【インタビュー】アニメ・SNS・ストリーミングが導く日本音楽の世界進出最前線

2026.01.23 22:00

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interfmの音楽ラジオ番組「TOKYO MUSIC RADAR」は、世界へ羽ばたくべくグローバルに活躍するアーティストや音楽業界の専門家をゲストに招き、最新の音楽事情や魅力的なJ-POP~J-ROCKを紹介するミュージックプログラムだ。

MCを務めるのは、渋谷系ハーモニーポップグループNagie Laneのメンバーとして活動するmikako。今回は2025年の音楽シーンを振り返り2026年の音楽事情を占うべく、Billboard JAPANスタッフと、日本のアーティストを海外へプロモートするVEGAS PR GROUPのスペシャリストを招いてのトーク番組となった。

髙橋侑太郎、mikako、ローレン・ローズ・コーカー

──(mikako)今回は音楽業界からスペシャリスト…Billboard JAPANの髙橋さんとVEGAS PR GROUPのローレン・ローズ・コーカーさんをお迎えしました。お二人は普段どのような活動をされているんですか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):私は、Billboard JAPANチャートの作成作業であったり記事を書いたりなどがメインの業務です。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):私はアメリカ人ですけど、17年前に日本に来てずっと音楽の仕事をしています。今はVEGAS PR GROUPという会社を立ち上げて、色んな日本のアーティストを海外にプロモーションする仕事をしております。

──(mikako)そんなおふたりから見て、2025年の日本の音楽シーンはどうでしたか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):一言で言うとグローバル化がより一層進んだ印象があります。「MUSIC AWARDS JAPAN」も開催され、Adoのようなアーティストも海外公演が多かったですよね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):「MUSIC AWARDS JAPAN」の海外メディア窓口は弊社が行いましたね。いろんな海外のメディアを連れてきたり、発表のたびに英語のプレスリリースを出して記事化したり。YouTubeで全世界に配信もできて「MUSIC AWARDS JAPAN」のようなイベントが実現したいい年だったと思います。

──(mikako)日本の音楽と海外の架け橋になってくださっているんですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):でも、ファンの拡散力が1番強い状況なので、もっと公式側からも英語での発表を用意して、海外のファンとコミュニケーションを取るべきじゃないかなとも思います。

──(mikako)Billboard JAPAN Hot 100のチャートから、2025年年間トップ10を振り返ると、Mrs. GREEN APPLEが凄かったですね。

1.「ライラック」Mrs. GREEN APPLE
2.「ダーリン」Mrs. GREEN APPLE
3.「APT.」ロゼ & ブルーノ・マーズ
4.「IRIS OUT」米津玄師
5.「クスシキ」Mrs. GREEN APPLE
6.「ROSE.」HANA
7.「怪獣」サカナクション
8.「ケセラセラ」Mrs. GREEN APPLE
9.「ビターバカンス」Mrs. GREEN APPLE
10.「Plazma」米津玄師

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):しかも1位の「ライラック」はリリースから1年以上経っている曲で、タイアップとかメディアの出演が多かったこともあって、ファンの年齢層が広がっていった感じがありますね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):すごいのは、ロゼ & ブルーノ・マーズ以外は邦楽で、洋楽が全く入っていない。圧倒的にドメスティックのアーティストが強いですよね。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):逆に洋楽の「APT.」がこれだけ上位にいるっていうことも結構珍しいことです。日本国内を集計の対象にしているので、基本は上位の楽曲は邦楽が多いんです。

──(mikako)「ライラック」は2024年の曲ですが「APT.」も「ビターバカンス」も2024年、8位「ケセラセラ」は2023年…と、2025年のチャートなのにそれ以前の曲がたくさん入っているというのは、どう分析されますか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):このランキングは、CDセールス/ダウンロード/ストリーミング/YouTube再生/ラジオオンエア/カラオケという6指標を基に作っているんですが、その中でもストリーミングや動画が多いので、その積み重ねの部分によってストリーミングで強いアーティストは、上位に入ってきやすいんです。

──(mikako)日本という国の中での音楽の聴かれ方自体も変わってきたということですね。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):CDは初動の売り上げが大きく立つんですけど、ストリーミングの場合、1年で集計すると日々の蓄積が効いてくるんですね。逆に、米津玄師の「IRIS OUT」は2025年9月のリリースで、集計対象が2ヶ月ほどしかなかったにも関わらず4位というのは凄いことです。2026年のチャートではどうなるのか楽しみです。

──(mikako)CDからストリーミングに変わった流れに関しては、どう捉えていますか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):ストリーミングでは結構古い曲もたくさん聴かれていて、今の若い人にとっては、昔の曲でも出会った時が新曲ですから、いろんな音楽にすぐアクセスできるっていうのはすごくいいなと思っています。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):CDは、その楽曲を1回購入するだけですけど、ストリーミング・サービスは楽曲を毎回レンタルしているような、聴くたびに権利者への収益が発生します。すっごい小さなお金ですけど、永遠に続くので、CDのように1回買って終わりじゃなくて、収入が少しずつ入ってくる。たくさんユーザーがいればいるほど大きく安定した収益になるので、毎年の見込みもできる。アメリカの音楽業界が100%ストリーミングに切り替わっているので、印税の権利が株のように販売されたりするような複雑な動きに変わってきている。ビジネスモデルが全く違ってきているんですけど、それも悪くないと私は思います。

──(mikako)それでは続いて、海外での人気J-POP楽曲をランキングする「Billboard Global Japan Songs excl. Japan」チャートを見てみましょう。

1.「オトノケ」Creepy Nuts
2.「Bling-Bang-Bang-Born」Creepy Nuts
3.「Tokyo Drift (Fast & Furious)」TERIYAKI BOYZ
4.「IRIS OUT」米津玄師
5.「死ぬのがいいわ」藤井 風
6.「真夜中のドア~stay with me」松原みき
7.「アイドル」YOASOBI
8.「KICK BACK」米津玄師
9.「NIGHT DANCER」imase
10.「夜に駆ける」YOASOBI

──(mikako)また内容が変わりましたね。Creepy Nutsは海外で来ているんですね。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):そうです。2曲ともアニメのタイアップ曲ということもあって、アニメとの相乗効果ですごい人気になったんじゃないかと思います。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):今アメリカのZ世代は「アメフトを観ている人よりアニメを観ている人の方が多い」というデータが2年も前から出ているそうです。アメリカンフットボールとかバスケットとかを観ないなんて、今までではあり得なかったことですけど、スポーツ離れによってアメリカの若い人たちはアニメのほうが観ている時間が多くなっています。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):やっぱりグローバルなプラットフォームが完成されたっていうところは大きいですよね。

──(mikako)3位のTERIYAKI BOYZ「Tokyo Drift (Fast & Furious)」もすごいですよね。19年前の曲なのに。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):これは2006年公開曲なんですけど、当初からずっと人気があって、認知が高いんです。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):ほんとに有名ですし、「Tokyo」という単語で検索すると必ず引っかかってくるし、TikTokやInstagramでよく使われてるイメージもありますね。

──(mikako)SNSの動画でよく聴きますね。そして6位の松原みき「真夜中のドア~stay with me」もすごいですね。シティポップの代表曲として、今でもランクインするのが凄い。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):これも海外の方のSNS投稿でよく使われているイメージがあります。シティポップ・ムーブメントの代表曲みたいな。全体的にやっぱりアニメの影響が強いですけど、それ以外のものもあって多様性があって、いい意味でバラバラですね。9位のimase「NIGHT DANCER」などは特に韓国ですごい人気で、どこに行ってもimaseの楽曲が流れているような状況もあったので、国別でランキングしたらまた違った面白さがあると思います。韓国は、なんて言うんでしょう…比較的ちゃんと歌い上げるみたいな曲が人気ですよね。優里とか冨岡愛とか。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):10数年前に比べると、日本の音楽は凄く人気が出てますね。ただ、ストリーミングサービスの中でJ-POPというジャンルはないんです。K-POPというジャンルはあるんですけどJ-POPはない。K-POPの場合は音楽ジャンルとしてみんなが共通してイメージできる音楽ですけど、日本のアーティストの音楽って全部J-POPと言えるわけじゃなくて、アニソン好きな人はアニソン好きだし、メタル好きな人は日本のメタルも好きで、ジャパニーズ・ミュージックというジャンルではくくれない。日本独特のサウンドというのもあると思いますけど、全部がJ-POPと言えるわけでもない。

──(mikako)そうですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):いろんなジャンルで強いってことは、すごくいいことだと思います。最近お手伝いさせていただいているバンドのひとつにメタルバンドがいるんですが、ヨーロッパ・ツアーとか回っていてもJ-POPとかアニメとか関係ない。そういう音楽もたくさんあって、日本の音楽の海外ビジネスの可能性はすごくあると思っています。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):確かにこのトップ10を見ても、ジャンルが様々ですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):いろんな海外メディアの反応を見ていると、みんな日本の音楽として見てはいるんですけど、音楽性やアーティストのカラーによって取り扱い方は様々ですよね。

──(mikako)J-POPだから、ではなく、1曲1曲をちゃんと見て評価してくれているということですね。カテゴリーで決めているわけではない、と。海外でブレイクする日本のアーティストや楽曲に共通しているポイントとかあるのでしょうか。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):グローバルな視点で見ると、独特な世界観を構築しているとか、自分の世界を持っているようなアーティストの方が、海外では刺さるんじゃないかなと感じています。

──(mikako)独特な世界観?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):海外で聴かれている日本楽曲の「Billboard Global Japan Songs excl. Japan」チャートを、TOP10ではなく100位とか200位とかまで掘り下げていくと、青葉市子だったりNujabesとか、その人にしか演出できないような楽曲を出しているアーティストがたくさんいて、そういう方々は結構刺さっているような気はしています。

──(mikako)まさしくワンアンドオンリーな方々ですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):Nujabesなどは、DJセットでもよく使われている印象がありますね。韓国とか日本のチルミックスなんかに結構入っています。

──(mikako)そんな2025年ですが、2026年の日本の音楽シーンはどの様になっていくでしょうか。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):私が注目しているアーティストは、maya ongakuというバンドで、江ノ島出身の同級生による3人組バンドなんですけど、通常のバンドサウンドじゃなくて民族楽器など色々な楽器や環境音みたいなものもたくさん取り入れてて、ジャンルが横断的というかちょっと不思議な音色なんです。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):この「Something in Morning Rain」という曲は、2023年にリリースされたアルバムに収録されているんですけど、外で録音してきたような自然の音が最初から最後までずっと鳴っているんです。ドラマーがいないので、リズムにとらわれないメロディーに日本語が乗って一体となっているようなサウンドがすごく心地よくて、好きなんですね。実験的な要素が絶妙なバランスで。

──(mikako)なんかちょっと懐かしい感じもしますよね。なんでなのかな。親近感もありつつ、でも新しい世界を見せてもらっているような新鮮さもあり。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):彼らの最新曲「Maybe Psychic」は、またちょっと色が違うというか、シンセサイザーの音が入っているんですけど。そのシンセサイザーの音も今っぽくないというかレトロな感じ。主旋律ではないんですけど、時々ふわっと立ち上がってくるみたいな。

──(mikako)maya ongakuに代表されるようなムーブメントって、予知していたりしますか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):こういう音楽性って再現するのは難しいと思うんですが、今の若い人はすごく幅広いジャンルの音楽を聴いていると思うので、逆に言ってしまえば、このような自分の好きなものだけをかき集めて、独特なサウンドを楽しむ人は増えていきそうな気はします。

──(mikako)ローレンさんは、どんなアーティストに注目していますか?

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):まず紹介したいアーティストは、Massage Attackです。

──(mikako)マッサージアタック?

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):はい。下北沢あたりで活動している若手のバンドですが、独特のサウンドが好きになりました。名前もとっても面白いですよね。イギリスにはマッシブ・アタックという有名なバンドがいますけど、マッサージアタックというのは日本人しか作らないようなネーミングセンスだと思います。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):彼らの「冬のさかみち」という曲は、THE BLUE HEARTSっぽさがあります。アーティスト写真とかジャケ写もちょっとレトロっぽくて、楽曲の名前も面白い。「フリーターの恋」という楽曲もあるんです。

──(mikako)このバンドはどこで知ったんですか?

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):オフィスです。今会社は8人でやっているんですけど、みんな音楽がすっごい大好きで、ずっといろんな音楽をかけているんです。で、あるスタッフがMassage Attackをかけて「これ何?」って。「楽曲がすごくいいし名前もまたいいんですよ」って教えてくれて、それでライブを観に行ったんですよね。

──(mikako)VEGAS PR GROUPの中で最新の音楽情報もシェアしているんですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):はい。それでもうひとり紹介したいアーティストがいるんですけど、xiangyu(シャンユー)っていう日本人アーティストで、聴いてもらいたい楽曲があるんです。「ZARIGANI」っていう曲なんですが。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):入りからめちゃくちゃいいですね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):もう3年以上前の楽曲ですけど、最近xiangyu本人がこれを歌っている動画がInstagramでバズっているんです。軽トラに乗って歌っているんですけど、すごい素敵な雰囲気で、コメントも「田舎のフェラーリだ」とか(笑)、凄く楽しんでいるんですよ。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):レゲエっぽい要素ですけど、途中からビートも速くなって、おもしろいですね。

──(mikako)彼女のルーツも気になりますね。お二人からは注目のアーティストを紹介していただきましたが、2026年の日本の音楽シーンはどんな年になりそうだと思っていらっしゃいますか?

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):やっぱりJ-POPのグローバル化ですね。コーチェラに日本人アーティストが決まっていたり。

──(mikako)そうですね。今年はCreepy Nutsと藤井風、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uの出演が発表されていますね。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):2025年もそうでしたけど、結構日本のアーティストが海外でライブしたりツアーもあったり、ビジネスとして成功している気がします。以前は赤字でもとりあえず海外でライブをやってみて、後でライブDVDを売るみたいな形でしたけど、今はちゃんとビジネスとして続けられる海外公演が企画されている気がして、それはもっと増えるんじゃないかなと思います。

──(mikako)もっと海外に進出したいと思うアーティストへのアドバイスはありますか。

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):よく聞く話として、日本でのライブ動員は1000人ほどでも、中国で行うと2000人以上集まったりとか、日本人のファンの数よりも海外のファンのほうが多いこともある話なので、日本で成功してから海外に、という順番じゃなくて、同時に全世界アタックした方がいいと思います。

──(mikako)海外にアプローチしていくために、できることや押さえて置いたほうがいいポイントなどはありますか?

ローレン・ローズ・コーカー(VEGAS PR GROUP):基本的に英語で情報を用意することです。例えば、歌詞に関しても「この歌詞を英語で言うとこのような内容です」とか、大事な発表も日本語の下に英語でも書いておくとか。海外のファンを無視しないことがすごく大事だと思います。アーティストプロフィールも英語でも用意した、XやInstagramの短いプロフィールにも英語で「Sing from Japan」とか「Rock Band in Tokyo」とか、簡単でもあったほうがいいです。

髙橋侑太郎(Billboard JAPAN):日本の楽曲がTikTokで海外で先に火がつくみたいなことってありますよね。そういうトレンドをいち早く察知できるかどうかって大事かなと思っています。そこからその国に合わせたプロモーションもかけられますし。チャートも上位ではなく下の方を見ると上昇してきているとかわかったりもするので、そういうデータの使い方も大事だと思いますね。

──(mikako)ありがとうございます。勉強になります。音楽は国境を超えると言えど、インフォメーションはやっぱりその言語であった方がいいですから、そんなところも意識していきたいですね。ありがとうございました。

インタビュー◎mikako(Nagie Lane)
文・編集◎烏丸哲也(BARKS)