【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.111「フィンバンドこの春は新曲のリリースラッシュ」
3月初めからコロナ制限がほぼ解除され、普通にライブが行われるようになったフィンランドですが、2年ほど制限が出ていたためライブ活動が思うようにできなかったのもあってかその間次のアルバムの制作に入ったバンドも多いのでしょう。この春は新曲のリリースラッシュ!ということで、その中からいくつかを紹介したいと思います。
Michael Monroe
Pic:Bobby Nieminen
フィンランドの永遠のロックン・ローラー、マイケル・モンローから6月10日発売予定のニューアルバム『I Live Too Fast To Die Young』より彼らしいロッケンロールな先行シングル「Murder The Summer Of Love」がリリースになり、リリックビデオが公開になりました。このアルバムタイトルは古くからある愚かな決まり文句 "Live fast、die young"を自分の人生に合わせて変えてみたとのことで、死ぬには俺はすばや過ぎるという意味だそうです。このタイトル、あーなんかわかる!って気がしますね。アルバムのタイトルソングではSlashがギターソロをプレイしている他ニューアルバムには何人かのゲストミュージッシャンも参加しています。日本独自企画でストックホルム公演の模様を収録したライヴ・アルバム『LIVE - TOO FAST TO DIE YOUNG』がついたデラックス・エディションも発売予定です。
マイケル・モンローは5月20日にスタートするシンガーのオーディション番組The Voice Of Finland:シニア編にメンターで出演が発表になっていて、これまでのTVOFとどこが違うか?というと、オーディション参加者の年齢が60~84歳に限られる点!だそうです。これまでと一味違った番組になりそうで、どんなメンターぶりを発揮するか面白そうです。
この4月国外在住のバンドメンバーがフィンランドに集まり、2年以上ぶりにバンドとのフィンランドツアーをスタートしたマイケル・モンローですが、1公演のあとツアーメンバーの中に新型コロナ陽性者が出たため次の週に予定されていた3公演を8月に延期。その次の週には無事ライブ再開で今回のフィンランドツアー終了できましたが、フィンランドでは3月から普通に規制なしでライブが可能になったものの、ライブ前日とか当日にコロナ感染と思われる理由でキャンセルとか延期を最近ちょくちょく見かけます。早くそういう心配なしにライブができるようになって、ニューアルバムを引っ提げて再来日公演実現するといいですね。
VV
Pic:Joonas Brandt
2017年の大晦日ヘルシンキのTavastia公演を最後に惜しまれながら解散したフィンランドのラヴ・メタル・バンドHIMのフロントマンでよく知られるヴィッレ・ヴァロがなんと活動再開!ソロアーティストVVとして2020年に3曲入りEP『Gothica Fennica Vol. 1 』をリリースしたあと音沙汰がなかったところ、この春ニュー・シングル「Lovelettting」をリリース、2023年初頭に初のソロ・アルバム『Neon Noir』をリリース予定というニュースが飛び込んできました。加えて来年1月13日ヘルシンキのTavastia公演を皮切りにヨーロッパとアメリカツアーが発表になりました!この来年のTavastia公演のチケットすでに発売され、発売とほぼ同時にソールドアウト!チケット販売サイトが込み合っていてなかなか入れず、やっと入れたと思ったときにはすでに完売してました。すぐに追加2公演が入ったもののそれもすぐに完売!相変わらずすごい人気です。
HIMはソロソングをリリース前にフィンランドのベテランバンドAgentsとコラボしてVille Valo & Agentsでアルバムリリース後フィンランドツアーも行っていましたが、この「Lovelettting」はAgentsから学んだセンシティヴィティとHIMのサウンドが持つノイジーさが総合、そこにほんの少し80年代の美学が加えられたような曲だと語っています。HIM再結成については、またいつか一緒にやれたらいいなという思いはいつも持っているものの、今の段階ではまだそれは起こらないとのこと。来年予定されているツアーはソロとHIMの区別をつけるため、ツアーメンバーに元HIMのメンバーが加わることはないだろうとフィンランドのメディアで答えてました。このソロアルバムは作詞、作曲、プロデュースに加えて楽器もすべて自分で演奏しているそうです。ミキシングと副プロデューサーは以前HIMのアルバムのプロデュースを手掛けたこともあるティム・パーマーが担当。このニューシングルをきく限り、ギターソロとかはないにしてもHIMが好きだった人にはそのまま受け入れられそうな曲に思えます。
Apocalyptica
ただ今北米ツアー中のフィンランドのチェロメタルバンドApocalypticaは彼らの8作目のアルバム『Shadowmaker』でヴォーカルを務めたフランキー・ペレスをヴォーカルに迎え入れ、Black Sabbathのベーシスト、ギーザー・バトラーをゲストに迎えニューシングル「I'll Get Through It」をリリース、ミュージックビデオも公開しました!この曲はグラミー作曲家で知られるダイアン・ウォーレンの作品で、彼女は2010年にリリースになった『7th Symphony』収録曲「Not Strong Enough」も手掛けています。この曲が出来たいきさつはギーザーとフランキーが友達のダイアン・ウォーレンのスタジオを訪ねた時、この曲を聴かされ、フランキーが歌ってみたらぴったりで、フランキーからApocalypticaに送ってみたらどうか?と提案が出て送ってみたところこの共演が実現したとのことです。
Apocalypticaの哀愁漂うチェロの音色とキーザーのべース、フランキーのヴォーカルがとてもバランスよく統合されていてうっとり聴きこんでしまいます。
フランキーは今回の北米ツアーのヴォーカルに起用されていて、バンドは4月27日に予定されているアメリカのシカゴ『House Of Blues』での公演をライヴ・ストリーム(日本時間4月28日午前10時~)の予定です。アーカイヴ映像は3日間視聴可能とのことなので興味ある方はバンドのソーシャルメディアをチェックしてみてくださいね。
The 69 Eyes
Pic:Marek Sabogal
ヘルシンキ・ヴァンパイアことフィンランドのゴッスン・ロールバンドThe 69 Eyesからひさびさにニューシングル「Drive」がリリースになりミュージックビデオも公開に!このビデオはフィンランドとアメリカのLA.で撮影され、曲は大都市を夜中に目的地なしにドライブする内容で、ヴァンパイアが登場するコミックっぽい仕上がりはまさにThe 69 Eyesのファンがバンドに期待しているものに違いないとドラマーのユッシ69は語っています。
"Goth'n'roll will never die!"をモットーに今バンドは2023年リリース予定のラッキーな13作目のスタジオアルバムをレコーディング中とのことで、このニューアルバムからいくつかの先行シングルがリリース予定ですが、その前に6月にはEP盤リリースの予定もあるそうです。この曲バンド名きかずに聴いてもイントロでもうすぐにThe 69 Eyesと分かるような曲ですね。
Reckless love
Pic:Pete Voutilainen
フィンランドのメリーメタルバンドReckless Loveからは前作から実に6年ぶりとなる5作目のスタジオアルバム『Turborider』がこの春リリースになりました。このアルバムのメインのサウンドは80年代がテーマで、モダンなダーク・スピーク・シンセウェイヴの世界だそうです。あの年代のゲーム・ワールドやそのジャンルの映画のムードに飛び込んだんだ作品とのこと。
前作の後ヴォーカルのオッリ・ヘルマンは歌詞フィンランド語でソロ活動をしていた時期もあり、もしやそのままソロに転向してしまうのでは?と思うこともありましたが、2020年にデビューアルバムから10周年記念のワールドツアーを発表!ところが最初のオーストラリアツアーの後ご存じの通りコロナでそのあとのツアーが延期またはキャンセルになり、残念ながら日本公演もキャンセルになってしまいました。ラッキーにも数少なかった昨年のライブを2公演観る機会があり、彼らのライブはとにかく何もかも忘れて楽しめることを再確認!このニューアルバムで再度来日が決まることを祈ってます。
Temple Balls
Pic:Teemu Halmetoja
フィンランドの新星若手ハード・ロック・バンドTemple Ballsからニューシングル「Strike Like A Cobra」がリリースになりミュージックビデオも公開になりました!彼らは前2作のプロデューサーでもあるH.E.A.T.のヨナ・ティーを再度プロデューサーに迎え、Sonata Arcticaのベーシストで知られるパシ・カウッピネンがオーナーの一人であるStudio 57 で今年初め次のアルバム用のレコーディングセッションを行い、その時にレコーディングしたこの曲をシングルリリースしました。
この曲は Netflixで配信されているCobra Kai からインスピレーションを受けたそうで、比喩としてパンチをくらう側より、くらわす優勢の側のほうが勝利への道であり人生で有利になることを歌っているとのこと。
Temple Ballsは今年5月に延期になっていたスウェーデンのバンドH.E.A.T.のサポートアクトでヨーロッパツアーが予定されている他、夏はフィンランドでいくつかのフェス出演が予定されています。
この春のニューリリースいくつか紹介してみたので、ぜひチェックしてみてくださいね。コロナが早く落ち着いてフィンランドからも来日が早く実現するよう祈ってます。
文:Hiromi Usenius
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