'96年にリリースされたデビュー・シングル「オン・アンド・オン」が、本国イギリスでスマッシュ・ヒット、日本でもクラブ・チャートを席巻し、その名を広く知らしめたビヴァリー・ブラウン。 当然アルバム・リリースが待たれたが、レコーディングが終わっていたにもかかわらず、なんと当時の所属レーベルが倒産、すべては泡と消えてしまった。 それから5年後の2001年3月7日、ついに、ついに1stアルバム『ネクスト・トゥ・ユー』がリリースとなった。 「今はすごく嬉しいし、ハッピーだわ。記念すべき初めてのアルバムが、今度こそちゃんと完成したんだから。今度はレコード会社も潰れないしね(笑)」 デビュー・アルバムとは言うものの、ビヴァリーの音楽的キャリアはとても長い。 教会が多く「ゴスペルに関しては、かなり根強いものがある」バーミンガム出身の彼女は、地元のゴスペル聖歌隊で歌っていた母親の影響で、3歳の時から歌っていたと言う。そしてその実力が認められ、10代前半にして、地元のバンド、ファイン・ヤング・カニバルズのバック・ヴォーカルに抜擢される。 「初めて歌ったのは、チャーチ・コンベンションだったわね。グリーンの服に黄色いリボンっていう変な恰好をさせられて、お母さんが後ろで『大丈夫、歌えるわよ』って言っててね。そこでゴスペルの曲をブルブル震えながら歌ったのを憶えてる。でも、あの服装だけは思い出しただけで気持ち悪いわ(笑)。それが最初で、そのころから片っ端から教会で歌うようになったの。学校に入っても自分でクワイアを作って指揮しながら歌って、フェスティヴァルがあれば出てってね。そういうことをしてるうちに、ファイン・ヤング・カニバルズに入って、これってお金になるんじゃん!って(笑)。そこでは男性がスタッフ含めて36人もいて、女性は私だけだったから、かなり甘やかされたわ。でも何もないわよ(笑)。当時は本当に子供だったし、母親も厳しかったしね。行く先々で、『まだ誰にも手を出されてません』って報告してたんだから(笑)」 その後ビヴァリーは、チャカ・カーン、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ、シンプリー・レッドなど錚々たるアーティストのバック・ヴォーカルとして着実にキャリアを積み、ついにソロ・デビューを果たす。前述したデビュー・シングルは、本国でトップ30にランク・インと、幸先のいいスタート。 が、本人は少しも満足していない。 「トップ30はヒット? ノーノーノー! ナンバー1にならないとダメ(笑)。それに、ヒョイと上がってヒョイと下がるようじゃね。1発当てるぐらいなら誰にでもできると思うし。私はコンスタントに成功を収めたいのよ。まあそれでも、ラジオが私の曲を選んでかけてくれったていうのは自信には繋がったけどね。でもだからって、次のホイットニーと呼ばれるわけでもないし(笑)。相変わらず、近くのお店にパンを買いに行っても誰も気付かないしね。何も変わってないわよ」
5年という長い道のりを経て、今回やっとアルバム・リリースに漕ぎ着けたわけだが、彼女にとってこの5年間は、とても短く感じられたのだとか。 「とても早かったわ。せっかく自分の名前でアルバムが出せるんなら、人から提供されたものばかりでなく、自分で作った曲も入れたいと思ってたから、自分の人生を反映させた歌詞を準備したりとかしててね。そしたらあっと言う間だったわ」 ソング・ライティングにも参加(3曲で作詞を担当)した今作は、ビヴァリーのこれまでの人生、と言うか、本人の言葉を借りれば「もうとっくに終わったイヤな想い出」の、これまでの恋愛遍歴が大きく反映されている。 「このころは落ち込んでたのよ。男でね(笑)。すごく悲しい思いをさせられたわ。それをこのアルバムに全部ぶちまけたの(笑)。だから、重い感じになり過ぎないように気をつけたわ。『何でこんなことをしたのよ』とか『アンタのせいで』みたいなことばかり歌ってるからね(笑)。すべての曲に心を込めて、共感できるものを作ったつもりだから、ほんのちょっとでも、聴く人の心に訴えかけることができたら嬉しいわ」 シンガーとしてのビヴァリーの魅力は、ちょっとハスキーなヴォイスで聴かせるヴォーカル。声量が豊かで音域も広く、とても抜けがいい。これはやはりゴスペル時代に培われたものだろう。 「声は与えられた才能ね。自分で簡単にどうこうできるものじゃないし、最大限に活用したいわ。歌には当然訓練が必要よ。毎日歌ってないとダメになっちゃうし、パワフルにとかソフトにとかだけじゃなくて、風邪で声が出にくい時にどうやって歌うかとか、常に鍛えておかないと身につかないから」 今作では女性に対して、自分に自信を持って強く生きて行こうと伝えたかったと言うビヴァリー。インタビューを受ける姿も、自信に満ち溢れ、とてもアクティヴに映った。 そんな彼女が目標とするのは、どんなアーティストなのだろうか。 「目標は誰かって? マライア~、ホイットニー~、マイケル・ジャクソ~ン(笑)。素晴らしいアーティストはいくらでもいるわ。でも、私はビヴァリー・ブラウンなんだし、ありのままでリスペクトされるようになりたいの」 なるほど。最後に、彼女の抜群のプロポーションについて触れずにはいられなかったので、どうやってスタイルをキープしているのか聞いてみた。 「特別なことは何もやってないのよ。ただ食べるだけ(笑)。本当よ。エクササイズもしてないし、泳げば沈んじゃうしね(笑)」 |