を見せなかったのである。Bligeも彼の不在をやり過ごすことはできなかったようだ。

Bligeはステージに登場するとすぐに「
できればCarl Thomasが早く来てくれるといいんだけど。とにかく彼の無事を祈りましょう…」とコメントした。

だが、Thomasこそが当夜の一番のお目当てだと思ってきた女性ファンは許してくれそうもなかった。

「彼が出てこないなんて信じられない!」、25歳のErikaは絶叫した。

「彼はそれほどビッグじゃないかもしれないけど、もう完全にブレイクしているわ。病院にでも入ったか、何かの事故に巻き込まれていないかぎり、出演しているはずよ」。

BligeがThomasの穴を埋める以上の活躍を見せたのが、何よりの救いとなった。彼女が登場するオープニングには、大掛かりな仕掛けが用意されていた。巨大なビデオスクリーンにはStan Lee制作のアニメーションが投影され、そこではスーパーヒロインに粉したBligeが世界一の悪玉から地球の子供たちを守る姿が描かれていたのである。数秒後には当夜の主役が登場し、何千人ものファンがこのR&Bの歌姫を熱狂的に歓迎したのだった。

Bligeは誠実なショーウーマンシップを見せつけた。1年前に彼女が同じ会場に出演した時にはあまりスタイルが良いとは言えなかったが、今回はずっとスリムになったお腹を露出させたセクシーなシルヴァーの衣装をまとって、洗練されたスーパースターの風格に満ちていたのである。

彼女は大勢のシンガー、ダンサー、優秀なミュージシャンをバックに従えていたが、彼女が受けたスタンディングオヴェイションの大きさを考えれば、そうしたサポートは必要ないことは明白だ。彼女はWickerのマイクを通して一人だけで歌ったとしても、聴衆のハートをつかまえたままステージを降りることができたであろう。

彼女はスムースなグルーヴとラフなラップの間を軽々と行き来し、ソウルとポップを大胆に融合させながら、お馴染みのレパートリーをパワフルに披露して聴衆を魅了した。

このR&Bの女王が続いて繰り出したのは70年代のヒット曲「I'm Going Down」のハートをよじるようなリメイク版であったが、それでもなお彼女は若い世代の代表者らしいイメージを維持していた。

「今夜のショウは彼女を見るためだけに来たの」と熱狂的に話すのは、開演まぎわにチケットを手に入れたラッキーなBligeファンのMichelle。

「何年か前に彼女のコンサートを見てからのファンなの。多くの女性が彼女に自分を重ねることができるのは、彼女がとってもリアルに感じられるからよ」

オーディエンスの中の現代的な女性はBligeのステージでの態度を高く評価するだろう。とりわけ彼女がある曲の途中で演奏をストップさせて、Aretha Franklinとのビデオデュエットで同期に失敗したエンジニアを激しくなじったシーンは見事であった。

Bligeは“女だって自分で物事を仕切るのよ”的な実直な態度で、彼女のショウで“サボタージュ”を働いたスタッフに対して冒涜的な侮蔑の言葉を矢継ぎ早に投げ付けたのである。そして観衆からの圧倒的な喝采に支えられて、その曲をもう一度やり直すよう要求したのだった。

今度こそArethaのパートをちゃんと入れてよね」と高飛車に命令する彼女は正しく女王様そのものであった。

Jagged Edge
オープニングアクトのJagged Edgeは、初のビッグツアーに出たばかりのグループとしては上出来のショウを展開した。

現在ウェディングソング「Let's Get Married」のシングルヒットで人気急上昇中の4人組は、30分のセットの間ずっと女性客からの歓声を浴び続けていた。オーヴァーサイズのホワイトジーンズと片袖のシャツを合わせた彼らのステージ衣装(後半では同様にこざっぱりした総ブラックのコスチュームに着替えた)も、彼女たちに気に入られたようだ。

当夜の女性ファンの反応から判断すれば、Jagged EdgeはNew Editionにインスパイアされた最新アルバムのタイトル『J.E. Heartbreak』にふさわしいアーティストに成長したと言えるだろう。

by Vic Everett


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