【速レポ】＜SATANIC CARNIVAL＞OVER ARM THROW、「繋がっていくんです、音楽にはそういう力があるんだ」

サウンドチェック中から賑やかに盛り上げていたのは、菊池信也（Vo, G）、鈴野洋平（B, Cho）、寺本英司（Dr, Cho）によるメロディックパンクバンド、OVER ARM THROWだ。観客に、「こっちはOK！　そっちもOK？」と問いかけ歓声が返ってくると、その勢いで「白鶴〜？」「マル！」ととっさコール＆レスポンスまでも成功。観客もバンド同様に、ノリがいい。「今の、どのコール＆レスポンスよりも気持ちよかったわ」（菊池）と最高の笑顔を生んだところで、いよいよ本番。

◆ライブ写真


フレンドリーさは残しつつ、抜群にキレのあるビートと哀愁混じりのメロディで観客のコブシをこれでもかと上げさせる「Spiral」でライブはスタートした。間髪入れずに続いた「closing」ではさらにBPMをあげ、それでいてOVER ARM THROWならではと言えるメロディと2声、3声によるハーモニーで聴かせる。キャッチーで、泣きの琴線にも触れるエバーグリーンなグッドメロディが会場に響くと、遅れて到着した観客もぐっと前のめりになってフロアの密度が上がっていった。



菊池は「いや、贅沢な時間です。俺だって（裏でやってる）ホルモン見たいよ！」などと言いながらも、先ほど味をしめた「白鶴〜？」「マル！」のコール＆レスポンスをぶち込んできたりと前半からやりたい放題だ。「2020年にPIZZA OF DEATHから発売されたオムニバス『The Very Best of PiZZA OF DEATH III』に参加させてもらっていて。コロナ禍もずっと、この日のためにこの曲をライブでやってきました。ようやくPIZZA OF DEATHのみなさんの前で演奏できます。どうか一緒に楽しんでいってください」という鈴野のMCでプレイしたのは「Polestar」。ライブを重ねて磨いてきた極上のメロディックチューンが会場に行きわたって、観客と一体で盛り上がっていくのが爽快だ。そこからは「いこうぜ！」という声とともに大きなシンガロングが広がっていく、アンセミックな「ZINNIA」、抜群のハーモニーがメロディを輝かせる「Keep making the road」を連投して、会場の空気を高揚させていった。




会場を眺めて「こんなにいっぱい来てくれてありがとうね」と切り出した鈴野は、このコロナ禍で、近くにいる人を大事にすることや、世界は人と人とでつながっていることを教えられたと語る。「あなたたちを幸せにするために俺らは音楽を遠くに飛ばすから、あなたたちはすぐそばの人を幸せにしてください。そうやって繋がっていくんです、音楽にはそういう力があるんだ」と語る。

高いテンションにこんがらがりながら「いつものことだけど、言うこと忘れたわ」と笑いながらも、続く「BLUE」ができた背景を語る。飛行機に乗っていて、様々な色が混じり合った地上がブルーに見えたという、そんな平和や願いが込められたこのバラードには、ライブでは「Happy Xmas(War Is Over)」のコーラスがアレンジされている。スピード感と哀愁のメロディでバーストしていく曲はもちろんいいに決まっているが、こうしたバラードをも聴かせられるバンド力は、3人の強みだ。


「BLUE」からはじまった後半戦はぐんぐんとスピードを上げて再びフロアをもみくちゃにして、汗だくのシンガロングを生む。その真骨頂は、「Dear my songs」。メロウな歌いだしに歓声が湧き、途中のシンガロングパートではドラマー寺本も立ち上がり高く腕を掲げながら観客の声を指揮する。会場が一体となっているそのクライマックス感の余韻を飲み込んで、ラストは約1分間のファスト＆ショートチューン「All right, all wrong」で駆け抜けて、一体となった観客を片っ端から笑顔にして濃厚な30分を締めくくった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎半田安政