【インタビュー】Waive、解散へ向かうバンドの19年ぶり新曲と対バン2DAYSに現在地「眩しさに惹かれて、自分自身を発光させていく」

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2023年4月に再結成を宣言し、2025年の日本武道館ワンマンをもって解散することが決定しているWaiveが、新曲「火花」を6月27日に配信リリースした。公に新曲をリリースするのは彼らにとって19年ぶりとなる。

◆Waive 画像

新曲リリース直後の6月29日にはLM.C、翌30日はメリーを対バン相手に迎えたツーマン2DAYSイベント<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート>を開催した。同対バン企画を終えたばかりの田澤孝介(Vo)と杉本善徳(G, Vo)に、Waiveの現在地を語ってもらった。


▲新曲「火花」

   ◆   ◆   ◆

■また終わりに向かって行くタイミングで
■一緒にステージに立ってくれることへの喜び


──浅草花劇場2DAYS公演<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート>を終えて、手応えはいかがですか?

田澤:ガッツリとしたツーマンの対バンは久しぶりで。昔から知っている相手というところもあり、もちろん、燃えたぎるもの、バチバチとした想いも生まれたし。でも、2バンドとも僕らをすごく応援してくれているのが伝わってきたので、それがものすごくうれしかったのと。基本的に人って、自分が思っていることは分かるけど、人にどう思われているかは、直接訊くか予想するかしかなくて、ハッキリとは分からずに生きてるじゃないですか。でも2バンドが「Waiveが解散に向かっているんだよ」という旨を、あの日、自分たちのファンの人らに向けて言ってくれていて。 だから、違う角度から“そうか、俺ら解散すんねや”みたいな、自覚とは別の角度から“終わりがあるものなんだよ”と改めて実感させてもらえて。より本気になれたし、自分らが最後に向かっているんだな、と実感できた時間だったな、と今は思っています。

──メリーのガラさんは、「やめさせないぞ」という旨のことをおっしゃっていましたね。

田澤:そんなこと言うてたね。うれしい話ですよ、本当に。知らない人たちとのツーマンでは絶対にないストーリーがたくさんあって、“うれしい、恥ずかしい”、そんな1日でした。

──杉本さんはどうでした?

杉本:フラットというか、思い入れを持って接し過ぎず。それは対バン相手にかかわらずツーマンというイベントに対してなんですけど、意気込まず、あくまでも淡々と、“目的に対してやっていくべきことだけをやろう”と少し前に決めてしまったので、あまり何も考えずにやったんです。でも、実際に顔を突き合わせてみるといろいろなことがあったし、終わってみると当然、思うことも勝手に出てきてしまうので。その部分で言うと、今、田澤くんが言ったのに近いようなことを僕も感じている。もしも我々が解散した2005年、先日のツーマンみたいなものが行われていたとしても、「解散に向かっていくWaiveを一緒に応援しようね」みたいなことは起きなかったと思うんです。


──当時と何が違うんでしょうね?

杉本:自分らのスタンスとしても、そういうことをしてもらえるような雰囲気を作れなかっただろうし、“触れたらあかんのとちゃう?”みたいな空気だったと思う。それを除いても、やっぱり若い頃はそういうことができなくて。例えば、人が武道館ワンマンをやることに対して「おめでとう」と口では言っていたとしても、どこかで嫉妬していたし、他人を祝うことはなかなか簡単なことじゃなかったと思う。でも歳を取っていく中で、他人の頑張りが自分の勇気になっていくことが増えているのかなと感じたところがあって。

──「他人の頑張りが自分の勇気になっていく」、胸打たれる言葉です。

杉本:僕は普段、そんなにステージに立たなくなったし、Waive1本に完全に絞ってやっているから、バンドを続けている人たちの凄みに押されたというか。押すといってもプレッシャーではなくて、“やれよ”と背中を押してもらう感じのね。勝手に自分がそう思っているだけの部分もあると思うんですけど、でも“勝手にそう思ってしまおう”という気持ちにはなれた。歳を取ってやっている意味はあるのかもな、という気はしましたね。

──2000年代初頭のシーンの空気感を共有し、それぞれに荒波を乗り越えてきた同志、という感覚もあったのでしょうか?

杉本:僕はメンバーに対しても同じことを思ってるんですけど、人と人だから、合う合わないはそれぞれ絶対にあると思うんです。スタッフとかも含めて全員にね。そのうえで、たとえ今日出会ってめちゃくちゃ気の合う仲間が突然出来たとて、“あの時のアレ”みたいな話はその時に居た人としかできない、というのがあるので。もちろん、新しい出会いも大事です。これはファンについても同じことで、Waiveのことをいつから知ってようが、言葉は悪いけど、僕はどうでもいい。知ってもらえただけでうれしいから。だけどメンバーとかスタッフ、同じ時代にバンドをやってきたバンドマンは、1年ずれただけで全然対バンしていなかったり。同じ事務所に所属していても名前も電話番号も知らなかったり。そんなもんだと思うから、かなり奇跡の連続で会っている人たちなんだな、とは思うんです。だから、5年後、10年後に「我々が20代の時、こうだったよね」という話を共有できるのは、気の合わないコイツしかいないのか、みたいな気持ちもあったりするんです。なんていう言葉が適切なのか分からないですけど、“同じシーンで同じ時代に偶然生きていたからこそ、これがあるんだな”とはかなり思いましたね。

──2000年代初頭、WaiveもPIERROTも所属していた音楽事務所主催イベント<SWEET TRANCE>でのAiji(※当時PIERROT)さんとの共演エピソードなど、MCでは懐かしい話も出ていましたよね。

田澤:初日のリハではAijiさんとずっとお話させてもらっていて。実は、2001年の<SWEET TRANCE>が終わった後、いろいろとアドバイスをいただいたんです。そこからもう20何年も経って、「まだ演ってますね、僕ら」みたいな。当時しょっちゅう飲みに行ったり、日常を共有したりするような仲の良さだったわけではないんですけど、「あの頃の…」というだけで話ができてしまう共通項がある。それはメリーも同じですけどね。一回解散をして、解散中と謳って何度も再演を繰り返してきたWaiveが、「また終わりに向かって行くよ」というタイミングに、世代感の共有ができる人たちが応援のスタンスで、またこうやって一緒にステージに立ってくれる、ということの喜びがありました。これは善徳くんもMCで言ってたけど、向こうはずっとバンドを続けていたから、そこにリスペクトもめちゃめちゃ感じるし。


──そもそもLM.Cとメリーが対バン相手に決まったのは、どういう経緯で?

杉本:メンバーとスタッフで、「ブレインストーミング的に対バン相手の案を挙げていこうよ」という中で、「まずは2005年の最初の解散以前から付き合いのあった人がいるバンドに焦点を当てよう」となり、いろいろな方々の名前が出て決まっていった感じです。

──LM.Cではmayaさんがエールを送ってらっしゃいましたし、メリーは「武道館の日程が発表されたら、その日にメリーのライブを入れない」とガラさんがおっしゃいました。一緒に頑張っていこう、盛り立てていこう、という想いを感じました。

田澤:ほんまに予想してなかったスタンスで来られたので、うれしかったです。お互い長く続けてるからこそ分かるというか、“武道館公演をもって解散という決断”の内訳とリスクと、いろいろ見えるんでしょうね。“コイツら、とんでもないことを決めたね”と。そこがイメージできるから、「みんなで応援しようよ」って、嘘じゃなく本音で言ってくれてるなと感じました。終演後、善徳くんが、「対バンやし、“勝ったろうや”とか“お客さんを獲ったろうや”とかじゃなくて、共有できるだけで、もしかしたらすごく意味があることなのかも」と言っていて。確かに、対バンで僕らの存在を知ったとか、僕らが武道館に向けて、解散に向けて今やってるということがまず知れ渡るとか。「0が1になる、そのことのほうがめちゃくちゃ大きな意味があるんじゃない?」って。“ほんまにそうやわ”と思ったし、「だからたくさん対バンをやりたいね」という話になったんです。

──杉本さんとそう言い合ったんですね。

杉本:そうですね。ただ、そのテーマには難しさもあるんですよね。“同じ時代を生きた人たち”にこだわりたいところもあれば、こだわりたくないところもあって。極論を言うと、僕らのことを知らなかった若い世代や、逆に年上のおじいちゃんやおばあちゃんに来てもらうのでもいいんですよ。来るものは拒まずというのは実態としてはあるから。だから、“同じ時代に生きた人だけが仲間だ。分かり合えるんだ”ということに固執したくはない。それは揺るがない事実の1つで。僕はMCでよく「Waiveのファンには若い奴なんていない」ってイジッてるけど、実際はそうじゃないこともわかっているし、何かアクションを起こせば、それが多かれ少なかれに伝わっていく事実も知っているから。

──Waiveに辿り着く入口は、いろいろとあるでしょうからね。

杉本:どこで知ったのか、何の活動で引っ掛かってくれたのか、詳細に分からなくても、もちろんどれもありがたいし、知ってくれたという事実が全てだと思ってる。とはいえ、自分らが長く続けてきた意味は自分ら自身が知りたいから、こうやっていろいろな経験の中で振り返ることや、答えがフィードバックされることで、自分を知ってそれを噛み締めたい。まぁ、どちらもできないとダメですからね。ただ、この2DAYSに関しては、どうしても“同じ時代に生きた人”という言葉が出ちゃうな、というのはありますね。

──Waiveの魅力を更に広く伝えていくために、まずは近しい応援団を熱く強固なものにする、良い場だった気がします。

杉本:Waiveって、2005年の最初の解散までの活動スタンスがバンド名そのままに“放棄する”…どちらかと言うと“拒絶する”に近いかもしれないけど、シーンに対する反抗がすごくあったから。例えば、ヴィジュアル系という言葉でまとめられたくないとか。具体的には当時の雑誌だと『SHOXX』や『Vicious』には活動途中から載らないスタンスをとっていたり。あの時はそれで間違っていなかったって、今、胸を張って言える。だけど、生きてきた中での経験値として、「角が取れてしまった」と言われる部分もあるかもしれない。けれどもそれは、器が大きくなっていった部分なのかもしれないし、四角の外側が足されたのかもしれない。そういう感覚で自分たちが変わっていってるのは確実だから。

──成熟によって許容量が増えて、懐が深くなったんですよね。

杉本:対バンで“獲り合う”みたいな気持ちもゼロじゃないけど、それはシーンが衰退しているからかもしれないし、世代的にどんどんみんながやめていってるからかもしれないし、理由はもう正直分からなくて、全部な気もする。組織的に応援してもらったり、完全に自分ら側にひっくり返らなかったとしても、“なんとなくWaiveのことも気にしておいて”みたいなことをやらないとダメだ、というところに舵を切っていると思います。そこはやっぱり、新曲のリリースがあったからだと思うな。明確に、 急に意識が変わったと感じる。

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