【ライヴレポート】ASH DA HERO、3DAYSのバンド始動公演で「未来、こじ開けに行ってきます」
ソロからロックバンドへと進化したASH DA HEROが11月18日から3日間、バンド始動ライヴとなる<ASH DA HERO THREE DAYS LIVE 2021”NEW STARTING OVER”>を東京・TSUTAYA O-WESTで開催した。その最終日のレポートをお届けしたい。
◆ASH DA HERO 画像
「俺、言ったよな? 明けない夜はないって」──ASH (Vo)
ライヴの中盤、ASHはフロアに向かってこう叫んだ。以前の椅子席から、白線で立ち位置が指定されたスタンディング仕様に変わったフロアを指して、「その白線は君がいろんな制約を守って勝ち取った場所。俺たちなりの戦いで、未来こじ開けていこうぜ」と続けた。
20年前、「未来は僕らの手の中」と歌ったのはブルーハーツだった。この日、背中に”the future is now HERE”と書かれたジャケットを着て、何度も「未来をこじ開けろ」と叫んだASH。声は出せない、モッシュもできない。それでもここには未来が、希望が、確実にあった。
生で見るロックバンドASH DA HEROは凄まじい瞬発力でオーディエンスに迫り、そんなロックバンドのダイナミズムに引っ張られるようにフロアは泣いて、笑って、飛び跳ねて、熱狂。“ASH DA HEROとなら昔のようなライヴが取り戻せるかもしれない”──そう、心底思えたステージだった。未来は自分たちの手で変えていける。そんな希望をどこまでも抱かせてくれるとんでもなく説得力のあるパフォーマンス。ロックの未来は、ASH DA HEROの手の中にある。
バンド編成のASH DA HEROの幕開けとなったO-WESTは、「ソロ時代、一番ライヴをやった」という思い出深いハコだ。3日間とも見事にソールドさせて迎えた最終公演には、5人となったバンドの意気込みが漲っていた。
ステージの幕が開き、最新SE「NEW STARTING OVER」にのせてNarukaze (G)、Dhalsim(Dj)、WANI(Dr)、Sato(B)に続き、ASHが赤いフラッグを掲げ登場。拍手とタンバリンを鳴らして迎えるオーディエンスにのっけから新曲「Merry Go Round」を投下した。“どうだ、5人になったASH DA HEROは最強だろ?”といわんばかりの鬼気迫るアクトがフロアを熱くさせる。間髪入れずに「BREAK THE CHAIN」へ。フロント3人が一斉にお立ち台に上がってフロアにクラップを求めると、観客たちも負けじと愛溢れる音を鳴り響かせた。お互い、コンディションは上々だ。
だが、次の「DAIDARA」でバンドはさらに上へ上へと加速。Dhalsimが鳴らすヒップホップトラックからWANIのパワフルなドラムへと切り替わるバンドサウンドが秀逸。さらには2番でASHがロック界随一のマシンガンラップをきめ、最後のサビのブレイクはバンドならではのこの上ない緊張感を生み出すなど、スリリングなパフォーマンスがどこまでも躍動的だ。“カッコよすぎだろ”と、筆者の心の声がこぼれるほどのアクトを見せつけた。
その後は「SOCIAL DIS DANCE」でフロアをバウンスさせ、ダンスチューン繋がりで披露した「YELLOW FEVER DANCE」はDhalsimのスクラッチプレイが加わったことでクールなバンド感が倍増。その曲中、爆上がりのオーディエンスをASHがその場にしゃがみこませ、「3,2,1」の合図でジャンプさせた場面は、ライヴ前半最大のハイライトシーンとなった。
そしてここで、新曲が2曲。オールドスタイルなNarukazeのロックンロールギターと先鋭的なヒップホップが混ざり合ったハイブリッドチューン「Avengers」、タオルを回しとSatoの笑顔が鮮烈な「WARAWARA」が、バンドの輝く未来を証明した。
ステージとフロアが“Okey!! Okey!!”とサインを送りあう「XIMERA」で心を通わせた後、ライヴは「NEW ERA(skit)」からロックバラード「Rockstar」へ。天井からのスポットライトに照らされ、ASHのソウルフルな歌声が響き渡るワンシーンとなった。
バンドならではのセッションも披露。WANIとDhalsimがドラムとスクラッチでリズムを構築。ASHとNarukazeはDJブースに近づき、Dhalsimのホーンを楽しそうに鳴らしてセッションを盛り上げる。マイクを手にしたASHがフリースタイルラップでセッションに参加。「俺のルーツ〜」という滑り出しからNarukazeやSatoという相棒たちとの出会いをラップに乗せて披露するなど、ステージ上の一体感は極上だ。
「全員手を上げろ」とフロアを煽り「上がってんの?下がってんの?」と、あまりにも有名なKICK THE CAN CREW「マルシェ」のパンチラインをぶち込んでから始まったのは、「Nonfiction」だった。SatoとNarukazeはASHの後方で向かい合って、嬉しそうにプレイしている。それに気づいたASHは即興で歌詞を替え「さあいこうか。もうコロナなんて聞き飽きた。もう待つのはやめて未来こじ開けにいこうか。ここから新しいステージが始まる」とライムを自身のストーリーへ昇華していく。
そしてMCでは、「デビューが決まるまでは対バンをやってもなかなかO-WESTのキャパを埋め切れなかった」とソロ時代を感慨深そうに振り返った。
「そんなところから、気づけば一人、また一人と俺の横には最高の仲間が増え、ソロでZepp Tokyoをやったあと、ロックバンドを始動。チケットは3日間ソールドアウトです。ただいま、O-WEST。そして、この先の未来に行ってきます、O-WEST」──ASH
そしてNarukazeが静かに奏でるアルペジオに乗せて、「左の胸には未来に向かう誓いがある。それでも右の胸にはいまでも疼く傷がある。そういう思いを抱えているのは、君だけじゃない。そしてその思いは、まだ生きたいと叫んでいるんだ。ここにいる一人ひとりに捧げます」というドラマティックな言葉から始まったのは「Gatekeeper」だった。眼圧強めの視線で観客と次々と目を合わせ「君の人生や生命を必要としているヤツもいる。君は一人じゃない」とASHがメッセージを伝えると、涙を流したり鼻をすする人たちがフロアに続出。Narukazeが爪弾くギターにASHがフェイクを絡ませたムーディーなジャムセッションが、堰を切ったように溢れ出した感情を優しく癒すように対応するなど、実にスマートでエレガントな場面も。
そこからは壮大なロックシンフォニーで巨大なグルーヴを生み出す「Everything」へ。フロアのすべての人々に溢れんばかりの希望を注ぎ込みながら、それをプレイする本人たちも泣きそうになりながらこの曲を届けるステージは、胸に残る傷を忘れさせてくれるほど、とてつもなく感動的で、美しく尊かった。
「ロックバンドASH DA HERO、幸先のいいスタートがきれたのはアナタのお陰です」とファンを讃えたASHが、「せっかくだからメンバーからも一言」とメンバーにMCをうながした。
「諦めてた夢を追うきっかけをASHが作ってくれた。次は俺がドラムのヒーローになってみんなを救いたいです」──WANI
「1から作り直したマニュピレーター作業もなんとかなって、すごく嬉しく思ってます」──Dhalsim
「3日間、たった3本だけど濃いツアーを回ってきた気分。こんな気持ちになれたのはみなさんのお陰。この借りは何100倍にして返す。なので、世界一カッコいいギタリストがいる世界一カッコいいバンドになります」──Narukaze
「これが自分にとって8年ぶりのバンド。ASHに拾ってもらって船に乗って、みんなで次のフェーズに行こうぜ」──Sato
このMCに続いて、恒例の“ASH DA” “HERO”のコール&レスポンスを拍手スタイルで楽しんだ後は、ライヴもいよいよ後半戦だ。SatoとNarukazeのポジションチェンジがワクワクドキドキした「反抗声明」。「お前ら全員、俺たちについてこい」とASHが叫び、パンキッシュなサウンドが観客を熱狂へと巻き込んだ「HERO」。ジャケットを脱いだASHとWANIの縦ラインが激しいヘドバンを繰り返した「HERO IS BACK2」が場内にさらなる熱気を撒き散らす。そのとどめとして送り込まれたのが「PARADE」だ。生のシンガロングはできないのに、照明がフロアを照らすと、みんなの歌声がいまにも聴こえてきそうな気がした。この世界の闇を光に変えて、未来をこじ開けていこう。未来はここにある。会場にいた全員がそんな未来を信じた瞬間だった。
「本当はここまでだったんです、ライヴは。でも最後に2曲、リアルな気持ちをのせた新曲をみんなにプレゼントします」──ASH
“諦めることを諦めて、何度だって始めよう”という詞が心を奮わせる「Just do it」、“いつだってあの大好きだったライヴに戻れるんだ”とファンを思って書かれた「Remember」。これら新曲が爽快なバンドサウンドにのせて届けられ、3日にわたる始動ライブが幕を閉じた。
ASH DA HEROは「ここから仲間となるみんなを引き連れ、ロックの未来をどんどんこじ開けていく」とこの始動ライヴで高らかに誓った。今後は、2022年2月、3月、4月と3ヵ月連続対バンイベントが用意されている。ガチンコ対バンイベントが新バンドASH DA HEROの未来をさらに覚醒させるはずだ。
取材・文◎東條祥恵
撮影◎堅田ひとみ
■ASH DA HERO主催ガチンコ対バンイベント
2022年3月22日(火)
2022年4月22日(金)
※豪華ロックバンドを迎えての対バンスタイル
※追加情報は近日公開予定
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