【インタビュー】シキドロップ、風刺と皮肉を込めて新たな一歩を踏み出すミュージックビデオ三部作

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「怪物」が、いよいよ動きだした。宇野悠人(Vo)と平牧仁(Pf)、それぞれに輝きを放つ超個性が合体したユニット、シキドロップの新たなチャレンジは、人気イラストレーター・sakiyamaとタッグを組んだ、三部作のミュージックビデオによる三か月連続新曲リリース。2019年リリースの前作『シキハメグル』で見せた、美しい抒情と内省の世界から、風刺と皮肉を武器に世界に戦いを挑むメッセージソングへ。結成3年目にして新たな一歩を踏み出す三部作に込めた思いについて、二人が語ってくれる。

  ◆  ◆  ◆

■問題提起をしたかった

──ミュージックビデオと連動した三部作。このアイディアはどこから?

宇野悠人(Vo):事の発端は、僕がYouTuberでもあるので、動画で見てくれている人が多いということがあって。でもシキドロップのお客さんは、もともと仁ちゃんを応援してくれてる方が多いので、僕のYouTubeの視聴者の方にもっとライブに来てもらったり、シキドロップのことを知ってもらおうということですね。YouTube の中では“シキドロップ=宇野悠人”で、僕の一人ユニットみたいに思われているところもあるので、もうちょっとYouTubeでシキドロップとしての活動を増やしたいと思った時に、「やっぱりミュージックビデオだろう」と。でもただのミュージックビデオじゃ面白くないので、三部作を作ったらどうだろう?と。

平牧仁(Pf):悠人がもともと、「連部作やりたい」と言ってたんですよ。

宇野:そう。シリーズものが好きなので。『ハリー・ポッター』もそうですけど、ずーっと見ていて、終わった時に「あー終わっちゃった、寂しい」と思えるのが、シリーズもののいいところだと思うので、今回それがやりたかった。

平牧:そこから、YouTubeで流行ってる曲をひたすら研究しました。去年はほぼそれしか聴いてなかった。とはいえそれを模倣するのではなくて、そこと自分たちの円グラフのどこが重なるかな?というものを探していた、という感じですね。

宇野:僕はもともとネット出身で、ボーカロイドも昔から聴いていたので。「こういう曲があるよ」って教えてたら、いつのまにか仁ちゃんのほうが詳しくなってたという(笑)。

平牧:曲作りもすごく変わりました。悠人のほうがそういう曲への感性が鋭いので、僕が作った曲を悠人に投げて、「有りか無しか」をジャッジしてもらって、それをクリアしたものから歌詞を書く。ある意味、効率が良くなったよね。

宇野:二人でやり始めて3年目にして、ようやくね。遅いのか早いのかわからないですけど(笑)。

平牧:普通のアーティストさんと違うのは、僕たちは出会ってすぐに結成してしまったので、お互いのパーソナルもよくわからなかったり、音楽性がわからなかった部分もあって。それがようやく、かみあってきた気はします。

──そして、ミュージックビデオをアニメにしようというのは?

宇野:絶対そうしたいというわけではなかったんですけど、僕も仁ちゃんも絵が好きだし。

平牧:それと、二人とも表に出たい欲求がないんですよ。「だったらアニメーションがいいんじゃない?」って。

宇野:二次元の世界にみんなが入り込んでもらったほうが、僕らの世界観とマッチしてるかなと思って、そうしました。リアルな人間に演じてもらう案もあったんですけど、いろいろ考えた結果、アニメーションのほうが表現できることが多いと思ったので。たとえば、実写で人を宙に浮かせることはできないけど、アニメならできる。そういうふうに、僕らが伝えたいことを映像に埋め込んでいるので、ただのミュージックビデオというよりは映像作品だと思います。

──そこで、クリエイターとして白羽の矢が立ったのが、イラストレーターのsakiyama氏。

平牧:おのおのが調べてきて、ミーティングの時に、プレゼンしあったんですよ。そこでsakiyamaさんの名前をプロデューサーさんが出したんですけど、僕もチェックしていて、言おうとする前にその人が名前を出したから、「あー! 僕もいいと思ってました」って。

──どうやってみつけたんですか。sakiyama氏の名前は。

平牧:ツイッターで「絵師」「イラストレーター」という人をひたすら調べたんですよ。それと、たとえばEveさんだったら、Mahさんがいて、wabokuさんがいて、じゃあwabokuさんは誰と繋がってるんだろう?とか、そうやって調べていって、sakiyamaさんを知りました。とにかく、毒があるところが気に入りましたね。毒々しさや皮肉を隠さない感じがすごく好きで、今回の作品ともマッチするかなと。悠人も、絵のタッチをすごく気に入ってくれたし。

宇野:ペン画が好きなので、線がはっきりしてるタッチの絵が好きなんですよ。「これだ!」ってなって、ツイッターでDMを送るという。

──なんと。いきなり。

宇野:まずsakiyamaさんのツイッターをフォローしたら、すぐに返ってきたんですよ。あとで聞いたら、「ちょうど見てた」って言ってたんですけど。

平牧:事務所に入っているのか、個人でやっているのかもわからないから。まずはアーティスト対アーティストで話したほうがいいかなと思って、悠人が連絡してくれて。でもそれが良かった気がする。

宇野:絶対良かった。sakiyamaさんもちょうど、新しい人とやってみたくて、雰囲気を変えることに挑戦したいと思ってたみたいで、ぴったりだなと。

平牧:絵はsakiyamaさんの作品ですけど、コラボしてるニュアンスでやりたかったので。sakiyamaさんもいっぱいアイディアをくれたし、ふくらませてくれるので、すごく楽しかった。セッションしてるみたいでした。

──そして、1月24日に公開された三部作第一弾が、「行進する怪物」。

宇野:曲は前からあって、三部作にどれを選ぶかも決まってました。ただアレンジもレコーディングも終わってなくて、sakiyamaさんにはデモ音源を渡しましたね。それもある意味見切り発車で、sakiyamaさんを見つけた瞬間にDMを送ってしまったがゆえに、デモ音源しかなかったという(笑)。



平牧:ミュージックビデオの内容も考えてなかったから。まさかこんな作品になるとは、うれしいサプライズです。

宇野:一つ言えることは、前作『シキハメグル』(2019年3月)を出して、ワンマンライブを終えたあと、仁ちゃんに「次はどういう曲作りたい?」と聞かれたんで、「次は社会風刺がやりたいかな」と言ったんですね。それで、そういう思いがいっぱい詰まってると思います。だからミュージックビデオもおのずとその方向でまとまったというか、完成したらテーマが見えた、という感じです。

──社会風刺をしたかったというのは、普段から思うところがあったから?

宇野:SNSをよく使う人間からすると、うまく使えてる人と使えてない人がいると思うんですよ。それを皮肉るような作品を作りたいと思ったのがきっかけです。

平牧:問題提起をしたかったんですね。「先生の言うとおり」に“「正義」の間違い探し”とか“自分の証明問題です”というフレーズがあるんですけど、ミュージックビデオで言ってるのはまさにそのことで、「あなたはどう思いますか?」ということですね。タイムリーな話題として、不倫とか、ドラッグとか、いろんなニュースがありますけど、みんな好き勝手にコメントを書くじゃないですか。そうじゃなくて、「あなたはどう思いますか?」と。悪いことをしたとしても、その芸能人の方は「あなたより頑張ってますよ」ということも言えるし、「それをあなたはすべてゼロにできるんですか」ということも、問題提起したかったので。悪いことは悪いけど、「あなたに言われる筋合いはないですね」とか。僕が言える立場でもないですけど。それを問題提起として、SNSがこれだけ普及して、ある意味毒されてしまった状態は、便利であり不便であり、みたいなところで、「じゃあ僕たちはどうするの?」と言いたかったんですよね。

宇野:僕らの作品を見て、答えが生まれるか?といったらそうではなくて。見る人によって答えが違うだろうし、何が正解かわからないけど、わかりやすく現状を映すものにしたかったんですよね。

平牧:不祥事を起こした政治家に“謝罪してください”“反省してます”、“そうじゃなくて謝罪できるかどうかを聞いてるんです”とか、それがテレビで放送されてること自体が馬鹿馬鹿しいし、みんな失望すると思うんですよ。もちろん謝罪してほしいけど、もっと大事なことあるじゃん?とか思うし、そういうマスメディアもすごく嫌ですし。

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