【インタビュー】我儘ラキア「かっこよければ正義じゃない?」

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ラッパー擁する4人組ガールズグループ、我儘ラキア。メンバー個々で様々なことにチャレンジした外出自粛期間、メインボーカルの星熊南巫が作詞作曲を担当した楽曲のコンスタントなデジタルリリース、延期公演となった新体制初のワンマンツアーなど彼女たちの2020年の締めくくりとなるのが、6曲入りミニアルバム『WAGAMAMARAKIA』である。MY FIRST STORYのNob、NOISEMAKERのHIDEとAG、Crystal LakeのYD、ex.TOTALFATのKubotyといった超強力プロデューサーによる提供曲が揃った同作は、彼女たちの可能性を大きく広げるものとなった。そのバラエティに富んだ楽曲たちに乗る星熊の書く歌詞に共通して綴られているのは“変化していきたい”という強い思いだ。なぜそこまで彼女たちは変わり続けたいのだろうか。グループの核心に迫りながら、新作を紐解いていった。

  ◆  ◆  ◆

■かっこよければ正義じゃない?

──MIRIさん、肩の具合はいかがですか?

MIRI:おかげさまでだいぶ動かせるようになりました。……ちっちゃい頃からそういうタイプなんですよね。最後の最後でケガしたり、市の代表のリレー選手で順調にいけば大会新記録を出せたのにゴール間際で転んだり。だから今回も“ああ、来たかー”って。

──2020年9月から開催した新体制初のワンマンツアーのファイナル公演中、肩を脱臼してしまうという。少しでもいい結果を出そうとする頑張り屋さんなんでしょうね。

MIRI:どうなんでしょうね? でも、人間って脳や筋肉の20%の力しか出せないって言うじゃないですか。わたしは100出そうとしちゃって身体が追いついてないのかもしれないです(笑)。

──我儘ラキアは年間200本ライブをする超現場主義グループとのことですが、ライブに対してどのような心情で向き合っているのでしょう?

星熊南巫:1本1本に意味のあるライブをしたいし、いつ観ても同じライブになるのは嫌やなと思っていて。

川﨑怜奈:やっぱりイベントによって空気感は全然違うし、その時、その場所でしかできないパフォーマンスがあるなと思うんです。

星熊南巫:うん。ムカついたらその気持ちのまま体当たりするし、楽しいときは楽しい気持ちを全面に出すし。やっぱりステージの上で発信する人間として、ただライブをこなすんじゃなく、自分がいま何を考えているかをそのまま出せたらなと思うんです。

▲星熊南巫

──それはなぜ?

星熊南巫:自分とまったく同じ価値観や特性を持っている人と出会ったことがなくて。だからお客さんに自分の気持ちをわかってほしいとか、共感してほしいわけではないんですけど、目標に向かっていくときの気持ちや葛藤って、どんな人も少しは共感できる部分なのかなと思っていて……もがきながらも続けていたら少しずつ仲間ができたんです。“その時その時の気持ちをぶつけていけば、やりたいことをやれるようになるんだ”と発信したいんですよね。

川﨑怜奈:わたしはいま星熊が話したような気持ちや、歌や歌詞で伝えられることを、ダンスやパフォーマンスで伝えられたらと思っています。敢えて人に対してなにかを発信する人間ではなかったんですけど、自分から伝えないとわからないし、ライブに来ている人は毎回違うから、1本1本違うライブをするべきだとラキアの活動から学びました。今日どんなライブにするべきかは、メンバーの空気感で伝わってくるんですよ。そのうえで“じゃあ今日は自分のどんな得意なことを生かせるだろう?”と考えてますね。

海羽凜:お客さんの気持ちのいちばん近くに寄り添える人間でありたいと思っています。みなさんお仕事などがあるなかでわたしたちのことを応援してくださって、広めてくださっているから、歌詞に込められた想いを出来る限り伝えられるよう心がけています。

──MIRIさんはいかがでしょう?

MIRI:わたしは3人よりも、もっと自分のためにライブをしてるかも。昔、やるべきことや考えることでいっぱいで、とにかく必死にライブをしている時期があって──その時全然ステージを楽しめてなくて。でも自分が楽しんで“この時間最高! もっとこの時間が続けばいいのに”と思えているライブは、お客さんも楽しかったと言ってくれることが多くて。それって共鳴できてたってことだと思うんです。とにかく“全力で楽しんで、その時間を生きてやろう。自分がいちばん楽しんでやろう”と思ってますね。

──四者四様の回答ですね。一人ひとりカラーやかたちが違うからこそいいサイクルが出来ているのではないでしょうか。

星熊南巫:このメンバーになって1年半くらいなんですけど、変化するといろいろ言われることが多いんです。でもそういう意見が多く出る時は、新しいものを生んでいるサインなんやろな……とは最近思えるようになりましたね(笑)。

▲我儘ラキア/『WAGAMAMARAKIA』

──今作『WAGAMAMARAKIA』でも多くの曲で“どんどん変化していきたい”というメッセージを強く発信していますものね。そのマインドは星熊さんがおっしゃったように“新しいものを生み出したい”という気持ちから来るものだと思うのですが、我儘ラキアはスタンスもメンバー間の役割も楽曲性の観点も、ハイブリッドなスタイルを取っているグループなのも特徴的だと思います。

MIRI:それは“かっこいいからやってる”ってだけですね。ロックとラップが混ざったらかっこいいじゃないですか? 歌って踊れたらかっこいいし、女が男勝りにそれを表現してたら“うわ、かっこいい!”と思うし。これとこれを混ぜてみたら面白いものができるかもしれない、みたいに考えることもあるけど、それ以上に“かっこよければ正義じゃない?”って。かっこよさを求めた結果、ハイブリッドと言われるものになっているだけというか。

──ああ、なるほど。根幹にあるのはシンプルなマインドなんですね。

星熊南巫:MIRIが加入して、わたしがメロディを作って歌詞を入れてMIRIがラップを作ってくれるという制作サイクルが出来てきて。もともとわたしは海外の音楽が好きなので、日本の音楽のこともわかってるMIRIが“もうちょっとわかりやすいメロディにしないと伝わらへんよ。みんなわからんて”と率直な意見を言ってくれるんです(笑)。メンバーそれぞれ得意なことも違うし、アイドルらしからぬ音楽性かもしれへんけど、それはわざとそういうことをしているわけじゃなく、4人の個性や好きなものを表現した結果やと思うんです。

川﨑怜奈:うんうん。かっこいいものしか見たくないし、かっこいいものにはみんな目が行くと思うんです。そのなかで4人それぞれで自分の得意なことを武器にすると強いなと、ステージのたびに実感してますね。

海羽凜:アイドルは可愛くあるべきと思ってたけど、我儘ラキアの活動をするごとに、“かっこいい女性として歌って踊るってラキアしかできないんだろうな”と思うようになってきました。

──“自分らしく生きていくことの追求”や“多様性を肯定する”というグループコンセプトにも通ずるお話だと思います。

星熊南巫:各々が自由にやっているからこそというか。わたし個人はなににもとらわれたくないから、“わたしも好きにするから、みんなも好きにして”というスタンスなんです。それを認め合えるチームだから個性がばらばらでも続けられてるし、安心できるんですよね。

川﨑怜奈:だからといって苦手分野に対して努力をしないわけじゃないし、誰かの苦手分野を支えるつもりでもなくて。お互いの武器を認め合っているからこそ、自分の全力をステージで出し切るだけというか。

星熊南巫:うちら、メンバーがステージに立ってる時になにを考えているのかすぐわかるんです(笑)。特にMIRIは表情を読み取る能力がすごく高い。

MIRI:自分はステージ上でちょっと引いていることが多いから、ちらっと横が見えた時に“あ、あの子がイヤモニ絡まった。それなら次あの場所が空くな。じゃあわたしがそこに行こう”みたいに瞬時に考えるんです。クマ(星熊)が歌いにくそうにしてたら、スタッフさんにジェスチャーで“イヤモニの音量上げて”と頼むし(笑)。

星熊南巫:MIRIは裏番長っていうか、縁の下の力持ちというか。

▲MIRI

──我儘ラキアの曲にMIRIさんのラップは不可欠になってきているので、花形の印象もありますが。

MIRI:ラキアでラップが入っている曲はまだ半分もないんです。それでも花形と言ってもらえるのは、ラップが強く印象づいてるってことだと思うんですよね。それは他のメンバーがわたしを立たせてくれるからだし、それは各メンバーの役割がちゃんと分かれてるからだと思う。ラキアのメンバーは個性が強すぎるから、自分の得意な部分でちゃんと魅せることができないと埋もれちゃうんですよ。わたしがめちゃくちゃいいラップをしたら、星熊はそのあとすぐ歌でそれを越えてくる(笑)。そしたら怜奈がダンスでめっちゃ前に出てきたり、凜ちゃんはめっちゃいい表情で歌ってたり──ラキアのステージは楽しく華やかに見えてすごい戦場(笑)。

星熊南巫:結局みんな自分がいちばんやから、全員が“自分を見て!”と思ってる(笑)。でもみんなのことが好きやから譲るところは譲る。自分の番やと思ったらもう独壇場ですね(笑)。

MIRI:凜ちゃんは喋ってるとおとなしい感じやけど、ステージ上でいちばん堂々してるんですよ。わたしや星熊はアウェイやって感じたらどんなライブにしようかめちゃくちゃ考えてしまうんですけど、そんな時でもいつもどおり堂々としてる凜ちゃんを見ると“ああ、平常心でやればいいんや”と我に返るんです。

川﨑怜奈:それこそ“裏番長”ですね。

海羽凜:(笑)。そんなに意識はないんですけど……。でもわたしが歌詞飛んで頭が真っ白になった時、MIRIがスッとわたしの横に来て“凜ちゃん落ち着いて。大丈夫だから!”って耳打ちしてきて(笑)。

──へええ。ステージ上でこまめに声掛けをしてらっしゃるんですね。

星熊南巫:めっちゃしてますね。“もっといけるよね?”とか。さすがに“落ち着いて”と言われたことはないけど(笑)。サッカーチームの感覚に近いかも。

MIRI:だから全員全力が出せるし、メンバーの全力が出てこそラキアのパフォーマンスだなと思う。お互いが刺激し合っているからこそ、我儘ラキアができてるんだろうなと思いますね。

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