【インタビュー】HANCE、大人世代を魅了する独自の音楽性の原点「一つ一つが必然だったんだなと思っています」

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シンガーソングライターのHANCEが、2ndアルバム『BLACK WINE』をリリースした。会社経営の傍ら、40代になってから本格的な音楽活動をスタートさせ、2020年にシングル「夜と嘘」でデビュー。翌年5月に1stアルバム『between the night』を発表したHANCE。ロック、R&B、ソウル、ラテンなど多彩な要素を取り入れた音楽性、映像的なイメージをもたらす歌詞の世界によって、注目を集めている。

◆HANCE 『BLACK WINE』特集ページ

アジア、ヨーロッパ、南米など世界各国でリスナーを獲得していることも彼の特徴だろう。BARKS初登場となる今回は、これまでのキャリアを振り返りつつ、独自の音楽性と活動スタイル、そして、新作『BLACK WINE』のコンセプトについて語ってもらった。

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■大人世代に音楽を届けたい

——HANCEさんが本格的な音楽活動をスタートさせたのは、40代になってから。どんな経緯でアーティストとして始動することになったのでしょうか?

HANCE:40歳を超えてからのスタートは、確かに珍しいパターンですよね(笑)。ただ、20代前半の頃、メジャーデビューを目指していた時期もあったんですよ。いわゆる音楽事務所に所属していたのですが、社長の意向がとても強くて。音楽性を含め、自らの意思は反映してもらえない日々が続いていました。音楽活動の幅を広げていくはずが、「狭い世界」に閉じ込められてしまったような気持ちになってしまったんですね。そして、あまりにもギャップが大きかったので、数ヶ月でスパッと辞めたんです。そのときに「自分の音楽人生は自分でコントロールしよう」と決めました。そして、まずは自分の生活の軸を作るのが先だと思い、今の会社を作りました。起業後も音楽は続けていて、バンドを作ったり、仲間内で小規模のライブもやってたんですよ。10数年会社を続けてきて、40歳を超えたあたりで「ここで思い切って、もう一度音楽を本格的にやってみよう」と。



——音楽をやるために起業し、人生設計がある程度見えてから、本格的な活動に戻ってきたと。

HANCE:その通りです。少し補足しますと、僕自身、若いときにすべての可能性を音楽にかけるのはあまり健全じゃないと思っています。10代後半から20代前半あたりで音楽を生活の生業としてやるかどうかを、大人から迫られるのは不安じゃないですか。仮に思い切って飛び込んでデビューできたとしても、途中で契約を切られれば、何も後ろ盾がない状態で社会に放りだされる。それはあまりにも不確定要素が強すぎると思うんですね。自分で自分をコントロールしながら音楽をやっていくほうが、少なくとも僕にとっては大好きな音楽を続けていけるイメージが沸きました。メジャーシーンで活躍されている方を否定するつもりはまったくないですが、僕のような選択を取るミュージシャンが増えると、進路を迷っている若い方も、僕のような大人世代の方も、希望が広がると思うんです。


——生活の不安がなければ、自分のやりたい音楽を追求できるメリットもありますよね。

HANCE:そうですね。スポーツの場合は若いときのフィジカルの強さがとても大事ですが、音楽という領域はそれだけではないですよね。もちろん若いときにしか出来ないこともあると思いますが、自分くらいの年齢になって初めて表現できることもあるはずなんです。40過ぎでもデビューできる状況になったほうが、音楽業界全体も活性化すると思います。

——HANCEさんご自身も、音楽的な志向は変化している?

HANCE:はい。20代の頃は音数の多い、エネルギッシュな音楽を好む傾向が強かったです。今は自分と同じ大人世代の方が自然体で聴ける音楽を届けたい気持ちが強くて。僕にとっては40代になってからデビューするのがいちばん自然でしたし、じつは“遅い”という感覚もあまりないんですよ。これも以前から不思議に思っていることなんですが、音楽業界は10代、20代でデビューすることに偏り過ぎている気がするんです。たとえば飲食業界では、30代まで下積みや修行をして、40代で独立して店を持つ方がたくさんいるじゃないですか。

——確かにそうですね。

HANCE:10代、20代じゃないとデビューが難しいという状況は、ファッションでいえば「若い世代の服しかない」みたいなことだと思うんですよ。洋服には10代向けもあれば50代向けもありますが、今の音楽業界には40代、50代に向けた新しいアーティストは皆無です。僕自身は「同世代の新人アーティストがいたら聴いてみたい」と強く思っていましたし、いないのなら自分でやってしまおうという気持ちでしたね。



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