ゴスペラーズ坂ツアー2001“凱旋門” 日本武道館 2001/9/9
M01:ひとり M02:靴は履いたまま M03:FREE SPACE M04:Love Notes Medley Air Mail~I Love You,Baby~t.4.2. M05:約束の季節 M06:Wanderers M07:No More Tears M08:告白 M09:夢の外 M10:熱帯夜 M11:FIVE KEYS(なりきり) M12:愛の歌(なりきり) M13:東京スヰート M14:永遠に M15:あたらしい世界
アンコール E1:U'll Be Mine E2:カレンダー~シークレット E3:Uzy's Human Beat Box ~LOVE MACHINE E4:Promise
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「約束の季節」 Ki/oon Records 発売中 KSC2-402 1,020(tax in)
1 約束の季節 2 Wanderers
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| 今や5万人収容規模のアリーナやドーム、はたまた数十万人もの動員を集める野外ライヴが開催されることはもはや珍しくない。しかし目標のステージといえば、やっぱり今も日本武道館だというアーティストも多いはずだ。
9月9日、ゴスペラーズの日本武道館コンサートが行なわれた。デビューして7年、彼らにとっては“ついに来たか”というステージである。
のっけからこういうことを書くのは反則かもしれないが、そもそもコーラス・グループにとっては、この武道館という場所は決してふさわしい場所ではないと思う。微妙なピッチの違いが大切なハーモニー、何よりも5人の息づかいをそろえるためには、大きなステージよりも小さなライヴ・ハウスのほうが絶対に向いているはずだ。
しかしやはり今回のツアー、そしてこの武道館という場所でコンサートをするということは、彼らにとって特別なことなのだろう。その意気込みはツアー・タイトルに“凱旋門”と掲げられていることからも顕著に受け取ることができる。そしてその凱旋門をくぐる彼らを一緒に祝おうとあつまったファンは1万2000人。ひとりでも多くの人たちとこの瞬間を楽しもうと、彼らのそんな想いが今回のステージにこめられているような気がしてならない。
18時15分、ライトがおとされると真っ赤な衣装をまとったメンバーが登場。彼らを迎える歓声とは対照的に、フランクな雰囲気で登場した彼らがまず披露したのは「ひとり」。シンプルなバックに5人が寄り添うように集まって歌いはじめる。気のせいか、いつもよりもゆったりめのテンポで一言一言をかみしめるかのように歌う姿が印象的だ。長いおじぎのあと勢い良く銀テープがまかれると、緊張ぎみだった場内は一変! 最初よりもさらに大きな歓声が彼らを出迎えると、その勢いに乗って「靴は履いたまま」「FREE SPACE」などアップテンポなナンバーが次々と披露されていく。「靴は履いたまま」での<最高の夜にしよう>のフレーズは、きっとここに集まったファンへのメッセージなのだろう。
「すげーっ、これが全部ゴスペラーズのお客! あたしゃ足が震えたよ」(酒井)
「気持ちいいというか、今までに感じたことのない感覚です」(北山)
「ステージがね、広いんですよ」(黒沢)
そんなふうに武道館の印象を端的に表現しつつ、全員が短かめな挨拶を終えると「AIR MAIL」「I LOVE YOU,BABY」「t.4.2」と、リード・ヴォーカルの異なる3曲を繋げたメドレーを披露。5人のヴォーカルをバランス良く聴かせながら、ステージは次第に熱気を帯びていく。ブラックなノリの「夢の外」、たいまつを燃やしてその雰囲気をいっそう盛り上げた「熱帯夜」など、「永遠に」「ひとり」などのラヴ・バラードでは決して見ることのできなかった、もう一つのゴスペラーズの姿があらわになる。
もちろんそれは楽曲だけに限らない。たとえばヤングの名にふさわしく、安岡優はステージのあちこちを動き回るし、もちろんグループ一番のサービスマン・シップを誇る酒井雄二もかなりの盛りあげっぷり(コンサート終盤ではレーズンパンを片手に“にほんぶどうパーン!”なるダジャレも絶叫していた。笑)
ベース・ヴォーカル北山陽一の想像以上に細やかなファン・サービスぶりや、普段は落ち着いている黒沢薫もそんな雰囲気に反して熱い一面を見せてくれたりもする。そんな個性豊かなメンバーを放任しながらも最後にはしっかりとまとめあげる村上てつやなど、ステージのどこを見ても誰を見ても飽きない。
また、ファンも一緒にコーラスをして楽しむ“なりきりゴスペラーズ”も彼らならではの定番コーナー。「FIVE KEYS」「愛の歌」をスペシャル・ヴァージョンで楽しんだあとは、「東京スヰート」「永遠に」でしっとりと空間を演出。
「愛しい人へ。僕らがデビューしてもう7年が経ちました。念願だったヒット曲もやっと出て、今日、去年より少しだけ晴れがましい気持ちでステージに立てたことを素直に嬉しく思っています。昨日も、今日も、明日も、そしていつもあなたのために、あなたとともに歌います。これからも……」
そんな村上てつやの言葉とともに歌われたのは「あたらしい世界へ」。これから始まる第2期ゴスペラーズの活躍を確かに期待させてくれるものだった。
そしてアンコール。シルバーの衣装を身にまとって登場し、「U'll Be Mine」「カレンダー」「シークレット」で再び盛り上がる5人。ロングのコートを羽織り、スモークガンを背負って登場した酒井雄二の「LOVE MACHINE」でひとしきり盛り上がったあと、ステージのラストを締めくくったのはもちろん「promise」。1曲目の「ひとり」同様、丁寧に歌う5人の姿は誰の目にもしかりと焼き付いたはずだ。
今まではずっと上りっぱなしだったゴスペラーズの“坂ツアー”。今回無事に凱旋門に辿りついた彼らが歩き始める“坂”はどんなものになるのだろう?
「この門をくぐっても続きがあるんだろ? もっと上があるんだろ!?」 (安岡)
そんな言葉を信じるとすれば、まだまだ坂道は上っていくに違いないけれど。 文●市川美奈香 |
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