【インタビュー】J、11thアルバム『Limitless』完成「だから誰にも止められないんです」
Jが7月24日、約4年ぶりソロ通算11枚目となるオリジナルフルアルバム『Limitless』をリリースする。同アルバムには、2018年発表のライブ会場限定シングル「Now And Forever」を含む全11曲を収録。これに先駆けて7月6日の岡山IMAGE公演を皮切りに8月12日のマイナビBLITZ赤坂まで、岡山、福岡、金沢、仙台、札幌、大阪、名古屋、東京をまわる9公演の全国ツアー<J LIVE TOUR 2019 -THE BEGINNING->がスタートしている。
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限度無しなのか、限界を知らないという意味なのか。約4年ぶりとなるJの新作アルバムは、『Limitless』と銘打たれてる。そしてこの作品が実証しているのは、これが彼にとって新たな物語の始まりであると同時に、これまでの経過すべての存在なしには、この瞬間は到来し得なかった、ということでもある。この作品が生まれた背景にあるもの、そしてこの全11曲に込められた彼自身の想いを探るべく、7月も半ばに差し掛かりつつあったある日、じっくりと話を聞いた。
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■限界って、物理的に存在しない限りは
■想像のなかでのものでしかないはず
──『Limitless』の発売日は7月24日。なんと、デビュー記念日じゃないですか!
J:そうなんですよ。僕もスタッフから聞いて知ったんですけど、偶然ってすごいものですね。というか、これ、偶然なのかな(笑)? 自分では意識してなかったんだけど。今回のアルバムは11枚目。10枚という節目を超えたうえでの新しいスタートに当たるものなんで、そういった意味では何かに招かれたというか、引き寄せられたというか。そういうところもあったのかな、という感じはしますね。
──第10作の『eternal flames』(2015年)、ソロ活動20周年記念となるベストアルバム『W.U.M.F.』(2017年)を経たうえで新しいところに向かうもの。そうした意識で作られたもの、ということになるんでしょうか?
J:ホントにここ数年は、僕自身ソロの20周年もあれば、今年はLUNA SEAの30周年でもあり、節目続きのような状況だったので。いろんなことを自分に問いただす機会、見つめ直す機会でもあった。そういうなかで作り始めたアルバムだったので、やはり単純に新しいものというだけじゃなく、今まで積み重ねてきたもののさらに先にある新しいスタートという部分について意識してたかな、と思います。
──とはいえ、ここで音楽性を方向転換するとか、そういうことではないはずですよね。新たなスタート地点と呼ぶに相応しいものにするにはどんな作品にすればいいのか。そこはなかなか難しいところではないかと思えます。
J:ホントにね。まさしくそういう自分に対する禅問答みたいなものが、実際にアルバム作りに向かう前にはありましたね。“10枚作ってきて、そこから先にまだおまえを震えさせるようなものはあるのかい? ドキドキさせられるようなものはあるのかい?”というようなことを自分に確かめているようなこの4年間だったような気がするんですよ。実際、1枚目の頃よりはいろんなものを作ってきてるわけですから(笑)、自分が絵を描くためのキャンバスがあるとすれば、まだ色を塗れる場所がどんどん狭まっていくのは当然のことなんですよね。だけど、“その絵は本当に完成したのか?”と考えた時に、自分の持ってる画角がもっと大きなものだったことにふと気付かされた、というか。そんな感覚でしたね。自分自身としては当然今までと同じように、みんなに伝えたい想い、熱い想いのなかで音楽を作ってきたんだけど、そのストーリーはまだ終わってないんだ、ということを改めて実感させられて。そこからアルバム作りに向かっていけた感じがするんですよね。
──つまり新たなキャンバスを手に入れて他の何かを描き始めようとするのではなく、まだまだ同じ面の上に描き続けることができる。それはまさに、この“限度無し”というタイトルに重なっているところじゃないかと思えます。
J:まさにそうなんです。最初に自分が描いてた絵というのは、まだその外側に描き足さなければいけない場所があって、しかもすでに何かを描いてあるところについてもミクロの次元まで細かく突き詰めて見直してみると、そこにもまだ塗るべきものがあって。なんかすごく立体的になってきてるんですよね。それを感じた時に、限界なんかないんだな、と。自分自身が放とうとしてるもの、表現しようとしてるものは、まさにそうであるべきだという想い──それも込めてこのタイトルを付けましたね。
J:そうですね。ただ、この4年間のどこを初期と言うのか、というのはありますけど(笑)。いろんなタイミングで曲を書いてきて、ちゃんと完成形に至った曲もあれば、ごみ箱に捨てたものもたくさんある。そうした過程のなかで、ここ2年間ぐらいはアルバム作りに向けてより集中して作業してたわけなんですけど、その途中だったと思います。
──さまざまな節目を超え、禅問答のようなことを繰り返しながら、思い浮かんだキーワードが“限度無し”だった。この言葉は無限大の広がりを感じさせる一方、どこまで行っても終わりがない、抜け出せない、という諦めめいた意味合いも感じさせますが。
J:確かに(笑)。実際そうなのかもしれませんね。ただ、僕自身が思っていたのは、限界って、物理的に存在しない限りは、想像のなかでのものでしかないはずだってことで。
──なるほど。確かに、実際に壁に塞がれていたりするわけではない。
J:そうです。これまでいろいろと見て、いろいろと感じながらやってきたなかでの、自分なりの感覚で線を引く場所というのがあるじゃないですか。だけど、それが果たして本当に存在するものなのか、というのも改めて自分に問い掛けてみたわけです。だけど結局、僕はそれをこの目で見てもいないわけだし、それは想像でしかない。だったらその想像をポジティヴに変えることも可能だよね、ということなんです。逆に言えば、もうホントにキリがないってことではあるんですよ。ただ、そのキリがないことに対して自分がどれだけ熱くなれるのか、という想いもある。そういった想いも含んだ言葉だと思います。
──たとえば『PYROMANIA』を作った当時も、Jさんは“限界なんかねえんだよ!”と考えていたかもしれません。ただ、それから22年後、いろいろな局面を経てきたうえで、今なお『Limitless』という言葉を掲げられることに意味があるように思えます。
J:実際、そう思ってるんです。まだまだ何も見ていないまっさらな状態で感じることと、いろんな景色を見てきたうえで感じられることというのがあるはずだし、当然そこでの答えというのは違ってきますよね。なんか、そういう意味でもよりリアリティをもって、同じことであってもより強く伝えられるかな、なんて思ったんです。
──実際、これまでいくつかの限界について考えさせられてきたはずですよね。たとえばソロで活動するうえでの限界、日本で活動するうえでの制約。そうしたものを知っている人が口にする“限界無し”というのには、その人なりの根拠がある。
J:まさに。たとえば昔、喧嘩とかしても、“最終的に勝ったやつが勝ち”みたいな気持ちがあった。わかります? “今日は負けてるけど明日は勝ってるかもしんねえぞ”みたいな(笑)。元々そういう育ちなんで(笑)、何事に対しても、なんかそういう部分があるんです。結局、思い描いた場所に辿り着く速度の問題もあるし、そういった意味で言うとまだまだ僕は旅の途中にいるわけで、わかったようなことを言ってもしょうがないし。もっと言うと、そういうことについて自分自身に問い掛けた時に、まだ自分が熱くなれるような、まだ自分が燃え上がれるようなものが今も存在してくれてたわけですよね。つまり、ロックミュージックというものが。それはすごく嬉しいことだし、それに気付けたことというのは、ものすごい力に変わっていったし。そこでギアが一段、ドーンと上がるような……。そういう感覚でアルバム作りに向かえましたね。
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