【速レポ】＜SATANIC CARNIVAL＞G-FREAK FACTORY、「同じ奇跡を共有してる」

ほのかに明るいライティングのなかメンバーが現れ、まずは原田季征（G）によるギター、吉橋伸之（B）のベース、そしてサポートによるドラムと鍵盤が重なってジャムセッションがスタート。G-FREAK FACTORYの登場に、会場は歓声で湧き上がる。

◆ライブ写真

ゆったりと、それでいて心地よい緊張感を走らせたアンサンブルを響かせると、ステージ袖から茂木洋晃（Vo）がセンターマイクへと歩み出てアドリブ的に言葉を乗せる。観客に挨拶するように大きく手を広げ「＜SATANIC CARNIVAL＞、幕張メッセ、G-FREAK FACTORYはじめます」と叫ぶや、重厚なギターリフが会場を貫いて「SOMATO」へと加速していく。スリリングなはじまりだ。


観客は、直線的なビートにコブシをあげ、またレゲエパートでは大きく体を揺らす。曲中「元気だったかー！」と声をあげる茂木に、大きく唸るような歓声が起こって、その勢いのままールが巻き起こったりと、頭から観客のテンションが高い。そこに三味線の音色が流れ、強靭さとしなやかさを持ったバンドアンサンブルと念仏的なボーカルでサイケデリックな恍惚感を生む「REAL SIGN」が続くと、観客はその渦巻くようなバンドグルーヴに飛び込んで、自由に音に体を委ねる。最高の滑り出しだ。


フロアから湧く歓声に茂木は「元気いいな。後ろは大丈夫？」と声をかけ、「（SATAN STAGEでやっている）04 Limited Sazabysを諦めてせっかくこっちに来たんだから、最高の時間にしよう。日本のアフリカ、群馬県というところからFOMAREとともに戻って来ました。何を隠そうビジュアル系バンド、今日もかっこよくてすいません」と馴染みの挨拶でさらに拍手を起こしていった。やっぱり幕張はいいよね、屋根もあるしcoldrainがいてもこんなに晴れてるし、と冗談も飛ばしながら、この数年のフェスやライブでの試行錯誤を交えながら「やめなかったから、ここがある。俺たちもやめなかったから、ここがあった。幕張にも帰ってこれた。お前らも諦めなかったからここにいて、同じ奇跡を共有してる」という言葉でぐっと観客との心の距離を縮めると、「Fire」をエモーショナルに紡ぎあげていく。


美しいアルペジオによる詩的な序盤から、激流のような感情や力が理性の壁を突破してダイナミックに溢れ出すアンサンブルやその歌に、自然とシンガロングが大きく広がる。この曲を契機に、続く「Too oLD To KNoW」では観客もまた爆発的にその声を響かせた。コロナ禍で演奏されていた時は、そこに刻まれたふつふつとした想いに心を寄せ、日々の灯火にしてきた曲を、今日はともに歌える。会場にはその歓喜がみちる。さらに茂木がステージを降り最前列に身を乗り出すようにして歌うと、さらにシンガロングが会場にこだまする。次々とくるダイバーと手を合わせたり、もみくちゃになって歌う、以前だったら当たり前だった光景が、目の前で起こっているのは感動的ですらある。

「感謝しかねえよ」。そう笑顔を見せた茂木の言葉に続いたのは「ダディ・ダーリン」。ピアノとギターによる穏やかでフォーキーな歌心に、ゆったりと会場が揺れる。日々の生活から、何気ない日々の景色から生まれる、ささやかでいて人間の本質的な“生”の歌。その歌は、心にじっくりと沁みる。茂木はMCで、群馬では西の山に夕日が沈む、その夕日の見え方でメンタルのコンディションがわかると話していたが、この「ダディ・ダーリン」もまたその日、その時で様々に心に刺さる曲だろう。


ひとつひとつの歌の言葉を飲み込むように聴いていた観客から割れんばかりの拍手が起こって、ラスト「らしくあれと」では、歌詞の一部を変え“いつもここにいるから　ライブハウスに帰ってこいよ”と歌う。また会う日までのはなむけの歌のように響いたこの曲の最後には、茂木がこの日のリアルを超早口の吟遊詩人のごとくステージに刻みつける圧巻のパフォーマンスで、“ローカルバンドの最高傑作”G-FREAK FACTORYのステージを締めくくった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎半田安政