【インタビュー】百戦錬磨の男たちによるガールズバンドGUMMY、型破りで刺激的な初EP完成「この4人が楽しめてるってことが大事。まだまだ飽きそうにない」

過去のある男たちによる新人ガールズバンド、それがGUMMYである。その正体というか素性について型通りの説明をすることは興ざめなので避けておくが、重要なのは決してこれが彼らの“裏の顔”というわけではなく、ライヴバンドとして歩み始めたばかりの彼らが満を持して発表した初のEP『GIVE ME GUMMY』が呆れるほど刺激的で型破りな作品だということだろう。今回はその完成に際しての4人の肉声をたっぷりとお届けする。
文中、ギタリストの呼称がマッド・デンジャラスになったりaieになったり、各メンバーの主語にも“僕”と“俺”が混在していたりして読みにくい部分もあるかもしれないが、そうした表記のあり方についても彼らの音楽と同様、敢えて事務的な統一や調整はせず、できるだけ“生”に近い状態で、20,000字オーバーのロングインタビューをお届けしようと思う。

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■最初に僕がaie君を誘ったのが切っ掛け
■aie君の紹介でLotty、その後にGara君が合流して
──マッド・デンジャラスさん、顔色があまり良くないですが。
マッド:安定の二日酔いです(笑)。昨日(4月15日)はニコ生の生放送があって、そもそもはライヴ映像を流しながら副音声的にあれこれ喋るような形にしたかったんですけど、それとは関係なく話がただただ盛り上がっちゃって、90分間まったくライヴ映像を見ずにただただ喋り尽くして終わってしまって。結果的に、乾杯から始まって90分飲み続けるフリートークになっちゃいました(笑)。
Gara:最初はライヴ映像がメインで僕らが喋ってる様子はワイプ扱いだったんですけど、それが逆になりました、途中から(笑)。
──それじゃあ単なる呑み会の生中継じゃないですか!
マッド:そうなんです。しかもそこでスイッチが入ってしまって、生放送が終わった後も朝まで吞んでしまったというわけです(笑)。
──そのスイッチが朝まで切れないのがすごいです。
Lotty:GUMMYはヤバいと思いますよ、飲み過ぎです。
マッド:ブレーキが付いてないからね、この車の場合。止まる時は何かにぶつかるしかないというか(笑)。
──そのようなマッドでデンジャラスな状況から、康太さんはいち早く……
マッド:逃げた(笑)。
康太:昨日はすぐに脱出しました(笑)。みんな僕のことは全然気にせずに楽しんでくれ、というスタンスで。
──支配人という康太さんのポジションとしては、それも重要かもしれません。そして早速ですが、こうして完成に至った作品について皆さんどのように感じているんでしょうか?
Lotty:レコーディング自体は、古いものについてはもう2年ぐらい前、2024年のうちに完了してたんですよ、実は。
マッド:「暇だから録っちゃおうぜ」ということになって。その時点でもうGara君はいたよね? だから一緒にやろうってことになった瞬間にもうレコーディングが始まっていたという感じで。
Lotty:その時点ですでに12曲ぐらい録り終えていて。とりあえず弾(たま)だけ先に作っておいて、それからこの先のツアーに向けてのライヴ活動が始まったんで、ライヴでファンが楽しめる楽曲をメインに詰め込んだのが今回の作品ですね。
──全6曲収録。ミニアルバムというか、EPというか。
マッド:我々の世代からするとミニアルバムなんですけど、最近はどうやらEPと呼ぶらしいじゃないですか。そこについてはしっくりきてないけど、まあいいか、と(笑)。そもそもミニアルバムとEPの違いって何なんですか? 収録時間?
──厳密な違いはないと思いますよ。ただ、ミニアルバムという言葉は日本にしかないと思いますけど。
マッド:なるほど。でもまあ俺らの感覚からするとミニアルバムですよね。
Lotty:違いがよくわからないままリリースに至る、ということで(笑)。

──作品形態の呼び方はどうあれ、ライヴでの即戦力になりそうな曲たちがツアー開幕を前にリリースされる、ということですね? というか、今の話を聞いていて“2年前にはすでにいろいろと始まっていたのか!”と驚かされましたけど。
マッド:やっぱり各バンドにいろいろと都合もあるじゃないですか。それをクリアしていくのに2年かかったというか。
──いわゆる大人の事情というやつですね?
マッド:はい。だけどそれが片付くのを待ってたら時間だけが過ぎていってみんな年取っちゃうから、先にいろいろ決めちゃおうということになって。だから先日の新宿LOFTのライヴも1年以上前に決めてたし。そうやって先にやることを決めてから、そこに向かって動き始めるしかなかったというところもありましたね。とりあえず“レコーディンングし始めないとこのバンドは動かないぞ” “ライヴ決めないといつまで経っても始まらないぞ”というのがあったので、LOFTの店長に電話してあの日を押さえちゃって、それに向けて動き始めたんですよね。
──新宿LOFTの日程を押さえた時、“もしもその日までに状況を整えられなかったらどうしよう?”という不安はなかったんですか?
マッド:不思議とそれはなかったですね。それから各方面と話をしていって。
康太:人間、何かひとつ決めちゃうと、そこに向かってちゃんと行けるものなんだな、と思いましたね。まあ自分たちで決めたからにはどうにかするというか、駄目なら駄目で違うやり方を考えるというか。

──すべてが整ってから決めるのではなく、決めてから整えていくほうが話が早いというのはあるかもしれませんね。バンド始動にあたっての言い出しっぺは誰だったんですか?
康太:それは僕ですね。僕が最初にaie君を誘ったのが切っ掛け。昔、一度だけ音を一緒に出す機会があって、その時から本当に大好きなギタリストだったんで。そこで自分のほうの活動(Angelo)が止まった時、一緒にやりたいなと思って声をかけて。まあ、彼はいろいろやってるから忙しいんですけどね。
マッド:いやいや、暇ですよ(笑)。
康太:で、まあ「何か面白いことをやりましょう」というところから始まり、aie君からの紹介でLottyが合流して、最初はその3人で定期的にスタジオに入ってたんですよ。それから1年半ぐらい経ってからGara君が合流して。
マッド:ドラムについては康太さんから「好きにしていいよ」って言われたんですけど、やっぱり当初、3ピースで音を出すことを考えた時に、“知り合いの中じゃLottyかな”というのがあったんで。「こういうことをやるけど、やってみる?」と声をかけてみたところ「試しにやってみましょうか」ということになって。それ以降は月に一回、3人で集まって音を出しながら曲を作ったり。そんなことを1年半ぐらいやってたのかな。
Lotty:結構長かったですね、その期間が。定期的にスタジオに入りながら10曲ぐらい作ってきて……。
──その段階で音楽的な決め事というか、方向性の絞り込みみたいなものはあったんですか?
マッド:いや、そういうのはまったく何もなく、出たとこ勝負という感じでした。そこから楽曲のアレンジも含めていろいろと固まってきたのは、Gara君が入ってきてからですね。そうやってパズルのピースが全部はまったところで、アレンジも特定の方向にブーストさせていったというか。それが新宿LOFTのライヴを決めたぐらいの頃のことで。ただ、その時点ではまだこのバンドが“女性になる”とは思ってなかったんです(笑)。
Gara:それこそGUMMYっていう名前もまだなかったもんね。
マッド:うん。全然そういう発想も当初はなくて。“なんか男くさいロックンロールのバンドだから新宿LOFTがいいんじゃないか”ぐらいの考えでしかなかったんですよ。「ちょっと規模デカいけど、頑張って1年かけてLOFTを売り切るバンドになろうぜ」みたいなことを当時は言ってたんです、下北沢の焼き鳥屋で。で、月に一回そこで呑んだりしてたんですけど、こういう形になったのは、そこでの会話からのフラッシュアイデアでしたね。「おとぼけビ~バ~、いいよね」「ああいうふうにならない?」みたいな話になって。最初は「すっぴんで、グラサンかけて、だけど何故か下着姿っていう感じでいこう」と言ってたんですけど、酒呑みながらどんどんテンションが上がっていって、みんなでネット通販のサイトを見ながら「これ、可愛くない?」「こっちのほうが似合うかも」みたいな話になっていって。
Gara:その時点でほぼガールズトークでした(笑)。基本、このGUMMYに関してはすべてが呑みの場で決まってる感じですね。
康太:そう。呑みの場でのアイデアを結構みんな真面目に受け止めて、「それ面白いね」っていうところから広げていく感じで。
──いずれにせよ、Garaさんの加入後、酒の席でガールズバンドになることが決まったわけですね?
マッド:うん。しかもすでにツアー日程も切った後でしたね。

──そこで康太さんだけガールズバンドの枠から外れているのは何故なんです?
Gara:何回か議題には上がってたんですよ。一緒に呑んでる時に「康太さんはどうしますか?」っていう話をしていて……。
康太:だけど俺は、自分でもまったく絵が浮かばなかったんで「俺は無理、雄の一択だね」ということになって(笑)。まあ4人のうち1人ぐらいこういうキャラがいてもいいだろうってことで、支配人というか黒服のような設定になったんですけど、これはみんながちゃんと女装してくれてるからこそ成り立つことでもあって。
マッド:ウチら3人は品のない女子をやって、康太さんにはそれをまとめる支配人としてスーツ着用でいってもらおう、と。
康太:ちょっとコワモテの支配人というかね(笑)。それが決まったところで全員の方向が固まってきた感じでしたね。
──キャリアのある4人の男性によるガールズバンド、なんていう情報を先に知ってしまうとコンセプトありきで始まったかのように受け取られがちだと思うんですけど、実は逆なんですね。
康太:そう、すべてが本当に後付けなんです。
Gara:こういう音楽をやろうとか、そういう話さえ全然なかったんですよ。aie君から「今、康太さんとLottyと一緒にスタジオに入ってるんだけど、一回歌ってみない?」みたいに誘われた時も、どんな音を出してるとかそういう説明はまったくなくて。ただ、それ以上に“この人たちとやったらどんなことができるんだろう?”という楽しみのほうが大きくて。だからすぐに「やる!」って話になって一緒にスタジオに入り始めたんですけど、その時点ではガールズバンドになるなんて1ミリも思ってなかったし(笑)。でも、この人たちと何か楽しいことをやれるんだったら、僕はホントに何でもいいな、と思ったんです。
──そこはある意味、“大人の遊び”という感覚でもあるわけですよね?
康太:まさにそういう感じですね。
──同時にこれは、ガールズバンドがめずらしい存在ではなくなっている昨今においては、“こういう選択肢もあるんだよ”という提示にもなっているように思います。
マッド:そう、意外と誰もやってなかったんで。楽しいのにね。
康太:基本的に「これ、面白いじゃん」ってところからすべて広がっていくんですよ、このバンドの場合。そこで深く考えたりせず(笑)、とりあえず突き詰めてみるというか。
マッド:結構前のことなんですけど、対バン相手のなかに弾き語りでやってるすごくカッコいい女子がいたんですよ。その時に自分としては“これ、バンドにしてグランジやったらカッコいいのに”と思ったんですけど、それをまさに今の自分たちがやってる感じでもあるっていうか。

──グランジというキーワードが出ましたが、新宿LOFTでのライヴを観た時も“コートニー・ラヴとL7が一緒にやっている”みたいな印象を受けました。ある意味とても’90年代的だなとも思いましたし。
マッド:そう、まさにそういう感じなんです。
──ある意味、’90年代のヴィジュアル系と同時代的なものでもあるわけですよね。しかしGaraさんの合流が決まった途端に“男性によるガールズバンド”というアイデアが出てきたというのも面白いです。
Gara:確かに(笑)。まあ僕の場合、ずっとメリーしかやってこなかったんで、音楽的にもイメージ的にも価値観が凝り固まってたところもありますし。それをaie君がいい意味でぶち壊してくれるんじゃないかという期待感もありましたし、だからこそわりとすんなり受け入れられたんですよね。面白いことやれるんだったらそれでいいじゃないか、と。
マッド:決め手になってのはやっぱりGara君の“声”だったんですよ。当初は単純に“ソリッドなロック”とだけ考えてたんで、ヴィジュアル系の畑以外のところでヴォーカルを探そうと思ってたんですね。だけど3人でやってた時に自然にあの“声”が聞こえてきたというか。それで「一緒にやってみない?」ということになってからは軌道修正の連続でした。女子になるまではずっと。
──「女子になるまで」って、まるでどこかのタイミングで手術でも受けたかのような発言になってますけど(笑)。
マッド:そこについても“どっちで攻めるのか”というのはあったんですよ。身体も女子になったという設定なのか、心が女子なだけなのか、それぞれが持ってる女子像というのがあるから。俺の場合は“格好は女子で中身はオジサン”のままでいいんだけど……そこでの答え合わせも昨日やっとできたようなところがあって。「みんなそれぞれ自分のことどう思ってるの?」みたいな話をしたんですよ。
Gara:僕はたぶん、心が女子なポジションなんだろうなって。ただ、そのわりにはイカツイから「もうちょっと女子っぽく振る舞ってもいいんじゃない?」みたいな話も昨日しました。
Lotty:僕もaieさんと近い感覚。女性っていう設定じゃなく、あくまで“女装してる男”なんです。だから実際、髪も長いんですけど、変装してる感がほしいので、敢えてウィッグを被っていて。地毛でもやれるんですけど、それだとむしろ綺麗な女性路線になってしまうし、“女性になりたい”というわけじゃなく、あくまで女装してる……
マッド:女装してる変態の男性でしかないという(笑)。
Gara:それに対して僕のキャラは“女性になりたい人”なんです。

──“ガールズバンドがやるから面白いこと”というのもきっとあるはずだと思うんです。そういうところでの“これって実は誰もやってなくない?”という発想でもあったわけですよね?
マッド:こういうことをやるのが許される絶妙なキャリアと年齢というか。そこがうまく噛み合ったんですよ。俺らが20代でこれをやってたらちっとも面白くなかっただろうと思う。もうすぐ50歳に手が届く年齢でありながらこれをやるっていうのが面白いわけで。
Gara:ここにきて新バンドを組むこと自体もそうだしね。
康太:しかも変に狙ってないんですよ。若いバンドがこういうことをやると狙ってる感がすごく強くなると思うんですけど、それなりに各々キャリアがあったうえで今これをやるっていうのが単純に面白いよな、と。
マッド:しかもこのコンセプトによって客を増やそうとか、そういう考えでは全然ないわけですよ。切っ掛けは“面白そうだからやってみよう”でしかなかったし、これでライヴハウスがスカスカだったとしてもコケたとは思わないし。
