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オハイオの水には何が入っているんだろう。そいつを全米各地に広めてやりたいものだ。地理的には見るべきものもなく、どこも同じような町ばかり。なのに、ことロックンロールにかけては最高の歴史を誇る州が、他にあるだろうか。まぁ、確かにMichael Stanley Bandは今ひとつだった。でも、Peru UbuとChrissie Hyndeがそれを補って余りある。

Hyndeは当初、ロックジャーナリストとしてイギリスの雑誌に寄稿していたほどだから、退廃的な魅惑のポップライフというやつには、そもそも馴染みがあった。そのHyndeと組んだドラッグ絡みの仲間数名が、まもなくして彼女の手になるパンクの奔放さをはらんだ変拍子の楽曲を奏で始める。バンドの1stアルバムは、Nick LoweのプロデュースによるKinksのカヴァー曲、“Stop Your Sobbing”をフィーチャーしていたものの、大方はHynde女史自らのペンによるパワー満載のオリジナル曲であった。

並々ならぬ曲作りの腕もさることながら、彼女の震える歌声は臆面も無く誘惑的で、熱っぽい流し目といい、たまらないセクシャリティを湛えていたのだが、一方でバンドの力も決して軽んじられない。Joy DivisionやRolling StonesやCanやFallがそうであるように、Pretendersもやはり、魅力あるメンバーひとりひとりの合計にも勝るバンドなのだ。

しかし、ここからは、文章にすると冴えなくなる。2ndアルバムは、いくつか聴くに値するものがあったにしろ、あとは一歩間違えばパロディといった曲ばかり。1年のうちにベーシストのPete FarndonとギタリストのJames Honeymann-Scottがドラッグの過剰摂取で死んだことを思えば、長く創作活動から手を引いたりしていたら、どうなっていたことか。HyndeとドラマーのMartin Chambersは、少し時間をかけてバンドを立て直し、『Learning To Crawl』でスイングしながら戻ってきたのだが、激しい感情の波と正統派の曲構成を共存させたこのアルバムも、前作との比較が足かせとなり、『Get Close』に至っては、Hyndeの独特なサウンドもすっかり失われてしまう。

恐らくは母親になったからなのか(彼女には、KinksのRay Daviesと、Simplbe MindsのJim Kerrとの間に1人づつ、計2人の子供がいる)、あるいは他に何か喜びを見い出したからなのか、いずれにせよそのために、彼女はロック的な攻撃力から手を引かざるを得なくなったようだ。

その後も数枚のレコードを出してはいるが、彼女の復帰が伝えられるたびに、まずは騒がれて、その後には、かつてのパワーはおよそないことが、悲しいかな確認されるのであった。

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