強者3ピース・バンドが連続リリースする、その中身とは?

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動と静、オンとオフ、そして黒と白…

表情なくステージに現れて、静かに各々の担当楽器をスタンバり、おもむろに爆音を轟かせる。
そして息をもつかせぬ演奏をひたすら続け、ラストはフロント・マンが爽やかな笑顔をキメてステージから去って行く…。

という惑星のライヴを観て、動と静、オンとオフ、それに黒と白、みたいな正反対の二つの顔がこのバンドにはあるなぁと感じたのだけど、2002年2月と4月にリリースする『ku-ro-i-ho-shi』『shi-ro-i-to-ri』という2枚のアルバムを耳にして、いよいよその二面性が確かにあり、しかもそれが惑星の根本にあることに確信を得た。

ものすごい目力(メヂカラ)で半絶叫唱法のヴォーカル&ギターの岸田研二、寡黙な職人気質のベーシスト・清水義将、身体は華奢だが音はデカ太(!)ドラムス・平田智美。

惑星メンバー全員揃ってBARKSに初登場。


不良性はないから、俺らは。刺青も入ってないし。



連続アルバム・リリース

『ku-ro-i-ho-shi』

2002年2月23日発売
CJEH-3008 2,000(tax in)

M1:魂、すり減らせ!!
M2:WHITE WESTERN BOOTS
M3:カーヴ
M4:金色の砂漠
M5:LOVE ME TWO TIMES
M6:
パ★ナ★マ
M7:よろこび
M8:ドライヴ




『shi-ro-i-to-ri』

2002年4月24日発売
CJEH-3009 2,000(tax in)

M1:まぼろし 2002
M2:HARD CORE GIRL
~愛しのsun set baby~

M3:BIRD~鳥~
M4:太陽を待ちわびて
M5:乾いた空
M6:Palm
M7:プールサイド
M8:GIRL WHO LIVES ON HEAVENS HILL



LIVE SCHEDULE
■4月24日(水)
札幌 BESSIE HALL
w/STANCE PUNKS,THE 3PEACE,太陽族
【問】タワーレコード札幌ピヴォ店 011-241-3851

■4月26日(金)
大阪 アメリカ村BIG CAT
w/ART SCHOOL,LOVE JETS,CURIO
【問】GREENS 06-6882-1224

■5月2日(木)
渋谷 タワーレコード渋谷店B1[STAGE ONE]
※レコ発イベント
w/NAHT
【問】タワーレコード渋谷店 03-3496-3661

■5月4日(土)
新宿 LIQUID ROOM
w/Theatre BrookGO! GO! 7188、LOVE JETS
オープニングアクト/Hi-5
【問】HOT STUFF 03-5720-9999

■5月17日(金)
下北沢 SHELTER
w/downy,ゲストあり
【問】HOT STUFF 03-5720-9999

■5月27日(月)
下北沢 SHELTER
w/ART SCHOOL
【問】HOT STUFF 03-5720-9999

■6月3日(月)
仙台 MA.CA.NA
w/3.6MILK、ガガガSP、HIGHWAY61
、the youth、太陽族、COCKER SPANIEL、ピンクリボン軍
【問】G.I.P 022-222-9999

■6月22日(土)
渋谷 ON AIR EAST
※『スペースシャワー列伝~宴~』購入者特典イベント。
w/『~宴~』参加アーティスト
【問】www.spaceshowertv.com/retsuden
僕、滝好きなんですよ(岸田)

――『ku-ro-i-ho-shi』は一発録りですか?

岸田:
そうですね、ほぼ一発録りです。ライヴ状態で、歌も一緒に録ってる曲もありますね。

清水:
今回のはずっとライヴでやってきてた曲が多いから、ライヴでやる感じでレコーディングしたっていう。

岸田:
曲ができた時期もバラバラで、「ドライヴ」が19かハタチの頃の曲で、「WHITE WESTERN BOOTS」はここ1年くらいのですね。

――だと7~8年間くらいの曲が1枚のアルバムに入ってるわけですけど、古臭さとかズレみたいなものを感じないですね。

岸田:
あぁ、それはすごく嬉しいです。今は英語の詞を入れられるようになったんですけど、でもやっぱりベーシックなところでは日本語の詞にこだわってるのかもしれないですね。それで自分にとってリアリティのある言葉と、これを作りたいっていうものをやってこれたから、だから今でもやれるんだと思うんですよ、ライヴでも。そこは曲げなくてよかったなと思います。いろんなものに影響されたけど、変わってないものってあるんだな、とも思うし。

清水:
激しさとかそういうのとはまた違う。曲調もバラバラなんですけど、すごく辻褄が合ってるというか。
――英詞のカヴァーですけど、ドアーズ「LOVE ME TWO TIMES」のハマリ具合は痛快ですね。

岸田:
前に清水くんが持ってきてくれて、“♪ドダダダッ”って始めたら良くて。歌詞もバカバカしくてね(笑)。

清水:
ライヴでやるとかCDに入れるとか関係なくいろんな曲を試しにやってるんですよ。それでこの曲があまりにもハマッてしまったんで。

岸田:
ドアーズもね、すごい、静寂と激しさとを両方持ってて…ある種の惑星ですよね。僕、滝好きなんですよ。滝も爆音と静寂じゃないですか? そういうのを両方持ってるバンド/ライヴ/音源ってすごく好きなんですよ。僕らはまだ激しいところが多いかもしれないけど。対になった世界観っていうのがあって、僕の中には。だから今回『ku-ro-i-ho-shi』と『shi-ro-i-to-ri』なんです。ものすごく激しいことをやってるんだけど、ものすごく心の中に濁りのない水がシーンとなっているような。その両方を伝えていきたいんですよね。

――禅の坊さんみたいですね(笑)。

岸田:
あぁ。僕、お寺行きますよ。座禅はいいですよね、すごいリラックスできます。それが、ライヴのリハーサルとかないときに3人でジャムセッションをやるんですけど、誰も一言も喋らなくて、ずーっと黙々とやってるんですね。それがもうすごい爆音のときもあるし静かなときもあるしで。最初はめちゃくちゃなんだけど、1時間後ぐらいには阿吽の呼吸になってて、それが終わるとなんかすごいリラックスしてるんですよね。それに通じるかもしれないですね。

ヨボヨボになるまでやってなければ(笑)(平田)

岸田:
僕もともと舞台役者になりたくて、映画とかも撮ってたんですけど、なんで今バンドをやってて楽しいのかっていうと、今の年齢(27歳)の、肉体的な部分と精神的な部分のバランスがちょうどいいんですよ。

清水:
頭の中のものを出す発散と、身体を使う発散とはまた違うじゃないですか? それの融合っていうのがバンドだったのかな。だからもっと歳とったら頭の中を整理するような音楽になるのかもしれないし、逆にもっと若かったら単純に発散できるだけの音楽だったかもしれないし。

平田:
私はドラムなんですけど……深く考えてないんですけど、楽しいっていうだけで(笑)。

――年齢的なことで言ったら、ドラムってやっぱり大変になりませんか?

平田:
激しいように見せかけて、そんなに疲れないものですから(笑)。楽しくできる範囲で。ヨボヨボになるまでやってなければ、いいものが出せると思います(笑)。

清水:
音デカイよね。ライヴでも生音で聴こえるから、モニター要らないくらい。

――女性ドラマーを欲した理由って何だったんですか?

岸田:
う~ん、直感なんですけどね。男3人で爆音で、男っぽいハードボイルドな……固茹で卵のような……。

清水・平田:
ふゎはははは(冷笑)。

岸田:
…そんな世界観ではないんですよ。ロックは好きだけど不良性はないから、俺らは。刺青も入ってないし。ロックンロールは好きだけど、ロックンロールの血液は流れてないです、自分には。3ピースで激しくてロックやってると……荒っぽかったり、言葉づかいとかね。それを気負ってやってるとすぐわかるんですよ、話したりすると。別に僕らはいい人を売りにするつもりはないんですけど(ニヤリッ)。

――ライヴ後の「ありがとうございました!」は、めちゃくちゃいい人の笑顔ですけどね。

岸田:
(笑)それはねぇ、去年ライヴばっかりやってて、ライヴだけになってくるとそれはそれで磨耗してきちゃう部分があって。どうやって見られてるのか、どういう判定をされてるのか、わからなかったりして。いろんな人の話が直に自分の心にのしかかってきちゃって、けっこう悩んでたんですよ。だけどある日吹っ切れて見えたものっていうのが、演奏が始まってしまえばトンじゃっていいんだ、真っ白になっちゃっていいんだ、それが終わったら普通に戻ればいいんだっていう。だからギャップがすごいのかもしれないです。「普段とぜんぜん違いますね」ってけっこう言われるんですけど、あのテンションで普段からいられたら……しんどいですね(笑)。

平田:
音楽って好きなものだから、好きなものには誰でものめり込みますよね? だからいつもと違うテンションだし、それが普通だと思うんですよ。

岸田:
映画でも演劇でも、吹っ切れてて、ある世界観がそこに宿っちゃってるものが表現として大好きだから。

『カモメは死を象徴する真っ白い鳥だから』って(岸田)

――『ku-ro-i-ho-shi』と『shi-ro-i-to-ri』というタイトルですが、“黒い”のが星で、“白い”のが鳥っていうのはなんだか意味深ですが。

平田:
キラメキとか、瞬間的にキラッと光るような……キラキラしたもの。空の星だけじゃなくて、それこそロックスターとか(笑)。“黒い星”にはそういうのも含まれてたら素敵だなぁと私は思ってます。

岸田:
アルバムを作ってるときにちょうど大江健三郎の『個人的な体験』ていう本を読んでたんですけど、たしかそこに出てきた言葉だと思うんですよ。で、その主人公が……まぁものすごく小説によくある爆弾を持ってるんです。予備校教師なんだけど“バード”って呼ばれてるんですよ、顔が鳥に似てるっていうだけで。その言語感覚がすごくかっこよくて。かっこいい青年がバードって呼ばれてるんじゃない。すっごい重たい世界なんだけど、バードっていう言葉があることで重いだけじゃないっていうか。そこからですね。だから次の『shi-ro-i-to-ri』は、暗闇、黒い星から飛び立つ白い鳥を描きたかったんですよ。夢とか希望とかじゃなくて、本当に真っ暗な世界から鳥が飛び立つその瞬間を。

――大空を舞ってるところじゃなくて?

岸田:
舞う前、飛び立つところ。『shi-ro-i-to-ri』に関して言ったら、“黒い星”っていうのは俺もすごくピッタリきてたんだけど、“白い鳥”ってなんか普通じゃないかなぁとか考えてたんですね。それが、ジャケットのロケ場所が僕の地元の“ダダリ”っていうヒンドゥー語でカモメっていう意味の店だったんですけど、「何でこの名前にしたんですか?」って店の人に訊いたら「カモメは死を象徴する真っ白い鳥だから」って言われて。そのときに“あっ、つながった!”と思ったんです。このアルバムが死の象徴ではないんですけど、真っ白い鳥が死の陰を持って飛んでるっていうのがね、イメージしてるものにすごく近かったから。

取材・文●望木綾子

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