【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vo.127「世界の美景『ハンガリー』~TAMAKI's view(MONO)」

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旅とは元来特別なもの。だが、新型コロナウイルスの出現によって世界は一変してしまった。自由に空を飛び、自分の目で見て世界を知ることが難しい今、ワールドツアーで世界を渡りゆくアーティストに訪れたことのある国にまつわる話を聞かせてもらい、読者の皆さんと共に旅気分を味わいたいと思いつき、すぐに頭に浮かんだアーティストがいた。それは日本人バンドとして世界で最も多くのオーディエンスを獲得したバンドのひとつであるMONOのベーシスト、TAMAKIさんだ。


▲撮影◎Yoko Hiramatsu

■TAMAKI(MONO)
東京出身4人組インストゥルメンタル・ロック・バンドMONOのベーシスト。イギリスの音楽誌NMEで“This Is Music For The Gods.(神の音楽)”と賞賛されたMONOサウンドにおいて、ピアノ、鉄琴なども操る他、20周年を迎えてリリースした最新アルバム『NOWHERE NOW HERE』に収録の「Breathe」ではヴォーカルを初披露。これがバンド初の歌入り作品となって話題に。ライブでは華奢に映るその容姿からは想像もつかないような男前な弾きっぷりと美脚に魅了されるファン多数。

1999年のバンド結成以降、59か国もの国々を渡り歩き、文字通りに世界を舞台にしてきた正真正銘のライブバンドのメンバーであるTAMAKIさんが、旅先で見たもの、触れたものについて、当時のライブ写真やTAMAKIさんご自身が撮影したスナップ写真を交えてお届けするこの「世界の美景」を紹介する企画。前回のインド編に続き、二カ国目として話を聞かせてくれたのは「ハンガリー」だ。

■「ハンガリー」基本情報



正式国名 ハンガリー(Magyar)
首都 ブダペスト
面積 約9万3030km2(日本の約4分の1弱)
人口 977万8371人(2018年)
民族 ハンガリー人86%、ロマ3.2%、そのほかドイツ人、スロヴァキア人、ルーマニア人など
国旗 赤・白・緑の3色旗(出展:地球の歩き方)

   ◆   ◆   ◆

──ハンガリーはライブでよく訪れる国ですか?

TAMAKI:そうですね。初期の頃からヨーロッパツアーがあれば必ず行っている国です。

──MONOのオフィシャルサイトによると、ハンガリーでの初ライブは2003年7月1日にPesti Estにて、最近では昨年2019年4月にDurer Kertというヴェニューにてとあります。首都ブタペストでの開催が多いようですね。

TAMAKI:同じヨーロッパでもイギリスなどの複数の都市を廻るツアーもあれば、国によっては首都のみの場合もあります。例えばドイツ、ベルギー、オランダなどでは次のライブ会場まで1~2時間のドライブで移動できる距離だったりもするし、近距離でライブをやる場合は国をまたいでライブに来てくれる人もいるくらいだから。

──なるほど。ハンガリーにはどんな印象をお持ちですか?

TAMAKI:空気感はいわゆるヨーロッパ。とは言え、ヨーロッパの国々もそれぞれちょっとずつ違いますよね。ドイツもフランスもハンガリーも。東の方に行くと建築物なんかもちょっとずつだけど違っていて。それがなんなのかとかは分からないけど。



──島国日本と違ってヨーロッパは地続き。車で移動できる分、そうした少しの変化も感じ取れるのかもしれません。それにハンガリーはヨーロッパ諸国で唯一アジア系民族の国ですし。

TAMAKI:最初の頃は全然分からなかったけれど、滞在日数も長いし、訪れた回数も多いからね。ブタペストも、昔は川を挟んで片側が「ブタ」、もう片側が「ペスト」という2つの街だった。それだけに西と東でちょっと様子が違うものね。

──「ブタ」と「ペスト」が合併してブタペスト! 行ってみたいと憧れているわりには何も知らない自分に驚愕します。

TAMAKI:こういう情報はヨーロッパのツアー・マネージャーがさらっと教えてくれたりします。

■ドナウに浮かぶヴェニュー

──ハンガリーと言えば、ドナウ川。幼少期に好きだった「ドナウ川のようせい」という本の影響で死ぬまでに見たい川ナンバーワンなのですが、ご覧になられました?

TAMAKI:見ました! 私も小学生の時にエレクトーンを習っていた頃に弾いていた「ドナウ川のさざ波」が大好きだったの。だから、ドナウ川を初めて見たときに「これが!」みたいな感じでとても感動して。それからドナウ川には川面に浮いているA38というヴェニューがあって、そこには何回か出ています。写真は昼の外観ですが、夜になるとライトアップされて壮観なのよ。


▲ドナウ川

──セーヌ、テムズなどにも言えますが、川のある景色は美しいですよね。しかし川に浮かぶ、または水面に揺れるヴェニューというのは聞いたことがありません。ドナウ川以外でも水上にある会場はありましたか?

TAMAKI:たしかヨーロッパのどこかでもう1カ所あったような。船だから、中に入ると揺れるんだよね(笑)。

──想像が追いつかない(笑)。その他に観光などは?

TAMAKI:私たちは普段あまり観光しませんが、ハンガリーでは温泉に行ったことがありました。ヴェニューでご飯を食べていたら現地のスタッフに「温泉があるよ」と言われて、セーチェーニ温泉というのが会場の近くにあると知ってメンバーで行きました。海外でSPAに行くのは初めてでした。そこはヨーロッパでも有名なSPAらしくてお城みたいな建物でね。


▲セーチェーニ温泉


▲セーチェーニ温泉施設内

──調べたところ、そこは1913年に建てられたヨーロッパ最大の温泉だそうですよ。

TAMAKI:そうなんだね。私もそれまでハンガリーが温泉大国とは知りませんでしたが、結構楽しかったな。その周辺にも教会などの綺麗な建物が立ち並ぶ素敵なところだったのでリフレッシュできました。







■Shellacに学ぶ楽屋スタイル

──ハンガリーの食べ物はどうでしたか?

TAMAKI:ヴェニューで作ってくれることが多くて毎回ケーキを作ってくれる会場もあったりするので、これぞハンガリーというものは覚えてないです(笑)。先ほど話したドナウ川の会場は、上の階にドナウ川が一望できるレストランがあって、肉、魚などの普通のお料理でした。お酒はワインが美味しいのでずっと飲んでましたね。

──フランスのルイ14世を唸らせた極上のワインという言い伝えは本当なんですね。ところで、ヴェニューが食事を作るのは当たり前なのでしょうか?

TAMAKI:ヨーロッパは7割8割そうですね。作っているところもあるし、ケータリングのところもある。イギリス、アメリカのようにキャッシュを渡されて「はい、食べに行ってきて」というのはあんまりないですね。


▲ヴェニューの飲食スペース


▲MONOとArabrotのネーム入り手作りケーキ

──フェスなどで裏方として働いているときに外タレの様々なライダー(アーティスト側の要望リスト)を目にしますが、そもそも食事はヴェニューが負担するものですか?

TAMAKI:そうですね。契約書に明記されています。水、お酒、タオル、フルーツ、サンドイッチなどを用意してもらっていますが、結局余って無駄になることも多いので、スナックなどはあまり食べないので無くしたりして、今で言う食品ロスにならないようにだいぶ見直しました。それにライダーに書いているものは場所によりますが、自分たちの予算から出て行くときもあります。でも、Shellacとツアーを廻ったとき、彼らの楽屋にはまったく何にもなくて水しか置いてなかったのよ。確かに各自必要なものって違うから共通する最低限必要なものだけでいいですよね。彼らのその姿勢を見て「最低限のものだけにしよう」ってことになりました。それでも「絶対ビールはお願いします!」と(笑)。



──ハンガリーではほぼ毎年ライブで訪れているとのことですが、オーディエンスの印象は?

TAMAKI:静かですね。東ヨーロッパの人は比較的大人しいかな。とは言え、日本よりは全然ですけど。

──静かな中にも熱さがあるような?

TAMAKI:それは間違いないですね。


▲MONO Hungary 2019(Photo by Infinite Beat courtesy of Japan Vibe)

──では、客の反応が最も静かな国はどこですか?

TAMAKI:やっぱり日本ですね。

──日本が群を抜いて静かであるということですか?

TAMAKI:そうですね。ヨーロッパやアメリカのお客さんに比べるとあまりにも静かですね。日本の公演でも多くの外国人が来てくれていますが、その人たちも静かなので、もしかして「静かにしなきゃ」と思っているのかな? と思うほどです。

──確かにMONOのライブでは静寂が生み出す張り詰めた緊張感がある。MONOのオーディエンスには寡黙で知的そうな男性が多く、LPを抱えて出待ちをしている人がいそうなイメージがありますね。


▲MONO Hungary 2019(Photo by Infinite Beat courtesy of Japan Vibe)

TAMAKI:どちらかというと男性が多いような気はします。確かにその日に買ったレコードの他に自分が持っている全部のレコードを抱えてくる人は結構いますよ(笑)。もちろん女性も多いんだけど、全人類共通なのか、男の人のほうがロマンティストなんだなと思って見ています。ただ性別というよりは年輩の方もいるし、子供もいるし、あまりそこは気にしていません。

──音が音なだけに、バンドを神聖化して見ている人も多いような気もしますね。ちょっとでも触れようもんなら音を立てて崩れ落ちてしまいそうな繊細さと精巧さがライブでも体現されている。そこにみんな魅了される。


▲MONO Hungary 2019(Photo by Infinite Beat courtesy of Japan Vibe)

TAMAKI:gotoさんが創る繊細さは奥深くにあるのでかなり掘り下げる必要があるんです。最初に曲があがってきた時からそれが分かる。もちろん単純に出来たばっかりのデモの音を追って弾いただけでも音を鳴らすという意味では成り立つのでしょうけれど、この部分のさらに奥にあるここでは何かを絶対に考えているなと感じながら自分で探っていく。探り当てたものがgotoさんの思惑と合っているかどうかを確認する作業も結構楽しいし。

──きっとリスナーの側も出来上がるまでの過程などを存分に想像してライブに挑んでいるんでしょうね。

TAMAKI:そういうお客さんだからこっちも嬉しいよね。多分、信頼し合っているんだと思う。お客さんたちと自分たちが。だからライブが成り立っているんじゃないかな。


▲MONO Hungary 2019(Photo by Infinite Beat courtesy of Japan Vibe)



写真◎TAMAKI
取材・文◎早乙女 ‘dorami' ゆうこ

   ◆   ◆   ◆



アルバム『Nowhere Now Here』
2019年1月25日(金)発売
Labels:Temporary Residence Ltd.(North America & Asia),
Pelagic Records(UK, Europe & Oceania)
Formats:CD, LP & Digital
1.God Bless
2.After You Comes the Flood
3.Breathe
4.Nowhere, Now Here
5.Far and Further
6.Sorrow
7.Parting
8.Meet Us Where the Night Ends
9.Funeral Song
10.Vanishing, Vanishing Maybe

◆アルバム購入
www.smarturl.it/mono-nnh
◆Single 1「After You Comes the Flood」
www.smarturl.it/mono-ayctf
◆Single 2「Breathe」
www.smarturl.it/mono-breathe
◆Single 3「Meet Us Where the Night Ends」
www.smarturl.it/mono-muwtne

◆MONOオフィシャルサイト
◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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