「ME,WE.」に込められたAIRが標榜する“Freedom!”

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12月1日発売 「ME,WE.」
RTCR-1012 1,020(税込)





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低く、重く、うねるような低音のリフ。一瞬はっとさせるようなギターフレーズとともに、爆音のバンドサウンドで「ME,WE.」は幕を開ける。

爽やかなピアノをメインとした前作「NEW SONG」から一転。しかし、これこそがAIRなんだと確信を持っていえる。

以前、インタビューした時に車谷浩司は、「
首尾一貫したスタイルを目指しているわけではなくて、その時自分にとって一番タイムリーな表現を追求しているだけ」と話していたことがある。

ひとつの型(スタイル)にはまらない。自分の考えは押しつけない。受け取る側(リスナー)が自分なりに解釈してくれればいい…まさにそれこそが彼が標榜する“Freedom!”であり、その意味では見事なまでに“首尾一貫”している。

同時に、リスナーに強要はしないが、今現在AIRほどきっぱりと態度を表明するアーティストは国内のどこを見渡してもいない(インディーズに帰った忌野清志郎ぐらいか?)。

「ME,WE.」でも“Against Animal Testing(動物実験反対)”や“同じ血 同じ涙を持ってる”といった刺激的な言葉が、激しいギターと超絶な技巧を誇るリズム隊をバックに機関銃のように連射される。すさまじいまでの説得力だが、けっして特定の政治的理念を掲げるようなものではない。ここがレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのような海外のポリティカルなバンドとは決定的に違うところだ。

ただ、日常的に起きている不条理な出来事に対してあまりに無自覚な人々に向け、考え、行動するためのきっかけを与えようとしている。まず冷や水をあびせかけ、目を覚まさせる。そこから先はキミ自身が行動する番だ、でもどこへ向かうかはキミの自由だよ、と。

そういった“個人と世界とのつながりを考えるきっかけ”としての“ME,WE.”。この“個人”と“世界〔外界〕”というテーマはAIRにとってずっと重要なキーワードだったが、いよいよその集大成に向かいつつあるのかもしれない。

もちろんそういったメッセージ的な要素を抜きにしても、純粋に音楽として楽しめる作品である。図太い音の塊のようなサウンドは、ここ最近のAIRのライヴのハードさ(今年のフジロックでAIRを観たロックファンの多くが“AIRってこんなにハードなバンドだったの?”と驚いていた)を最も反映したものだし、カップリングの“ギタースクラッチバージョン”には車谷のギタリストとしての非凡さを痛感させられる(ちなみに今回のレコーディングでは7弦、もしくは8弦ギターを使っていると推測)。

RIZEなど最近の若手ヘヴィー系バンドに多いアジテーション調のボーカルスタイルも、実は日本人では一番ソリッドなんじゃないかと思わせる出来である。

とにかくどんなジャンルを好きな人でも一度は聴いてみて欲しいホンモノのパワーを持ったシングル、これだけは間違いない事実である。

文●尾田和実(00/11/22)

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