【インタビュー】越境するエレクトロ、Wang Oneが見た日本と音楽の今

2026.03.03 20:00

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日本での活躍のみならず世界から注目を集めるアーティストや、世界を視野に活動しているミュージシャンをゲストに迎え、MCを務めるmikako(Nagie Lane)とミュージシャントークを繰り広げるのが、interfmの音楽ラジオ番組「TOKYO MUSIC RADAR」だ。

そんな「TOKYO MUSIC RADAR」にゲストとして登場したのが、Lola One(ローラ・ワン)とCase Wang(ケース・ワン)の2人によるエレクトロユニットWang One(ワンワン)だ。中国出身のふたりは何故日本に来て音楽活動をすることになったのか。話を聞いてみよう。もちろん話のお相手は、Nagie Laneのmikakoだ。

──(mikako)本日は、エレクトロニックユニットのWang Oneをお迎えしました。

Lola One(ローラ・ワン):Wang Oneのローラ・ワンです。私は中国南京の出身で、6年前に日本に来ました。

Case Wang(ケース・ワン):Wang OneのCase Wangと申します。Wang Oneのサウンドプロデュース担当で、同じく6年前に日本に来ました。

──(mikako)こんなに日本語が喋れるなんて、いつから日本語の勉強を?

Case Wang(ケース・ワン):ふたりとも日本カルチャーが好きなんです。学生時代から色々日本のアニメとかを見ていて、アニメの中の言葉を勉強してました。

──(mikako)ちなみにどんなアニメですか?

Case Wang(ケース・ワン):僕は「進撃の巨人」とか「東京喰種トーキョーグール」とか。

Lola One(ローラ・ワン):私は「ONE PIECE」が好きだったので、「野郎ども!」とか言っちゃってました。

──(mikako)そうなっちゃいますよね(笑)。そもそも、どうして日本で音楽活動することになったんですか?

Case Wang(ケース・ワン):僕は高校時代から自宅でDTMを始めたんです。中国に網易(ネットイース/NetEase)というSpotifyやSoundCloudのようなサービスがあって、そこに自作の音楽をアップしていたんですけど、そのうちの1曲がバズって、そこからどんどん他の曲も再生されるようになって、結局1000万再生されたんです。それでちょっと自信ができたんですけど、自分の好きなYMOとかダフト・パンクのような音楽は中国ではあまり支持されていない状況なので、日本でちゃんと活動したいと思って。

──(mikako)そうなんですね。ローラさんが日本に来たきっかけは?

Lola One(ローラ・ワン):私も、自分で作りたい音楽は中国ではあまり売れないなと思ったんです。もともと日本のアニメが好きですし、中国からも近いし両親にも心配をかけないので、自分が好きな音楽を作ってアジアから発信して世界へチャレンジしたいと思って。

──(mikako)それぞれ同じような志を持って日本に来たわけですが、中国では知り合いではなかったんですよね?どこで出会ったんですか?

Case Wang(ケース・ワン):渋谷にあるTSMという音楽学校で。

──(mikako)そこで意気投合を?

Lola One(ローラ・ワン):でもあの時は、コロナになっちゃったからオンライン授業しかなくて、その時は知り合えなくて。

Case Wang(ケース・ワン):で、1年後に出会って、音楽もお互いに好きで「一緒にやりましょう」って。

Lola One(ローラ・ワン):それまでは全然知らなかったっていう。

──(mikako)お互いの音楽のどんなところに惹かれたんですか?

Case Wang(ケース・ワン):最初は、音楽学校で自分の作品をみんなで一緒に聞くっていうレッスンだったんですけど、その時ローラは、ロックバンドのシンガーだったんですよ。

──(mikako)え、ロックだったんですね?

Case Wang(ケース・ワン):結構ハードロックだった。僕はエレクトロのトラックメーカーだったんですけど、その時のローラのボーカルがインパクトあっていいなと思ったんです。それでローラに連絡したんですけど、そしたらローラもちょうどエレクトロ・ミュージックも作りたいって思ってて、それでやり始めたんです。

Lola One(ローラ・ワン):あの時、やりたい音楽とか出したい気持ちがあっても、どう作ればいいかわからなかったんですけど、ケースと話をしたらあれもできるしこれもできるということを知って、一緒にやろうということになりました。

──(mikako)素敵ですね。お互いの良さと思いが合致したんですね。もともとはローラさんはロックが好きだったんですか?

Lola One(ローラ・ワン):そう。私、元々はレディオヘッドとかオアシス、AC/DCとか好きで、中国にいた時はロックバンドもやっていてました。ハードロックなめちゃめちゃ激しい感じ。でも今の私にはちょっとハードすぎるかなと思って、本当にやりたいことを考えた時に、ケースと出会いました。

──(mikako)いい相棒なんですね。

Lola One(ローラ・ワン):私が「こういう雰囲気の曲がやりたい」というと、1曲すぐに作ってくれるの。

Case Wang(ケース・ワン):でも、ローラの言い方が結構おかしくて、例えば「森の中で、本を読みたくなるような雰囲気を出したい」とか言うんですよ。

──(mikako)ええー、すごい。

Case Wang(ケース・ワン):実際にスタジオで演奏しながら、「これ」みたいな、そういう作り方ですね。

──(mikako)それで思っていたものができあがる?

Lola One(ローラ・ワン):はい、できますね。

──(mikako)本当にフィーリングが合うんですね。

Case Wang(ケース・ワン):ふたりとも想像系というか、感覚の人なので(笑)。

──(mikako)思ったことや感じたこと、そのフィーリングを共有し合って、曲を作り始めるんですね。

Case Wang(ケース・ワン):そうです。ローラはアレンジに関してあんまり詳しくないけど、アナログシンセが大好きなのでよく音遊びをしたりして、ローラが「これいいね」といったところから制作が始まったりもします。

──(mikako)1月31日には新曲「Some New XXX」がリリースされましたが、これはどういう曲なんですか?

Lola One(ローラ・ワン):この曲は、自分たちの今の状況から脱却したいけど、なかなかできない状況を歌った曲で。

Case Wang(ケース・ワン):それまでずっと変わり映えしない同じような状況に陥ってて、そこから脱出したいという思いで作った曲なんです。

──(mikako)曲を作る上で意識したポイントってありますか?

Case Wang(ケース・ワン):この曲ってWang Oneの中でも1番バンドっぽい曲なんですけど、そもそも最初はアナログシンセで作っていたんです。けど、ローラが「ちょっと合わない」って言っていたので、ギターを使ってアレンジし直したら「これいいね」ってなったんです。ちょっとニューウェーブな感じで。

Lola One(ローラ・ワン):爽やかな雰囲気の曲でポジティブな感じを出したかったから、そういう風にケースに作ってもらった。

Case Wang(ケース・ワン):新しいトライだったけど、この曲って明るいエネルギーがあるので、前に一歩進む力がある感じになりましたね。

Lola One(ローラ・ワン):「あなたはできる」っていう雰囲気。

──(mikako)ポジティブなマインドが楽曲にあるんですね。バンドサウンドっぽい感じにもなって。

Case Wang(ケース・ワン):でも、結局はエレクトロですけどね。バンドとエレクトロが混ざっている感じかな。実は曲の中に中国の感じも入れたいなと思って「HA」という部分は、カンフーの掛け声を意識したものです。英語の「Hi」とか「Hey」とは違って「HA」。

──(mikako)いいですね。ルーツを感じさせてくれますね。アニメなど日本のカルチャーを好きというお二人ですが、そのあたりの影響は受けていますか?

Case Wang(ケース・ワン):アニメや二次元文化も好きでしたし、僕は高校時代はJ-ROCKのコピーバンドを演ってましたから。ONE OK ROCKとかMY FIRST STORYとか。結構中国でも人気なんですよ。

Lola One(ローラ・ワン):私はワンピースが大好きですけど、私、尾田栄一郎さんと誕生日が同じなので「運命♡」だと思いながら、日本に来ました(笑)。

──(mikako)実際に日本に来てみて、カルチャーギャップってありました?

Case Wang(ケース・ワン):日本に来てみたら、実際にはアニメのような人がいなくて、アニメと全然違いました。逆に中国では、街中でコスプレしている人も多いんですよ。日本よりアニメっぽいかも。

Lola One(ローラ・ワン):そうなんです。身近なカルチャーじゃなくて想像の世界だからこそ、アニメの中にいるような楽しさを感じていたいんですよ。

──(mikako)確かに、日本の日常ではコスプレはあまりしていないですものね。逆に、じゃあ、その、中国では当たり前だけど、日本では違うなって感じたものってありますか?

Lola One(ローラ・ワン):日本だと、時々現金じゃないとダメなことがあって、あれは困ります(笑)。食べたいと思っても、諦めなければならない。

Case Wang(ケース・ワン):でも最近は、小さいお店でも中国のQR決済…アリペイって言うんですけど、それも使えるようになってきてびっくりしました。

Lola One(ローラ・ワン):確かに支払いはそれが便利。あとネットでの買い物とかは、中国だと電話で問い合わせすればいいんだけど、日本だと問い合わせはメールになっていて返事を2~3日待たなければならないから、あれはちょっと面倒だと思います。

Case Wang(ケース・ワン):あ、あと、食べ物で思い出した。日本人って、餃子はご飯と一緒に食べるでしょう?

──(mikako)はい。

Case Wang(ケース・ワン):中国ではそれはありえない。餃子はご飯みたいなものなので、それと別の料理を食べるんだけど、ご飯だと炭水化物と炭水化物で(笑)。

──(mikako)チャーハンと餃子というのもダメ(笑)?

Lola One(ローラ・ワン):それは、お金がないからそれでお腹を満たしている感じ。

──(mikako)ええー(笑)、学生時代にお金がないからお米を大量に食べてお腹を膨らます感じってこと?じゃあ、餃子と何を頼めばいいの?

Lola One(ローラ・ワン):スープとか、あとはチンジャーロースとか色々…野菜ものや肉料理とか。

Case Wang(ケース・ワン):餃子はご飯と同じものなので。

──(mikako)そうか、面白い。日本の餃子自体は、中国と比べてどうですか?

Lola One(ローラ・ワン):日本の餃子は、肉餃子しかないというイメージ。中国って、麻婆豆腐餃子とかトマトと卵の炒め物餃子とか、炒め物が入っている餃子もあるので。

──(mikako)いろんな餃子があるんですね?

Lola One(ローラ・ワン):そう、色んな種類があるの。

Case Wang(ケース・ワン):春節とかに家庭で餃子を作ったりするんですけど、家ごとに中身が違ったりするんです。家それぞれ違う味で、僕のうちのおばあさんは結構ネギとかにんにくが入っていて辛い餃子ですね。

Lola One(ローラ・ワン):あと、ラム肉が入っている餃子もある。美味しいよ。あと、北京ダックも違う。日本だと冷凍だったり予約しないと食べれなかったりするけど、中国では普通に食べられる。店先にダックがぶら下げられているから。

Case Wang(ケース・ワン):町の中どこでもあるよね。

──(mikako)北京ダックって、ちょっと高級な料理だと思うんですけど、中国だったらいつでもすぐに食べられるんですね。

Lola One(ローラ・ワン):餃子みたいなものです。

──(mikako)え、餃子と北京ダックが同列?

Case Wang(ケース・ワン):もちろん贅沢な高級北京ダックもあるんですけどね。

──(mikako)勉強になるー。逆に日本の料理のはどうですか?

Lola One(ローラ・ワン):食べると身体にいい感じがします。

──(mikako)ヘルシーなイメージ?

Case Wang(ケース・ワン):とりあえず、健康な味がするというのが最初のイメージだった(笑)。

Lola One(ローラ・ワン):でも、ちょっと何かもの足りない感じもあるかな。

Case Wang(ケース・ワン):でもラーメンは食べる。日本のラーメンは美味しい。

──(mikako)食べ物と同じように、音楽でも違いを感じることはありますか?

Case Wang(ケース・ワン):結構あります。やっぱり日本の音楽も日本人のイメージと同じで、細かくて丁寧ですよね。

──(mikako)面白い。そういうのって出るんですね。

Case Wang(ケース・ワン):Wang Oneの曲も、多分日本の曲と比べたらちょっとシンプルかもしれない。J-POPでもエレクトロでも音がたくさん詰まっていて、コード進行もいっぱいですよね。

──(mikako)わかります。こちらで活動していると、自然と音数も増えていきますか?

Case Wang(ケース・ワン):でも、毎回アレンジ最後の段階では、トラックを減らしています。音がいっぱいになったら主役がなくなるので、パートごとにどれが主役なのかをイメージして。

Lola One(ローラ・ワン):ポイントが重要ですよね。

──(mikako)Wang Oneは日本で結成され日本で活動をしているわけですが、日本の音楽業界は中国となにか違いを感じますか?

Case Wang(ケース・ワン):中国の音楽関係の中で活動していた時は、周りもみんなミュージシャンだから「ヘイ、ボーイ」って感じで気さくにコミュニケーションを取るんですけど、日本はやっぱり普段の生活と同じように丁寧というか、控えめな感じですよね。日本のカルチャーを感じます。特に日本のエレクトロミュージックって、ビジュアルとも合っていてすごく魅力的だと感じます。アンビエントサウンドとエレクトロ、ノイズっぽいところがビジュアルも合わさって、めちゃかっこいい。多分その感じは、日本でしか見たことない雰囲気かな。

──(mikako)音楽とビジュアルがマッチしているんですね。

Case Wang(ケース・ワン):特にちょっと静かなアンビエント系のアートワークとかは、日本でしかみたことのないスタイルだと思います。音楽だけじゃなくて、建築にもありますよね。打ちっぱなしのコンクリートの空間に花が一輪あるシンプルなデザイン…みたいなミニマルな要素にも日本独自のカルチャーを感じます。この前、教授(坂本龍一)の個展を観に行ったんですけど、教授の音楽と風の音で周りの空間もデザインされていて、そういうことをすごい感じました。

──(mikako)音楽だけじゃなくて、空間も融合して作るアートの世界ですね。そういうクリエイティブにも興味ありますか?

Case Wang(ケース・ワン):あります。もともとビジュアルとサウンドを融合して一緒に出していきたいというのがWang Oneのスタイルなので。

Lola One(ローラ・ワン):今年はたくさん曲を出してアルバムを作りたいんですけど、1曲1曲がショートムービーになっていて、それらの曲が全部繋がっているような映像作品を作りたいと思っています。

Case Wang(ケース・ワン):ふたりとも映画も大好きなので。

──(mikako)うわ、それは楽しみですね。海外での活動も視野にありますか?

Lola One(ローラ・ワン):はい、もちろんです。

Case Wang(ケース・ワン):今は日本にいるんですけど、やっぱり海外を目指しています。今の中国だと壁があってAppleMusicとかSpotifyとかと繋がっていないので、日本から出発して世界を回って、自分の国に戻るかたちかな。

──(mikako)これからの活動を楽しみにしています。ありがとうございました。

mikako、Lola One(ローラ・ワン)、Case Wang(ケース・ワン)

インタビュー◎mikako(Nagie Lane)
文・編集◎烏丸哲也(BARKS)

◆Case Wangオフィシャルサイト