【ライヴレポート】Waive × LM.C、<浅草コンプレックスルート Day1>で22年ぶり共演「悔いを残すなよ! 納得のいく人生を!」
2023年に再結成すると同時に、2025年には日本武道館ワンマンを行って解散する、と異例の発表をしたWaive。約19年ぶりの新曲「火花」を6月27日に配信リリースした直後、2マンイベント<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート」>を浅草花劇場にて2Daysにわたり開催した。そのDay1、6月29日(土)の対バン相手は、Aiji(G)とmaya(Vo)から成るロックユニットLM.C。AijiとWaiveの邂逅は、当時所属していた音楽事務所主催イベント<SWEET TRANCE>で2000年代初頭、PIERROTと共演して以来となる。
◆Waive × LM.C 画像
先攻のLM.Cは、明滅するライトの下「Be STRONG,Be POP.」をSEとしてサポートメンバー陣が登場、Aijiが姿を現しセッションで場を温めた後、mayaが合流した。
「初めましてLM.Cです、上げて行こうぜ浅草!」──maya
シャウトを合図に狂騒的なデジタルロック「METALLY」を放つと、フロアでは一斉にヘッドバンギングが起きる。激しく動き回っていたmayaがくるりと背を向け豪快に水を噴き上げ、Aijiは前方へ歩み出て華やかなアクションでギターを奏でた。すぐさま「DOUBLE DRAGON」へ切り替わると、Aiji自らクラップをして盛り上げていく。ダークな幕開けだが、サビでは晴れやかなメロディーに転じるドラマティックな楽曲に惹き込まれた。
「Waiveという素敵なバンドにお呼ばれして、このステージに立っております。2バンドなので、“このイベントちょっと盛り上がりに欠けたな”となったら完全にウチらのせいなので。Waiveの皆さんもTeam☆LM.Cの皆さんも行きましょう!」──maya
ライヴの定番曲「OH MY JULIET.」は激しさとキュートさ、ポップさが混然一体となっためくるめく1曲で、ファンは熱狂して声を上げステージへと手を伸ばした。銃口をこめかみに当てるmayaのジェスチャーで締め括ると、ラップとスラップベースで小気味よく滑り出す「Galileo」へ。「@FUNNY PHANTOM@」のイントロに乗せ、「楽しんでますか? 浅草の皆さん! ここから3〜4分間、飛んで跳ねとけば楽しめるんで、よろしく!」とmayaが呼び掛けると、Aijiが前へ出てリフを繰り出す。天国と地獄を目まぐるしく行き来するジェットコースターのようなナンバーで、mayaは「ジャンプ!ジャンプ!」と煽りながら、歌ってはしゃがみ込み足元でエフェクターを操作。Aijiは咆哮するようなギターソロを奏でた。
「とにかくWaiveを盛り上げようというイベントでしょ? イベントに頻繁に呼ばれるバンドではないんですけど、呼ばれたらギャラ分の仕事したいなって(笑)。Waiveってバンド名いいよね? 新曲聴きました? 早く聴きましょう? (配信開始からすぐ)12時30分ぐらいに聴いた。音もいいよね。そういうとこ注目して聴いてる? どういう愛し方をしてるの? Waiveの皆さんって」──maya
そう矢継ぎ早に観客に問い掛けるmayaを、笑みを浮かべながら見守っていたAiji。
「特殊なバンドじゃん? それを皆さん支えてきたわけでしょ? ごめんなさいね、偉そうに(笑)。勉強してきました。「ガーリッシュマインド」とか、2002年の<SWEET TRANCE>のやつ」とコメントすると、フロアからは大きな拍手と歓声が沸き起こった。「その時から繋がってるわけじゃない? 来年武道館がある? これはもう盛り上げるしかない」とmaya。
この後も、「こういうバンドです、みたいな紹介動画があったから観たら、あれだけ観たらコミックバンドみたいだと思われる」と語りつつ、Waiveの良さについて「カラオケで歌いたくなるような曲ばかりだなぁって。いまどき世界で流行ってる踊れる音楽とか、歌いたいと思わないけど、だけどWaiveはちゃんとメロディーがあって歌詞が聴こえてる。これは大事だなって。LM.Cの曲も次の曲とか、一言目聴いたらずっとループだから、皆さんの真価が問われると思うんで、付いて来て下さい」──maya
「一緒に笑いましょう!」と呼び掛けると、「Ah Hah!」では、タイトル通りシンプルな合いの手をファンが入れることでハッピーな合唱が生まれた。その後、ロッカバラード「meteorion」が始まると、夜の海を思わせる青い光にステージが包まれ、マイクスタンドを握り締めて熱く歌うmayaの金髪を、ピンスポットが眩く神秘的に照らした。Aijiの奏でるギターソロはエモーショナルで、アルペジオは繊細で美しい。冒頭からずっと激しく動き回っていたmayaだからこそ、ほぼ直立不動で歌ったこの曲は鮮烈な印象を残した。そっと呟いた「ありがとうございます」という言葉が、心にスッと届いてきた。
「楽しい! 初めての会場ですけど、照明とかも気持ちいい」と手応えを語ったmayaは、隣接する花やしきのジェットコースターの悲鳴と『名探偵コナン』がリンクした、などというエピソードを独自の語り口で笑い話にしつつ、「meteorion」について「LM.Cのことを歌ってる、というかさ」と曲のビハインドストーリーを真剣に語り始めた。「海ほたるに(Aijiと)一緒に流れ星を観に行ったことがあるんですよ。そうやって言うと急に気持ち悪くなるけど(笑)、バンドって楽しくやりたいなって…Waiveって今そういう感じを感じるんですけど、実際どう? だって武道館をここから目指すってカッコ良くない? キツイじゃん? リスクもあるじゃん? だから今日来た人たちみんな行ってほしいし」──maya
温かいエールを送り、「ただ、その前にLM.Cもすげえ大事なライヴが7月30日にあって(笑)」と、自身の誕生日に開催されるライヴも告知。
「次の曲も、あんまりイベントとかでやらないんですけど、気持ちというか、歌ってることが“未来に繋げていこうぜ、俺たちの物語”みたいな曲なので」──maya
そう告げて深い紫の光の中で歌い始めたのは、「Brand New Rainbow」。頭を激しく振って歌っていたmayaは、“生きている素晴らしさを感じる事も出来るだろう”というフレーズで胸にそっと手を置いた。Aijiは揺るぎないプレイでメッセージに説得力を与えていく。虹色に輝く光の下、祝福ムードの中で曲は締め括られた。
「Elephant in the Room」ではリフを刻むAijiに接近していったmayaは、檻の中で苛立つ猛獣のようにステージを彷徨った。あわや転倒するか?とヒヤリとした瞬間もあったが、「僕のこと心配しないで!」と叫び、理性のタガを解き放った激しいパフォーマンスを続行していく。エキゾチックな音階のフレーズが妖しく響き始め、「The BUDDHA」ではミステリアスでドープな世界へ。EDMのビートに乗せて「最高に盛り上げる曲で、ここからWaiveに繋げて行きましょう!」(maya)と呼び掛けると、ラストのナンバー「Chameleon Dance」で「飛べ、飛べ!」と煽りに煽って熱狂の渦へ。ジェットコースターのような疾走感とメリーゴーラウンドのような煌びやかさが共存する、強烈なステージだった。
約30分間の転換を経て、Waiveが出番を迎えた。高井淳(B)、貮方孝司(G)、山内康雄(サポートDr)がスタンバイした後、杉本善徳(G, Vo)、最後に大きく両手を挙げて田澤孝介(Vo)が登場、右手を高く掲げるとSEが止まった。
「浅草、燃えてるか? 楽しんでるか? 声出せ!」──田澤孝介
その第一声は、まるでライヴの最後の瞬間にワープしたかと錯覚させるようなテンションだ。6月27日にリリースしたばかりの新曲「火花」を冒頭に放ち、凄まじいエネルギーを放出しながら歌い奏でていくメンバーたち。ステージの際まで4人がグッと歩み出て一列になる場面では、フロアへと溢れ出す熱の軌跡が目に見えるようだった。両手でマイクを握り仰け反って響かせた田澤のロングトーンは圧巻。「Lost in MUSIC.」へ突入するとファンはジャンプを繰り返し、盛り上がりは加速。メンバー紹介、コール&レスポンスを盛り込んだパフォーマンスで一体感を更に高めていく。序盤からパワー全開であることにたじろぎつつ、生命力漲るステージングにはバンドとしての迷いのようなものが一切感じられず、晴れやかな気持ちになったのだった。
「浅草、楽しんでますか? 元気ですか? 今は楽しくやってます(笑)、Waiveです」(田澤)と、mayaのMCに返答してみせた田澤。「最初、“飛ばし過ぎたかな?”と頭をよぎったんですけど、俺は今を生きる」と清々しく決意を語り、Waiveの複雑な歴史を手短にテンポ良く解説。2025年の解散に向かって「全部を悔いのないように燃やし尽くしたい」と力強く宣言した。
すると杉本の機材にトラブルが発生し、しばしトークで場を繋ぐことに。「人生分からんもんやな、と思って」と田澤が語り始めたのは、2001年の<SWEET TRANCE>についてだった。「リハでAijiさんと2001年の話をしてて。“いろいろあったけど、また今日一緒になるんですよね”みたいな。今日という日を楽しみ尽くそうって」。
トラブルが解消し、再開した1曲目は「バニラ」。田澤と杉本が向き合ってスタートする。ファンはステージに向かって大きく手を広げ、想いを捧げていた。「わがままロミオ」のメロディーの美しさに改めて感じ入り、メンバーの晴れやかな笑顔と楽しそうな様子に胸が熱くなる。「あの花が咲く頃に」では田澤が伸びやかな歌声を響かせ、貮方は情感溢れるギターソロを奏でた。呼吸の合ったアンサンブルからは、一曲一曲、一本一本のライヴで完全燃焼しようとするバンドの覚悟が伝わってきた。
「同じセトリでやったとて、同じライヴはないように、今という瞬間をとかく生きているんだな、と」と田澤。「この空間の良さが伝わっていってほしかったりする。(いくら)僕たちが“素晴らしい空間があるんだよ!”と言ってはいるものの、実際足を運んでいる人、体験なさっている方たちの口コミが一番刺さっていく」とオーディエンスに語り掛けた。ライヴは折り返し地点を迎え、“身体を動かす時間”の次に「じっくり聴いていただく、皆さんの心にお邪魔したい」と告げて届けたのは2曲のバラードだった。
1曲目の「そっと…」はシンプルな白いライトの下、表情豊かに声色を変えながら歌を丁寧に届けていく田澤。杉本のギターもそれに呼応するようにエモーショナルで、哀愁を帯びていた。夕焼けを思わせるオレンジにステージが染められていき、田澤の清らかな美声が響く。逆光に照らされたメンバーのシルエットは余韻をもたらし、その中に浸っていたのも束の間、2曲目の「spanner」が始まった。更に切々と、聴き手の心に直訴するような歌と演奏を畳み掛けていくメンバーたち。終盤に向かうにつれ、田澤の歌への没入感は増していき、全身全霊で歌い上げる姿に圧倒された。ロングシャウトに絡みつくようにして、ギター、ベースのフレーズが織り成されていく。エモーショナルなエンディングに大きな拍手が起き、暗闇の中でお辞儀をした田澤は、まるで憑依していた何かを降ろし、素に戻ったかのように見えた。
「「spanner」なんて最初の時の曲なので、24年の時を経て歌っている、という。曲そのものは変わっていかないんですけど、歌っている本人の解釈によって表現も変わって来るし。あの頃刺さらなかったけど今すごく刺さる曲とか、その逆もあると思うんです。音楽も我々と一緒で生きてるのかな、と思ったりします。そんな我々が公に19年ぶりに新曲をリリースしました。それが一曲目にやった「火花」です!」──田澤
という言葉に相槌を打つようにメンバーが音を鳴らし、客席からは拍手が送られた。LM.Cのライヴを4階から観ていたという杉本が、2002年の武道館での<SWEET TRANCE>が話題になっていたことに触れ、この日YouTubeチャンネルの収録ため来場されていた東海林のり子さんと初めて会ったのもその場だった、と回想した。
Aijiとの共演は2001年の代々木での<SWEET TRANCE>だったと振り返り、「それからもう22、23年? ヤバない? めちゃくちゃヤバいよな?」と語り掛けると、田澤も「ヤバい!」と返答。杉本が「その時生まれた子がここにいてもおかしくない」という、長い月日が経ったことへのシンプルな感嘆から、Waiveファンの年齢層にまつわる若干のイジりを交えながら漫才っぽくトークを展開。客席からの反応の薄さに杉本は「…あれ? 外、音聞こえてない?」と、序盤の音響トラブルにちなんだツッコミで笑わせた。新曲「火花」を「是非聴いてください!」(杉本)と呼び掛けると、「まだ聴いてない人?」とも尋ね、挙手した勇気ある2階席の観客を見やり「二度と忘れへんぞ(笑)」と詰め寄った田澤ら。文字情報だけで場のムードを伝えるのが困難で歯痒いのだが、杉本と田澤の夫婦漫才的な面白さは威力を増している。
「ようしゃべるバンド、Waiveです(笑)」と名乗り、「悔いのないように生きよう」と決意した田澤。最近は更に解像度を上げて「納得のいく人生を送ろう」という想いに至っているそうで、「Aijiさんに話したら褒められて。「ほんと、そうだと思う」って」と明かした。その想いを体現するように、「行けるかー?」とシャウトして始まった後半は、「FAKE」「ネガポジ」「Sad.」と怒涛の畳み掛け。本編ラストの「いつか」では、“あぁ いつか、死ぬ僕たちは”というフレーズの“死ぬ”の直前で、「そう!」と短く付け加えて歌った田澤。それは、強い覚悟を感じさせる叫びだった。
アンコールを求める声が響き始め、白いグッズTシャツ姿で再登場したメンバーたち。「もっと対バンをやっていこうかなと思いました」と手応えを語る田澤だったが、「友だちがおらん」と杉本。高井はLM.Cにサポートベーシストとして参加した経験があり、Aijiとmayaに「火花」の音源を送ったと明かした。杉本はDay2に対バンするメリーのガラ(Vo)に送ったそうだが、「既読付かん。きっと、対バン前に馴れ合ったらアカンと判断してるに違いない」と杉本。田澤は「そんなバチバチなん?!」と笑いながらツッコんでいた。
最後に「ガーリッシュマインド」を放つと、MCのムードから激変しアグレッシヴに歌い始めた杉本。田澤の呼び込みでLM.Cが合流すると、ステージ上は大渋滞。mayaも観客を煽りながら熱く歌っていたのだが、一瞬ステージ袖へと消え、(後に判明したのだが)歌詞を書いた紙を受け取り、足元に置いてパフォーマンスを再開した。Waive単独ライヴでは見られない盛り上げ方に挑むmayaの自由奔放ぶりに、「楽しいな(笑)」と笑いを堪えきれなくなる田澤だった。「ラスト!」(田澤)と告げた後もコール&レスポンスは延々と続き、Aijiと高井が向き合ってプレイしたり、mayaからマイクを向けられてAijiも歌ったりと、ステージのあちこちで見せ場が生まれていた。大いに会場が盛り上がる中、「悔いを残すなよ! 納得のいく人生を!」と田澤は叫び、いよいよエンディングを迎えた。
「歌詞を覚えてきたつもりが…」と反省の弁を口にしたmayaに、「そういう次元じゃない(笑)。何年もこの曲やってきたけど、今日が一番楽しかった。やったことないことをいっぱいできました」と田澤は声を弾ませていた。mayaが「写真とか撮る?」と提案、記念撮影タイムへ。「この2人並べたらダメとかある?」と不仲なバンドを気遣うようなお伺いを立てるmayaに、「今、仲良いから大丈夫(笑)」と田澤は答えるなど、和気藹々と語らいながらレアな集合写真が撮り下ろされた。
時間の都合で実現しなかったが、mayaが「「火花」、もう一回やったらいいのに」と提案したのは、Waiveの背中を押すエールに違いなかった。杉本の「すいません。2曲目終わりでトラブってなければ…(笑)」という返答はオチとして絶妙だったし、田澤の「LM.CとWaiveを今後ともよろしくお願いします!」という挨拶も、真っ直ぐな嘘のない言葉として清々しく心に届いてきた。共演したのはたった1曲だったが、LM.Cとの対バンだからこそ生まれたミラクルに満ち、垣根無き交歓を体感できた3時間30分だった。
取材・文◎大前多恵
撮影◎旭 里奈
■対バン2days公演<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート」>Day1:Waive vs LM.C:6月29日(土)@浅草花劇場 セットリスト
01. METALLY
02. DOUBLE DRAGON
03. OH MY JULIET.
04. Galileo
05. @FUNNY PHANTOM@
06. Ah Hah!
07. meteorion
08. Brand New Rainbow
09. Elephant in the Room
10. The BUDDHA
11. Chameleon Dance
▼Waive
01. 火花
02. Lost in MUSIC.
03. バニラ
04. わがままロミオ
05. あの花が咲く頃に
06. そっと…
07. spanner
08. FAKE
09. ネガポジ
10. Sad.
11. いつか
encore
en1.ガーリッシュマインド(with LM.C/maya, Aiji)
■<Waive VS GIGS「浅草コンプレックスルート」>スケジュール
6月29日(土) 浅草花劇場
Day1:Waive vs LM.C
6月30日(日) 浅草花劇場
Day2:Waive vs メリー
■対バンシリーズ第三弾<VS GIGS「MUCC WAIVE ILLUSION '24」>
出演:Waive vs MUCC
▼チケット
¥8,800 (税込・ドリンク代別)
※オールスタンディング
【各オフィシャルファンクラブ先行受付】
受付期間:7/16(火)18:00~7/31(水)23:59
・Waiveオフィシャルサイト:http://www.waivewaive.com
・MUCCオフィシャルサイト:https://55-69.com
■新曲「火花」
配信リンク:https://linkco.re/AgBtaDeD
■Waive解散ライブ
日本武道館単独公演
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