【ライヴレポート】you kiyo shuji、Janne Da Arcデビュー25周年イヤーを締めくくる未来への光「いつか一緒に最高の景色を」

元Janne Da Arcのyou(G)、kiyo(Key)、shuji(Dr)が5月18日、東京・渋谷Spotify O-EASTにてJanne Da Arcデビュー25周年イヤーを締め括るライヴ<you kiyo shuji TOUR 2024〜2025“CONNECT”〜just one wish〜>を開催した。
本ライヴは2024年10月27日の東京・渋谷サイクロンを皮切りに全国8都市全29公演の規模で行われたツアーの集大成。チケットはソールドアウト。ファンでぎっしり埋め尽くされたフロアがJanne Da Arcが今なお熱く求められていることを何よりも物語っていた。
数々のヒット曲を送り出し、シーンを駆け抜けたジャンヌが2007年に活動を休止してから18年。その後、2019年に正式な解散がアナウンスされたが、今回のツアーは「デビュー25周年を迎えるタイミングでファンに感謝の気持ちを伝えたい」という想いを込めて、3人で話し合って開催を決めたということはツアー前に実施したBARKSインタビューで語られたとおり。

ファイナル公演で演奏された曲はソロパート&セッションを含めると全27曲。その内の25曲はJanne Da Arcのカバーとなった。アンコールで一連のツアーを敢行した理由について、youが真っ直ぐな言葉で伝え、未来へと繋げたライヴは彼らを求める声がいつまでも鳴り止まず、3時間以上にも及んだ。
開演は16時30分。ステージを覆う幕が開く前からO-EASTは真夏のような熱気で溢れかえっていた。SEが響くやいなや大歓声。オープニングはクラシカルかつドラマティックな「Strange Voice」だ。ステージセンターにはお立ち台が置かれ、上手にyou、後方に横並びのスタイルでshujiとkiyo、下手はサポートベーシストの高井 淳(Waive)。前半からアクセルを踏み込むようにアッパーなナンバーを立て続けに投下。「Heavy Damage」ではパフォーマーとしての役割も担っているyouがイントロで「渋谷! 今日は思いきり楽しんで帰ってください!」と煽り、前に出てギターを弾く。場内からHiコールが上がる中、3人がヘドバンをしながら熱い演奏を届け、youもコーラス部分の“Clash & Break out! Flashback! Wake up!”を歌い、みんなを煽る。yasuの代役となるヴォーカルのポジションは会場のファンだ。間髪入れず、shujiのパワフルなドラムから始まるインディーズ時代のナンバー「Speed」が放たれた。

「you kiyo shuji参上! 去年からやっているツアー<CONNECT>、今日が最後です。いろんな意味でみんなにも僕たちにも心に残るライヴをやっていきます。なので、みんなもしっかりついてきてください!」──you
このMC冒頭のフレーズ“you kiyo shuji参上!”は、ファンにおなじみ“Janne Da Arc参上!”のオマージュでライヴに欠かせない挨拶だ。メタル、ハードロック、ポップス、プログレッシヴロックなど、様々なジャンルを楽曲に落とし込んできたJanne Da Arcはテクニカルなバンドとして支持され、ハイトーンが際立つyasuのボーカルとストーリー性があってエロティックな面も持つ歌詞は当時から女子のみならず、男子からも人気だった。シングルのみならず、ライヴでおなじみのナンバーや人気曲も披露されたこの日のセットリストはイントロで怒涛の歓声が上がりっぱなし。Janne Da Arcのプログレ魂が感じられる「sister」ではピンクの照明の中、観客が歌う声が響き渡り、「7-seven-」ではkiyoの煌びやかなキーボードとyouのタッピング奏法が冴え渡る。「Junky Walker」では、テクニカルかつ障害物をかき分けて走っていくようなタフでスピード感たっぷりの演奏にフロアはヘドバン。打って変わって青空が見えるような爽快感のある通算18枚目のシングル「Kiss Me」ではシンガロング。メンバーが笑顔でその歌声に耳を傾けた。MCでは3人のリアルタイムな感想が語られた。まずはshujiから。

「去年の秋ぐらいから3人でツアー廻らせていただいて、今年1月に追加公演をやって、今日が一区切りということで。ソールドアウトするなんて謙遜でもなんでもなくて全然思ってなかったので、すごいビックリしてます」──shuji
客席を見た瞬間、テンションが上がりすぎて、ふだんは緊張しないのに最初の3曲は身体がカチカチだったというshujiの感想を受けて話したのはkiyoだ。
「Janne Da Arcの曲の凄さというか、ここにいないka-yuとyasuの力ってすごいなって思います。shujiも言ってましたけど「Strange Voice」のSEが流れた時にあの時(2005年の大阪城ホール)も緊張してたなって。口がパッサパサになって、うまく笑えなかったんですよ。あの日からだいぶ経ちましたが、またあのSEで始まることになるとは!」──kiyo

「二人も言ってましたけど、今回のツアーを通して本当にみんなの想いに力をもらっているし、曲の凄さ、バンドの凄さを改めて感じることができてます。今日も心を込めてみなさんに届けたいと思います。ツアーでは時間の関係があって、曲の長さをコンパクトにして演奏してたんですけど、このライヴは全曲フル尺でいきたいと思います。歌詞を間違えてもいいので、思う存分歌ってください。」──you
「FCでアンケートをとった時、ダントツの1位になった曲です」とyouが前置きして届けたのはメジャー1stアルバム『D・N・A』に収録されている「桜」だった。たゆたうような和のテイストが盛り込まれたフレーズとファンの歌声が心地よく溶け合っていく。ゴリゴリのハードから煌めくポップまでアプローチは多彩だが、Janne Da Arcがメロディを大切にしてきたバンドだということは演奏からも伝わってくる。
爽やかな風が吹いてくるような「So Blew」ではフロアの手が揺れ、アニメ『ブラック・ジャック』のオープニングテーマに起用された「月光花」ではイントロのバイオリンの旋律に「おおおお」という怒涛の歓声が沸き起こった。エンディングはkiyoによる月の光のように幻想的なピアノソロで締め括られ、shujiの根源的なパワーを感じさせるドラムソロからタッピング奏法を巧みに取り入れたyouのギターソロ、そして大阪城ホール公演を再現したというセッション、久しぶりに披露したというハードロック色の強い「WILD FANG」も場内を沸かせた。


そして、ポップゾーンと言えるセクションでは、観客の歌声と4人の演奏が一体に。「Love is Here」、ストレートでブライトな「霞ゆく空背にして」も大合唱になり、メンバーの描写も歌詞に登場する「What’s up!」、アニメ「ONE PIECE」のエンディングテーマ「Shining ray」とJanne Da Arcの歴史に欠かせない曲たちが立て続けに披露された。
「一言ずつ」とyouに言われたものの、思わず長く話してしまったshujiとkiyoのトークもこの日の高揚感を伝え、「ここから激しいよ!」と煽ったyouは「明日がデビュー日。やらないわけにはいかない曲」と伝えると大歓声。1999年5月19日にリリースされたメジャーデビューシングル「RED ZONE」を赤に染まった照明の中、投下した。続いてインディーズ時代のナンバー「-S-」、「Judgement 死神のkiss」と懐かしいナンバーを畳み掛けるように演奏。kiyoの幻想的なキーボードからyouのアグレッシヴなギターソロ、shujiの興奮を加速させるドラミングが場内の熱量をますます高めていき、「ヴァンパイア」に移行したところで、途中でストップがかかるハプニングも。どうやら、セットリストの行き違いらしかったのだが、このライヴならではの予想外の出来事に笑いと歓声が上がる。再度演奏することになった「ヴァンパイア」はフロアの声も一層大きくなり、半端ない一体感を生み出す結果に。本編はギターリフの切れ味も痛快な「-救世主 メシア-」で終了。メンバーはもちろん、全力で歌い切った観客も爽快な表情を浮かべていた。

2時間以上、立ちっぱなしで歌い、暴れているはずなのに、メンバーがステージを去るやいなや、飛んできたのは野太いアンコールの声であった。3人はツアー中に書き込まれたファンからのメッセージ入りの横断幕をそれぞれが持って拍手と歓声の中で嬉しそうに登場。そして、youからツアー<CONNECT>を完走しつつある今の偽らざる心境が語られた。
「今日、どうしてもみんなに伝えたいことがあります。僕たちがなぜ<CONNECT>をやっているのかという想いをはっきり的確に伝えられなかったので、みんなに聞いてもらいたいと思います。
僕たちがやっているのは、もう一度、5人でライヴという形をとってみんなの前でちゃんと感謝を伝えたいからです。“復活するの?”って捉えられるかもしれないですが、そういうところまではまだ考えられてはいません。
Janne Da Arcは終わり方がそんなによくなかったと思っています。そういう意味でも、もう一回ちゃんとライヴという形で「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えて、5人の姿を焼き付けてもらって、ケジメと言っていいのかわかりませんが、しっかりしたものをお見せしたい。それが僕たちの本音です。
本当はここで5人でみんなの前に出られたらなと思ってました。でも、残念ながら力足らずで叶いませんでした。今回のツアーもやるかどうか最初は不安でいっぱいでしたが、今はみんなの想いを直に感じたり、たくさんメッセージをもらって、本当にやってよかったなと思っています」──you

「今日は一区切りであると同時に新たな始まり」でもあること。「これからまた一段一段、階段をのぼって、いつか一緒に最高の景色を見たい」ということ。あふれるばかりの感謝の気持ちを伝え、本ツアーへの想いを詰め込んだというオリジナル曲「to be continued」を届けた。力強く伸びやかな旋律、大地を感じさせるサウンド。それは希望の曲のように響いた。ピアノに乗せた観客の歌声が清々しかった「Rainy〜愛の調べ〜」、後半でyouも歌った「feel the wind」では最高のシンガロングが響きわたった。
全員がグッズのタオルを持って出てきたダブルアンコールでは、kiyoがキーボードにかけていた横断幕のメッセージを見ながら演奏していたら泣きそうになった」と伝え、ファンへのメッセージを込めた曲「NEO VENUS」を披露。プロポーズソングでもある「シルビア」では銀テープを発射、至福の歌声が会場を満たしていった。


サポートベーシストの高井 淳が紹介され、終演のアナウンスが流れても、まだまだ鳴り止まない彼らを求める声。その熱量によって実現したトリプルアンコールで演奏されたのはJanne Da Arcのアンコール曲としてよくセレクトされてきた「Hunting」だった。ダイナミックなshujiのドラムとkiyoの多彩なプレイをバックに、youは後奏で思いの丈が溢れ出すようにエモーショナルなギターソロを響かせた。大団円と思いきや、「興奮しすぎて大事なところ忘れてた」とyouが「Hunting」のエンディングを再度リクエスト。再び4人が定位置につき、「ありがとう! We Are Janne !!“」と締めに欠かせないコール&レスポンス。kiyoは「みんな大好き!」と叫び、熱狂のファイナル公演は終了した。
もちろん、yasu、ka-yuを含めた5人のJanne Da Arcが復活するかは未知数だ。にも関わらず、こんな熱い空間が生まれたのはyou kiyo shuji、そして、何よりずっとずっと彼らの曲を愛し続け、その時を待ち続けているファンのジャンヌ愛が変わっていないからに他ならない。可能性はゼロではない。そんな未来への光が差し込んでくるような一夜であった。

取材・文◎山本弘子
撮影◎松田 茜
■<you kiyo shuji TOUR 2024〜2025“CONNECT”〜just one wish〜>
5月18日@東京・渋谷Spotify O-EAST セットリスト
01. Strange Voice
02. Heavy Damage
03. Speed
04. sister
05. 7-seven-
06. Junky Walker
07. Kiss Me
08. 桜
09. So blew
10. 月光花
11. Solo Part & Session
12. WILD FANG
13. Love is Here
14. 霞ゆく空背にして
15. What's up!
16. Shining ray
17. RED ZONE
18. -S-
19. Judgement 死神のkiss
20.ヴァンパイア
21. -救世主 メシア-
encore1
22. to be continued
23. Rainy~愛の調べ~
24. feel the wind
encore2
25. NEO VENUS
26.シルビア
encore3
27. Hunting